著者
鳥潟 博高 小林 喜男 菅沼 広美
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.145-151, 1988
被引用文献数
3 1

愛知県郷東町名古屋大学附属農場 (北緯35°, 年平均気温14.7°) で, ペカン5品種サクセスネ (Succes), ネリス (Nelies), シュライ (Schley), スチュアート(Stuart), カーチス (Curtis) を栽培し, 開花, 結実を調査し下の結果を得た.<br>1) 1ペカンの雄花は2年生枝に直接腋生し, 雌花は, 今年生新梢に頂生することを示した.上記5品種の毎年の開花期は5月下旬~6月上旬であり, 成熟期は11月であって, 雌果の成熟には154~182日を要し, 同地の無霜期間中に成熟することを明らかにした.<br>2) 開花調査の結果, サクセスは毎年開花が早く雌雄同熟か雄花先熟であった. ネリス, シュライ, スチュアート, カーチスの4品種は開花がやや遅く, 雌雄同熟か雌花先熟であった. 受粉, 結実調査の結果サクセス, スチュアート及びネリスは自家結実性のあることを示したが自然状態で充分な受粉が行なわれるか疑問であった.<br>また, 日本の山野には <i>Carya</i> 属植物がないので, 主要品種の雌花の recipient stage に花粉の shedding が行なわれる様な受粉樹の植栽がなければ結実が望めないことを指摘した.<br>3) 3ペカン5品種の100粒重はネリスが最も重く約600g, 次いでサクセス, シュライ, スチュアートで580~595g, ヵーチスは290gで最も軽量であった. 可食部率はネリス39%で最も小さく, シュライ55%で最も大きかった.
著者
池田 英男 大沢 孝也
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.159-166, 1983
被引用文献数
7 17

水耕培養液中のNO<sub>3</sub>とNH<sub>4</sub>の濃度並びに比率がそ菜の生育, 葉中N成分及び培養液のpHに及ぼす影響を検討した. 実験1では, キュウリ, レタスなど10種を供試して, 培養液中のNO<sub>3</sub>/NH<sub>4</sub>比がme/lで3.0/0~0/3.0 (低Nシリーズ) と12/0~0/12 (高Nシリーズ) の各7区を設けた. また実験2では, レタス, キャベッなど4種を供試して, NO<sub>3</sub> (1~24me/l)シリーズ, NH<sub>4</sub> (1~12me/l) シリーズ, NO<sub>3</sub>4me/l+NH<sub>4</sub> (1~12me/l) シリーズ, NO<sub>3</sub>12me/l+NH<sub>4</sub> (2~12me/l) シリーズの計20区を設けた. 実験1, 2ともに培養液のpHは毎日1回測定して, その都度6.0に調節し, 原則として3週間栽培した.<br>NO<sub>3</sub>施用の場合に比べて, NH<sub>4</sub>施用では一般に葉中NH4-N濃度が高く, 生育は阻害された. しかし少量のNO<sub>3</sub>の併用により葉中NH<sub>4</sub>-N濃度は低下し, NH<sub>4</sub>害は軽減あるいは防止された. またNO<sub>3</sub>4あるいは12me/lにNH<sub>4</sub>を併用した場合には, NO<sub>3</sub>のみを施用した場合よりも生育は明らかに促進された.<br>葉中NO<sub>3</sub>-N濃度は, 培養液中のNO<sub>3</sub>濃度が高まるにつれて高くなった. また低Nシリーズでは, いずれの葉菜も培養液中のNH<sub>4</sub>の比率が高まるにつれて葉中NO<sub>3</sub>-N濃度は低下したが, 高Nシリーズではハクサイ,ホウレンソウなどNO<sub>3</sub>を優先的に吸収するそ菜では,培養液中のNH<sub>4</sub>の比率が高まっても葉中NO<sub>3</sub>-N濃度の低下はほとんど認められなかった.<br>培養液のpHはNO<sub>3</sub>のみを施用すると上昇し, NH<sub>4</sub>のみでは著しく低下した. 両N併用の場合, キュウリ, レタスなどNH<sub>4</sub>を優先的に吸収するそ菜では, 培養液中のNO<sub>3</sub>とNH<sub>4</sub>の比率にかかわりなくpHは低下した. 一方, トマト, ホウレンソウなどNO<sub>3</sub>を優先的に吸収するそ菜では, 両Nの比率が適当な値の場合には, 実験期間中培養液のpHはあまり変化しなかった.
著者
長島 時子
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, pp.231-241, 1985
被引用文献数
1 1

キエビネ, カ&bull;エルメリ及びトクサランの3種のランを供試し, 胚珠形成及び受精後の種子形成過程を組織学的に観察するとともに, 種子形成過程と種子発芽との関係を追究した.<br>1. 子房の大きさは, いずれのランにおいても, 受粉すると急速に増加した. 子房の大きさは, キエビネ及びトクサランでは受粉後50日ごろに, カ&bull;エルメリでは同60日ごろにそれぞれ一定値に達した.<br>2. 種子及び胚の大きさは, いずれのランにおいても, 受精すると急速に増大した. 種子の大きさは, キエビネ及びトクサランでは受粉後80日ごろに, カ&bull;エルメリでは同60日ごろにそれぞれ一定値に達した. 胚の大きさは, キエビネでは受粉後95~100日ごろに, カ&bull;エルメリでは同65~70日ごろに, トクサランでは同87~90日ごろにそれぞれ一定値に達した.<br>3. 胚珠形成は, キエビネでは受粉後43~45日ごろに, カ&bull;エルメリでは同35~37日ごろに, トクサランでは同30~31日ごろにそれぞれ完了した. 重複受精は, キエビネでは受粉後48~50日ごろに, カ&bull;エルメリでは同40~41日ごろに, トクサランでは同34~35日ごろにそれぞれ行われた. 胚のうは, キエビネ, カ&bull;エルメリ及びトクサランのいずれにおいてもそれぞれ5~6個が観察された. 受粉から胚発生完了までに要する日数は, キエビネでは95~100日, カ&bull;エルメリでは65~70日, トクサランでは87~90であった.<br>4. 胚発生の様相はキエビネ, カ&bull;エルメリ及びトクサランのいずれにおいても同様であった. すなわち, いずれにおいても4細胞期ではA<sub>2</sub>型であり, 4細胞期以降の胚発生過程はE型 (<i>Liparis pulverulenta</i> 型) に類似していた. また, いずれのランにおいても胚は主としてca細胞から形成された.<br>5. 受精後の胚乳核は, キエビネ, カ&bull;エルメリ及びトクサランのいずれにおいても3~5個が観察された.また, いずれにおいても胚柄の存在が観察された.<br>6. 種子の発芽能力は, キエビネ及びトクサランでは8細胞期 (前者では受粉後70日ごろ, 後者では受粉後55日ごろ) 以降に, カ&bull;エルメリでは前胚の4細胞期以前(受粉後45日ごろ) にそれぞれ認められた. なお, いずれにおいても胚発生完了前後において発芽率が最も高かった. 培地としては, MS培地及びKC培地に比較して, H培地が優れていた.
著者
森 源治郎 今西 英雄 坂西 義洋
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.387-393, 1991
被引用文献数
1

1.露地栽培株の茎頂における生殖生長への転換は10月上&bull;中旬で, 年内に花被形成段階まで進んだ後,発育を停止した. 翌年の4月中&bull;下旬に発育を再開し,花芽は5月中&bull;下旬に雌ずい形成期, 7月上旬に花粉形成期に達し, 7月下旬に開花した.<BR>2.7月1日から25&deg;Cに保った株では戸外株と同様2か月後においても花芽は未分化であったが, 150および20&deg;Cに移すと分化が認められた.<BR>3.小花原基形成期~花被形成期に達した後雌ずい形成期までの発育, 雌ずい形成期に達した後花粉形成期までの発育, さらに花粉形成期に達した後開花までの発育は, ともに25&deg;Cの高温で早められた. しかし,花粉形成期後の高温は開花時の花茎長および小花数を減少させた.<BR>4.促成を目的とした加温栽培のうち, 最も早く開花がみられたのは11月下旬からの加温 (最低20&deg;C) 開始で, 自然開花期より約2か月早い5月下旬に開花した. さらに加温中, 長日 (16時間) を与えると, 9月中旬からの加温開始が最も早く, 4月中旬に開花させることができた.
著者
小机 信行 水野 進
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.58, no.1, pp.231-235, 1989
被引用文献数
7

本研究は発芽バレイショの部位別のPGAの測定及びわが国の代表的調理用品種のバレイショ ('男爵'及び'メークイン') を1°C, 8°C及び20°C暗黒下に貯蔵し, 貯蔵に伴う発芽状況を調査するとともに皮層部及び髄質部のα-チャコニン及びα-ソラニンの消長を調査したものである.<br>1. 発芽バレイショ ('メークイン') を4部位に分けそれぞれの部位におけるPGA含量を測定したところ,最も多いのが発芽伸長部及び発芽周辺部の皮層部であることがわかった. なお, 髄質部についてはα-チャコニンが極く微量検出されたにすぎず, α-ソラニンについては痕跡程度であった.<br>2. '男爵'及び'メークイン'を1°C, 8°C及び20°C下に貯蔵し, 発芽の状況を調査したところ, 'メークイン'の方が'男爵'より少し休眠期間が短かった. なお,両品種とも20°C貯蔵では20日後に発芽伸長が認められた. 1°Cでは貯蔵120日後まで発芽伸長は抑制された.<br>3. 両種バレイショの貯蔵中のPGA含量の変化を調べたところ, '男爵'は'メークイン'と比較するとPGA含量は少ないが両品種とも発芽伸長とともに増加することがわかった. なお, 1°Cの低温下で発芽伸長の抑制された期間内でも皮層部組織でPGAの蓄積現象が認められた. 一方, 髄質部では両品種ともPGAは検出されなかった.
著者
岡本 五郎 大森 直樹
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.521-529, 1991
被引用文献数
3 7

ブドウ'ピオーネ'では,胚珠の受精率が低いために有核果が着生しにくい.この原因を探るために,開花約1週間前の小花を培養し,培地の無機塩,ホルモンおよび雌ずいの抽出物の添加濃度が胚珠の発育と受粉後の花粉管生長に及ぼす影響を調査した.有核果が多く着粒する'マスカット&bull;オブ&bull;アレキサンドリア'を比較の対照とした.<BR>NitschあるいはMS培地の無機塩濃度,Nitschの培地の窒素濃度を高めると,両品種とも子房の発育は促されたが,胚のうの発育と受粉後の花粉管伸長は抑制された.この傾向は特に'ピオーネ'で著しかった.1~10ppmのGA, BA, NAAを添加すると, 子房の発育は影響されなかったが,'ピオーネ'雌ずい内での胚のうの発育と花粉管伸長が抑制された.'ピオーネ'雌ずいの水抽出物を培地に加えると,両品種とも子房および胚のうの発育は影響されなかったが,花柱内への花粉管伸長が著しく抑制された.<BR>以上のことから,'ピオーネ'の小花は窒素栄養の供給が豊富であると,胚のうの発育と花粉管の生長が抑制される.'ピオーネ'の雌ずいに多く含まれる花粉管生長阻害物質は,無機物質やホルモン様物質とは異なるものと思われる.
著者
武田 敏秀 島田 武彦 野村 啓一 尾崎 武 土師 岳 山口 正己 吉田 雅夫
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.21-27, 1998-01-15
参考文献数
16
被引用文献数
2 21

アンズの系統分類にRAPD分析法を適用した.DNA多型を効率的に検出するために, 5種類の代表的な品種を供試して, 225種類のオペロンプライマーについてスクリーニングを行い, 各系統間で複数のDNA多型を示す有効な18種類のプライマーを選抜した.次にこれらのプライマーを用いてアンズ33品種・系統と近縁の野生2種の分類を試み, 検出されたRAPDsをもとにクラスター分析と数量化理論第三類を用いてデータの解析を行った.その結果, 本実験で供試したアンズ(Prunus armeniaca)の品種・系統は中国西部からヨーロッパにかけて分布する"西方品種群"(A)と中国東部, 日本などに分布する"東方品種群"(B)の2群に大別された.しかしながら, 近縁野生種のP. sibiricaとP. brigantina, 中国の西部から北部に分布し, 諸特性が不明である'白杏', およびスモモとアンズの自然交雑種とされる'仁杏'はこれらの群に属さなかった.また, 中国の品種はA群およびB群の両方に属し, 遺伝的変異が大きいことから日本アンズ, ヨーロッパアンズの祖先種である可能性が高いと推察した.
著者
武田,敏秀
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, 1998-01-15

アンズの系統分類にRAPD分析法を適用した.DNA多型を効率的に検出するために, 5種類の代表的な品種を供試して, 225種類のオペロンプライマーについてスクリーニングを行い, 各系統間で複数のDNA多型を示す有効な18種類のプライマーを選抜した.次にこれらのプライマーを用いてアンズ33品種・系統と近縁の野生2種の分類を試み, 検出されたRAPDsをもとにクラスター分析と数量化理論第三類を用いてデータの解析を行った.その結果, 本実験で供試したアンズ(Prunus armeniaca)の品種・系統は中国西部からヨーロッパにかけて分布する"西方品種群"(A)と中国東部, 日本などに分布する"東方品種群"(B)の2群に大別された.しかしながら, 近縁野生種のP. sibiricaとP. brigantina, 中国の西部から北部に分布し, 諸特性が不明である'白杏', およびスモモとアンズの自然交雑種とされる'仁杏'はこれらの群に属さなかった.また, 中国の品種はA群およびB群の両方に属し, 遺伝的変異が大きいことから日本アンズ, ヨーロッパアンズの祖先種である可能性が高いと推察した.
著者
田附 明夫 崎山 亮三
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.62-68, 1986
被引用文献数
9 11

1. ガラス室で栽培したキュウリの幼果を植物体に付けたまま果実チェンバーに入れ, 果実周囲の温度を5~30&deg;Cの一定温度とする処理を行い, 果実温度が果実の体積生長に及ぼす影響を調べた.<br>2. 果実体積の相対生長率 (RGR) は約5&deg;Cで0となり, 高温ほど高い値となった. RGRの果実温度と果実体積に対する重回帰を各栽培時期について品種別に計算すると, いずれも重相関係数が高かった. RGRは果実温度及び果実体積とそれぞれ正, 負の偏相関を有した. その重回帰式は体積が等しい果実では. RGRが果実温度に対してほぼ直線的に関係することを示した. しかし, RGRのアレニウス&bull;プロットは12&deg;C付近に屈曲点を持つ直線で表され, 果実生長がこの温度を境に質的に異なる可能性が示唆された.<br>3. RGRのQ<sub>10</sub>は15~30&deg;Cの範囲では季節にかかわらず約2であったが, 春のRGRは冬の値より, その範囲のいずれの温度においても高かった. これらの結果を説明するため, RGRの季節間差は果実に流入する師部液の糖濃度の季節間差によってもたらされ, また, 果実温度は果実に対する師部液の流入速度を決定するという仮説を示した.<br>4. 供試した2品種間でRGRの温度反応には差が認められなかった.
著者
新居 直祐
出版者
園藝學會
雑誌
園芸學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.160-170, 1980
被引用文献数
2 11

カキ果実 (品種富有) の肥大生長を解析するために, 果径と果実重の生長速度及び相対生長率の季節的変化並びに果柄部維管束の発達過程について調査を行った.<br>生長速度からみて, カキ果実の肥大生長は2重のS字曲線を描いた. 第1期生長期 (開花期~8月上旬) では果径肥大の生長速度の上昇とピークに達する時期が, 果実重より数週間早く, また生体重増加の生長速度が乾物重増加のそれより約1週間早かった. 第1期の果径生長期には, 果実の水分含有率が高まり, 7月中&bull;下旬の果実生体重の増加期には乾物率の低い期間が続いた. なお, 開花直後の2週間は乾物率の高い期間があったが, これはこの時期, 果肉中に占めるタンニン細胞の密度が高いことと関連していた.<br>第2期の生長停滞期には, 果実は乾物率が高まった. また種子重並びに種子の乾物率は, 顕著に増大した.<br>第3期生長期では, 果実は急速に肥大して果実重が増大するとともに, 乾物率も増加を続けた.<br>果径肥大の生長速度は第1期が第3期より高く, 生体重については第1期と第3期でよく類似し, 乾物重では第3期で顕著に高かった.<br>6月から7月の果実発育の初期には, 種子と果実重との間に高い正の相関関係がみられたが, 1果実中に含まれている種子数別にみた果実の肥大曲線には著しい相違はみられなかった.<br>果径と果実重の開花後の相対生長率 (RGR) のピークは開花後数日間にみられ, その後しだいに低下し, 第3期にわずかに高まった.<br>果柄径の肥大は第1期で著しく, 8月中旬まで肥大が続き, その後はほぼ一定となった. 果柄部横断面の維管束の発達状況をみると, 開花約1か月前にすでに維管束の分化がみられたが, 道管, 師管の発達程度はまだ小さかった. その後開花期にかけて道管数, 道管径並びに師管, 随伴細胞の分化, 発達も著しくなり, これらの生長は開花4週目ごろまで顕著であった. 果実生長の第2期には維管束の発達も停滞する傾向がみられたが, 果実生長の第3期になるころより再び木部, 師部の発達がみられるようになり, 果実の肥大生長とよく対応していた.
著者
杉山 信男 岩下 浩太郎 久我 芳昭
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.78-85, 1981
被引用文献数
2 2

そ菜の生育に対するカリ施肥の効果と葉中カリ濃度及びナトリウム濃度との関係を明らかにするため, 1/2,000aワグナーポットで, 硫酸カリの施用量を0gから8gまでの6段階, 硫酸ナトリウムの施用量を0, 4,40gの3段階に変えて, キャベツとインゲンを土耕した. それとともに, 1/5,000aワグナーポットで, 培養液1<i>l</i>中のカリとナトリウムの合計量を4me一定とし, その比率を5段階に変えて, ハツカダイコン, キャベツ, インゲンを砂耕した.<br>1. キャベツとインゲンの土耕実験において, カリ施用量が不十分なために生育が低下し始める区 (硫酸カリ4g区及び8g区のどちらと比べても地上部重に差が認められる区) は, ナトリウムの施用量に関係なく, 硫酸カリ0.5g区であった.<br>2. インゲンでは, ナトリウムの施用量に関係なく, 最大葉カリ濃度 (およそ50me) によって, カリ施用量が不十分なために生育が低下した区とそうでない区とを区分できた.<br>3. インゲンでは, 最大葉におけるカリ濃度とナトリウム濃度の和は最大葉カリ濃度とほぼ同じ値だったので, カリ施用量が不十分なために生育が低下した区とそうでない区とは, カリ濃度とナトリウム濃度の和 (およそ50me) によっても区分できた.<br>4. キャベツでは, 最大葉カリ濃度によっても, 最大葉におけるカリ濃度とナトリウム濃度の和によっても, カリ施用量が不十分なために生育が低下した区とそうでない区とを区分できなかった.<br>5. インゲンの砂耕実験で, 培養液中のカリ含量が0me及び0.5meの区では, 対照区 (4me区) に比べると, 最大葉カリ濃度もカリ濃度とナトリウム濃度の和もともに低く, 生育も劣った.<br>6. ハツカダイコンとキャベツの砂耕実験で, 培養液中のカリ含量が, それぞれ, 0meと0me及び0.5meの区では, 最大葉におけるカリ濃度とナトリウム濃度の和は高いのに生育が低下した. これらの区の最大葉カリ濃度は, ハツカダイコンで25me以下, キャベツで45me以下であった.<br>7. キャベツの土耕実験で, 最大葉カリ濃度が45me以下となった場合を除けば, カリ施用量が不十分なために生育が低下した区とそうでない区とは, 最大葉におけるカリ濃度とナトリウム濃度の和 (およそ85me) によって区分できる (第3表, 第4表).
著者
塩崎 雄之輔 菊池 卓郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.827-832, 1992
被引用文献数
1 3

リンゴ'ふじ'/マルバカイドウの開心形樹 (栽植距離9m&times;9m, 栽植密度123本/ha) 12樹について, 5年生から24年生までの20年間にわたって, 収量と葉面積指数, 新梢長等のいくつかの樹体特性について測定を行った. 10年生以降, 樹高は3.5~4.0mに維持され, 樹冠はもっぱら水平方向に拡大した. 樹冠占有面積率および葉面積指数 (LAI) は20年生まで増加を続け, 前者は約70% (1樹当たり約55m2), 後者は約2.0に達し, 以後ほぼ一定になった. 収量 (1ha当たり)は樹冠占有面積率およびLAIの増加に伴って増加した.LAIとそれに対応する収量 (1ha当たり) は, 1.0で約20t, 1.5で約35t, 2.0で55t以上であった. 樹冠占有面積の増加に伴い, 樹冠占有面積当たり収量と単位葉面積当たり収量の増加が認められた. これは樹冠が扁平で樹冠内部に光線がよく透入するように枝が配置されていることに加え, 樹冠占有面積当たりspur数の増加と平均shoot長の減少とが大きく寄与していることが示唆された.
著者
松井 鋳一郎 中村 三夫
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.57, no.2, pp.222-232, 1988
被引用文献数
12

<i>Cattleya</i> とその近縁のラン科11属の種の花被組織における色素分布および花被表皮細胞の形状を調査し, 花被の表色との関係を考察した.<br>1. 供試した68種は, 花弁の表皮と柵状および海綿状組織におけるカロチノイドとアントシアニンの分布の違いから9群に分類できた. 黄色花は花弁にカロチノイドがあるが, <i>Cattleya</i>(C.) <i>dowiana</i> や <i>Laelia</i> (<i>L</i>.)<i>flava</i>などでは柵状&bull;海綿状組織にのみあり, <i>L. harpophylla</i>や <i>L. cinnabarina</i> などでは表皮細胞にも含まれていた.<br>赤色花には, カロチノイドおよびアントシアニン両者ともにあり, <i>Sophronitis coccinea</i> や <i>L. milleri</i> ではカロチノイドが表皮および柵状&bull;海綿状組織に, アントシアニンは表皮にのみあった. <i>L. tenebrosa</i> の褐色の花弁ではアントシニンは柵状海綿状組織にあった.赤紫色花はアントシアニンが表皮にのみあるか, 柵状海綿状組織にあるか, その両者にあるかによって3群に分けられた. <i>Cattleya</i> はこの花色の代表的な属であるが, 多くの種ではアントシアニンは柵状&bull;海綿状組織にあった. <i>C. intermedia</i> var. <i>aquinii</i> や <i>C. leopoldii</i>の花弁着色部分やスポットには表皮細胞にもあった.<i>Laelia</i> の濃紫赤色花は表皮および柵状&bull;海線状組織ともにアントシアニンを含み, 淡紫赤色のものでは表皮にはなかった.<br>2. 供試した種は Hunter 表色法によって3群に分けられた. 花弁にカロチノイドのみを含む, 黄色ないし橙色花は色相(b/a)が0.47以上に, カロチノイドとアントシアニンが共にある赤色花は0.47_??_b/a>-0.13に,アントシアニンのみを含むいわゆるカトレア色の紫赤色花は-0.13_??_b/a>-1.0にあった.<br>カロチノイドを含む花弁では, カロチノイドが多いと明度が高くなった. アントシアニンのみを含む花弁や唇弁では, アントシアニンが多いと明度が低くなった.<br>3. 花弁と唇弁の上面表皮細胞は種によって大きさおよび形に変異がみられた. 属を同じくする種ごとにみると変異は連続的であり, 小さいものは四角で, 光沢のある花にみられ, 大きいものはビロード状を示す花にみられて長三角形であった. 表皮細胞の大型化と四角形から長三角形への変化は進化の方向を示すものと思われ,<i>C. labiata, L. purpurata</i> や <i>Brassavola digbyana</i> などのように鑑賞価値が高く, 花径の大きな花の表皮細胞は, それぞれの属内では最大で長三角形であった.
著者
賈 惠娟 岡本 五郎
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.223-225, 2001-03-15
参考文献数
9
被引用文献数
5

モモ'白鳳'果実の皮, 果肉あるいは果実全体から発散される揮発成分をヘッドスペース法で定量し, 併せて施肥濃度の影響も調査した.モモの香りの主成分であるlactone類は, 皮よりも果肉に高濃度で存在し, 適濃度の施肥をした果実に最も多かった.他の揮発成分のアルデヒド, アルコール, エステルは, 青臭さを与えるが, 果肉より皮の方が濃度が高く, 施肥区の中では高濃度区の方が高かった.果実全体から発散される揮発成分の量は, 皮や果肉に比べてわずかであった.果実1個の皮と果肉中に含まれる揮発成分の分布をみると, lactone類は97&acd;98%が, 他の揮発成分は86&acd;89%が果肉中に存在した.
著者
入船 浩平 森本 裕介 内浜 正美
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.72, no.6, pp.511-516, 2003
参考文献数
22
被引用文献数
9

シンテッポウユリ鱗茎由来のカルスを用いて,パーティクルガン法により遺伝子導入を行った.プラスミドPAct1-F(イネ由来アクチン1遺伝子プロモーターにβ-glucuronidase(uidA遺伝子)をもつ)を導入しGUS発現により導入条件の至適化を行った.この至適条件に基づきカルスヘプラスミドpDM302 (イネ由来アクチン1遺伝子プロモーターにPhosphinothricin acetyltransferase (PAT)(bar遺伝子)をもつ)を導入し,ビアラフォスによる耐性カルスの選抜をおこなった.得られた耐性カルスを再分化に導き,遺伝子導入約6か月後に耐性株165株を得た.この耐性株から67株についてDNAを抽出しPCRに供した.その結果,導入遺伝子を持つ株が15株において確認された.さらにこの内,3株を用いて導入遺伝子のPAT活性による除草剤耐性試験を行った.
著者
平塚 伸 渡辺 学 河合 義隆 前島 勤 川村 啓太郎 加藤 尉行
出版者
園藝學會
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.62-67, 2002-01-15
参考文献数
10
被引用文献数
5 9

ギ酸カルシウムによるニホンナシの摘花効果と, その機構について検討した.1%のギ酸カルシウム溶液を受精前の雌ずいに散布すると, 柱頭への花粉の付着と花柱内の花粉管伸長が明確に抑制され, 30&acd;40%の果実が落果した.一方, 同濃度の酢酸カルシウムや乳酸カルシウム溶液による摘花効果は認められなかった.有機酸カルシウムが花粉発芽に及ぼす影響をin vitroで比較すると, ギ酸カルシウムは他の塩より明らかに強い抑制力を示した.有機酸について同様に調査した結果, ギ酸の発芽抑制作用は際立っていた.以上の結果より, ギ酸カルシウムによるニホンナシの摘花機構は, ギ酸による受精阻害と考えられた.摘花されなかった果実の生長や成熟期の果汁糖度は, 対照区と殆ど差が認められなかった.このように, ギ酸カルシウムはニホンナシの摘花剤として利用できる可能性が示された.
著者
平塚 伸 渡辺 学 河合 義隆
出版者
園藝學會
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.62-67, 2002 (Released:2011-03-05)

ギ酸カルシウムによるニホンナシの摘花効果と、その機構について検討した。1%のギ酸カルシウム溶液を受精前の雌ずいに散布すると、柱頭への花粉の付着と花柱内の花粉管伸長が明確に抑制され、30~40%の果実が落果した。一方、同濃度の酢酸カルシウムや乳酸カルシウム溶液による摘花効果は認められなかった。有機酸カルシウムが花粉発芽に及ぼす影響をin vitroで比較すると、ギ酸カルシウムは他の塩より明らかに強い抑制力を示した。有機酸について同様に調査した結果、ギ酸の発芽抑制作用は際立っていた。以上の結果より、ギ酸カルシウムによるニホンナシの摘花機構は、ギ酸による受精阻害と考えられた。摘花されなかった果実の生長や成熟期の果汁糖度は、対照区と殆ど差が認められなかった。このように、ギ酸カルシウムはニホンナシの摘花剤として利用できる可能性が示された。
著者
工藤 暢宏 新美 芳二
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.428-439, 1999-03-15
参考文献数
16
被引用文献数
6 13

アメリカノリノキ(Hydrangea arborescens)の有する不良環境適応性を'セイヨウアジサイ'(H. macrophylla)に導入することを目的として, 両種間で正逆交雑を行った.1. H. macrophyllaとH. arborescensの花粉を塩化カルシウムとともに管ビンに入れ, -20, 5および20℃の温度条件で貯蔵し, その後の花粉発芽能力を経時的に調査した.-20℃で貯蔵した花粉の発芽能力は長期間(10&acd;12か月間)維持されたが, 5℃で貯蔵した花粉は, 5ヶ月で, 20℃で貯蔵した花粉は5日でそれぞれ発芽能力を失った.2. 自家, 種内および種間交配ではどの組合せでも両種の花粉は柱頭上で良く発芽し, 花粉管は花柱内を伸長して子房内の胚珠に達した.3. 自家および種内交配では, 両種とも完熟種子が得られた.しかし, 得られた完熟種子数は品種や組み合わせで異なり, さく果当たり種子数は, H. macrophyllaでは10&acd;54粒, H. arborescensでは19&acd;38粒であった.4. 得られた種子をポットと無菌培地に播くと, いずれの場合でも, H. macrophyllaでは58&acd;85%の発芽率であり, H. arborescensの発芽率は, 14&acd;52%の範囲であった.H. arborescensの実生の第一本葉には毛茸の発生があり, これが両種の実生を区別する形態的特徴であった.5. 種間交配では, 種子親にH. macrophyllaを用いた場合, わずかに種子が得られ, H. arborescensの場合, 種子が得られなかった.得られた種子を人工培地に無菌播種した結果, 実生が得られた.しかし, これらは幼植物期にすべて枯死した.6. H. macrophyllaを種子親にした種間交配では交配60&acd;150日後の胚珠を培養して実生が得られたが, 子葉展開後生育を停止しすべて幼植物期に枯死した.一方, H. arborescensを種子親とした種間交配では交配60日後の胚珠を培養して1個体の実生を得たが, 子葉展開直後に枯死した.7. H. macrophylla×H. arborescensで胚珠培養により得た実生の子葉に形成された不定芽を切り取り, BA添加培地で継代した結果, 根系をもつ植物体が得られた.その茎頂部に花粉親のH. arborescensに特有の毛茸が発生したため, 雑種植物であると判断した.再分化植物は生育が緩慢で試験管外では生育しなかった.