著者
古平 栄一 森 源治郎 竹内 麻里子 今西 英雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.373-380, 1996-09-15
被引用文献数
5 2

1.<I>Allium unifolium</I>の第1花序の分化は,無加温ハウスでは11月中旬に茎頂で始まり,12月中旬には小花原基形成期,翌年の1月中旬には第1小花が内雄ずい形成期,2月上旬には雌ずい形成期に進み,4月上•中旬に開花した.また,第1花序を着けている茎軸の下位3~4の葉えきのえき芽の茎頂にも花序を分化したが,これは第1花序より約1~2週間遅れて開花した.<BR>2.10月上旬にりん茎を植え付けた後,最低20°Cの加温室で栽培すると,一部の株で開花が見られず,開花しても花茎長が著しく短かったが,無加温室あるいは最低10°Cの加温室で栽培すると,すべての株が正常に開花した.<BR>3.8月1日から9°,15°,20°,25°および30°Cと温度条件を変えて2ヵ月間貯蔵したりん茎の第1花序の発育は低温区ほど進んでいた.これらのりん茎を最低夜温10°Cの加温室で栽培したところ,低温区ほど開花は早くなったが,開花花序数は少なくなった.<BR>4.貯蔵開始を1ヵ月早め7月5日から5°,10°,および15°Cの温度を組み合わせて3ヵ月間貯蔵したところ,貯蔵終了時の花芽の発育段階は10°Cに連続しておいた区が最も進み,開花も早かった.<BR>5.ハウス内で栽培した株から収穫したりん茎を用いて10°Cで3ヵ月間貯蔵したのち,最低夜温を10°Cに維持したハウス内で栽培すると,開花は12月下旬まで早まった.
著者
小西 国義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.44, no.3, pp.286-293, 1975
被引用文献数
3 6

秋季長日条件下で伸長中のキク苗に低温処理を与え, その後種々の温度のもとで栽培して, 生長とくに伸長生長と開花におよぼす影響を調べた.<br>発根した'岡山平和'のさし芽苗を1~3°Cで, 0, 10, 20, 40日間処理して定植し, 摘心ののち短日として日最低夜温を5°, 10°, 15°, 20°Cとして栽培した. その結果は, 低夜温では無低温苗および低温処理期間の短い苗はロゼツト状になつたが, 処理期間の長い苗は比較的によく伸長し, 開花した. 高夜温で栽培した場合は, 低温処理期間の長い苗はもちろん, 無低温苗もよく伸長して開花した.<br>'宇宙船', '玉織姫'について, 1~3°C•40日間の低温処理をして, 無処理苗とともに夜温5°, 10°, 1°5, 20°Cで栽培した結果は'岡山平和'の場合とほぼ同様であつた.<br>これらの結果から, 秋冬季のキクは低温を経験することによつてその後の生長•開花可能な温度範囲が拡大し, より低い温度でもよく開花するようになることが結論できる.
著者
景山 詳弘 小西 国義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.905-911, 1996-03-15
被引用文献数
5 2

切り花ギクの養液栽培法を確立する目的で, 輪ギクタイプの'秀芳の力'を用いて, 窒素施肥基準曲線による培養液管理法を試みた.<BR>1.本実験に用いた窒素施肥基準曲線は, 以前の研究の結果から作成したものであり, 窒素吸収曲線を基礎として, 生体重の増加速度に基づいた生長曲線との関連から, 栄養生長を抑えるように修正したものである (第1図).<BR>2.窒素施肥基準曲線に沿って1週間毎に窒素を施肥した区を1.0倍区とし, この区の施肥量の0.8倍量および0.6倍量を施肥する区を設けた. また, 1週間毎に培養液の窒素濃度を修正して100ppmに維持する区も設けた. いずれの区も窒素以外の肥料要素は別に施肥し, それぞれ不足しないような濃度に保った.<BR>3.'秀芳の力'を7月4日に挿し芽し, 湛液式の水耕装置に植え付け2本仕立てとして栽培し, 11月9日に収穫した. 栽培はビニルハウス内で行い, 日最低気温16°C以上とした.<BR>4.キクは1.0倍区と0.8倍区で正常に生育開花し,商品価値のある切り花となった. 0.6倍区では生育が悪く貧弱な切り花となった. 100ppm維持区では, 栄養生長がおう盛になりすぎ, 花と葉のバランスが悪くなって, 切り花品質が低下した.<BR>5.窒素施肥基準曲線に基づいて施肥した3区では,窒素はそれぞれの施肥直後の2~3日以内ですべて吸収されたので, この方法は一種の窒素供給制限法である. また, 100ppm維持区の総窒素吸収量は, 1.0倍区の総吸収量の1.41倍であった.<BR>6.この施肥曲線に沿って施肥していく場合, 窒素施肥量を100とした窒素以外の多量要素の施肥量の割合はP=10~15, K=100~120, Ca=35~40, Mg=8~10が適当である.<BR>特許出願この論文の一部は「切り花ギクの養液栽培方法」として巴バルブ株式会社 (大阪府) から平成5年12月18日に特許出願されている.
著者
細木 高志 木村 大輔 長谷川 隆一 長廻 智美 西本 香織 太田 勝巳 杉山 万里 春木 和久
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.393-400, 1997-09-15
被引用文献数
5 5

RAPD法により14のボタン (<I>Paeonia suffruticosa</I>)品種, キボタン (<I>P. lutea</I>) およびシャクヤク (<I>P. lac-tiflora</I>) 品種および種間交雑5品種の識別を試みた.40種の10merのプライマーを試験した結果, 11種で多型マーカーとして有効な108本のDNAバンドを増幅した. これらのマーカーにより21種•品種が区別でき相互間の類似値が求められた.<BR>その結果, ボタン品種はシャクヤク品種やキボタンと明らかに区別できた. またボタンとキボタンとの種間交雑品種である'金閣', '金鶏', '金晃'およびシャクヤク×'金晃'の'オリエンタルゴールド'の類似値はボタン品種との中間の値を示した. ボタン品種の内, 江戸時代に静岡県から島根県に導入された獅子頭は, 明治時代に大阪府を起源とする他の品種と比べて類似値が低かった. 親子関係にあるボタン品種は両親または片親と高い類似値を示した. RAPDによる品種の類似関係は形態による分類と部分的に一致したが, 花弁のアントシアニジンによる分類とは一致しなかった.
著者
古平 栄一 森 源治郎 今西 英雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.4, pp.891-897, 1996-03-15
被引用文献数
6 2

アリウム•コワニーの無加温ハウス栽培における生育, 開花習性を明らかにするとともに, 開花に及ぼすりん茎の貯蔵温度および栽培温度の影響について調べた.<BR>りん茎を入手した6月中旬には, りん茎内に3枚の未展開葉が形成されており, 生長点は7月上旬までに葉を1枚分化した後, 葉の分化を停止した. 茎頂は9月中旬に生殖生長に移行し, 第1花序を分化した. この花序は, 10月上旬に小花原基形成期, 11月中旬に外•内雄ずい形成期, 12月上旬に雌ずい形成期に達し, 翌年の2月中旬に開花した. また, 第2花序は, 10月中旬に茎軸の最上位葉の葉えきから仮軸分枝した茎軸の茎頂に分化し, 翌年の3月上旬に開花した.<BR>7月1日から10月1日まで温度条件を15°, 20°,25°および30°Cと変えて乾燥貯蔵すると, りん茎の第1花序の発育は15°Cおよび20°Cで最も促され,25°Cではこれらよりやや遅れた. また, 8月1日から9°, 15°, 20°, 25°および30°Cで貯蔵した場合にも同様の傾向が認められた. 7月1日, 8月1日両貯蔵開始処理ともに, 30°C区では過半数のりん茎が花芽未分化にとどまった.<BR>これら種々の温度区で貯蔵したりん茎を10月1日に植え付け, 最低10°Cの加温室で栽培した結果, 7月1日貯蔵開始処理では, 20°, 25°および30°Cの各温度区では大部分のりん茎が開花したが, 15°C区では開花率が低かった. しかし, 8月1日貯蔵開始処理では9°~30°Cの温度下で開花が認められた. 両貯蔵開始処理ともに, 貯蔵温度が低い区ほど開花が促進されたが, 1りん茎当たりの開花花序数は減少した.<BR>栽培時の夜温20°C区では, 10°C区に比べて第1花序, 第2花序いずれも開花期は促進されたが, 開花時の花茎が短く, 小花数が少なくなった.
著者
長谷川 耕二郎 中島 芳和
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.291-299, 1991
被引用文献数
4 6

着花の少ない'西条'と'前川次郎'の7年生樹を供試し, 側枝を針金の被覆線で結縛処理を行い, 結実や果実品質ならびに翌春の着花促進に及ぼす影響について調査した. なお, 合成サイトカイニンであるKT-30 {N(2一クロルー4ピリジル) -N-フェニルウレア} を夏季に芽に塗布し, 翌春の着花に及ぼす影響についても併せて調査した.<BR>1.6月10日の側枝結縛処理により, 当年の'西条'および'前川次郎'の結実は顕著に増加した. 6月10日および7月1日の処理により, '西条'では果実が大きくなり着色が増進した. また'前川次郎'では果実の着色が増進するとともに糖度が高くなった.<BR>2.6月10日の側枝結縛処理により, 翌春の着花数が'西条'では約3倍, '前川次郎'では約10倍となった.7月1日の処理区でも着花が増加したが6月10日処理区に比べると少なかった. 6月10日結縛処理により当年の'西条'の夏枝の発生が抑制され, また6月10日および7月1日の結縛処理により'西条'および'前川次郎'の翌春の新しょう生長が抑制された.<BR>3.結縛処理により, '西条'および'前川次郎'の当年ならびに翌年の収量が増加した, 特に着果数の多かった6月10日結縛区の増収効果がいちじるしかった.<BR>4.KT-30の芽への塗布処理では, 翌春における着花数が増加することはなく, 対照区と同程度であった.
著者
寧 波 久保 康隆 稲葉 昭次 中村 怜之輔
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.703-710, 1991
被引用文献数
2 4

チュウゴクナシ'鴨梨'の樹上および収穫後の成熟特性をニホンナシ'二十世紀'およびセイヨウナシ'ラ•フランス'と対比しながら調べた.<BR>呼吸活性は3種類とも樹上成熟に伴って増加した.収穫後の呼吸活性は'鴨梨'と'ラ•フランス'では, 収穫熟度にかかわらずクライマクテリック•パターンを示したが, '二十世紀'では, ノンクライマクテリック•パターンであった. 樹上成熟果のエチレン生成は, '鴨梨'では収穫期における落果直前, 'ラ•フランス'では成熟期の後半頃に始まったが, '二十世紀'では過熟になってもみられなかった. 収穫果実のエチレン生成は, '鴨梨'と'ラ•フランス'では明確に認められ, ACC含量とEFE活性もエチレン生成と同調した変化様相を示した. 特に'鴨梨'のエチレン生成量は極めて多く, 最も多量の場合には380nl/g•hrにも達した. また, 収穫時期が早いほど追熟中のエチレン生成量も多い傾向があった.一方, '二十世紀'では樹上ではある程度のACC含量の蓄積がみられたが, EFE活性が低く, エチレン生成は樹上でも収穫後もほとんどみられなかった.<BR>樹上成熟に伴うデンプンの急減と糖含量の増加は3種類ともみられたが, 糖組成は異なり, '鴨梨'と'ラ•フランスは樹上成熟期間を通じて終始果糖含量が最も高かったが, '二十世紀'ではショ糖含量が成熟期間中急増して最も高くなった.<BR>樹上成熟に伴う有機酸含量は, 'ラ•フランス'でリンゴ酸が急増したこと以外にはあまり変化がなかった. 収穫後は, '鴨梨'ではリンゴ酸含量が追熟中一度増加した後減少したが, 'ラ•フランス'では漸減傾向を示した.<BR>果肉硬度はいずれの品種とも樹上では減少し, 特に'ラ•フランス'では著しかった. 収穫後は, '鴨梨'では追熟中に果肉硬度はほとんど減少せず, 収穫時点の硬度を保持していたが, '二十世紀'では漸減し, 'ラ•フランス'では追熟とともに急減した.<BR>以上を総合すると'鴨梨'果実の成熟特性は多量のエチレンを生成するにもかかわらず, 果肉硬度の保持が良好であるという点で, 特徴づけられる.
著者
月 徳 今西 英雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.662-667, 1989
被引用文献数
1

1. ダッチアイリス品種'ブルー•マジック'を供試し, エチレンの処理時期を変えて, りん茎の発芽と開花に対する効果を調べた.<br>2. 6月中旬から30°Cで貯蔵した7及び9cm球を16週まで4週ごとにとりだし, エチレン処理後20°Cで置床し発芽試験を行うとともに, 低温処理 (9°C, 9週間)後20°Cで栽培して開花調査を行った. その結果, エチレンによる発芽促進効果は貯蔵4週後までのりん茎でわずかに認められるのみであったのに対し, 7cm球では4週間以上貯蔵したもので, 9cm球では貯蔵期間の長さに関係なくエチレン処理によりほとんどが開花した.<br>3. 5月中旬から経時的に株を掘り上げ, 2週間乾燥した後のりん茎に対し, エチレン処理の効果を調べた結果, りん茎が休眠中であった早期の掘り上げ球では, エチレンはわずかに発芽促進効果を示したが, 開花率を高める効果をほとんど示さず, りん茎の休眠が浅くなった遅い時期の掘り上げ球では, 開花率を高める顕著な効果を示した.<br>4. 地上部が黄変を開始した5月29日の早掘り球と適期の6月26日掘り球について, 掘り上げ後の室温貯蔵期間を変え, エチレンの効果をみた. 5月29日掘り球では室温貯蔵4週後のエチレン処理により花芽分化率は100%になったが, 6月26日掘り球では翌日のエチレン処理でも95%に達した.<br>5. 以上の結果, エチレンは休眠打破よりも, むしろ開花率を高めるのに顕著な効果を示すことが分った. すなわち, りん茎は高温を受けて休眠が打破され, さらにエチレン処理を受けて速やかに成熟期に移行し, 低温処理後花芽を形成するものと思われる.
著者
山川 祥秀
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.470-478, 1988
被引用文献数
1

ブドウ'シャルドンネ'及び'カベルネ•ソービニオン'のウイルスフリー樹とウイルス汚染樹の果粒の重さと大きさ, 果汁成分の経時的変化を, 1983年 (4年生樹) と1984年 (5年生樹) の2か年にわたり比較調査し, 次の結果を得た.<br>1. ウイルスフリー樹及びウイルス汚染樹の果粒は,'シャルドンネ'では9月中旬最大に達し, その値は両年ともほぼ同じで, 果粒重は2.0g, 果粒径は13.8mmであった。果房重はウイルスフリー樹では着粒数が多いため220g, ウイルス汚染樹は160gであった. 'カベルネ•ソービニオン'では10月初旬最大に達し, その値は両年ともほぼ同じで, 果粒重は1.6g, 果粒径は12.2mmで, 果房重はウイルスフリー樹は230g, ウイルス汚染樹は170gであった.<br>2. 果汁糖度, グルコース及びフラクトース含量は,'シャルドンネ'では9月下旬最大に達し, 1984年のウイルスフリー樹で22.5度 (グルコース10.6%, フラクトース11.0%) で, ウイルス汚染樹で17.2度 (グルコース8.0%, フラクトース8.3%) であった. 'カベルネ•ソービニオン'では10月初旬最大に達し, 1984年のウイルスフリー樹で21.0度 (グルコース9.8%, フラクトース10.2%) で, ウイルス汚染樹で17.2度 (グルコース7.8%, フラクトース8.1%) であった.<br>3. 1984年の完熟期における果汁酸度, 酒石酸及びリンゴ酸含量は, 'シャルドンネ'ではウイルスフリー樹0.76g/100ml (酒石酸0.60%, リンゴ酸0.30%), ウイルス汚染樹0.60g/100ml (酒石酸0.45%, リンゴ酸0.35%) であった. 'カベルネ•ソービニオン'ではウイルスフリー樹0.68g/100ml (酒石酸0.45%, リンゴ酸0.30%), ウイルス汚染樹0.78g/100ml (酒石酸0.60%, リンゴ酸0.35%) であった.<br>4. 'シャルドンネ'について, ウイルスフリー樹で造ったワインは'シャルドンネ'らしい品種特有の香りが強く, 酸味も適当で全体に調和がとれて高品質であった. 'カベルネ•ソービニオン'について, ウイルスフリー樹で造った1984年産ワインは'カベルネ•ソービニオン'らしい品種特有の香りが強く, 調和のとれた上品さを持ち, 酸味と渋味も充分あり高品質が期待できた.
著者
赤尾 勝一郎 久保田 収治 林田 至人
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.31-38, 1978
被引用文献数
6 13

春季新生器官の形成に果す樹体内貯蔵窒素としての秋肥施用窒素の役割を明らかにするために, ポット植11年生結実樹2本を供試し, 1974年11月18日もしくは1975年3月1日に <sup>15</sup>N (10atom%) 標識の硝酸カルシウに (Nとして11.4g) を施用したのち, 春葉の展葉のほぼ完了した6月中旬まで樹体内における標識窒素の追跡を行ない, 次のような結果を得た.<br>1. 収穫前21日に与えた秋肥窒素の収穫時の結果枝葉, 未結果枝葉, 果皮あるいは果肉中の全窒素に占める割合は 11.5%, 11.3%, 2.6%, 3.3% であり, 果実に流入する秋肥窒素の量は葉に比べて, かなり低いといえた.<br>2. 掘り上げ解体時までの施用窒素の吸収率は秋肥41.4%, 春肥 25.1% であった.<br>3. 掘り上げ解体時における <sup>15</sup>N 寄与率から春季新生器官に含まれる全窒素量のうち, 約 28% は秋肥窒素に由来し, 約 17% は春肥窒素に由来したものであることが明らかとなった.<br>4. 春季新生器官の形成に供せられた窒素のうち, 約30% は冬期間1年葉に貯えられていたものと推定された.<br>5. 2月26日から5月15日までの間, 1年葉中の全窒素含有率はほとんど変化しないのに対して, <sup>15</sup>N 濃度は確実に上昇しており, このことは冬期間, 1年葉以外の器官に貯えられていた窒素が春季に1年葉を経由して転流したためと理解され, その量は春季新生器官中に含まれる全窒素量の約 25% に相当した.
著者
黒井 伊作
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.301-306, 1985
被引用文献数
5 11

ブドウ'巨峰'のガラス室栽植樹並びに1芽挿しを用い, 石灰窒素 (CaCN<sub>2</sub>として55%含有) の20%温水浸出液及びH<sub>2</sub>CN<sub>2</sub>塗布処理が芽の休眠打破に及ぼす効果を試験した.<br>CaCN<sub>2</sub>をカラス室栽植樹に塗布した春先の発芽状況は12月, 1月, 2月の各処理区で, それぞれ16日, 9日, 5日の発芽促進となり, 休眠の深い時期の処理で発芽促進効果が高く, これまでの実験結果と一致した. 3% H<sub>2</sub>CN<sub>2</sub>処理区では同じ時期の処理で, それぞれ15日, 7日, 4日の発芽促進となり, CaCN<sub>2</sub>区と同じ傾向の休眠打破効果が認められた.<br>一方, 切り枝の挿し木実験では, 12月中の置床でCaCN<sub>2</sub>並びに0.5%及び1% H<sub>2</sub>CN<sub>2</sub>処理区は2~4日の発芽促進であった. 挿し木における発芽促進程度は栽植樹に比較してはるかに低く, また, 挿し木では2% H<sub>2</sub>CN<sub>2</sub>以上の濃度では薬害による枯死芽がみられ, 有効濃度は栽植樹の1/3~1/6でよかった. これらのことは, 切り枝による強い創傷効果が休眠を浅くしたためと考えられた.切り枝の休眠を完了した2月下旬では, CaCN<sub>2</sub>及び1%H<sub>2</sub>CN<sub>2</sub>処理区においても薬害が発生した.<br>本実験の結果からH<sub>2</sub>CN<sub>2</sub>はブドウ'巨峰'の休眠打破にCaCN<sub>2</sub>と同様な効果があった. このことは石灰窒素水浸出液の休眠打破作用の主体が, CaCN<sub>2</sub>の部分的加水分解によって活性型のH<sub>2</sub>NCNを生じ, cyanide ion(CN<sup>-</sup>)として作用することを示唆する.
著者
細木 高志 浜田 守彦 神門 卓巳 森脇 良二 稲葉 久仁雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.395-403, 1991
被引用文献数
5 24

日本, 中国および米国•仏国のボタンの花弁色素組成を調べ, 各国の品種が花色の育種の面でどのように異なっているかを比較検討した.<BR>調査したすべての日本品種 (<I>P. suffruticosa</I>) の花色はCIE座標軸上の赤と青の範囲内に入った. 紅紫色品種は赤味•青味とも高い値を示した. 桃色と白色品種は赤味•青味とも低い値となった. 暗赤色と紅紫色の品種は花弁に多量のアントシアニンを含んでいたが,桃色と白色品種は逆に少なかった. したがって花弁の明度と花弁のアントシアニン含量には高い負の相関がみられた. すべての日本の暗赤色または紅紫色品種は,6種類のアントシアニン (peonidin 3,5-diglucoside/peonidin 3-glucoside, cyanidin 3, 5-diglucoside/cyanidin 3-glucoside, pelargonidin 3,5-diglucoside/pelargonidin 3-glucoside) を含んでいた. 鮮紅色の品種はCy3G5G/Cy3Gを欠いていたが, 大量のPg3G5G/Pg3Gを含んでいた. いくつかの桃色品種はCy3G5G/Cy3GおよびPn3GとPg3Gを欠いていた.<BR>中国品種 (<I>P. suffruticosa</I> と<I>P. suffruticosa</I> var. <I>spontanea</I>) は一般に6種類のアントシアニンのうちPg3Gを欠いており, このことが鮮紅色の品種の少ないことと関連しているようであった.<BR>米国•仏国の雑種品種 (<I>P. suffruticosa</I>×<I>P. lutea</I> or <I>P. delavayi</I>) は, 6種類のアントシアニンのうちPg3GとPg3G5Gを欠いており, このことが深紅色や緋色品種の出現に関連しているようであった. また鮮黄色のchalconeが<I>P. lutea</I>や<I>P. delavayi</I> から導入され, 花弁内でpeonidin や cyanidin と混合し, オレンジ色やクリ色等, ユニークな花色を発現させる要因となっていた.
著者
井上 宏
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.75-82, 1989
被引用文献数
3 10

カラタチ台ウンシュウミカン('興津早生'または'宮川早生') の1~3年生樹 (素焼鉢またはワグナーポット植え) を環境制御室の15,20,25及び30°C室に適宜,搬入し, 昼夜恒温の条件下で栽培し, 新梢上の花芽の分化と発達の温度条件を, 露地においた個体との比較で観察した.<br>1. 1年生樹を, 3月1日または4月1日から各温度室に搬入して, 地上部の生長周期を調査した. 露地区では春枝の伸長停止後, 30~50日して, 春枝上に夏枝が発生した. 温度処理区では高温区ほど春枝の発芽までの日数が短く, その伸長期間も短く, また夏枝発生までの伸長停止期間も短くなった. ただし, 15°C区では春枝上に夏枝は発生せず, 直花が多数に発生した. 20°C区でも夏枝の発生はごくわずかで, 有葉花を含む花蕾が多発した. 一方, 25°C区と30°C区では夏枝が盛んに伸長したが, 花蕾の発生は認められなかった.<br>2. 1年生樹を, 春枝が伸長停止し, 充実を開始した6月中旬より20°Cまたは15°C室におく期間を種々変え, その後25°C室に移して花蕾発生の有無を観察した.15°C室に2か月, 20°C室に2.5か月以上おいた個体で発蕾したが, 低温の室におくほど, また長期間おくほど発蕾数が多くなり, 直花の割合は高くなった. 20°Cまたは15°C室に開花までおいたものでは, 大きな偏平な子房を示したが, 25°C室に早く移した個体ほど腰高の子房となり, 小さかった.<br>3. 3年生樹を花芽の形態的分化期(3月20日) 及びその前後1か月に15, 20, 25°C室に搬入して, 花芽の分化と発達の状態を観察した. 形態的分化1か月前でさえも, 各温度室で極めて短期間 (25°C室で8日で発蕾) に花器が完成され, 開花に至ることを認めた. 開花期間も高温におかれるほど短くなった.<br>4. 2年生または3年生樹を9月下旬から各月に2回, 20°Cまたは25°C室に搬入して, 発蕾及び開花の状況を調査した. 25°C区では10月下旬搬入区から花蕾が発生して開花したが, 20°C区では11月上旬以前には花蕾が極端に少なく, 開花までに落下した.
著者
尾形 凡生 蓮川 博之 塩崎 修志 堀内 昭作 河瀬 憲次 岩垣 功 奥田 均
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.245-253, 1996-09-15
被引用文献数
3 10

トリアゾール系ジベレリン(GA)生合成阻害物質によるウンシュウミカンの着花促進効果を生理的に説明するため,栄養器官内のGA<SUB>1</SUB>,GA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性の季節的消長ならびにパクロブトラゾール処理および収穫時期がウンシュウミカンの内生GA活性に及ほす影響について調査した.<BR>1,発育枝の葉中におけるGA<SUB>1</SUB>活性は,7月26日から9月26日にかけて高まり,翌年の1月28日にかけて減少した後,3月24日には再び高くなった.GA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性は,これとはほぼ逆の変化を示し,9月26日に最も低く,GA<SUB>20</SUB>では11月29日にGA<SUB>19</SUB>様物質では1月28日に最も高くなった.腋芽中の各GAの動態は葉とほぼ一致した.<BR>2,2月1日にパクロブトラゾール1,000ppm溶液の葉面散布を行ったところ,着花数が増加するとともに,3,4月における葉中のGA<SUB>20</SUB>およびGA<SUB>19</SUB>様活性が低下した.しかし,GA<SUB>1</SUB>活性には影響が認められなかった.<BR>3,ウンシュウミカン成木に対して,10月中旬に果実を全収穫する早採り区と,その2か月後に収穫する晩採り区を設けたところ,早採り区の方が晩採り区に比べて,翌春の着花量が多かった.処理樹の内生GA活性は,早採り区の11月末および1月末におけるGA<SUB>20</SUB>様活性が晩採り区に比べ低くなった.<BR>以上の結果より,パクロブトラゾール処理は,活性型GAではなくその前駆物質の含量を低下させるが,これは着花数の多い早期収穫樹の内生GAの反応と一致しており,パクロブトラゾールの着花促進効果を裏付けるものと考えられる.
著者
生山 厳 小林 省蔵
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.89-93, 1993
被引用文献数
3 32

単胚性二倍体のカンキツ,クレメンティン,'リー','清見'および'安芸津10号'('カラ'×ポンカン)を種子親とし,二倍体ナルト×四倍体フナドコより得た三倍体実生を花粉親として交配を行った.交配果は成熟時に収穫し,各果実より取り出した完全種子を試験に供した.<BR>完全種子より得た実生は大部分が二倍体で,その他異数体や一部三倍体および四倍体も認められたが,クレメンティンを種子親にしたものから2個体,'リー'を種子親にしたものから1個体の半数体が得られた.半数体の胚は,二倍体の胚と比較して大きさにほとんど差がなく,発根も正常に起こり,発根後の直根の伸びも順調であった.しかし,土に移植した後は成育は著しく劣った.これら半数体について核リボソームRNA遺伝子および葉緑体DNAの分析を行い,その起源を推定した.その結果,いずれの個体についても種子親に特異的なバンドが認められたが,花粉親に特異的なバンドは認められず,これらはいずれも種子親起源の半数体であると考えられた.
著者
竹田 義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.615-623, 1996-12-15
被引用文献数
1 3

主に切り花として利用される種子繁殖性ダイアンサスであるミカドナデシコ,ヒゲナデシコ,カワラナデシコ,およびハマナデシコの開花に対する低温と日長の影響を調べた.<BR>1.ミカドナデシコ'ミスビワコ'とヒゲナデシコ'黒川早生'は抽だい,開花に対して低温を必要とし,戸外の自然条件では12月中旬までの低温遭遇によって低温要求が満たされた.最低気温7°Cは花芽形成に有効な温度であったが,14°Cは低温として感応しにくい温度であった.長日は,低温遭遇した株の抽だいと開花を促進したが,低温を受けていない株に対しては栄養生長を促した.<BR>ミカドナデシコ'ミスビワコ'とヒゲナデシコ'黒川早生'は,吸水種子の段階では低温に反応せず,本葉が9~10節展開した苗齢に達した段階で低温に反応する緑植物春化であった.<BR>ヒゲナデシコの低温要求性には明確な品種間差異があり,5°Cの低温処理で,抽だい率が100%に達するための処理期間は0~9週間であった.<BR>2.カワラナデシコ'改良河原撫子赤色'とハマナデシコ慶紅撫子高性赤色'の開花には,低温要求性がなく,日長の影響も小さかった.両種の生育,開花を規定する主たる要因は温度であり,高温下では短期間に生殖生長に移行した.
著者
太田 弘一 森岡 公一 山本 幸男
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.1, pp.125-132, 1991
被引用文献数
5 35

ファレノプシスは近年生産の伸びが大きい花卉であり, その好適な栽培条件の設定のために研究が進められている. ファレノプシスの花序は低温条件によって誘導されることが知られており (17), 山上げ栽培や人工低温処理を行うことによって, 早期出荷が行われている. また, 温度処理の際の, 株の充実状態や光•変温条件などの環境要因も花序形成に影響することが知られている (3,8, 12,14, 17,18, 19).<BR>一方, ファレノプシスはCAM (Crassulacean acid metabolism) 植物として知られている (1,7). CAM植物は夜間に吸収したCO2を有機酸の形にして細胞の液胞中に蓄積し, 昼間にそれを分解して, 光エネルギーを利用してでんぷん合成を行うという特徴的な光合成を行う. この夜間と昼間を通した, CO2吸収からでんぷん合成に至る過程をCAM型光合成と呼ぶ (13, 14).典型的なCAM型光合成のCO2吸収の日周変動パターンは, 夜間の高い吸収 (phase I), それに続く光が当たった直後の高い吸収 (phase II) とその後の急激な減少およびCO2吸収がほとんど見られない期間 (phase III), そして, 夕方に再び低い吸収が見られる (phase IV), という四つの相に分けられる (13). そして, この過程を通して, 夜間に気孔を開き, 蒸散の多い昼間には気孔を閉じているために, CAM植物は強い乾燥耐性を獲得している (6).<BR>CAM植物には, 生育条件によってC3型光合成とCAM型光合成との間で変動が見られるfacultative-CAM plantと, 生育条件にかかわらずCAM型光合成を行うobligate-CAM plantがある (13). さらに,いずれのCAM植物も, 水分, 昼夜温, 光強度, 日長などの環境条件や葉齢, 窒素栄養条件によってCAM型光合成が影響を受けることが知られている (6, 11,13, 14).したがって, ファレノプシスのCAM型光合成も, これらの要因によって変動し, それが生育および花序形成になんらかの影響を及ぼすことが考えられる.<BR>本研究は, 上述の要因のうちで生育と密接に関連した外的要因の水分, 温度, 光の3条件および内的要因の葉齢と花序形成の有無に視点を当て, それらによってファレノプシスのCAM型光合成がどのような影響を受けるかを明らかにし, ファレノプシスの好適な栽培条件設定のための基礎的知見を得ることを目的として行った.
著者
樋口 幸男 北島 章好 荻原 勲 箱田 直紀 志村 勲
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.744-748, 2000-11-15
被引用文献数
2 1

異なる温度条件下におけるプリムラ・オブコニカのプリミン分泌状況を調査し, 幼苗期におけるプリミン検定の可能性について検討した.1. 'Crystal Apricot'では子葉展開期からプリミンの分泌が認められたが, フリー品種の'Libre Light Salmon'では認められなかった.2. 'Crystal Apricot'を低温(昼温20℃, 夜温13℃)および高温(昼温30℃, 夜温23℃)下で育苗し, 個体別および葉位別にプリミン分泌率を調査した.低温下で育苗した場合は, 第1葉展開期にはすべての個体がプリミンを分泌していた.さらに, 低温下では下位葉のプリミン分泌率も高く維持された.一方, 高温下で育苗したところ, プリミン分泌の開始が遅れ, 一度分泌したプリミンの消失も早かった.また, 育苗温度に関わらず最上位葉の一つ下位の葉においてプリミン分泌率が高かった.3. プリミンを保有している'Crystal'シリーズ4品種について葉位別のプリミン分泌率を調査した.プリミン分泌の早晩には, 品種間差異が認められたが, 各品種とも低温下では第1葉展開期の子葉において, また, 高温下では第5葉展開期の第4葉においてプリミン分泌率が100%であった.4. 幼苗期に毛じの形態からプリミン分泌の有無を判定するには, 低温下では第1葉展開期の子葉を, 高温下では第5葉展開期の第4葉を調査すればよいことが明らかとなった.
著者
奥田 均 野田 勝二 平林 利郎 米本 仁己
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.74, no.4, pp.342-344, 2005-07-15
参考文献数
5
被引用文献数
4

成熟期の異なる13品種のウンシュウミカン (<i>Citrus unshiu</i> M.) を対象に芽の休眠 (paradormancy) の深さを枝挿し法により比較した. ウンシュウミカンの芽の休眠は9月下旬を中心に9月から10月にかけて深かった. そこで, 9月下旬にDTB (萌芽所要日数) を指標にして休眠の深さを比較したところ, 11月中旬までに果実が成熟する早生・極早生種および&lsquo;久能温州&rsquo;は21日以内に萌芽することはなかった. それ以降に成熟する品種は21日以内に萌芽し, DTBは成熟期が遅い品種ほど短かった. これらのことによりウンシュウミカンの芽の休眠には品種間差が存在し, それは果実の成熟期と関連することが示唆された.
著者
佐藤 茂 和気 慶介
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.173-177, 2006-03-15
参考文献数
17
被引用文献数
8

カーネーションの ACC 合成酵素遺伝子 <i>DC-ACS1</i> は,花の老化時に雌ずいで少量発現し,花弁で大量に発現する.カーネーションの花の老化時には,雌ずいで生成したエチレンが花弁に作用して <i>DC-ACS1</i> と <i>DC-ACO1</i>(ACC 酸化酵素遺伝子)の発現を誘導し,花弁から大量のエチレンが生成する.<i>DC-ACS1</i> cDNA を導入した遺伝子組換えカーネーション(16-0-66系統)では,エチレン処理によって <i>DC-ACO1</i> 転写産物が雌ずいと花弁の両方で増加したが,<i>DC-ACS1</i> 転写産物は検出されず導入遺伝子による内生 <i>DC-ACS1</i> 遺伝子の発現抑制(コサプレッション)が推測された.他方,16-0-66 系統では花の老化時にエチレンが生成せず,同時に,雌ずいと花弁で <i>DC-ACS1</i> 転写産物が検出されなかった.また,<i>DC-ACO1</i> 転写産物は,雌ずいで検出されたが花弁では検出されなかった.これらの知見から,カーネーション花弁の老化時のエチレン生成において,雌ずいにおける <i>DC-ACS1</i> の発現が重要な役割を果たしていることが推測された.<br>