著者
大塚 みさ
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = Jissen Women’s Junior College Review (ISSN:24344583)
巻号頁・発行日
vol.44, pp.9-18, 2023-03-10

外来語の数の多さや意味の分かりづらさがしばしば話題となっている。公共性の高い場面での外来語の使用や、「外来語弱者」と呼ばれる高年層には配慮が必要であることは言うまでもないが、これから社会で活動する大学生には、必要に応じて馴染みのない外来語を積極的に習得する姿勢が求められるのではないだろうか。本稿では、その一助となる教材の開発に必要な外来語語彙のレベル別整理を目指した試みを報告し、その検証と今後の課題の検討を行う。
著者
齋藤 順一
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学人間社会学部紀要 = Jissen Women's University Studies of Humanities and Social Sciences (ISSN:24323543)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.119-131, 2022-03-31

本稿の目的は、臨床現場(特に保険医療分野)でCBT を使いこなすため、CBTにおける転移と逆転移の理解を深めることであった。そのために、まずCBTの治療関係や治療構造について整理し、CBTでは協働的実証主義という治療関係や治療全体の構造化により、転移と逆転移を最小限に抑えることで、効率よく現在の問題に取り組むことができるように図られていることを確認した。しかしながら、パーソナリティ障害の傾向が強いクライエントの場合、転移と逆転移についての洞察に注意を払う必要があり、対人関係スキーマを検討することの意義が述べられた。最後に、対人関係スキーマを検討するため、スーパービジョンを活用することや、セラピストのマインドフルネスが重要であることが述べられた。
著者
三浦 宏文
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = The Bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:21896364)
巻号頁・発行日
vol.37, pp.63-78, 2016-03-20

本稿では、日本の刑事ドラマである『踊る大捜査線』シリーズの初期の作品に注目して、この作品の社会的・哲学的背景を考察した。『踊る大捜査線』では、90 年代後半のバブル経済崩壊後において「誰かのために」「誰かとともに」生きるという哲学を主人公青島俊作刑事の行動指針として描いていた。これは、自己実現や成果主義とは異なり、仏教哲学者椎尾辨匡の「共生(ともいき)」思想に繋がる新しい生きる指針であった。
著者
三浦 宏文
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学短期大学部紀要 = The Bulletin of Jissen Women's Junior College (ISSN:24344583)
巻号頁・発行日
vol.40, pp.43-55, 2019-03-09

本稿では宮沢賢治の作品を引用する映画『幕が上がる』に表れた初期仏教思想を検討した。本映画中で富士ヶ丘高校演劇部員たちが吉岡先生の退職という喪失から立ち上がって行く仕方は、仏弟子達がブッダの入滅を体験する中で「自らをたよりとし、法をよりどころとして生きていく」という後の「自帰依」「法帰依」と言われる教えによって乗り越えていく姿と酷似していた。そして舞台『幕が上がる』ではそこからさらに「お互いの喪失を救い合う」という大乗仏教の境地にまで進められていたのである。
著者
河野 龍也
出版者
実践女子大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

2020年度は、当初の計画通り、台南の台湾文学館における展示企画「百年の旅びと:佐藤春夫1920台湾旅行文学展」(百年之遇:佐藤春夫1920臺灣旅行文學展)に本研究課題の成果を活用した。展示に関する具体的な業務では、全体構成と展示品説明、翻訳等を担当した。展示期間は当初、2020年4月3日から11月29日までの予定であったが、好評のため2021年2月28日まで延長した。しかし、延長後も防疫上の渡航規制が解除されず、会期中一度も参観することはできなかった。また、国際交流行事がすべて中止され、研究者の連携や関係者への新規取材を進めることができなかった。ただし、この展示によって佐藤春夫の台湾での知名度が飛躍的に向上し、今後の研究連携や情報集約の基礎固めができた意義は大きい。また、資料写真と説明文を使って、台湾文学館がデジタルミュージアムを構築し、会期終了後もホームページで公開を継続している。これには日本語版・中国語版があり、日本からもアクセスできる。展示に合わせて図録を兼ねた論文集を台湾で出版し、その編集と執筆も担当した。そのほか、佐藤春夫の台湾旅行関連作品を9編集めた『佐藤春夫台湾小説集 女誡扇綺譚』(中公文庫)を編集し、解説を執筆した。春夫の「台湾もの」が文庫版になるのは、1936年の単行本『霧社』(昭森社)出版以来これが初めてである。また解説には、特定された作品の舞台に関する情報や、旅行日程に関する従来説の再検討など、本研究および本研究にいたる過程で明らかすることができた最新の成果を反映させ、一般的な作家紹介・作品紹介にとどまらない内容を盛り込めた。論文は春夫の「台湾もの」の一つ「鷹爪花」のモデルと虚構化の手法に関するもの1点、春夫の台湾観に「故郷の喪失」のテーマを指摘したもの1点(前記論文集所収)、『南方紀行』に関する論考を再構成して中国語訳したもの1点を発表した。
著者
齋藤 順一
出版者
実践女子大学
雑誌
実践女子大学人間社会学部紀要 = Jissen Women's University Studies of Humanities and Social Sciences (ISSN:24323543)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.39-47, 2021-03-31

我が国において、うつ病に対する認知行動療法(cognitive behavioral therapy; CBT)は治療の選択肢の一つとして推奨されているが、人的・物理的に高コストであることが問題となり、実施率は低い。この問題を解決するため、コンピュータ・ベースやWeb ベースでの認知行動療法(computerized cognitive behavior therapy; CCBT)が期待されており、近年では、スマートフォンを用いたCCBT が注目されている。しかしながら、CCBT は、利用者のドロップアウトが多いことや、長期的に効果が持続しないことなどが指摘されている。うつ病に対するCCBT を発展させていくためには、うつ病に対するCBT の構成要素(有効成分)を理解することが役立つと考えられる。そこで、本稿では、うつ病に対するCBT の構成要素を検討している研究を紹介し、それらの知見を整理することで、うつ病に対するスマートフォンを用いたCCBT の展望について述べることを目的とした。 CBT の技法に関わる要素では、行動活性化、感動調節スキル(マインドフルネスを含む)が重要な構成要素であることが示された。一方、CBT の技法以外の要素が、重要な構成要素であることが示され、うつ病に対するスマートフォンを用いたCCBT においても、これらの要素を組み入れる必要があることが示唆された。具体的な方法として、チャットボットの利用などが考えられた。最後に、経験豊富なCBT 実践家や研究者が開発に関わることで、エビデンスに基づく包括的なCBT のスマートフォンアプリを開発していくことの必要性が述べられた。