著者
國本 佳範 西野 精二 大辻 純一 有馬 毅
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.11-16, 1997-05-25
参考文献数
9
被引用文献数
5

奈良県北葛城郡新庄町のキク圃場で, ナミハダニ黄緑型の寄主植物およびキク圃場での発生消長, キクへの寄生部位を調査した。1. キク圃場周辺の数種の雑草でナミハダニの寄生を確認した。2. 慣行の薬剤散布条件で栽培された2品種"紅葉", "リンカーン"上でのハダニの発生消長はピークの期間などに違いはあったが, おおむね一山型であった。3. 両品種とも収穫後の株や翌春伸長したシュートにもハダニが寄生しており, 挿し芽を経て, 苗に寄生したまま新しい圃場へと移動し, 繁殖した。4. キク上のナミハダニは定植後1ケ月以上経過した後の7月以降に急激に密度を増し, 9月ころにピークを迎えた。その後, 個体数は減少するものの, 2月でも寄生が認められ, 周年でキク上にハダニの寄生が認められた。5. キクへのナミハダニの寄生部位は, 植物の生育状況に左右されて変動した。
著者
田神 一美
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 = Journal of the Acarological Society of Japan (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.91-99, 2013-11-25
被引用文献数
1

本邦産のヒゲジロハサミムシ <i>Gonolabis marginalis</i> Dohrn, 1864(Dermaptera: Anisolabididae)に便乗しているヒゲダニの第二若虫を飼育して得られた第二若虫を第 1脚長が短いと言う相違はあるが<i>Histiostoma mahunkai</i> Fain, 1974と同定した.また,飼育から得た雌雄成虫形態を記載した.ハサミムシに便乗するヒゲダニに関する知見は,欧州産の <i>H. polypori</i> と <i>H. feroniarum</i> に偏っていたが,最近になって豪州産の3種類が追加され本種が新たに加わった.本種はアフリカのコートジボワールが原記載地である.ハサミムシとヒゲダニの便乗関係を更に詳細に調べる必要がある.
著者
田神 一美
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 = Journal of the Acarological Society of Japan (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.91-99, 2013-11-25
参考文献数
14
被引用文献数
1

本邦産のヒゲジロハサミムシ <i>Gonolabis marginalis</i> Dohrn, 1864(Dermaptera: Anisolabididae)に便乗しているヒゲダニの第二若虫を飼育して得られた第二若虫を第 1脚長が短いと言う相違はあるが<i>Histiostoma mahunkai</i> Fain, 1974と同定した.また,飼育から得た雌雄成虫形態を記載した.ハサミムシに便乗するヒゲダニに関する知見は,欧州産の <i>H. polypori</i> と <i>H. feroniarum</i> に偏っていたが,最近になって豪州産の3種類が追加され本種が新たに加わった.本種はアフリカのコートジボワールが原記載地である.ハサミムシとヒゲダニの便乗関係を更に詳細に調べる必要がある.
著者
後藤 哲雄 高山 健志
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, pp.45-60, 1992-05-25
被引用文献数
10

オウトウハダニTetranychus viennensis Zacherには, 周気管の形状と雄成虫の体色, 産卵習性を異にする系統が存在する。これらは種内変異と考えられているが, 詳細には検討されていない。本研究では, 複雑な周気管を持ちバラ科樹木に寄生するリンゴとサクラ系統, および単純な周気管を持ちブナ科樹木に寄生するミズナラ系統が同一種であるかまたは別種であるかを明らかにする目的で, 寄主範囲, 増殖率, 生殖和合性およびエステラーゼザイモグラムを調査した。リンゴとサクラ系統の寄主範囲は非常によく類似していたが, ミズナラ系統とは明らかに異なっていた。ミズナラ系統の内的自然増加率はリンゴ系統と類似した値を示したが, サクラ系統の値よりは低く, ブナ科とバラ科寄生系統間の差は不鮮明であった。系統内交配およびリンゴとサクラ系統間の交配では雌雄の子孫が出現し, 和合性を示したが, バラ科に寄生する2系統とミズナラ系統の交配では雄の子孫のみが出現し, 生殖的な隔離が見られた。エステラーゼアイソザイムのバンドは, 3系統に共通する1本(E7)を含む8本が検出された。リンゴとサクラ系統では, サクラ系統に特異的な1本(E1)を除き, 共通する3本のバンドを示したが, ミズナラ系統はこれらと異なる3本のバンドを出現した。以上の結果から, バラ科に寄生するリンゴとサクラ系統は同一種であるが, ブナ科に寄生するミズナラ系統は明らかに別種であると結論された。
著者
春日 志高 天野 洋
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.31-42, 2000-05-25
参考文献数
15
被引用文献数
7 12

1999年3月8日から5月31日の期間に全国47都道府県を対象としてケナガコナダニ属のダニのホウレンソウ加害に関するアンケート調査を実施した.被害は北海道から九州までの広範囲で認められ, 施設栽培で早春と晩秋に発生するのが一般的だった.ケナガコナダニ属のダニはまれに大きな被害を引き起こすが, 季節的に限定された発生を示すため害虫としての重要性は比較的低く評価された.また, 最近5年間くらいで被害が認識されるようになった比較的新しい害虫であることが示された.被害傾向は「年によってまちまち」が50%, 「横ばい」が27.1%, 「年々増加」が18.8%, そして「年々減少」が4.2%だった.イナワラやモミガラの堆肥, 特に未熟堆肥の大量投入が発生を助長する傾向が認められた.さらに登録のある2薬剤の評価を求めたところ, DDVP乳剤の効果にばらつきが認められた.この原因は薬剤がダニの寄生する新芽部にかかりにくいためと考えられた.一方, DCIP粒剤の評価は比較的高かったが匂いが強いためか使用例は少なかった.郵送されたサンプルからダニを採取し同定したところ, ホウレンソウケナガコナダニが優占種であり, ホウレンソウ加害の主要種と考えられた.
著者
田島 隆宣 大橋 和典 高藤 晃雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.21-27, 2007 (Released:2007-06-06)
参考文献数
19
被引用文献数
3 6

個体群間の交流が可能な同所的に植栽されたキョウチクトウ,アジサイおよびヤマブキに発生するカンザワハダニ個体群が,それらが発生している寄主植物に特異的に適応しているかどうかを明らかにするため,これらの寄主植物における各個体群の成虫化率と産卵数を比較した.その結果,すべての個体群における成虫化率は,各個体群が利用していた寄主において利用していない寄主よりもはるかに高かった.また,産卵数も寄主として利用していた寄主で高い傾向がみられた.特に,毒性の高いキョウチクトウとアジサイの個体群間では寄主利用能力が著しく異なり,キョウチクトウ個体群はアジサイ上で,アジサイ個体群はキョウチクトウ上で成虫化率,産卵数ともに著しく低かった.このことから,これら2個体群間には寄主利用能力に分化がみられ,同所的にホストレースが形成される可能性が示唆された.また,それぞれの個体群が一方の寄主に特異的に適応する結果,他方に対する利用能力を喪失するというトレードオフの存在が示唆された.
著者
大滝 倫子 川上 裕司
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.23-28, 1998-05-25
参考文献数
7

1993年3月より, 1994年2月まで九段坂病院皮膚科を受診した20歳以上の新患患者1, 884名, および20歳以上の一般人1, 046名にダニ対するアンケート調査を行った.ダニが原因と思って九段坂病院皮膚科を受診した112名中ダニ刺されは1名のみであった.ダニあるいは昆虫に関係する症例は24名で両者合わせても22.3%にすぎない.過去のダニの被害の訴えは皮膚科患者では27.4%, 一般人では39.5%, いずれも女性に訴えが多かった.ダニ被害の有った人のうち皮膚科患者では男性17.2%, 女性24.8%, 一般人では男性11.1%, 女性18.6%が医師を受診しており, いずれも女性のほうが受診率が高い.医師により皮膚科患者では51.3%, 一般人では57.1%がダニないし虫刺されと診断された.ダニ被害ありとする人の50%(皮膚科患者), 80%(一般人)が殺虫剤を使っていた.殺虫剤の種類では畳注入式が一位を占め, 点火式燻煙剤がこれに次ぐ.
著者
酒居 勇太 須藤 正彬 刑部 正博
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.1-6, 2012-05-25 (Released:2012-06-25)
参考文献数
20
被引用文献数
3 5

ナミハダニが寄主葉の上面を産卵場所として利用しないことは,風雨や太陽光紫外線による卵への悪影響を回避するための適応だと考えられている.一方で葉面の表裏における栄養条件の違い,および上下の葉面において虫体に掛かる重力方向の違いが,ナミハダニの適応度に与える影響は十分に検討されていなかった.本研究ではインゲンマメのリーフディスク(単一葉面)を用い,その表裏および上下がナミハダニの産卵数に与える影響を評価した.葉表では葉裏よりも,下面では上面よりもそれぞれ産卵数が増加する傾向が支持された.しかし「葉表かつ上面」と「葉裏かつ下面」のリーフディスク間では,これら2因子の影響が打ち消し合い産卵数は拮抗した.すなわち葉面の栄養条件ないし重力方向について,単独でのボトムアップ効果は認められるものの,ナミハダニがインゲンマメ葉の上面(葉表)に卵を産まない理由にはならないと考えられた.
著者
斎藤 一三
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.139-140, 1997-11-25
著者
高久 元
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.29-38, 1998-05-25
被引用文献数
7

インドネシア共和国スマトラ島西スマトラ州に生息する食糞性甲虫体表上よりハエダニ科ハエダニ属Macrocheles kraepelini種複合体の1種であるM. hallidayi Walter and Krantz, 1986雌個体を採集し飼育を行った.その結果, 第1若虫, 第2若虫及び雄が得られ, それらの詳細な記載を行った.kraepelini種複合体に属する種の多くは成体及び第2若虫の第4脚膝節に7本の毛を有するという特徴をもつ.ハエダニ科のNeopodocinum属でも同様の特徴が見られるが, Neopodocinum属では第1若虫の第4脚膝節上の毛は5本のみであるのに対し, 今回得られたM. hallidayiでは6本であり, M. hallidayiが属する種複合体の特徴的な形質状態であると考えられる.また, M. aestivus Halliday, 1986は, 背板毛の形態, 胸板の模様, 第4脚膝節の毛数などにおいてkraepelini種複合体の種と共通の特徴をもつことから, 新たにkraepelini種複合体の構成種とした.
著者
後藤 哲雄
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.125-127, 2008-11-25
著者
武田 富美子 當間 孝子 宮城 一郎
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.127-133, 1998-11-25
被引用文献数
4

沖縄県内の床の塵中ダニについては, 従来2.0mmまたは0.5mmメッシュと0.075mmメッシュのふるいを使ってダニを分離した結果が報告されてきた.今回はTarsonemus属のような小型のダニを逃がさないために0.032mmメッシュのふるいを加え, 沖縄県内の3軒の家(A, B, C)から寝室床の塵を採集し各種ダニの出現頻度と出現数を調査した.ヤケヒョウヒダニDermatophagoides pteronyssinusが優占種で, 総ダニ数の43.4%であったが, Tarsonemus属のホコリダニTarsonemus spp.は23.4%, Tarsonemus属同様小型のミジンイレコダニCryptoplophora absconditaも12.1%を占めることを確認した.室内塵中から多数のミジンイレコダニが報告されたのはこれが初めてである.ヤケヒョウヒダニ, ホソツメダニCheyletus eruditus, Bak属のツメダニBak sp., イエササラダニHaplochthonius simplex, カザリヒワダニCosmochthonius reticulatus, ミジンイレコダニおよびTarsonemus属のホコリダニは, 年間を通して検出された.また, Cosmoglyphus sp.はこれまで日本の室内塵中からの報告はなかったが, Cの寝室床の5月には総ダニ数の22.2%を占めた.
著者
大空 鷹介 矢野 修一
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.87-92, 2008-11-25
被引用文献数
5

半数倍数性の性決定様式を持つナミハダニ雌成虫は未受精では雄しか産めないため,未受精雌の受精を早めるような適応が見られるかもしれない.母子交配が可能なナミハダニでは,この適応が息子の形質にまで影響している可能性がある.そこで,母親の受精の有無が息子の形質に与える影響について,1)母親を早く受精させるため,未受精雌の長男は(受精雌の長男より)早く成長するか,2)未受精雌の息子と受精雌の息子で雌を獲得する能力に差異があるか,3)未受精雌の息子と受精雌の息子で分散性に差があるか,の3つの仮説を検証した.その結果,母親の受精の有無という産卵前の母性効果も,母親が同居したかどうかという産卵後の母性効果も,認められなかった.一方,未受精雌の息子の方が受精雌の息子よりも先に雌をガードすることが多かった.また,分散性も未受精雌の息子の方が高かった.これは,受精雌の息子に比べて未受精雌の息子の周囲にはより低い雌比が予測されるため,未受精雌の息子が雌の探索やガードにより多くのコストを割いている結果だと考えられる.
著者
栗城 源一
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.2, no.1, pp.7-13, 1993-05-25
被引用文献数
2

福島県猪苗代町谷地平地区のミズゴケ湿原で最も優占するササラダニ, ヤチモンツキダニTrhypochthoniellus setosus Willmannを種々の温度条件下で飼育し, その生殖法, 産仔数, 各発育段階の成長速度を検討した。ヤチモンツキダニの生殖法は, 産雌単為生殖で卵胎生である。雌は最盛期には1&acd;3日間隔で幼虫を1個体ずつ産下し, 20℃での平均産仔数は3.3個体, 25℃では10.5個体, 29℃では14.1個体で, 産下限界温度は15.1℃であった。第一若虫が第二若虫に脱皮するまでの発育限界温度は8.5℃, 産下された幼虫が成虫になるまでの有効積算温量は1600.5日度と算定された。
著者
内川 公人 川森 文彦 川合 清也 熊田 信夫
出版者
日本ダニ学会
雑誌
日本ダニ学会誌 (ISSN:09181067)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.91-98, 1993-11-25
被引用文献数
7

神奈川県山北町における調査によって, 鈴木の見取り法のうち特に黒布を用いる方法がタテツツガムシ幼虫の野外サンプリングに非常に適していることを確かめた。この方法でタテツツガムシ幼虫がミカン畑の内外に多数生息していること, 比較的湿度の高い地点に謂集するらしいこと, などを確認した。野外で本種幼虫を多数採集するにも鈴木の見取り法は効率的であるが, 一旦採集した幼虫を実験室内で回収するのに種々の工夫を加える必要があるものと思われた。