著者
山本 明 安部 航 泉 康介 板崎 輝 大宮 英紀 折戸 玲子 熊沢 輝之 坂井 賢一 志風 義明 篠田 遼子 鈴木 純一 高杉 佳幸 竹内 一真 谷崎 圭裕 田中 賢一 谷口 敬 西村 純 野崎 光昭 灰野 禎一 長谷川 雅也 福家 英之 堀越 篤 槙田 康博 松川 陽介 松田 晋弥 松本 賢治 山上 隆正 大和 一洋 吉田 哲也 吉村 浩司 Mitchell John W. Hams Thomas Kim Ki-Chun Lee Moohyung Moiseev Alexander A. Myers Zachary D. Ormes Jonathan F. Sasaki Makoto Seo Eun-Suk Streitmatter Robert E. Thakur Neeharika
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.81-96, 2008-02

本研究は,南極周回超伝導スペクトロメータによる宇宙線観測(BESS-Polar 実験)を通して,『宇宙起源反粒子,反物質の精密探査』を目的としている.地球磁極領域に降り注ぐ低エネルギー宇宙線に注目し,反陽子スペクトルを精密に測定して,衝突(二次)起源反陽子流束の理解を深めるとともに,『原始ブラックホール(PBH)の蒸発』,『超対称性粒子・ニュートラリーノの対消滅』等,初期宇宙における素粒子現象の痕跡となる『宇宙(一次)起源反粒子』を精密探査する.反ヘリウムの直接探査を通して,宇宙における物質・反物質の存在の非対称性を検証する.同時に陽子,ヘリウム流束を精密に観測し,これまでのカナダでの観測(BESS実験,1993-2002)の結果と合わせて,太陽活動変調とその電荷依存性について系統的に観測し,宇宙線の伝播,相互作用に関する基礎データを提供する.本研究では,これまでのBESS 実験で培われた超伝導スペクトロメータによる宇宙線観測の経験をもとに,低エネルギー領域での観測感度を高め,南極周回長時間飛翔を可能とする超伝導スペクトロメータを新たに開発した.2004年12月13日,南極(米国,マクマード基地)での観測気球打ち上げ,高度37km での9日間に及ぶ南極周回飛翔に成功し,9億イベントの宇宙線観測データを収集した.運動エネルギー0.1〜1.3GeV の範囲に於いて,これまでの約4倍の統計量でエネルギースペクトルを決定した.結果は,衝突(二次)起源モデルとよく整合し,一次起源反陽子の兆候は観測されていない.太陽活動が極小期にむけた過渡期にあたる2004年の観測として予想に沿った結果を得た.反ヘリウム探索は,これまでのヘリウム観測の総統計量を2倍以上に高め,反ヘリウム/ヘリウム比の上限値を2.7×10^<-7>にまで押し下げた.本報告では,BESS-Polar(2004年)の成果を纏め,次期太陽活動極小期(2007年)における第二回南極周回気球実験計画を述べる.
著者
小川 俊雄 安原 通博 藤田 晃 香西 和子 川本 洋人
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学宇宙航空研究所報告 (ISSN:05638100)
巻号頁・発行日
vol.14, no.3, pp.991-1000, 1978-08

1977年10月3〜4日に,成層圏の二つの異なった高度(20km及び26km)において,超低周波(ELF)帯の垂直電界成分を約24時間にわたって観測した.これから,シューマン共振が第7モード(44.9 Hz)まで存在し,共振電力のピーク周波数にライン・スプリッティングがあることを見い出した.高度による共振電力の差が第2モードに観測された.共振周波数と共振電力の日変化と,Q型バーストの例を得た.また,50Hz(商用電源周波数)のノイズが観測された.
著者
上田 裕子 小堀 壮彦
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.1-8, 2006-04

We examined a distributed computing middleware conformable to IEEE Standard 1516, High-Level Architecture/Run-Time Infrastructure(HLA/RTI). That is applied for parallel developments of H-IIA Transfer Vehicle(HTV) simulator by JAXA and International Space Station(ISS) simulator by NASA. A network emulation tool is used for distributed experiments to actualize reproducible network environments on various conditions. The dependencies on bandwidth and delay of the network as well as the other factors which affect the performance of applications are shown.
著者
稲富 裕光 王 躍 菊池 正則 中村 龍太 内田 祐樹 神保 至
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.1-18, 2005-03

本報告では,半導体結晶の溶液成長過程における以下の研究成果を述べる.(1)半導体結晶の溶液成長過程における固液界面の形態変化に及ぼす基板結晶の面方位の影響を調べるために近赤外顕微鏡を使ったその場観察実験が実施された.その結果,対流を抑制することでGaP/GaP成長界面のステップカイネティクス係数の面方位依存性が得られ,結晶成長時におけるマクロステップの挙動が評価された.また,GaAs_xP_<1-x>/GaPヘテロLPE 成長初期の固液界面の表面形態変化が基板表面の面方位依存性の視点から議論された.(2)静磁場THM 法によりTe 溶液から育成したCdZnTe 結晶の成長界面が急冷法によって調べられた.その結果,浮力対流を抑制することで速い引き下げ速度でも良質なCdZnTe 成長結晶を得られることを示した.
著者
工藤 英明
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学航空研究所集報 (ISSN:05638097)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.212-246, 1959-03

軸対称鍛造および押出加工問題に上界接近法を適用し,加工硬化しないLevy-Misesの剛塑性材料が圧縮,押出,上昇穿孔および向合押出鍛造加工を受ける場合の所要力,変形および欠陥について解析を行ない,新しい知識を得るとともに今まで実験的にのみ知られている事実の説明ができた.さらに工具と材料間にCoulomb摩擦が存在する場合ならびに材料が加工硬化する場合についての上界接近法についての考察を行なった.
著者
齋藤 実穂 齋藤 義文 向井 利典 浅村 和史
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-33, 2005-11

本研究の目的は,磁気圏in-situ 高温プラズマ観測において,電子ダイナミクスを解明する高い時間分解能を得ることができる,新しい方式による検出部の開発である.MCP(microchannelplates)と位置検出マルチアノードからなり,ASIC(Application specific integrated circuit)技術を取り入れるところが新しい.ASICとマルチアノードの組み合わせは,最も高速な信号処理を可能にするだけでなく,同時に小型,軽量,低消費電力な検出部になると期待が持てる.これを可能にする基盤技術は,ASICをアノード基板(セラミック)の裏面へ直接搭載することである.アノード表面は,多数の個別アノードを構成する導体パターンが,プリントしてある.このアノード基板をはさんだ,表と裏の導体パターンによる静電容量を,信号検出に用いる.これは,アノード表面の高電圧と信号処理系を絶縁する,高電圧絶縁コンデンサーの代用である.アノード基板は,厚さ1mmのアルミナであり,導体パターンでつくる.基板利用コンデンサーの静電容量は3pFである.これは通常,信号検出に用いられる,高電圧絶縁コンデンサーの静電容量より2桁小さい.高電圧絶縁コンデンサーを,この極めて小さい静電容量で代用できるかというのは,小型化を目的としてた電子検出部として,ASICを採用できるかどうかの決定要素であった.しかしながら,われわれの実験結果は,低静電容量による信号の減衰はあっても約50%であることを示した.厚さ1mmというのは,構造強度の要求を満たすので,この基板利用コンデンサーは,衛星搭載機器に利用できる設計概念である.次に個別アノード間の静電カップリングを測定した.多くの個別アノードが有効面積を大きくとれるように互いに隣接した構造をとる.マルチアノードシステムでは,重要な検討項目である.その結果,基板利用コンデンサーを使用するアノードは,隣接する個別アノード間に10%のクロストークがあった.一方で,アノードと処理系を直結させる場合では,電気的クロストークは無視できるレベルである.よって,電気的クロストークも,基板利用コンデンサーの低い静電容量の影響である.10%のクロストークは,アノード運用時,信号レベルの適切な設定により十分回避できる大きさであるが,将来的には,静電容量を大きくとるほうが望ましく,今後の課題である.今回,ASICはローレンスバークレー研究所が開発してきたSSD用の荷電アンプ,ディスクリミネータ,カウンターまでを含むチップを用い,マルチアノードを試作した.このチップのサイズは,およそ1.2mm×1.2mmである.実際に,イオンビームを照射し,試験した結果,われわれの新しいタイプのマルチアノードは,さらに研究を進める必要があるものの将来の磁気圏ミッションで,高時間分解能な高温プラズマ観測へ適用可能できると結論する.
著者
中川 貴雄
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.28, pp.133-141, 1991-03

赤外線観測による星形成領域の最近の研究について, 概説を行う。太陽程度の質量を持つ星は, 分子雲中の高密度コア内で生まれる。高密度コアは乱流によっては支えられてはおらず, 10^5年程度の自由落下時間でつぶれて, 星を形成する。こうして形成された星は, 最初はダスト雲に包まれているために, 可視光ではみることができないが, 進化が進むにつれてダストが晴れ上がり, 可視光で見ることができるようになる。これらの若い星には, ディスク上の濃い雲が付随している。このディスクの存在は, 近赤外域での偏光観測や, 赤外域でのエネルギー分布などから要請される。IRASによって観測された若い星のエネルギー分布の変化は, ディスクをもった星のシステムが, 周りのダストを吹き飛ばしながら進化していくと考えれば説明することができる。中心星の周りのディスクは, 惑星系の形成に決定的な影響があるはずである。次世代の観測装置により, このディスクの直接的観測が可能になるであろう。
著者
小川 太一郎
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京帝國大學航空研究所報告
巻号頁・発行日
vol.21, no.289, pp.71-146, 1944-04

本論文の第I編では,先づ横滑りを伴はない水平旋回飛行に對する運動方程式をたて,與へられた飛行機のバンク角の時間變化を基礎とし,旋回中の速度の時間變化を求め,次で旋回半徑,旋回角,旋回徑路,各舵角等を順次に算出し得る解析法を述べた.この解析法の計算例として,N. A. C. A.に於けるボート"O3U-1"偵察機の水平旋回飛行の實測結果を解析したが,速度變化が小さ過ぎて出た以外は實測結果と可成り良く一致した.この不一致の原因は上げ舵に伴ふ無意識的な上昇にあると考へられる.次に上記ボート"O3U-1"偵察機に對する計算の數値を參考とし,省略可能の項を出來るだけ省略し,計算を簡易化して實用的な解析法を作つた.この解析法を用ひて,再びボート"O3U-1"偵察機の實測結果を解析して見た.この結果も亦實測結果と可成り良く一致したので,之を實用解析法とした.第II編に於ては,第I編で得た實用解析法を基として,失速角を迎角變化の頂點とする-以下第1種と稱する-180°水平旋回飛行の計算法を2通り案出した.計算方法其の一は豫め初速度と初めの補助翼の操舵量と旋回中の最大バンク角とを與へ,更に補助翼の當て舵の量,或は最大バンク角の繼續時間,或は旋回中に許すべき最大揚力係數の何れか一つを指定して,旋回中の諸數値を算出する方法である.計算方法其の二は,初速度と初めの補助翼の操舵量とを與へ,最大バンク角の繼續時間と旋回中に許すべき最大揚力係數とを指定して,旋回中の諸數値を算出する方法である.前者は,旋回條件を種々變へて,その影響を調べようと云ふ場合,或は與へられた飛行機の或る速度での最良の旋回性能を算出しようと云ふ場合等に用ひられる方法であつて,後者より幾分計算が簡單である.後者は,實際の補助翼操舵状況の分つてゐる飛行機に於て,その操舵状況に似た操舵角變化を與へ,それによつて,180°水平旋回飛行を計算し,實測結果と比較してみようと云ふやうな場合,或は操舵形式を一定として置いて,旋回條件を種々變へ,それによつて,最大加速度やその他の旋回状況が如何に變化してくるかを調べようと云ふ場合等に用ひられる方法である.計算方法其の二によつてボート"O3U-1"偵察機の180°水平旋回飛行を計算してみた.その結果,速度,旋回角以外の諸數値の時間變化曲線に滑かでない部分が出るが,大體に於て實測結果と良く一致することが明らかとなつた.之等の計算方法を用ひ,旋回條件を種々變へて,ボート"O3U-1"偵察機(全備重量1.84瓲),A双發陸上機(全備重量9.0瓲),B陸上機(全備重量9.0瓲),及びC陸上機(全備重量1.44瓲)の大小4機種について180°水平旋回を精しく調査して,旋回性能向上の指針とした.更に180°水平旋回に入る時の限界初速度の求め方,及びこの限界初速度より旋回に入る急速180°水平旋回飛行の極く簡單な略算法を與へ連續旋回について考察した.又旋回角と旋回中の最大加速度とを與へて,旋回に入るときの限界初速度,平均旋回半徑,旋回時間等を簡単に讀取り得る圖表の作り方を述べ,C陸上機についての一例を示した.この結果最小旋回半徑を基準とする翼荷重の決定法を與へて初期設計の参考とした.第III編では失速角保持の一以下第2種と稱する一旋回飛行の計算法を述べ,この第2種の方が旋回性能向上の見地から第1種よりも有利であることを結論した.終りに,從來より設計に際して廣く用ひられてゐる定常圓運動としての旋回運動の計算結果と本計算方法による計算結果とを比較してみた.その給果,從來の定常圓運動としての計算方法は,一般に180°水平旋回性能の計算には適用出來ないことを明らかにした.第IV編では斜平面旋回といふ新しい考へ方を導入した.先づこの旋回の計算法について述べ,次に水平面内の旋回のみを考へれば,バンク角90°といふ垂直旋回は理論上實在し得ないものであるが,斜平面旋回の頂點では,バンク角は90°以上にもなり得ることを示した.旋回性能向上の見地からも,この斜平面旋回は極めて重要な意義をもつ.第V編では下げ翼による旋回性能の向上について論じた.
著者
斎藤 尚生
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告. 特集 (ISSN:02859920)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.69-87, 1986-09

太陽光球面(γ=1 R_<&ofcir;>)には複雑な磁場が分布している。しかし太陽風がRADIALに吹き出す仮想的な球面(いわゆる流源面, γ=2.6 R_<&ofcir;>)まで離れると, 磁場分布は極めて双極子的になり, しかも流源面上では磁極が11年毎に「回転」反転することが実証された。流源面上でのこの系統的な変化の原因は, 勿論光球面磁場の大局的分布にあり, 特に回帰性地磁気嵐の現われる活動下降期には, 光球面緯度に, 観測し易い巨大斑磁場となって現われ, これが磁軸を傾けていることが分った(GBMR MODEL, GBMR=GIANT BIPOLAR MAGNETIC REGION)。さて今これらの関係を惑星磁場の成因に適用してみると, 流源面は惑星表面, 光球面は核表面に置き換えることができる。磁場が相対的に大きい水星, 地球, 木星, 土星の4惑星に対して, 水星の火山分布, 地球の低緯度HOT SPOT, 木星の大赤班が, 磁場の傾きに対して巨大斑磁場に対応する関係が見出された。従って太陽に関するGBMR MODELは, 少なくとも一部の天体の磁軸を傾けている原因を広く説明し得る可能性が生じてきた。
著者
荻原 妙子 土屋 荘次 倉谷 健治
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
東京大学航空研究所集報 (ISSN:05638097)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.260-277, 1963-03

二酸化窒素によるポリエチレンの酸化反応について.赤外線吸収スペクトルによって反応生成基の確認と反応機構についての研究を行なった.フィルム試料と二酸化窒素を封入した反応容器を温度調節したシリコン浴中に浸し,反応を行なった.反応後,フイルム試料を赤外線分光器によって4000〜400cm^<-1>の範囲のスペクトルを測定した.酸化ポリエチレンに新しく出現した吸収帯の帰属を行なうために,いくつかの有機硝酸エステル,亜硝酸エステルなどを合成し,その赤外線吸収スペクトルを測定した.これらのスペクトルと,酸化反応後の試料フイルムを種々な条件で処理した際に生ずるスペクトル変化などの比較によって,ニトロ基,亜硝酸基,硝酸基,カルボニル基,水酸基の生成を確認した.以上の反応生成基のある一定温度(100℃)における量的な時間変化を測定すると,反応初期にはまずニトロ基と亜硝酸基が現われ,その生成量の比は約2:1である.ニトロ基は反応時間の経過と共に単調に増加するが,亜硝酸基はある時間後に極大値に達し,減少し始める.それと同時に硝酸基.カルボニル基,水酸基の吸収が現われ,増加し始める.これらの事実より,次の反応機構が結論される.酸化反応は,ポリエチレン内に生成した反応活性点に二酸化窒素のN原子が付加することによってニトロ基が,O原子が付加することで亜硝酸基が生成することから開始する.反応後期においては,ニトロ基は安定で,亜硝酸基が更に分解を受けて硝酸基,カルボニル基,水酸基などを生成する.反応初期に生成する反応活性点は,二酸化窒素によるポリエチレン主鎖からの水素原子の引き抜き反応によって生じた遊離基である.しかし,室温下の反応ではこの水素引き抜き反応は起らず,ポリエチレン内に残存する二重結合,遊離基などと二酸化窒素との付加反応が主反応である.水素引き抜き反応に対する測定された活性化エネルギーは,14kcal/moleであった.
著者
飯嶋 一征 井筒 直樹 福家 英之
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告 (ISSN:13491113)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.117-128, 2006-01

平成11年から数回にわたり東京薬科大学による航空機を用いた成層圏,対流圏での大気中粉塵のサンプリングが行われ微生物の採取が行われた.その結果,大気圏上空では地上で採取した菌よりもより強い紫外線耐性の菌が多く存在していることが明らかとなった.しかし,航空機を用いた実験では飛行高度の限界が12km であった.それ以上の上空にはより紫外線に強い菌の存在が予想される.そこで,より高高度での観測と長時間の大気採集が可能にするため大気球を用いた成層圏における微生物採集実験が計画された.宇宙科学研究本部では微生物採集装置の開発,製作を行い気球に搭載して微生物採集実験を行った.本論では新採集装置の開発,製作,本装置を使用した計2回の微生物採集実験の飛翔結果について報告する.