著者
板村 裕之 福嶋 忠昭 北村 利夫 原田 久 平 智 高橋 芳浩
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.62, no.4, pp.867-875, 1994
被引用文献数
3 2

カキ平核無の果実の脱渋後の軟化と樹体条件, とくに葉との関連について調べた.<BR>1.樹勢が弱く落葉時期が早い樹と, 9月以降にビニール被覆を行って, 落葉時期を遅らせた樹と生育中庸な対照区の樹からそれぞれ果実を採取し, アルコール処理を行った後の20°C条件下における果実の軟化を比較した. その結果, 早期落葉樹からの果実は対照区の果実に比べて, 軟化が早く, 逆に落葉が遅れた区の果実は軟化するのが遅かった.<BR>2.7月21日に摘葉処理を行い, 9月11日, 9月30日, ならびに10月15日にそれぞれ果実を採取して, アルコール脱渋後の軟化を調べた. いずれの採取時期の果実でも, 摘葉処理は脱渋後の果実のエチレン生成を促進した. さらに, 9月30日および10月15日採取の果実では摘葉処理区の果実の軟化は無処理区(対照区) に比べて7~10日促進された.<BR>3.9月7日に50ppm GA散布処理を行い, 9月15日, 9月25日, ならびに10月12日に果実を採取して, 脱渋処理を行った. いずれの採取時期の果実でも, 脱渋後の果実のエチレン生成量はGA処理の影響をまったく受けなかった. しかし, 10月12日採取果ではGA処理は, 明らかに果実の軟化を抑制した.<BR>4.10月20日に摘葉処理を行った区と, 摘葉処理の4日前に50ppm GAを前処理した区の果実を, 11月2日に採取して脱渋処理した. 脱渋後の果実のエチレン生成量は, 摘葉処理やGA前処理の影響をほとんど受けなかったものの, 摘葉処理区は果実の軟化を促進した. また, この軟化促進効果はGA前処理によってほぼ完全に打ち消された.<BR>5.7月21日に摘葉した区と対照区の果実を11月15日に採取し, 内生のGA様活性を比較した. 対照区では, 比較的高いGA様活性が認められたのに対して, 摘葉区では抑制分画は認められたが, GA様活性はほとんど認められなかった.<BR>以上の結果から, 葉が樹体に着生していることが,採取脱渋後の果実のエチレン生成を抑制する効果があるものと考えられた. また, 葉のエチレン生成抑制効果はGA以外のものによっていると思われた. さらに,成熟果においてはエチレン生成から軟化にいたる一連の反応のどこかを葉由来のGAが阻害している可能性が示唆された.
著者
宍戸 良洋 尹 千鍾 湯橋 勤 施山 紀男 今田 成雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.771-779, 1991
被引用文献数
4 9

トマトにおける葉の光合成速度および転流•分配の経時的変化と葉の物質生産に対する寄与度について検討するため<sup>14</sup>CO<sub>2</sub>を用いて実験を行った.<br>1). 第3葉と第7葉 (花房直下葉) の光合成速度は若い葉で高く, 発育するに従って低下した. しかしながら, 1葉当たりの光合成量は葉面積の増加度の高い間は増加し, 葉面積の増加が鈍化すると減少し, 葉の完全展開直前に最大になった.<br>2). 各葉の基本的なソース•シンク関係はその葉の近くの非光合成器官 (根や果実) をメインのシンクとし, 作物の生育ステージごとに, シンク間の発育程度の違いによるシンク間の競合と位置関係によって光合成産物の分配パターンは決定されることが示唆された.<br>3). 全葉の全光合成量からシンクにおける物質生産に対する各葉の寄与度を計算し, 果実では2~4枚の葉で果実の物質生産の60~80%を賄っていることならびに1枚の葉の最大限の寄与度は30%前後であるものと推定した.<br>4). 葉はその葉齢や個体のステージによってその光合成能および各シンクに対する寄与度を変化させていくこと, その変化の最大の要因は果実の肥大量および速度とみられ, そのシンクのメインのソース葉の光合成量と転流率のピークもそのシンクの旺盛な生長時に一致するものと考えれる.
著者
邨田 卓夫 山脇 和樹
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.723-729, 1989
被引用文献数
4

予措乾燥の効果について明らかにする目的で, 10種類のカンキツ果実を異なった湿度下で予措乾燥し, これらの果実を5°Cに貯蔵し, 予措乾燥中及び貯蔵中の果実の呼吸の変化を調べた.<br>1. 果実の目減りは, 低湿乾燥区 (64%RH) に比べて高湿区 (92%RH) は小さかったが, 同じ低湿乾燥区でもカンキツの種領によって目減りの程度が異なり, ハッサク, 川野なつだいだいでは目減りが小さく, ポンカン, イヨカン, マーコットでは大きかった.<br>2. 低湿乾燥区の果実の呼吸は高湿区に比べて予措乾燥期間を通じて下回る傾向を示した. 両区間の呼吸の差が統計的に明確なものはハッサク, 川野なつだいだい,サンボウカン, セミノール, 森田ネーブルオレンジ, 宮内イヨ, 太田ポンカンであった. これに対しマーコット, ミネオラ, 柳澄では両区間の差が有意でなかった.<br>3. 予措乾燥終了時の果実の乾燥の度合と呼吸量の間には相関関係が認められ, 一般に目減りが大きい果実ほど呼吸量が小さい傾向を示した. 果実重量の変化と呼吸量の間の相関係数 (r) は, セミノール;0.902, 川野なっだいだい; 0.819, 宮内イヨ; 0.748, ハッサク;0.555, 森田ネーブルオレンジ; 0.471, 太田ポンカン;0.430, サンボウカン; 0.420, マーコット; 0.362, であった. 柳橙とミネオラでは相関関係が認められなかった.<br>4. 5°C, 88±5% RHで本貯蔵中の果実の呼吸は太田ポンカン, 森田ネーブルオレンジ, ハッサク, 川野なつだいだい, サンボウカン, ミネオラ, 柳橙では予措乾燥効果が認められ, 低湿乾燥区の果実の呼吸は高湿区を下回った. 宮内イヨカン, マーコット, セミノールではその効果が明確でなかった.<br>以上の結果から, 中晩生カンキツの貯蔵に適当な予措乾燥が有効であると推論した.
著者
竹田 義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.359-366, 1995-09-15
被引用文献数
9 5

1. 冷蔵庫を利用したロゼット苗の低温処理では, ロゼット打破の効果は10°Cが最も高く, 5~6週間処理した苗を用いることによって冬季に開花させることが可能であった.<BR>2. 暗黒条件では低温処理期間が3週間を超えると枯死苗の発生が増加したが, 白色蛍光灯を用いて低温処理中の苗に410lx程度の照明を行うことにより, 枯死苗の発生を防ぐことができた.<BR>3. 極早生品種の'若紫'と晩生品種の'フレッシュホワイト'では低温要求量にほとんど差がなかった.<BR>4. 10°Cで低温処理した本葉4枚, 6枚, 8枚苗は, 処理期間が5~6週間まで長いほど抽だいが早く, 苗齢による差はなかった. 抽だい時のロゼット節数は苗齢が小さいほど少なかったが, 開花時の節数と草丈および到花日数については一定の傾向は認められなかった.<BR>5. 低温処理によってロゼット打破された'福紫盃'を, 最低気温10°Cで栽培すると開花は促進されず, 最低気温15°Cでも生育は緩慢であった. 最低気温20 °C, 長日条件で開花が著しく促進されたが, 自然日長では抽だい後葉の分化を続けながら節間伸長し, 開花はそれほど促進されなかった.
著者
山木 昭平 森口 卓哉
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.602-607, 1989
被引用文献数
12 33

ニホンナシ果実の糖の蓄積に重要な働きをするNAD<sup>+</sup>依存性ソルビトール脱水素酵素, ソルビトール酸化酵素, ソルビトール-6-P脱水素酵素, NADP<sup>+</sup>依存性ソルビトール脱水素酵素そしてインベルターゼ活性の季節変動と糖の蓄積との関係を検討した. ソルビトールをフルクトースに変換するNAD<sup>+</sup>依存性ソルビトール脱水素酵素がソルビトール関連酵素のなかで, 果実の生長, 成熟過程をとおして最も高い活性を示した. その活性は6月に上昇し, 果実の肥大に伴って減少し, 果実の成熟とともに再び増加した. この活性変動は未熟果でのフルクトースの蓄積に密接な関連を示し, この酵素はニホンナシ果実の糖の蓄積にたいして重要な役割を果していることが示唆された. ソルビトールをグルコースに変換するソルビトール酸化酵素はNDA<sup>+</sup>依存性ソルビトール脱水素酵素の約10分の1の活性を持ち, 幼果において高い活性を示し, 果実の肥大とともに減少し, その成熟に伴って再び増加した. しかしながらソルビトール-6-P脱水素酵素, NADP<sup>+</sup>ソルビトール脱水素酵素活性はほとんど検知出来なかった. これらのソルビトール関連酵素活性の季節変動に基づいて, 他のバラ科果実のソルビトール代謝と比較しながら, ニホンナシ果実のソルビトールの代謝機構及び糖の蓄積機構を論議した. また酸性インベルターゼ活性はソルビトール関連酵素活性よりもはるかに高く, 糖の転流, 蓄積に対する役割を論議した.
著者
島田 武彦 土師 岳 山口 正己 武田 敏秀 野村 啓一 吉田 雅夫
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.543-551, 1994
被引用文献数
14 20

95種類の10m erのオペロンプライマーを用いて, RAPD分析法により59品種•系統のウメの品種分類を行った. ウメを小梅•台湾梅品種群, 中梅品種群, 大梅品種群, 杏梅品種群に分け, 各々の品種群について分類を行った. 小梅と台湾梅のグループは遺伝的変異が小さく, アンズの形質をほとんど含んでいなかった. 台湾野生梅は中梅品種群とは遠縁で, 明らかに異なっていた. '室谷'と'藤之梅', '小向'と'古城', '鈴木白'と'太平'では相互の識別ができず, これらは異名同品種である可能性が高いと考えられる'豊後'はウメとアンズの雑種であることが証明された. '高田梅'はアンズにかなり近縁であることが確かめられた.RAPD分析法は近縁な品種問でもDNA多型を十分に検出できるので, 従来の方法では識別できなかった異名同品種や同名異品種を識別することも可能であると推察される.<BR>RAPD分析の結果, 実ウメは次の7つのグループに分類できた. 1) 台湾梅品種群, 2) 小梅品種群, 3) 中梅品種群, 4) 大梅 (白花) 品種群, 5) 大梅 (桃花) 品種群, 6) 杏梅品種群, 7) 李梅品種群. 花ウメは実ウメと遺伝的特性は近いものと考えられ, 中梅品種群, 大梅品種群, 杏梅品種群のいずれかに属するものと推察される.
著者
坂本 辰馬 奥地 進
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.39, no.2, pp.107-114, 1970
被引用文献数
2

1. 温州ミカン果汁の酸の変化, とくに集積, 稀しやく, 減少に及ぼす夏秋季の土壌乾湿の影響を解析するため, 早生温州ミカン幼木についてポット試験をおこなつた。<br>2. 結果量が多かつた4年生樹についての8~9月の土壌乾湿実験では, この期間における20日ないし30日間の乾燥によつて, 果肉の肥大生長が抑えられ, 果汁の酸濃度は高くなり, 果肉中の酸含量は減少した。9月10日ごろまでの乾燥では, 乾燥直後の5日間の灌水によつて果肉中の水分が急増し, これにともなつて酸濃度が急減したが, 逆に果肉中の酸含量は増加した。しかし, 9月20日すぎまでの乾燥では, 以上の傾向があまり認められなかつた。<br>3. 果汁の酸濃度は8月中旬にはすでに減少の過程にあるが, 果肉中の酸含量は9月20日ごろから下旬にかけて最高になつた。この時期を前後にして, 生成および分解からみた酸の変化が, 集積と減少の過程に区別できた。<br>4. 上述の乾燥直後の灌水による酸濃度の減少および酸含量の増加に, 時期による著しい差があつたのは, それぞれの時期が酸の集積過程と減少過程とにあつた違いのためとみられ, この時期を境いにして, 果肉の生長, 果肉内の物質代謝に大きな変化があると推察された。<br>5. 結果量が少なかつた5年生樹についての9~10月の土壌乾湿実験では, 多湿のときに10月になつても果実の肥大生長が著しく, やはり果汁の酸濃度が低くなつた。収穫前約1か月間の酸の変化をしらべると, 乾燥のときに酸の減少量 (実質的な消失量, または分解量と生成量との差) が多くなり, 多湿のときに稀しやくが著しく多くなつた。<br>6. 夏秋季の土壌水分の多少の影響に関して, 収穫時の温州ミカン果汁の酸および可溶性固形物濃度の高低は, とくに9月中~下旬以降の多湿または乾燥とに密接に関係し, とくに多湿の場合には果肉中の水分増加による稀しやくの強い影響があるのをあきらかにした。
著者
鈴木 鉄男 岡本 茂 片木 新作
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.323-328, 1977
被引用文献数
3 1

温州ミカン幼樹を供試して, 5月から8月にかけてチッ素施用量を変えることにより, 葉中N含量に差をつけた場合の, 果実の肥大•品質に及ぼす影響を調査し, 品質向上の面からみた夏秋季の適正なる葉中N含量を明らかにしようとした.<br>1. チッ素施用後, 葉中N含量に変化が現われるのは10~15日後であつた. そして5月下旬以降12月上旬にかけて, 葉中N含量はチッ素施用量をよく反映し, 9月3日の葉分析では, N<sub>0</sub>区2.08%, N<sub>1</sub>区2.78%, N<sub>2</sub>区3.21%, N<sub>3</sub>区3.40%, N<sub>4</sub>区3.73%を示した. K含量はN<sub>0</sub>区で明らかに高く, Nと拮抗的関係がみられた. CaとMg含量は高N区で低い傾向があつた. なお, 9月11日に果実中N含量を分析したところ, 葉分析の結果と全く同じ傾向が得られた.<br>2. 葉色指数に差が現われたのは6月上旬からであり, 7月上旬頃からその差が明確となり, N<sub>0</sub>区は淡緑色で, N<sub>3</sub>, N<sub>4</sub>区は濃緑色を呈した. そして, N<sub>0</sub>区では8月上旬頃から古葉の黄変, 落葉が始まり, 幼果の果皮も淡緑色を呈し, 樹勢は著しく衰弱した. なお, 葉色指数と葉中N含量の間には高い正の相関 (<i>r</i>=0.823**) があり, 葉中N含量とクロロフィル含量の間にもかなり高い正の相関 (<i>r</i>=0.695**)があつた.<br>3. 果実収量はN<sub>3</sub>区が最もすぐれ, N<sub>4</sub>, N<sub>2</sub>区がこれに続き, N<sub>0</sub>区は明らかに劣り, 平均果重でも同様の傾向があつた. 果形指数は区間に差がなかつた. 果皮の着色指数はN<sub>1</sub>, N<sub>2</sub>区で最高を示した. これに反してN<sub>0</sub>区では着色は早くから始まつたが, その後, 次第にチッ素施用区に追いつかれ, 橙色に乏しく, 採収果の着色指数も低かつた. 果皮歩合はN<sub>0</sub>区で低く, チッ素施用量が増すにつれて高くなつた. 果汁中の可溶性固形物含量はN<sub>0</sub>, N<sub>1</sub>区で明らかに高く, N<sub>2</sub>以上では低下するようであつた. クエン酸含量には有意差は認められなかつたが, 傾向としてはN<sub>0</sub>とN<sub>1</sub>区でやや高かつた. 甘味比には差がなつた.<br>以上の結果から, 品質向上の面からみた夏秋季の葉中N含量の適正値は, N<sub>1</sub>区での2.6~2.8%付近にあると考えられる.
著者
中村 正博
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.265-271, 1992
被引用文献数
1 4

クリ'大和早生'を供試して花柱突出直後から3~4日間隔で人工受粉を行い, 収穫時における着果率を調べるとともに, 花柱および胚珠の発育との関係を調査した.<BR>1. 7月下旬までの早期落果率は, 花柱突出始めの6月19日受粉区で高く, 以後漸減して, 6月26日以降の受粉区ではいずれも15%以下であった. 一方,後期落果はいずれの区においても8月25日以降に始まり, 8月28日から9月1日にかけて最も激しかったが, 7月17, 21,24日の各受粉区ではそれぞれ20,35, 50%にとどまった.<BR>2. 9月11日の収穫時におけるきゅう果の着果率は, 7月17日受粉区が80%と最も高く, 7月21,24日受粉区が65, 35%と続いた. きゅう果中の肥大果実数は, 7月14日までの受粉区では1個のものが多かったが, 7月17, 21日受粉区では2個のものが増加するとともに3個のものが出現した. しかし, 7月24日受粉区では3果きゅうは見られなかった. 以上から, 受粉適期は7月17~21日と考えられた.<BR>3.中心子房では6月19日ころから, 側子房では同23日ころから花柱が突出, 伸長し始めた. 7月7日にはいずれの花柱も外側に広がり始め, 7月14日には約4mmの長さでその伸長を停止した. したがって, 受粉の適期は, 花柱が伸長を停止した3~7日後に, また, 総ほうのりん片が尖頭状に変化して外側に開き始めた時期に相当した.<BR>4.7月28日以降, すべての胚珠で外珠皮, 内珠皮, および珠心の分化が認められた. また, 最大胚珠では8月4日に胚のうが認められ, 同11日ころから珠心が消失した.
著者
青木 宣明 吉野 蕃人
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.450-457, 1984
被引用文献数
6 1

ボタンの接木二年生株′花競′を用い, 促成システムを確立する目的で, まず花芽の発育経過を調べた. 次に冷蔵期間が促成に及ぼす影響について調査した.<br>1. 花芽分化の調査を開始した8月27日には葉分化はすでに終了し, 花弁の分化が始まっていた. 9月27日になると, 雄ずい分化中の個体が観察され, 10月18日では大半の個体が雌ずい形成中であった.<br>2. 冷蔵期間が長いほど芽期及び開花期が早くなった. しかしながら5~7週間冷蔵処理の3処理区では, 萠芽期から開花期までの到花日数, 及び積算温度が類似した.<br>3. 開花率については, 5週間冷蔵処理区が75%で最も高く, 7週間冷蔵処理区は50%で最も低かった.<br>4. 切花重や花弁数では処理区間に有意差が生じなかった. しかしながら, 冷蔵期間が短くなるほど花は大きくなる傾向を示し, 葉は逆に小さくなって葉面積は激減した. すなわち冷蔵期間が短くなるほど下位葉の展葉が阻止された.<br>5. 切花としての草姿は, 6~7週間冷蔵処理区が適当であった.以上の結果から, 花芽の発育程度と冷蔵温度, 期間がボタン促成の開花期, 開花率, 切花品質に大きな影響を与えるものと考えられる.
著者
大塩 裕陸 仁井 文夫 浪岡 日左雄
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.231-238, 1981
被引用文献数
2 5

くん炭の物理的, 化学的性質を調べ, 養液栽培用培地としての適性について論じた.<br>くん炭内部は多孔質構造を有し, 軽量性, 通気性, 保水性に大きく寄与することが推察された. くん炭の粒度分布, くん炭培地の三相分布を測定し, 粒の崩壊さえ防げればくん炭は優れた養液栽培用培地であることを確認した.<br>焼成温度を変えて得られたくん炭の化学的性質, CECイオン吸着能, 最大容水量を調べ, 500°Cを起える焼成温度が好ましいことが示された. また, くん炭焼成温度の上昇につれてpHと水溶性カリの増大が顕著に認められた.<br>くん炭の水浸漬試験の結果, pHは比較的短時間で安定するが, ECおよび水溶性カリは浸漬時間の経過につれて徐々に増加し, くん炭中のカリは比較的難容性であることが示唆された.<br>くん炭培地における尿素のアンモニア化成と硝酸化成を調べると, 新しいくん炭中ではアンモニア化成は認めれらたが硝酸化成は認められなかった. しかし培地として使用後のくん炭では硝酸化成能が認められた.
著者
伊東 卓爾 佐々木 勝昭 吉田 保治
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.629-635, 1997-12-15
被引用文献数
12

近畿大学附属農場湯浅農場 (和歌山県湯浅町) においてハウス栽培されたマンゴー'Irwin'の果実発育中および追熟中の呼吸量, 糖質および有機酸含量の変化について調査した. 発育中の調査には, 6月14日から8月21日までの果実を用いた. 追熟中には, 8月2日, 8月8日および8月21日に採取した果実を用い,25°C下に貯蔵した.<BR>果実の肥大は, 内果皮の硬化が始まるまでは速やかであったが, 硬化後 (7月19日) は非常に緩やかとなった.<BR>呼吸量は7月19日までは急速に低下したが, 内果皮が硬化した後はほぼ一定であった. 追熟中は, クライマクテリックライズが始まった後1~2日目に呼吸量が最大となった. 呼吸量がピークに達した時, 果皮の着色と果肉の軟化が始まった. 芳香は, 果皮の着色開始から数日遅れて発生し始めた.<BR>遊離糖として, 果糖, ブドウ糖およびショ糖が検出された. 内果皮が硬化した後, 果糖およびショ糖含量は増加し, 8月21日にはそれぞれ3.4g•100g<SUP>-1</SUP>FWおよび1.9g•100g<SUP>-1</SUP>FWに達した. 逆に, ブドウ糖含量は減少し続けた. 発育中は, 果糖が主要糖であった. デンプン含量は, 内果皮が明らかに硬化した7月19日には2.1g•100g<SUP>-1</SUP>FWであったが, その後急増し8月21日には11.7g•100g<SUP>-1</SUP>FWに達した. 追熟後は, デンプンはほとんど検出されなくなり, ショ糖含量の増加が著しく, 果糖含量はわずかに増加した.その結果, ショ糖が主要糖となり, 還元糖の大部分を果糖が占めた. デンプンの蓄積量が多い果実で, 全糖含量が多くなった.<BR>有機酸としてクエン酸およびリンゴ酸が検出されたが, 大部分はクエン酸であった. クエン酸含量は内果皮が硬化し始める頃に1.4g•100g<SUP>-1</SUP>FWに達したが,その後減少し続け, 8月21日の含量は0.6g•100g<SUP>-1</SUP>FWであった. 追熟後は, クエン酸含量はさらに減少した.<BR>樹上で果皮が赤または黄色に着色し始める段階が,和歌山県有田地方においてハウス栽培された'Irwin'の収穫適期であると考えられる.
著者
佐野 泰
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.43, no.1, pp.84-90, 1974
被引用文献数
1

球根アイリス•ウエジウッドの花芽分化, 発達におよぼす温度の影響を知るために実験を行なつた. 使用した球根はいずれも新潟県産のものである.<br>1. 8月12日より35日間, 8°Cまたは13°Cで低温処理を行なつたのち, 15°C, 20°C, 30°Cに移してその後の花芽分化, 発達を調べたところ, 13°C後15°C区が最も早く, ついで8°C後15°C区で, 8°Cまたは13°C後20°C区はややおくれたが, 8°Cまたは13°C後30°C区は花芽分化しなかつた. 連続20°Cに置いたものはおくれて花芽分化した. これらの葉数は連続20°C区が最も多く, ついで13°C後20°C区, 13°C後15°C区, 8°C後20°C区, 80°C後15°C区の順であつたが, 8°Cおよび13°C区とも30°Cに移したものは葉分化が進まなかつた. 第1葉の伸長は低温処理後20°Cに移したもので大きく, 15°Cで小さかつた. また30°Cに移したものは伸長が停止した.<br>2. 球根を8月9日から13日間, 35°C, 30°C, 20°Cおよび13°Cにおいたのち, 13°C40日間の低温処理を行ない, その後20°Cに移して花芽分化, 発達を調べたところ, いずれの区も花芽分化し, その発達は13°Cまたは20°C区が, 30°Cまたは35°C区よりやや早かつた. 葉数はほとんど差がなかつたが, 第1葉長および花茎長はともに高温区より20°Cまたは13°C区のほうが大きくなつた.<br>3. 13°C30日または45日の低温処理を行なつた球根を, 35°Cに0, 2, 4, 8または16日間おいたのち, 20°Cに移してその後の花芽分化, 発達を調べたところ, いずれの区もすべて花芽分化した. このうち低温30日処理区では高温8日以上のもので, また低温45日処理区では高温16日以上のもので花芽の発達がおくれたが, その程度は高温に置かれた日数程度であつた. しかしこれらの葉数は増加していた.<br>4. 以上の結果より, 球根アイリス•ウエジウッドの花芽分化は, 8°Cから13°Cの低温によつて促進されるが, その作用は後作用として働き, 花芽分化時にこれらの低温である必要はない. また低温処理前の高温処理は, 休眠が終了するころであれば必しも花芽分化を促進しない. 低温処理後の高温は, 花芽分化を多少おくらせるが, 低温処理の効果を著しく減少させるものでないことが明らかとなつた.
著者
佐野 泰
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.170-174, 1973

球根アイリス•ウエジウッドの休眠期間と発芽適温を知るために実験を行なつた.<br>1. 信州大学農学部実験ほ場に植え付けた球根を, 5月10日より10日ごとに堀り上げて分化葉数を調べたところ, 6月12日に2.5枚となつたのち8月11日まで葉数の増加はみられなかつた. しかしその後再び葉数を増加し, 花芽分化した.<br>2. 京都大学農学部実験ほ場で栽培した球根を6月19日に掘り上げ, 7月6日より20°Cに貯蔵したものについて葉分化を調べたところ, 8月3日までは葉数の増加がみられなかつたが, その後葉数を増加した. 8月3日より15°Cおよび10°Cに移したものも葉数を増加したが, 30°Cに移したものは8月31日においても増加はみられず, その後10月26日におくれて増加しているのがみられた.<br>3. 20°Cに貯蔵した前と同じ材料を用いて, 7月6日, 8月3日, 8月31日, 9月28日および10月26日の5回にわたつて球根を植え付け, 20°Cで発芽を調べたところ, それぞれ9月9.6日, 9月8.6日, 9月15.6日, 10月7.8日および10月31.0日に100%発芽に達した. 子球についても同じ傾向が認められた.<br>4. 同じ材料について8月3日と9月28日の2回, 球根を10°C, 15°C, 20°C, 25°Cおよび30°Cに植え付けて発芽を調べたところ, 8月3日植え付けでは100%発芽に達するのは15°Cが最も早くて28日, ついで20°Cの36日, 10°Cの37日で, 30°Cは65日, 25°Cは73日と著しくおくれた. しかし9月28日植え付けでは10°Cがわずかにおくれたほかは, いずれも10日前後で発芽した. 子球についてもほぼ同じ傾向がみられた.<br>5. 以上の結果より, 球根アイリスは6月中旬より休眠に入り, 8月中旬までつづくが, 休眠末期には15°Cで最も早く発芽し, 25°Cおよび30°Cでは発芽しない. しかし休眠が完全に終了すれば発芽温度の幅が広がり, 10°Cから30°Cまでのいずれの温度でもよく発芽するようになることが明らかとなつた.
著者
中条 利明 片岡 正治 山内 勧 葦澤 正義
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.339-343, 1972
被引用文献数
5

鉢植えの5年生の富有カキについて, 8月上旬~9月中旬 (果実肥大の第II期と第III期の初期) における夜温および昼夜恒温の処理が, 果実の肥大ならびに品質に及ぼす影響を調べた.<br>1. 8月3日~9月21日の夜温処理 (150°, 20°, 25°および30°C) における, 処理終了時の果重は, 30°Cでとくに劣つた以外は各区の間で, はなはだしい相違がなかつた. 果皮の着色は25°Cおよび30°C区でいちじるしく進み, 淡黄緑色を呈し, クロロフィル含量は少なく, その傾向はとくに25°C区でいちじるしかった. 可溶性固形物含量もこれらの区で多かつた. しかし, これらの果実を11月10日に収穫すると, 果重, 果色および可溶性固形物含量の点よりみて, 形質の最もすぐれたのは25°C区であり, 最も劣つたのは30°C区であつた.<br>2. 8月6日~9月18日の間, 昼夜恒温の処理 (15°, 20°, 25°および30°C) をした結果, 処理終了時の果重および果皮の着色度は15°C区で最もすぐれ, ついで, 20°, 25°, および30°C区の順となつた. とくに30°C区では果重がいちじるしく劣り, 果皮も緑色であつた. 可溶性固形物含量も30°C区で最も劣つた以外に, 各区の間でいちじるしい相違がなかつた. 全糖に対する非還元糖の含量割合は, 処理温度の上昇につれて増加した. 10月25日の採取時には, 果重, 果色, かつ斑の発現, 可溶性固形物含量および全糖含量の点よりみて, 果実の形質は20°C区で最もすぐれ, 30°C区で最も劣つた.
著者
川俣 恵利
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.15-23, 1976
被引用文献数
1

当場果樹園に栽植中のナシに光化学スモッグによる被害と思われる症状が見られたので, その被害症状について環境バクロ室で発生した被害を参考にして調べた.<br>1. ナシの徒長枝上の生育旺盛な葉にクロロシス, 褐変およびネクロシス (壊死) の症状が認められた.<br>2. 被害を受けた葉は全クロロフィル, クロロフィルbが著しく減少した. また, 軽症葉ではデンプンが蓄積し, 被害が進行するにつれデンプンは徐々に崩壊した.<br>3. 軽症葉ではO<sub>3</sub>吸収量は著しく増加したが, CO<sub>2</sub>放出量はやや増加した程度で, RQは健全葉より低かつた. 重症葉でもO<sub>2</sub>吸収量は増加したが, CO<sub>2</sub>放出量が減少したため, RQは健全葉の1/2程度であつた.<br>4. 被害葉の無機成分含量は全般的に減少しており, なかでもNおよびMgは軽症でも著しく減少していた. しかし, 重症になるとP, K, Mgはあまり変化がみられなかつたのに対し, NとCaは減少が続いた.<br>5. 被害により著しく減少したRQと全クロロフィル, クロロフィルaおよびbとの間には極めて高い正の相関がみられた. またNと全クロロフィル, Caと全クロロフィル, NとRQ, CaとRQとの間にも0.1%レベルの正の高い相関が認められた.<br>6. 被害症状はオゾンないしPANによるものと類似しているように思われたが, 東京の光化学スモッグは亜硫酸ガスおよび粉じんが多く含まれ, 一酸化炭素や窒素酸化物が低い傾向にあり, 光化学反応のメカニズムが解明されていない現状では, 原因物質について明らかな確証を得るまでには至らなかつた.
著者
稲葉 昭次 山本 努 伊東 卓爾 中村 怜之輔
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.132-138, 1980
被引用文献数
2 3

トマトの樹上成熟果実と追熟果実の成熟様相と食味の比較を行った.'強力五光'については成熟の様相を, また'強力東光'についてはそれに加えて食味面からの検討も行った.<br>mature green stage からの追熟果実の炭酸ガス排出量及びエチレン発生量は,'強力五光'果実では全期間を通じて樹上成熟果実より低く,'強力東光'果実では成熟の開始に伴う増加が遅れた. turning 及び pink stage からの追熟果実では, いずれの品種ともに樹上成熟果実と大差は認められなかった.<br>'強力東光'果実の遊離のABA含量は, mature green stage からの追熟では, 成熟期間中ほとんど増加しなかったが, turning stage 以後の追熟では樹上成熟よりもむしろ多くなった.<br>full ripe stage における食味テストでは, 果色についてはいずれの熟度からの追熟果実も樹上成熟果実と差はなかったが, 肉質, 風味, 甘味及び酸味の評価は mature green stage からり追熟果実は明らかに樹上成熟果実よりも劣っていた. turning stage からの追熟果実では,酸味の評価のみが樹上成熟果実より劣っていたが, pink stage からのものではすべての面でまったく差は認められなかった. このような甘酸味の食味評価の差異は, 果肉部のグルコース及びフラクトース含量ならびにゼリー部のクエン酸含量における差異とよく一致していた.<br>以上のことより, トマト果実は内的及び食味構成面からみて, mature green stage では追熟に対する条件がまだ十分には整っておらず, turning stage になるとそれらがほぼ完全に整うように思われた.
著者
伴野 潔 林 真二 田辺 賢二
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.15-25, 1985
被引用文献数
6 21

ニホンナシの花芽形成の機構を探る目的で, 花芽の着きにくい品種'新水'及び着きやすい品種'豊水'を用いて, 新梢上における花芽形成と新梢の各部位における栄養成分並びに内生生長調節物質との関係について比較検討した.<br>1. '豊水'では6月30日にほぼ新梢生長が停止したのに対し, '新水'では'豊水'よりも20日遅れ7月20日に停止した.<br>2. '豊水'の腋芽では, 新梢生長停止後急速に節数が増加し, 花芽が分化•発達した. 一方, '新水'の腋芽では'豊水'よりも20日遅れて7月30日に花芽分化の徴候がみられたが, その後の分化•発達はほとんど認められなかった. また, 最終的な花芽形成率は'新水'で15.5%, '豊水'で79.0%であった.<br>3. 両品種の腋芽において, 全窒素含量にはほとんど差異は認められなかったが, 全糖含量, でんぷん含量及び C/N 率は'新水'の方が'豊水'よりも高く推移した.<br>4. '新水'の茎頂では'豊水'に比べ, 特に生長の盛んな時期にIAA含量及びジベレリン含量が高かった.<br>5. '豊水'の腋芽では, 生育期間を通して'新水'よりもジベレリン含量及びABA含量が低く, 逆にサイトカイニン含量が高かった.<br>以上の結果から, ニホンナシの花芽形成は芽において12枚のりん片が形成された後, 節数が急速に増加するかどうかによって決定されること, さらにこの過程には内生生長調節物質が密接に関連しており, そのうちでも特にジベレリンとサイトカイニンが重要な役割を果たすものと推察される.
著者
勝谷 範敏 池田 好伸
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.66, no.1, pp.121-131, 1997-06-15
被引用文献数
10 7

デルフィニウムを毎月上旬に播種し,定植後は年間を通じて無加温室で栽培し,開花反応の季節的変動を調べた.また,花芽形成過程を観察し,分化と抽台の関係などを検討した.さらに,ファイトトロン内で温度が抽台および開花に及ぼす影響,ならびに自然日長条件で加温栽培した時の抽台に関する品種の特性を検討した.<BR>1.無加温ハウスで栽培すると,デルフィニウムの花芽分化はほぼ周年にわたって認められ,広い温度域で分化した.播種から花芽分化までの期間は,定植後から高温となる時期は短く,定植後から気温が低下する時期は長くなり,花芽分化は高温によって著しく促進された.<BR>2.20°C以上の高温では幼若期が短縮され展開葉が5枚になると抽台を開始したが,15°Cでは幼若期が著しく延長されるとともに,ほぼ半数は抽台しないでロゼット状態となった.<BR>3.節数と小花数の相関は高く,定植後から高温となる3~7月播種は低節位で小花が分化し,小花数が少ない貧弱な花穂であった.定植後から低温となる8~2月播種では節数が多く,小花数の多いすぐれた切り花が得られた.<BR>4.低温は花芽分化を誘導するバーナリゼーションとしてではなく,ロゼット打破として作用した.すなわち,生長活性が回復して高くなり,生育できる低温の限界温度を拡大させるものとして作用した.<BR>5.デルフィニウムは花芽分化に伴って抽台を開始し,抽台時にほぼ小花数が決定されるので,品質の劣る早期抽台苗を早期に判別することができる.<BR>6.冬季に自然日長で加温栽培すると,品種によってはロゼット化する株が多く発生し,ロゼット化すると抽台が遅れるとともに,後になって抽台した花穂は奇形化して商品性がなくなった.
著者
小林 伸雄 竹内 理恵子 半田 高 高柳 謙治
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.611-616, 1995-12-15
被引用文献数
8 12

本研究では, 一般にDNA抽出が困難とされる木本性植物のツツジ属からのDNA抽出について検討を加えた後, 最近多くの植物で利用されているRAPD (Random Amplified Polymorphic DNA) 法を用いたツツジ品種の同定を試みた.<BR>ツツジ亜属の種群および同亜属を母種とするッッジ品種ではSDS法およびCTAB法によるDNA抽出が困難であったが, 改変CTAB法では全種からDNA抽出が可能であった.<BR>RAPD分析では, 100種のプライマーについて検索したところ, 16種で鮮明な多型バンドが得られ, 特に多くの多型を検出できた2種のプライマー (OPK-19, 20) を品種同定に用いた. 江戸キリシマ (9品種) およびクルメツツジ (14品種) の品種群では, これらのプライマーで得られた多型バンドにより, すべての供試品種を識別できた. また, サツキ品種では'晃山'とその枝変わり品種との識別が可能であった.以上のような結果から, ツツジ品種の同定技術としてRAPD法を適用できることが示唆された.