著者
近藤 有紀 葛西 敦子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.123, pp.165-173, 2020-03-31

本研究は,大学生の中でも今までに一回もたばこを吸ったことがないと自己申告した非喫煙者(以下;非喫煙大学生)を対象に質問紙調査を実施し,非喫煙大学生が喫煙者やたばこに対し抱く嫌悪意識に関する要因を明らかにすることを目的とした。370名(男性112名,女性258名)から回答を得た。①370名のうち38名(10.3%)がたばこの『煙』,87名(23.5%)がたばこの『におい』が気になると回答していた。②たばこの『煙』を嫌だと「感じる」者は311名(84.1%),たばこの『におい』を嫌だと「感じる」者は301名(81.4%)であった。③非喫煙大学生が喫煙者やたばこに対し嫌悪意識を抱く要因に関する因子として,第1因子「喫煙者への負のイメージ」,第2因子「人的背景」,第3因子「周囲への影響」,第4因子「においの影響」,第5因子「マナー違反」の5因子が抽出された。本研究で,非喫煙大学生は,たばこの『煙』や『におい』に嫌悪意識を抱いている者が9割以上おり,特にたばこの『におい』に嫌悪意識を抱いていることが明らかとなった。
著者
大谷 良光 立田 健太 井上 怜央
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.96, pp.51-60, 2006-09-29

:ねぶた・ねぶたが青森県内の学校教育との関わりを深めつつあると思われる現在、ねぶた・ねぶたへの子どもの関わりの現状と子どもの祭りへの意識を調べる目的で、青森市、弘前市の小学校4年生を対象として調査した。その結果、両市とも観覧率は高く、また運行への参加率は約70%であった。運行では9割以上のこどもが、ねぶたがハネト、ねぶたが曳き手と参加していた。弘前市の方が地域ねぶたへの参加状況が多く、鳴り物での参加率が高かった。ねぶた・ねぶたの製作やお手伝いは、地域祭りが主で、大型ねぶた5%、合同運行16%と小学校4年生ではその関わりは少なく、その内容は紙貼りが主であった。祭りへの意識は高く、子どもなりに誇りと自覚を持ち、将来の職業の夢として25%がねぶた師を抱いていた。
著者
安野 眞幸
出版者
弘前大学教育学部
巻号頁・発行日
1996-03

平成6,7年度科学研究費補助金(一般研究(C))研究成果報告書 ; 課題番号06610299
著者
三浦 俊一 大谷 良光 大野 絵美
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.102, pp.125-132, 2009-10-30

弘前市のねぷた運行団体と子ども、学校教育との関わりの現状と意識について明らかにする目的で、81運行団体に質問紙調査を依頼し、53団体(回収率65%)より回答を得た。子どもたちの祭りへの参加状況は囃子が1団体約40名、かけ声・引き手が80名で、運行への参加数は、囃子もかけ声・引き手も減少傾向が見られた。また、36%の運行団体が、学校教育との関わりをもち子どもたちに指導・支援を行っており、66%の団体が、今後学校からの要請があれば対応すると回答した。さらに、ねぷたを学校教育で活用することが、伝統文化の継承や地域の活性化に寄与すると考えている団体は、いずれも9割を超え、学校教育への高い期待感をもっていることがわかった。これらの結果から「提言」をまとめ関係者に届けた。
著者
朝山 奈津子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Hirosaki University (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.122, pp.67-75, 2019-10

1815年のネーデルラント連合王国の成立から1830年のベルギー独立、1914年の第一次大戦勃発に至る100年間は、ドイツ語圏で音楽雑誌が相次いで刊行されて情報の流通が活発化し、またキーゼウェッターG. R. Kiesewetter(1834)、ブレンデルF. Brendel(1852)らの通史によって、ドイツ語による音楽史が形成された時期に当たる。また、1826年のオランダ政府による論文公募は、「ネーデルラント楽派」という言葉と概念が定着する契機となった。 本稿では、ルネサンス時代に「ネーデルラント楽派」を輩出し、オランダ語とフランス語の2つの言語領域に分かれているベルギーの音楽状況が、隣国ドイツの19世紀の音楽ジャーナリズムの中でどのように伝えられたのかを調査し、「ベルギー」と「ネーデルラント」、また「フランドル」といった地域名を通じて何が語られたかを考察した。
著者
遠藤 孝夫
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.85, pp.185-199, 2001-03-30

シュタイナー教育の原理とも言うべき「人間認識に基づく教育」は,「学校の自律性」を前提に機能するものであるが,この両者の連関はこれまで十分に理解されてきていない。本稿は,「社会三層化運動」に関する最初の本格的研究であるシュメルツアーの成果に学びつつ,社会三層化運動の一つの結晶として創設されたヴァルドルフ学校とその創設理念を検討することで,従来のシュタイナー教育-の認識不足を補完することを意図するものである。
著者
大谷 伸治
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.121, pp.19-28, 2019-03-28

前号にて、佐藤卓己氏らの研究に学び、「8・15 終戦」史観の相対化を図る授業実践を報告した。本稿は、その教材研究で、佐藤氏の研究以後の歴史教科書における「終戦」記述と玉音写真の変化を追跡調査した結果を報告する。佐藤氏の調査当時最新の2002 年版は、玉音写真を掲載したのは2 冊のみであった。それを受けて氏は「教科書での『玉音写真』掲載は例外的」としていた。しかし、2011年以降の改訂から増え始め、現行では9冊に増加した。さらに玉音写真の掲載によって、植民地解放に関する写真・記述が削除されてしまった。
著者
松本 敏治 崎原 秀樹 菊地 一文
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.109, pp.49-55, 2013-03-27

本論文では、松本・崎原(2011) によって報告された「ASD は方言を話さない」という調査結果について理論的検討を行った。彼らの特別支援教育関係者を対象としたアンケート調査は、ASD は定型発達児およびID に比べ、方言の音声的特徴のみならず、語彙の使用も少ないとする結果を示した。この結果について次の5つの解釈の説明可能性を検討した。1)音韻・プロソディ障害説(表出性障害、受容性障害)、2)終助詞意味理解不全説、3)パラ言語理解不全説、4)メディア媒体学習説、5)方言の社会的機能説。1~4の解釈は、ASD でみられた方言の音声的特徴および方言語彙の不使用を十分に説明することができなかった。一方、方言の社会的機能説は、方言の社会的意味として他者との連携意識・集団への帰属意識などに着目したもので、ASD のもつ対人的・社会的障害の側面から方言の不使用を説明できるものであった。この説は、結果を適切に説明できるもので、かつASD の中核症状との関連が推察された。また、この説と関連して、ことばの社会的機能への気づきとASD への言語的はたらきかけについて考察した。
著者
群 千寿子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.111, pp.1-6, 2014-03

中学生192名を対象に質問紙調査を実施し、進路成熟態度の高低により群分けして、各群において、時間的信念・時間的展望体験が進路選択自己効力に及ぼす影響を進路選択重回帰分析で検討した。その結果、将来無関心は成熟態度の低い群でのみ有意な影響が見られるなどのいくつかの群間差が見られた。
著者
郡 千寿子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.121, pp.1-6, 2019-03-28

新潟県立図書館に所蔵されている近世期版本の往来物資料について、出版地域別に分類整理した調査結果を報告する。総数では、72本の近世期版本の往来物資料が確認され、目的別分類では、教訓科往来9本、社会科往来は所蔵なく、語彙科往来5本、消息科往来16本、地理科往来1本、歴史科往来5本、産業科往来11本、理数科往来18本、女子用往来7本という結果であった。出版地域別の分類では、江戸が37本で最も多く、京都7本、大坂14本、名古屋1本、不明が13本という結果であった。 北前船の寄港地である秋田や酒田の往来物資料の調査結果1)では、京都と大坂の出版が多く、関西圏から海路で運ばれたと思われる資料が多数を占めた。一方、今回の調査で、同様の寄港地である新潟においては、江戸出版の資料が多数であったという結果を得た。新潟では、資料が海路よりも陸路で江戸から流入した可能性が高いと考えられた。文化交流の経路という視点から、興味深い示唆を与えてくれる結果であるといえよう。 往来物の分布を通して、地域の教育的背景の格差や文化伝播状況などを解明することを目的としているが、目的別分類の調査結果に加えて、本稿で紹介する出版地域別分類の調査結果は、他地域の状況と比較する上で基盤となる研究成果である。
著者
山本 欣司
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.101, pp.1-9, 2009-03

宮本輝「泥の河」はこれまで、板倉信雄と松本喜一の出会いから別れまでを描いたものであり、信雄が身近に経験し、父親から聞かされもした死の問題や、「舟の家」の人々との交わりの中で目覚めた信雄の性と成長の問題がテーマの主軸をなすと捉えられてきた。しかし拙稿では、小説の構造を丹念にふまえ、そのような解釈の問題点を指摘するとともに、自分なりの把握を示した。さらに拙稿では、小栗康平監督による映画「泥の河」が、どのようにして貧しさを背景とする子ども達の短い交流を主題化したかを論じた。
著者
今井 民子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.72, pp.p21-27, 1994-10

本稿は,B.Marcelloの『当世風劇場(ⅠITeatroallaModa)』を検討し,18世紀のオペラ上演の実態を明らかにしたものである。バロックの初期に成立以来,発展を続けてきたオペラ芸術も,18世紀に入ると矛盾が現われはじめ,凋落の兆しが見えてきた。当時数多く書かれたオペラ批判の中で,B.Marcelloの『当世風劇場』は最も名高い。これは,あらゆるオペラ関係者に対する有益な助言と題し,彼らにオペラ成功の秘訣として無知と強欲をといた詞刺的オペラ論である。B.マルチェッロが厳しく批判するように,バロックオペラを荒廃させた主な原因は,歌手の声の曲芸と舞台の精巧な機械仕掛けへの過度の要求であった。この傾向は,一般の聴衆に公開され,商業的性格の強いヴェネツィア・オペラでは特に顕著だった。B.マルチェッロの記述には,多分に誇張があるにせよ,このオペラ論からは,当時のスターシステムの弊害が生んだ危機的なオペラ状況が理解できる。
著者
三上 由希野 篠塚 明彦
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Education, Hirosaki University (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.117, pp.21-29, 2017-03

明治政府は、日本を近代国家とするために、様々な政策に着手し、弘前でもまたこの流れに遅れをとるまいと、近代社会実現にむけた活動が活発に行われていた。しかし、それは明治政府の近代化とは一線を画すところもあった。こうした弘前の近代化の過程にあっては、旧弘前藩出身の士族層が地域リーダーとして活躍していた。弘前周辺でも、江戸時代の後半以降、豪農や豪商の成長もみられていた。だが、明治に入っても士族層が大きく没落することのなかった弘前においては、そうした豪農層や豪商層の成長にも関わらず、相変わらず士族層がリーダーとして地域を支える役割を担っていたのである。これは、全国的な状況、例えば自由民権運動において「士族民権から豪農民権へ」という地域リーダー層が交替する姿とは些か異なる状況にあった。本稿では弘前における地域リーダーとして活躍し続けた士族の姿を明らかにし、日本における近代化の様相の個別性を再考する。
著者
森本 洋介
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.120, pp.137-148, 2018-10-12

本稿では教科書会社発行の教材(副読本)を用いた授業と,同テーマにおける自作教材を用いた授業実践の検討を通じて,その編成の在り方,特に教材の選定と発問の設定の方法を明らかにするため,実践を通じて検証作業を行った。その結果,教科書会社発行の教材(副読本)では副読本に記載された発問を扱わなかったにもかかわらず,副読本に記載された発問に対する答えのような記述をしている児童も少なからず見られた。一方で自作教材を用いた授業では教材を発問について考えるための知識や情報を与える資料として位置づけることで,児童は話し合いや「道徳ノート」のなかで綺麗事ではない意見を出すことにつながった。教材のつくり方,さらに言えば教材の内容が子どもの実感に則したものであるかということと,発問がその実感を問うものになっているかどうかが「考え,議論する道徳」を実現するためのポイントになると考えられる。
著者
朝山 奈津子
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.118, pp.55-66, 2017-10-13

H. リーマンの音楽理論の中で、特にフレージング論を総括した『音楽の長短法と軽重法の体系System dermusikalischen Rhythmik und Metrik』(1903)の「第2部 軽重法:楽節構造論」の全訳。第117号掲載の(1)を承けて本稿では、第4章第22節- 第5章第26節を取り扱う。
著者
蒔田 純
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
vol.120, pp.43-56, 2018-10-12

本稿では、政治的リテラシーの向上・政治参加の促進という側面からシティズンシップ教育を捉え、その概念的背景や海外での動向を踏まえた上で、我が国における事例として八幡市・品川区の取り組みを取り上げる。またそれに基づき、両自治体におけるアンケート調査や選挙での投票率を用いて、シティズンシップ教育の効果について検討を行う。そこからは、シティズンシップ教育にも様々な形があり、自治体における大方針や教育枠組みによって内容や手法に相違が生じること、「意識」と「行動」という観点から見た時、シティズンシップ教育の効果は前者においてより顕在化しやすいこと、因果関係までは認められないが、少なくともシティズンシップ教育を受けた世代は同地域他世代・他地域同世代と比して相対的に政治参加が堅調と見られること、等が示される。
著者
山本 逸郎 遠藤 聖奈
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.113, pp.47-56, 2015-03-27

教員免許状更新講習「理科を苦手とする教員のための小学校物理実験」を受講した延べ286名の小学校教員に理科の実験でうまくいかなかったことを具体的に記入してもらったところ,4学年の「水の沸騰の実験」と「水が氷になる実験」に関する記述数が全学年の実験の中で圧倒的に多いことがわかった。それらの記述の内訳は,前者の実験では「水の沸点が100℃にならない」が,後者の実験では「水が過冷却する」が最も多く挙げられていた。本研究では,これら2つの実験について詳しい測定を行い,実験条件を変えたときに測定結果がどう変わるのか議論する。
著者
篠塚 明彦
出版者
弘前大学教育学部
雑誌
弘前大学教育学部紀要 (ISSN:04391713)
巻号頁・発行日
no.114, pp.43-50, 2015-10

源義経をめぐる様々な伝説の一つに北行伝説がある。荒唐無稽な義経北行伝説ではあるのだが、その伝説形成の背景には熊野信仰の広がりや修験者たちの活動があったことが浮かび上がってくる。熊野の人々や修験者は、北方の交易世界に引き寄せられるように北を目指した。そこから見えてくるものは、現在置かれている位置づけとは異なる北東北の世界である。北東北は、日本の終焉の地と見られていたが、実際には北方ユーラシア世界への入口であった。こうした事実をもとにしながら、日本史・世界史融合の具体像について探ることを目指す。