著者
川島 高弘 小山 孝一郎 鈴木 勝久 岩上 直幹 小川 利紘 置田 彩子 福山 恒太 野田 亮
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.1-28, 1997-08

1996年2月11日20 : 00JSTに鹿児島宇宙空間観測所より打ち上げられた観測ロケットS-310-24号機により高度100∿160kmにおける窒素分子の振動温度, 回転温度, 数密度の同時観測に成功した。電子銃を用いて大気中の窒素分子を電離し, 窒素分子イオンからの発光スペクトルの1つである1st Negative Bandを高感度の分光器で測定することで各物理量を求めた。またこの実験の最中, 電離中間層が高度140km近辺に発生しており, 世界で初めて電離中間層中の中性大気の数密度, 温度を観測した。観測された温度の高度分布は通常の大気モデルと違い, 鉛直波長40kmほどの波動構造を示していることがわかった。この現象を潮汐波による変動と仮定して簡単な1次元大気物理シミュレーションを実行して検討した。振動温度に関しては本観測器で値を正確に決定できるほど高温に振動励起されておらず上限を与えるにとどまったが, 上限値は過去のO'neil (1974) の測定と矛盾しない。
著者
松本 敏雄 早川 幸男 村上 浩 松尾 宏 佐藤 紳司 Lange Andrew E. Richards Paul L.
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.121-126, 1989-03

K-9 M-80号機に搭載したサブミリメーター放射計の観測結果について, 特に短波長側に重点をおいて報告する。102μm, 137μm, 262μmの3つの波長帯での表面輝度の空間分布が銀河系内の中性水素の柱密度とよい相関があることが見出された。102μm帯ではこの銀河成分-星間塵の熱放射成分-と惑星間空間塵の熱放射成分によって観測値を説明できる。137μm帯ではこれ以外に一様に広がった放射成分が残るが, その起源については今のところ不明である。
著者
松田 淳 大津 広敬 藤田 和央 鈴木 俊之 澤田 恵介 安部 隆士
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-18, 2006-03

USERSミッションでは再突入フェーズを利用して,再突入時に発生する衝撃層内の輻射光の分光スペクトル取得実験が行われた.再突入カプセルの先端ノーズ部半径は0.55mで,再突入速度は約7.5km/sであった.高度約90km付近で取得されたスペクトルからは,従来の予測では考慮されていなかったOH,NH,CH等のアブレータと大気構成化学種との反応生成化学種からの発光が支配的であった.そこで,アブレーションを考慮したCFD解析を行い,その影響についての評価を試みた.その結果,壁面付近ではアブレータ起源化学種と大気構成化学種の反応化学種からの発光が無視できないほどの強度になることが示唆された.
著者
妹澤 克惟 渡邊 亘
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.11, no.143, pp.407-418, 1936-08

五六年前に我々の一人が,四邊を固定せる矩形板のバックリングの問題,即ち平衡の微分方程式は満足するけれども周邊の條件は近似的に充す解を提出してから,多くの學者が此問題に注目するやうになつた.例へばTaylor, Faxen, Weinstein, Trefftzの如きがそれである.バックリングの問題の解は同種類の彈性體の振動問題にも應用できるために,同じ矩形板の振動の研究も同時に附加へて置いたところが,之に對しても亦加藤,友近等の人々が注意してくれるやうになつた.但し友近の研究は場合も方法もTaylorのものと大體同じである.而してTaylor,友近兩氏は,Rayleighの勢力法則の法を以て我々の研究結果即ち限界荷重や振動數を律することができるかの如く解釋してゐるけれども,我々の研究結果は周邊の條件を初めから與へてをらぬから,それ等の解釋は多少的外れの氣味がないでもない.しかし一方に於てはDe La Liviereの如き航空技術の實際家が我々の研究結果を既に應用してゐるらしくも思はれ,從て以前に出した結果を少しでもよく直して置くことが義務のやうに考へられたので,このバックリング問題の再研究を試みたのである.再研究の方法は以前に出した解を今少しく一般化すればよいのであるけれども,それは結局Taylorの方法に陥ることになるから,たとひTaylorの場合は正方形板に對稱荷重の働くものだけしかやつてないとはいへ,研究的興味が薄らぐ.それで最近BatemanやCostelloが提出してゐるやうに周邊の傾斜の條件が初めから滿足するやうな解を作つて置き(我々が以前に出した解の形であるけれども),之をTaylorのやうに級數的に組合して行く方法を取つたのである.このやうにしても實際上は我々が以前に作つた解のそれよりも高次のものを更に二三項附け足すことに過ぎないのである.正方形板に周邊から對稱的に荷重のかかる場合をしらべて見ると,Taylorのと全く同じ結果となつた.正方形板中の他の場合は再研究を企てなかつた.何故なれば,正方形板のバックリングは實際問題上に應用がいくらか少いからである.一般的の矩形板にその長さの方向に荷重の働く場合を研究して見ると我々が以前に出したものと大體同じであるが, Faxenが別の方法で我々の計算と比較する爲に出した結果に非常によく似てをることがわかつたのである.何れにしても矩形板の長さが幅の二倍以上位になると,その長さが無限に長い場合とあまり變らぬことは以前の結論と同じである.WeinsteinやTrefftzの方法を用ひると限界荷重として許し得る値の上下の極限を算定できる筈であるけれども,それには板の屈曲の節線が如何なる位置を取るかといふことが先決問題である.しかも實際問題に大切な長矩形板の場合にこの節線が簡單には見出し得ないから,それ等の方法は餘り役に立たない.矩形板の振動問題も少しでもよく直して置くべきかも知れぬけれども,四邊固定の矩形板の場合は實際問題に餘り應用性がない上に,それを純理學的に考へても,振動勢力の逸散といふやうなことがあつて振動數が相當に變化するから,それだけ興味が少くなり從て只今のところでは手をつけない積りである.
著者
西村 敏充 市川 勉 牛越 淳雄 小坂 裕
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.70, pp.1-91, 1991-03
被引用文献数
2

The first Japanese Lunar swing-by spacecraft called 'HITEN' was launched from Uchinoura launching site, located at about l, 500km south-west of Tokyo, respectively on January 25,1990. The four-stage solid propellant boosters called M3SII-V for this purpose. The spacecraft successfully performed first lunar swing-by in March 18,1990. Tracking and orbit determination of the spacecraft have been smoothly carried out throughout this period using Usuda 64φ antenna. The major hardware modification for Usuda 64mφ antenna is the introduction of X band ranging and range-rate system (down link). As for the range-rate data, higher precision can be expected, at least theoretically, because of higher frequency than S band signals. In preparing for this mission, the software package ISSOP developed for 'SAKIGAKE' and 'SUISEI' mission in 1985 had been modified. The improvements were added to the rejection scheme of poor data, computation of the light-time equation and troposphere and ionosphere correction. In this report the structure and the improvements of ISSOP is first described. Then the result of orbit determination of 'HITEN' is discussed. In the future, this software package will be modified and used 'GEOTAIL' mission in 1992.
著者
妹澤 克惟 久保 慧
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.11, no.136, pp.105-159,Pl.1-Pl.3, 1936-02

翼のフラッターの問題は既に多くの人々に解かれた爲に最早研究すべき何物も殘つてをらぬやうに思はれてをつた.我々もそのやうな考へから二三の特別の場合の研究をした以外は餘り手をつけず,單に今までの多くの研究の綜合報告をなした位のものであつた.しかし,フラッターの問題は多くは翼の自由振動の不安定な場合であるとされてゐるけれども,よく考へると非常にむづかしく強制振動の共振の性質がないでもない.その點をはつきり決定し,且つフラッターの性質を深く確める爲に條件をできるだけ簡單にした實驗を試み,又その數理的豫告計算の結果と比較してみたのである.數理と實驗とを比較することによつて種々のことがわかつたが,實驗だけにしても,極限空氣速度のみでなく,種々の速度に於ける振動振幅並びに振動數を確めることによつて,振動の性質を明かにするやうに努力したのである.振動が送風器,風洞の空氣の振動,空氣の擾流中での週期的性質に直接關係しないことは特に確めて置いた.而して種々研究の結果として,フラッターは部分的には翼の自由振動の不安定によるけれども,部分的には不規則な流れの中での撰擇性共振によることがわかつた.この撰擇共振は翼の状態が自由振動の不安定になるその境附近だけで特に振動の感度が大きくなるから起るのであつて,他の力學的問題では只今の場合程感度の大きくなることのないことが知られる.この研究で尚わかつたことは,捩り軸が翼の前縁にあればある程補助翼附近の振動の場合の追隨流の影響が多く,從つてその場合に補助翼の見掛の附加質量が大きくなり,旦つ補助翼の効果的迎角が違つてくることがわかつた.フラッターの性質に二種類あり,その一つのものでは,流れの速度が極限速度な越すと翼の振動數が少しづつ増加し,その振幅は少しづつ減ずるものである.このやうな種類では安定曲線が上の方から零の線の附近まで下つてきたものがその近所から再び上の方へ向き變るやうな性質がある.この種類のフラッターは共振強制振動に多少の自由振動の不安定が伴つてゐるものと考へられる.極限値より低い風速に對しても多少急激ではあるげれども,振動の漸減性が示される.他の一つの種類のフラッターでは風速が極限値を越しても翼の振動數が殆ど變らぬものであり,又,振動振幅も減少せず,寧ろ増加氣味のことが多い.この場合の安定曲線は零の線を越えてからも,益々負の方へ下る一方である.この種類の振動では主として自由振動の不安定が問題となり,極限値の附近だけに強制共振が含まれるものと考へられる.以上二つの場合に對して極限値以上の風速に對して振動勢力の一定性といふ見方も作られるけれども,これだけではすべての場合を説明し難いやうである.この研究はフラッターの綜合的性質を比較するといふことよりも寧ろそれを分解して一つ一つの性質を明瞭にしたものであり,且つその一つ一つの性質を實物大の翼に擴張することはその性質がわかつてゐるだけそれだけ容易であるから,應用性の廣いものといはなければならぬ.次の研究として,翼の振れと補助翼との結合せるフラッターを研究中である.その場合と比較することによつて只今の結論があまり無理のないことが一層よく確められるやうに思ふ.
著者
三浦 裕一 石川 正道 竹之内 武義 小林 礼人 大西 充 吉原 正一 桜井 誠人 本多 克也 松本 昌昭 河合 潤
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-100, 2005-03

1990 年代に行われた宇宙実験によって,ピストン効果は,臨界点近傍において普遍的に成立する臨界減速(critical slowing down)に桁違いの速さで熱を伝える効果をもち,結果的に熱輸送は臨界加速(critical speedingup)するメカニズムとして作用することが明確となった.その速さは音速によって規定され,対流,拡散,輻射とは異なる,第4 の熱輸送メカニズムとして認知されるに至った.宇宙実験と平行して発展したピストン効果の理論的検討は,ピストン波が加熱ヒーターの境界層で断熱膨張によって励起され,バルク流体中を高速に伝播することを明らかにした.このような研究の進展において,次の点がいまだ不十分であることが明らかとなった.(1)これまで行われたピストン波の観測は,高々ビデオ収録の時間分解能(1/30 秒)の範囲であり,音速(〜 100 m/s)から見積もられる進行速度と比較すると,実際に観測された現象は試料セル内を数100 往復した後の現象しか捉えていない.すなわち,ピストン波の素過程を直接見たとは言えず,平均化された間接的な効果しか見ていない.(2)実験的に実現された臨界温度への接近は,高々T - T_C 〜 30 mK であり十分臨界点に近いとは言えない.(3)小貫による精密な動的臨界現象理論によると,ピストン波に強い影響をもつ体積粘性係数(bulk viscosity)は,臨界温度T_C に十分近づいた場合に強く発散する.しかしながら,これまでのピストン効果の実験研究では,このような効果に関する観測事実は全く報告されていない.すなわち,理論と実験的事実とが食い違っている,あるいは実験が理論に追いついていない.そこで,我々の研究の目的は,上記の研究の不足を克服することを目的として,(1)音速で伝播するピストン波の素過程を直接観測する.(2)臨界温度への接近は,T - T_C 〜 1 mK を実現する.(3)ピストン波の直接観測により,ピストン波の熱輸送量をT - T_Cを関数として定量的に計測する.これによって,動的臨界現象理論が成り立つかどうかを検証する.このような高精度の実験を前提とした研究目的を実現するためには,微小重力環境を利用することは不可欠である.特に,理論と実験との食い違いを克服し,新規な動的臨界現象理論を実証するためには,重力効果による未知の効果を取り除き,不必要な可能性を排除することは極めて重要である.本研究では臨界流体を用いた欧州のフライト実験で観測されているピストン効果について,その素過程からの解明を目指した地上実験を実施してきた.我々が技術開発を進めた結果,多段の熱シールドからなる温度制御・測定系を構築し,常温において± 1 mK の精度で温度制御することが可能となり,マイクロ秒レベルのパルス加熱によって,臨界点近傍で相関距離に近い厚みの熱拡散層を励起できるようになった.さらに,マイケルソン干渉計とフォトマルを組み合わせた光学測定系を構築し,相対密度感度7 桁の精密測定によりマイクロ秒のオーダーでの高速現象の観測を可能にした.このような技術開発は,従来の実験技術を格段に上回るものであり,従来全く得ることができなかったピストン波の特性を定量的に測定することを可能とし,ピストン波の発信に伴うエネルギー輸送の効率計測,流体全体が音速で瞬時に均一に温度上昇する断熱昇温現象の観測,また,理論的にのみしか予想されていなかった臨界点に極めて近い領域における動的な輸送係数の発散を初めて観測するなど,極めて多くの知見を得ることに成功した.また,臨界点近傍のピストン効果ダイナミクスは重力に強く影響することも明らかにし,微小重力実験の有望性を実証した.このような技術開発の蓄積を踏まえ,ロケット実験を想定した実験装置の小型化およびリソースの軽減,臨界流体を扱う場合避けることのできない臨界タンパク光散乱によるSN 比の低下を回避するための宇宙用赤外干渉計の新規開発,試料充填時における臨界密度の設定誤差低減に関する試料取り扱い技術の向上,実験計画の作成など,宇宙実験実施に関わる中核技術の開発と運用構想を作成し,その有望性を評価した.
著者
木村 秀政
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.18, no.243, pp.392-431, 1942-11

This paper discusses how the lateral stability characteristics are affected by the changes of factors such as vertical tail volume, dihedral, radius of gyration, wing loading and altitude of flight. The conclusions are shown in the following table. [table]
著者
藤井 良一 福西 浩 国分 征 杉浦 正久 遠山 文雄
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
no.25, pp.p113-119, 1990-01

1989年3月13日の大磁気嵐中に, EXOS-Dに搭載されたフラックスゲート磁力計により観測された沿磁力線電流(FAC)の特性について報告する。本磁気嵐は地磁気観測史上有数の磁気嵐であり, その間にEXOS-Dは午前昼間側及び夕方側で大規模なFACを観測した。午前側のFACの特性は, 1)地磁気嵐主相では, 地磁気緯度で50°から80°にも及ぶ広いFAC領域が観測された。2)FACの極性は, 低緯度から上向き, 下向きのFACの他にそれらの高緯度側に上向きの大規模FACが出現した。3)この高緯度側の上向きFAC高緯度境界に狭い緯度巾(1.5°)のペアーのFACが観測された。夕方側のFACの特性は, 1) FACの低緯度側境界はSSCの直後から低緯度側に移動しはじめるが, 高緯度側境界は即座には反応しない。2)磁気嵐の回復期には逆に高緯度境界は直ぐに反応し高緯度側に移動しはじめたが, 低緯度側境界は遅れて反応した。
著者
鈴木 広一 苅田 丈士 甲斐 高志 小林 弘明 高嵜 浩一 廣谷 智成 倉谷 尚志
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-20, 2008-01

宇宙航空研究開発機構では,将来の宇宙輸送システムコンセプトの絞り込み,開発すべき技術課題の抽出,および現状技術の改善目標を設定するため,概念設計ツール(Systems Evaluation and Analysis Tool: SEAT)を開発中である。本報告書では,まずSEAT開発の目的,開発シナリオをまとめ,開発した雛形ツールについて報告する。ついで,代表的なエンジンの評価を行うため,雛形ルールを用いて5種類の宇宙輸送システムの概念設計を行った。本報告書では,液体ロケットエンジン,Turbine-Based Combined Cycle(TBCC)エンジン,およびRocket-Based Combined Cycle(RBCC)エンジンを対象とした。概念設計は,全備重量が最小となるように行った。その結果,母機,軌道機共にロケットエンジンを使用する二段式宇宙往還機のコンセプトが,最も軽量となる結果が得られた,本システムはエンジン搭載性についても問題がなく,最も現実的なシステムである。TBCCエンジンやRBCCエンジンといった空気吸い込み式のエンジンを使用する場合には,必要なエンジン基数が多くなり,その搭載性に問題があるという結果が得られた。
著者
狩野 廣之
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所彙報
巻号頁・発行日
vol.114, pp.69-73, 1934-02
著者
小塩 高文 東野 一郎 笹沼 道雄 増岡 俊夫 久田 秀穂
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学宇宙航空研究所報告 (ISSN:05638100)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.1195-1207, 1966-09

太陽水素ライマンアルファー線(1,216Å)ふく射強度の高度分布を求めるために次のような三つの電離箱をロケットに載せて観測を行なった. 1)各電離箱はNO(10cmHg)気体で充され,LiFの窓を持っている. 2)直流増幅器の入力抵抗は検出器No.1,No.2およびNo.3についてそれぞれ10^8,10^9,および10^10オームである. ロケットは1965年12月13日15時20分に鹿児島宇宙空間観測所より東南55度の方向に打ち上げられ,319kmの高度に達した.ふく射強度の高度分布から吸光係数(μ_p),および吸収率密度(単位体積当り吸収される光子の数α)が求められた.αの最大値の高度は85kmであった.酸素分子の密度分布は高度80,85,90kmでそれぞれ1.1×10^14,4.0×10^13および2.0×10^13particles/cm^3と推定された.高度40kmから70kmにわたって異常なふく射強度がある限られた到来方向で観測された.記録の波形から,この異常ふく射は太陽ふく射とは異なるものであり,その強度は高さの増加につれて減少しているようである.おそらくロケットに伴う衝撃波によるものと考えられる.