著者
稲垣 紀夫 藤田 正
出版者
奈良教育大学教育学部附属教育実践総合センター
雑誌
教育実践総合センター研究紀要 (ISSN:13476971)
巻号頁・発行日
no.14, pp.47-54, 2005-03
被引用文献数
1

本研究では、効果的な漢字学習方法の検討と、その学習過程のメカニズムを解明することを目的とした。実験では、漢字を直接書いて練習する「書字学習条件」と、紙面上に指で漢字を書いて練習する「空書学習条件」を新しく設定し、それらの学習方法が漢字の書き取りにどのような効果を持つのかについて2つの実験で検討した。特に「書字」と「空書」の違いについて、漢字学習法における学習過程のメカニズムを証明した。本研究で行った2つの実験結果により、(1)漢字学習に多く使われている書字学習法が、漢字の書き取りにおいて促進的な効果をもたらすことが証明された。また、先行研究において漢字を想起する場面でその有効性が示唆されてきた「空書学習法」が、漢字の学習においても有効であることが明らかになった。さらに、(2)「書字」と「空書」の学習法の違いは、「視覚情報の一時的な保持」、「筋肉運動的書字行為」、「書字結果の確認」の学習過程のうちの「書字行為の結果の視覚的な確認」の有無であることが明らかにされた。