著者
佐々木 利廣
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.63, pp.13-16, 2011-06-17

マルチステイクホルダーシステムは、既成の縦割組織の硬直性や閉鎖性から脱皮し、異質な他者との出会いと共同作業による自由で創造的発想を重視し、対等性を基盤にした合意形成のための意思決定への参画を重視するような仕組みとプロセスである。企業とNPOと行政の三者が、一方向的支援・批判・評価から双方向の創造的相互作用過程へと進化しながら主体の意識や戦略も進化していくような仕組みとプロセスをマルチステイクホルダーシステムと考えると、とりわけソーシャルビジネスの領域でマルチステイクホルダーシステムをどのようにデザインし運用するかが今後ますます重要になると思われる。報告では、主に新庄市のヨコタ東北を中心にした食品トレーリサイクルシステム、福島県いわき市のNPO法人ザ・ピープルを中心にした古着リサイクルシステム、神奈川県のNPO法人WE21ジャパンを中心にした古着リサイクルシステムをもとに、企業・NPO・行政の協働によるリサイクル事業をマルチステイクホルダーシステムの視点から分析する。
著者
藤沼 司
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.54, pp.37-40, 2006-10-27

今日の「知識社会」への端緒を切り開いたF.W.ティラーの科学的管理は、また同時に「組織(中心)社会」の端緒を切り開くものでもあった。科学的に正当化された専門的知識に基づく管理という着想を核心とする科学的管理の進展は、<管理=組織原理の官僚制化>をもたらした。これにより「命令の非人格化」(個人の機能化)が可能となったが、それが「再人格化」(個人の再主体化)と両立(機能化即再主体化)するには、経営哲学が必要であるとM.P.フォレットは指摘する。今日、仕事を通じた自己実現や目標管理、脱官僚制化を指向する分権組織など、一見すると機能化即再主体化が果たされつつあるように見える。本報告では、こうした事態をどのように把握しうるか、フォレット経営思想を手がかりとして考察する。
著者
砂川 匡
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.56, pp.55-58, 2007-11-22

手の持つ多様な表情を理解することが,私たちの仕事の第一歩でした。「Les Gants=レガン」,フランス語で"唯一の手袋,最も優れた手袋"意味する言葉。「クラウン手袋」として設立以来,常に時代の一歩先を行く手袋づくりに取り組んできた当社。昭和62年にCIを導入し,社名を「レガン」と改称。アンドレ・クレージュなど世界の有名デザイナーとライセンス契約を結び,スポーツ&ファッショングローブの企画デザインから製造販売まで,積極的な事業展開を行っています。現在,フィリピン,ベトナム,中国の工場を中心に質の高いクラフトマンシップにこだわった手袋を,製造しています。創造性,芸術性にあふれるレガン独特のフィルターを通したモノづくり。人の手の持つ表情を最大限に生かす"にんげん企業",それがレガンです。
著者
砂川 和範
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.43, pp.63-67, 2001-06-22
被引用文献数
1

昨今、終身雇用制と結びついた企業内教育システムが変化を余儀なくされる状況にある。一方で国公立・私立を問わず大学(院)改革が進行しており、その一環をなすのがビジネススクール設立ブームである(とくに労働市場の流動性の高まりから起業というテーマが生涯教育の需要を喚起じている)。この経営教育に関連する両現象は、(1)企業内教育システムと学校教育システムの相互浸透(2)両者の新たな境界設定、以上二点に集約される問題を探索することを要求する。そこで本報告では、新たなシステムの設計に向け組織理論の知見を応用した基礎付けを試みる。まずH.A.サイモン以降の意思決定論(とくに情報処理モデル)以降の近代組織論の学説的展開を踏まえて問題を整理する。その延長線上に、とくに認知科学と学習理論の複合領域に位置する「正統的周辺参加」(Legitimate Peripheral Participation, LPP)モデルを取り上げ、それが経営教育の実践にむけて持ちうる可能性を見積もる。その結果、LPPモデルのいくつかの要因についての拡張が分析上必要であることを示す。
著者
小林 勝
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.59, pp.91-94, 2009-06-26

英国産業同盟(CBI)が、英国の国際競争力確保のため高度のスキルを有する労働者を求め、キャリア・エデュケーション(教育)、ガイダンス(指導)、カウンセリング(助言)を11歳から16歳の全生徒に与えるよう提言した。この実現のため、教育と雇用をひとつの政府組織(DfEE)のもとに統合もした。わが国の総労働人口の減少と雇用市場におけるミスマッチは、日本の国際競争力を減少させている。文部科学省は、キャリア教育おいて望ましい職業観、勤労観を育む教育推進を提言している。大学・大学院は、教育機関として学生が労働市場に入る最終接続点として全ての雇用関連機関の「中心軸」として制度的に機能すべきである。このために、全ての学生のキャリア・エデュケーション、ガイダイダンス、カウンセリングへの「接触度」を高めなければならない。この接触は、教職員のかかわり行動(attending behavior)が基本である。現役大学入学者は、凡そ25歳まで2人に1人がキャリア挫折を経験している。本報告では、東洋大学第二経営学部演習履修生の学生時におけるキャリア・エデュケーション、ガイダンス、カウンセリングへの「接触度」を「成人キャリア成熟尺度(坂柳96)」使用し、調査及びヒアリングを実施した。その結果、卒業後のキャリア発達と学生時代の「接触度」の相関性が高い傾向が見られた。大学・大学院教職員による学生とのライブな「接触度」を高めるattending behaviorこそが、究極的にわが国の国際競争力を向上させることになる。
著者
谷井 良
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.62, pp.39-42, 2010-10-29

従来のイノベーション研究を見ると,イノベーションの企業内の過程にのみ注目している場合がほとんどである。だが,本来,イノベーションは広く社会に普及・浸透してこそはじめて成功といえる。そこで,本報告では,イノベーションにおける普及過程,すなわちイノベーションの企業外的過程の重要性に焦点をあて,企業がイノベーションによって文化を創る過程を明らかにすることを目的とする。本報告では,イノベーションの企業外的過程を顧客創造,市場創造,文化創造に分類する。しかし,文化を創造している企業がごく一部しか存在しないことを考えれば,文化創造には顧客創造や市場創造とは異なる普及メカニズムがあると推察される。そこには,従来の普及メカニズムとは異なる新たな普及メカニズムが存在していると考えられる。そこで,実際に文化を創造したと想定される事例研究(家庭用ゲーム,携帯電話,インスタントラーメン,ハイブリッドカー)を行った結果,文化を創造するためには創発現象,意図的波及効果,社会システムの自己組織化という3つの要素が深く関わっていることを抽出した。そして,この文化創造の要素である創発現象,意図的波及効果,社会システムの自己組織化には,社会システムの自己組織化に至るまでの創発現象と意図的波及効果のパターンに相違があり,そのパターンの相違により普及速度と戦略の達成度に大きな違いが見られる。本報告では,これら文化創造のパターンとそのパターンによる普及速度と戦略達成度との関係を明らかにすることを試みたい。
著者
萩原 道雄
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.61, pp.45-48, 2010-06-25

経営倫理の欠如による企業不祥事は後を絶たないが、企業の持続的可能性を実現するためには経営理念に内包される経営倫理の企業構成成員への浸透・定着がなされることが経営における最重要戦略といえよう。社会はもとより地球環境における倫理的な企業は社会の信頼を獲得し社会を牽引する存在となり得るからである。経営倫理の浸透・定着に関して、これまでの視点では、企業構成員の仕事を通じての実現よりむしろ企業構成員に教え込むものされてきた。その教え込むための経営の仕組みが通達、訓示、教育・訓練などである。本稿ではLave=Wenger(1991)の状況的学習論、すなわち「状況に埋め込まれた学習(正統的周辺参加)」について述べ、正統的に周辺より実践共同体(企業)に参加する新参者が仕事に習熟する過程での実践共同体における内部的相互関係と社会的相互関係から、新参者のアイデンティティの変革と実践共同体の変革が起こり、相互関係的に実践共同体の掟(規範)と社会の掟(規範)の中に新参者(やがては習熟して十全者となる)が取り込まれる、すなわち、倫理が埋め込まれることを考察する。状況に埋め込まれた学習(正統的周辺参加)」理論のポイント明らかにし、次にこの理論に基づく学習・仕事環境を経営において実現するためのポイントを明らかにする。「状況に埋め込まれた学習(正統的周辺参加)」の理論においては学習とは正統的に周辺から実践共同体に参加することであり参加が学習であるとする。その理論は経営における、倫理が埋め込まれている、知の創造においての原型を示唆しているのではないかと考え、理論と学習・仕事環境のポイントについてネッツトヨタ南国の事例により検証する。
著者
嘉味田 朝功
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.41, pp.56-60, 2000-06-16

デジタル技術は、宇宙空間の電離層までをわが家の裏庭にしてしまった。これまでとは異なる種類の知識・能力・経験が必要である。KAE原理、ABCD思考を実践した。1つは現時点で利用可能なKからの収捨選択。もう1つはインターネット構築過程のEからの新K。この2つをつなげて新Aを開発する際、コミュニカビリティが最も難問である。仏教のまんだら図のフラクタルをメタファーにして拡張KAEモデルを創った。 このモデルは、デカルト以来の精神・物質の分離ではなく、メビウスの帯の如く、バーチャルとリアルが、ねじれて繋がっている。社会システム(バーチャル)の裏側が生活世界(リアル)なのである。このモデルを更に抽象度を高め、世界に向けて呼びかけたい。そのために、言語(デジタル)に拘束されずに、場所の論理(アナログ)の誘導により応答できるように、位置と形と色で概念を構成した。
著者
萩原 道雄
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.53, pp.11-14, 2006

山城経営学は実践学である。実践学としての経営学は、経営を自ら責任を取って担当するプロフェッショナルなかつ「こころ」を持つ経営者養成の学問である。それは自己啓発を中心とする経営者啓発、管理者養成、経営・管理の診断・指導の専門家訓練の学である。実学一体が重要である。実践学としての経営学のアプローチがKAEである。K: Knowlege=知識→原理; A: Abihty=能力→実践; E: Experience=経験→実際・・・・・この3者の統一された研究態度が実践学としての経営学の方法である。実践学としての経営学のアプローチ(KAE)にもとづいた経営教育のシステムがKAE経営道フォーラムである。経営道フォーラムの経営教育システムは、受講生(経営者候補)のグローバルな変化の時代に対応できる経営能力向上や「こころ」を持つ人格形成が、新しい情報入手と共に、チームワークの中で対話し自ら考えることにより(自己啓発)、なされることを目的としている。1986年に開講した経営道フォーラム(対象:役員・部長)の受講生は現在1,500)名を超え、続いて1991年に開講したエグゼクテイブフォーラム(対象:次長・課長・スタッフ)の受講生を合算すると1,900名を超えている。経営道フォーラムの受講生の80%以上が各企業で経営者(役員)として活躍したし、している。
著者
趙 偉
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.55, pp.95-98, 2007-06-29

ハイブリッド型経営者とは、複数の国の文化的背景を有し、混合的な価値観を持ちながら、企業を起こしてその経営に従事する人間である。本研究では、ハイブリッド型経営者の特質を以下のように指摘する。第1に、ハイブリッド型経営者は、2つ以上の文化に精通しているので、柔軟性が高くなり、ビジネスチャンスを見出しやすい可能性がある。第2に、ハイブリッド型経営者は、単一文化的背景の経営者よりも人脈が広く、ネットワーキング活動をより活発に行う可能性がある。第3に、ハイブリッド型経営者は、達成動機の強い人であり、彼らはリスクを負っても新たな仕事や事業に挑戦して自己実現欲求を満足させようとすると考えられる。しかし、第4に、ハイブリッド型経営者は長期間海外で生活し、さまざまな国の文化的背景や価値観を習得しているため、かえって単一文化の背景を持つ経営者に比べて、社会環境、および特定のコンテクストに対応できない可能性をもっている。
著者
藤原 敬一
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.39, pp.42-46, 1999-06-25

マルチメディアの出現などのメディア多様化をすすめた伝達技術の進展は、マスメディア企業の競争戦略に大きく影響することになった。コンテンツと伝達機能を強化し、競争優位を獲得するというマスメディア企業の行動が顕著になっている。米国の放送メディアの動向からは、差別化およびシナジー効果が期待できるコンテンツを獲得し、伝達範囲を広げる方向で伝達機能を強化するという傾向がみられる。また、コンテンツの生産・加工と伝達機能が一貫したシステムをとっているため、コンテンツを獲得する場合には、伝達機能の獲得を含んだ垂直統合という形態が共通してみられた。一方、欧米の新聞社の企業行動からは、新聞というメディアの言論性の高いコンテンツの優位性を強化しながら、電気通信系メディアの伝達機能を補完的に強化して即時性を高めるという傾向がみられた。
著者
武内 龍二
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.52, pp.63-66, 2005-10-28

リーダーシップは, リーダーからフォロワーへの一方向的な働きかけという捉え方ではなく, フォロワーからリーダーへの影響過程を考慮し, 相互作用の観点から研究されるべきである。また, リーダーシップは, リーダーとフォロワーの二者関係だけでなく, 彼らの所属する組織の関係要因の中で生じるものである。したがって, リーダーシップは, これら関係要因の中での相互作用として研究されるべきである。さらに, リーダーとフォロワーの間に意識の差異が存在する場合があり, その意識の差異が, リーダーシップを効果的に発揮させる場合とそうでない場合がある。本論題では, これらの点について, 日本のソフトウェア関連業界において実証的に検証しようとしたものである。
著者
小西 一有
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.59, pp.54-57, 2009-06-26

イノベーションとは、多くの可能性を生み出す大きなアイディアである。しかしながら、イノベーションは、とらえどころのない存在であり、それだけを一心に追及しても、持続可能なビジネス成果が生み出される可能性は高くない。企業経営者は、イノベーションが、イノベーションであるがゆえにパラドックス(矛盾点)を抱える存在であることを理解し行動しなければならない。イノベーションに取組む多くの経営者は、再帰的なアプローチを採用している。アイディアを取捨選択するためのフィルタリング・プロセス、アイディア試行のための方法論、そして、社内でイノベーションの中心的役割を声高に訴求するためのイノベーション・プログラムを策定している。しかし、ガートナーが調査したイノベーション推進について先進的な企業は、再帰的なプローチとは、異なる方法でイノベーションを推進している。イノベーションには、パワー(Power)、プロセス(Process)、プレッシャー(Pressure)、プロパティ(Property)の四つのパラドックスが存在する。そして、これらを効果的に克服してビジネス価値を追及することが経営者には求められる。
著者
王 鵬
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.60, pp.47-50, 2009-10-23

近代産業社会からポスト産業社会、高度情報化社会、豊かな消費社会に移行するなかで、人々の関心が「物の豊かさ」から「心の豊かさ」へシフトするにつれ、組織における人間観や人々の労働観も変容してきている。その結果、従来の「機能的合理性」一辺倒の仕事人間や管理型組織の見直しが不可避となっている。こうした状況下で組織デザインにおいても、人間・組織・労働のダイナミックな意味作用によって、バランスのとれた「意味創造の組織」へのパラダイムシフトが求められているのである。本論文では、第1に、近代経営組織論における人間観と労働観はどのような展開をしてきたのかを辿り、その問題点について検討する。第2に、時代の変化とともに、新しい人間観について、またこうした人間観と密接な相互関係にある労働観の変容について分析し、その価値観が変容する方向性を明らかにする。第3に、組織における人間観・労働観の変容は今後の組織デザインにどのような影響を与えるのか、その方向性について検討する。
著者
野本 茂
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.59, pp.123-126, 2009-06-26

1978年の中国の改革・開放政策への転換、さらに1989年の「ベルリンの壁崩壊」によって、真義のグローバリゼーションが進展した。1980年代、日本企業も急激に進む円高に対応するため、海外進出を加速させた。アメリカへは貿易摩擦解消の意図もあって現地化した。対中国ビジネスについては、欧米企業が製造コストの比較優位からバリューチェーンの一環として重視し、先行した。欧米企業に遅れたが、中国に進出する日本企業の数は年々増え、その規模も拡大している。ただ、中国ビジネスはリスクが高い。海外企業の中国進出の各種データをみると、まず各国とも撤退率が高い。しかし各国比較では、日系企業のそれは相対的に低い。また、日中企業のアライアンス形態をみると、「合弁」から「独資」への転換傾向がみられる。そもそも「国営」を前身とする中国企業の利益率は低く、アライアンス先中国企業の経営体質は脆い。さらに、現地経営における採用難、早期退職、知的所有権の侵害、代金回収の困難性、アライアンス先とのトラブル等の問題指摘は枚挙にいとまがない。日本企業は中国進出に不安を抱きながらも、短期的利益を追わず、長期的な発展を志向して進出している。総経理の現地化には消極的であるが、地方政府とのコミュニケーションを円滑に行いながら、従業員教育や福利厚生の施策をきめ細かく実施し、いわゆる日式経営文化により異文化経営摩擦を克服している。
著者
中島 朋子
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.54, pp.21-24, 2006-10-27

JREIT(Japan Real Estate Investment Trusts)は2005年9月で市場創設から5年が経過した。2銘柄で開始した市場も現在では39銘柄が上場し、時価総額は2,600億円から4兆円へと急速な拡大を遂げている。市場の成長に伴い投資用途も多様化している。初期の銘柄はオフィスビルへの投資が多くみられたが、2005年以降、賃貸マンション、ホテル、工場など、オフィス以外の組成が増えており、銘柄の増加とともに用途の拡大がさらに加速すると予想される。このように市場が急成長し、多様化する中で、JREITのバリュエーションは重要性を増している。特に金融商品としてだけではなく、投資法人をコアとしたファンドの運用面からもその必要性は高まっている。JREITの収益の根源はポートフォリオから生ずる賃料キャッシュフローであり、ポートフォリオの収益力とその成長性がその価値として反映される。よってプロパティ・バリュー(property Value)、さらにこれを導く資産運用マネジメントを含めた総合的なバリュエーションが求められる。本報告では、JREITのバリュエーション・フレームワークを構築し、銘柄のパフォーマンスを考察する。さらにファンダメンタルズを考慮し、バリュエーションに影響を与えると思われる要因について検証する。
著者
飫冨 順久
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.39, pp.103-105, 1999-06-25

近年、わが国では企業倫理に関する研究がさまざまな視点から進められ、多数の研究報告がなされている。また、経団連が企業行動憲章を公表し、多くの企業が特徴ある行規準動を策定している。しかしながら、バブル崩壊後の不祥事は、主として優良企業といわれている企業であったり、行政からの指導と監督が厳しく他の産業と比較して厳格な企業行動をとっていると思われている金融・・証券業界などに反倫理的行動が集中しているように思われる。本報告では、企業倫理と企業の社会責任の関係について、理論と実践の側面から論じてみてみたい。この点については、すでに〓田馨教授が主として「経営の倫理と責任」(1989年千倉書房)で理論的に整理され独自の見解を論じておられる。ここでは、〓田見解について、報告者の若干の私見を述べさせて頂き、繰り返し起こる企業の反倫理的行動に対し批判的検討を行いたい。また、マルチドメスティクやトランスナショナルと呼ばれる企業が増大してきているように、各国の企業行動は、国籍を越え世界規模になりつつある。したがって、今日グローバル・スタンダード経営、世界標準の経営または、共通競争ルールの策定が問題視されてきている。企業倫理のグローバル・スタンダードの重要性とその策定条件について論じてみたい。その場合、各国の企業倫理は、風俗・習慣・文化・宗教など価値観にもとづき、合意形成されてきており、異質性の高いこれらを考慮すると、必ずしも一致・共通するとは考えにくい。ここでは、ホフステット(G.Hofstede)の理論を検討し、共通性を求めてみたい。最後に、企業倫理のグローバルスタンダード策定の方向を提示しむすびとしたい。
著者
八十田 典克
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.39, pp.127-129, 1999-06-25

1.エーザイの企業目的は「hhcの実現」当社は1941年に創業以来、良い研究をベースに良い製品を次々と生み出し、世界の国々の多くの人々の健康福祉に貢献したいという「高い志」をもって企業経営を行ってきた。国民皆保険制度のもと、製薬業界全体が右肩上がりの成長を遂げていた従来の状況では、この価値観(どちらかというとプロダクト・アウトの発想)は効果的に機能してきた。しかし医療費削減政策等により医薬品産業を取り巻く市場も大きく変化し、この考え方では企業が継続的に社会貢献し続けることは難しい環境となってきた。このような状況のもと、現社長(内藤晴夫)は就任直後の1989年に、よりマーケット・インの発想で新たな企業ビジョンを提示した。新たな目指す企業像(ビジョン)は「いかなる医療システム下においても存在意義のあるヒュマンヘルスケア(hhc)企業」になることであり、企業理念(ミッション)は「患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を考えこのベネフィット向上を第一義とし世界のヘルスケアの多様なニーズを充足する」ことである。つまり私達の顧客(主役)は「世界の患者様と生活者の皆様」とし、その方々へのベネフィット向上を図ることが企業の目的(=hhc)と考えている。この"hhc"という3文字に実現したい「夢・思い・志」を込めて、企業活動を行っている。より具体的に言うと「よき素材を探索し、一日も早く薬と成し、世界の患者様に安全にお届けする」ということである。
著者
久保田 潤一郎
出版者
日本マネジメント学会
雑誌
日本経営教育学会全国研究大会研究報告集
巻号頁・発行日
no.57, pp.50-53, 2008-06-27

内部統制は、内部統制システムの整備や運用の強化だけではなく、経営者や従業員が法令や行動規範、内部規程等の意義を理解し、自主的、自律的に遵守することによって実効性が高まるといえる。それを実現するためには、事業活動に関係する法令とともに行動規範や規程・規則を含めた内部規範と日々の行動を結び付けることが重要となる。また、個人の倫理観に委ねるのではなく、企業内部の各組織に倫理的な価値判断と行動を促す浸透活動や教育が重視されなければならない。そしてOJTやOFF-JTを通じて、法令違反や反倫理的な行動によって会社や個人が被るダメージを具体的に示し、社会規範や行動規範に基づいた判断、行動を促す教育が求められる。その代表的な研修がケース・メソッドを活用した倫理・コンプライアンス教育である。本稿では、内部統制の目的の一つである「業務活動における法令等の遵守」について、内部統制システムにおける「基本的要素」と「企業倫理の制度化」の連携を検討し、企業内部に倫理・法令遵守を浸透させる要件を倫理・コンプライアンス教育を基に考察する。