著者
戸田 あきら 永田 治樹
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.17-34, 2007-03-20
被引用文献数
3

アウトカム評価は,組織の使命・目標の達成状況を評価するものである。大学図書館の主要な役割の一つは,学生の学習支援である。したがって,大学図書館のアウトカム評価においては,図書館の資源やサービスによって学生の学習がどのように進展したかが問題となる。米国の大学図書館界では,近年,学生の情報リテラシー獲得に焦点を当てたアウトカム評価がおこなわれるようになった。しかし,学生の知識獲得や能力向上にどれほど図書館が貢献しているかについては,その測定方法や指標が十分に解明されているわけではない。本研究は,図書館利用と学習成果との関連を明らかにしようとするものである。大学卒業生に対して在学中の図書館利用と学習成果に関する質問紙調査をおこない,その関連を探った。調査結果の分析により,図書館利用と学生の学習成果との間に正の関連性があることを確認できた。
著者
橋詰 秋子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.213-229, 2009-12-28

書誌レコードの機能要件(FRBR)をOPACに適用するFRBR化は,近代目録にとって積年の課題であったcollocation機能の実現であり,情報量が増大する現在においても有用だと考えられる。既存のMARCレコードを用いたFRBR化を日本で進める際の基礎データを得るために,日本の標準的なMARCであるJAPAN/MARC(J/M)フォーマットを,FRBRによって分析した。具体的には,J/Mのデータ要素とFRBRで示される実体,属性及び利用者タスクとの対応付けを行い,結果を整理した。さらに,目録の機能を考える上で重要な概念である「著作」という観点から,J/Mの機能的特徴を探った。その結果,次のことが明らかになった。(1)J/Mのデータ要素に結びつく実体は,「体現形」が最も多く全体の約3割を占めていた。(2)J/Mは,MARC21と比べて,「著作」に結びつくデータ要素が少なく,「著作」に関するタスクの達成に弱かった。J/MとMARC21の「著作」に関する機能の相違は,両者のアクセスポイントの機能の違いだと考えられる。
著者
高橋 菜奈子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.15-24, 2005-03-15

本稿では, 韓国・朝鮮人名の特徴と書籍への記載のあり方から, NACSIS-CATの著者名典拠における標目記述をめぐる問題点を考察した。標目の採用の規則に例外規定が設けられているために, 規則の解釈にゆれが生じ, ハングル, 漢字形, 日本語ヨミ, ローマ字翻字形のどの形式で書誌を検索しても検索漏れの可能性があることを指摘し, 著者名典拠を活用した書誌検索のシステムが課題となっていることを示した。この問題点を解消するため, 「漢字∥日本語ヨミ∥ハングルヨミ分ち書き」または「ハングルヨミ」を標目の基本とすることを提案した。また, 著者名同定のために必要な項目は何かを探るため, 韓国出版物の著者略歴の特徴を抽出し, 学位・現職・出身校情報の有効性を示した。
著者
伊藤 真理 松下 鈞
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.60, no.3, pp.87-105, 2014

音楽ライブラリアンの養成は,適切な音楽情報サービスを提供するために不可欠であるが,その現職者教育は専門職団体に委ねられたままである。また,音楽図書館関連団体によって提供されている研修については,いまだ総合的に検証されていない。本研究は,これからの音楽ライブラリアン養成のあり方を検討するために,国内の音楽図書館現職者を対象とした研修の実態を考察することを目的としている。本研究では,音楽図書館協議会と国際音楽資料情報協会日本支部が実施してきた研修とニューズレター記事を対象とした。分析は「情報専門職の養成に向けた図書館情報学教育体制の再構築に関する総合的研究(LIPER)」大学図書館班による研究成果に基づいた。また,音楽の主題専門分野の観点から考察を補完するために,米国音楽図書館協会による音楽ライブラリアンの資質要件の例示を参照した。その結果,研修として実施すべき内容や課題が明らかとなった。
著者
伊東 達也
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.133-144, 2013-12-31

田中不二麿らによって伝えられた近代公共図書館思想の実践事例として東京書籍館から東京図書館までの時期があるとすれば,明治18年10月の無料制の廃止は日本における公共図書館のひとつの断絶といえる。そこで,なぜ明治8年という時期に無料公開図書館が設立され,それが10年間しか存続しなかったのかということに注目し,その原因について,田中文政期の政治的社会的状況を確認することによって検討した。大久保政権の成立過程で教育政策が田中らに委ねられるようになり,その中での学制施行の一環として書籍館についての施策が行われたことを明らかにした。そして,教育令の制定とその改正へと進んだ伊藤政権下において,教育政策が政権運営の全体構想の中に位置づけられるに及んで書籍館も大きな影響を受けたことが確認できた。このことによって,東京書籍館についても,新たな側面からの理解が可能となった。
著者
伊東 達也
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.133-144, 2013

田中不二麿らによって伝えられた近代公共図書館思想の実践事例として東京書籍館から東京図書館までの時期があるとすれば,明治18年10月の無料制の廃止は日本における公共図書館のひとつの断絶といえる。そこで,なぜ明治8年という時期に無料公開図書館が設立され,それが10年間しか存続しなかったのかということに注目し,その原因について,田中文政期の政治的社会的状況を確認することによって検討した。大久保政権の成立過程で教育政策が田中らに委ねられるようになり,その中での学制施行の一環として書籍館についての施策が行われたことを明らかにした。そして,教育令の制定とその改正へと進んだ伊藤政権下において,教育政策が政権運営の全体構想の中に位置づけられるに及んで書籍館も大きな影響を受けたことが確認できた。このことによって,東京書籍館についても,新たな側面からの理解が可能となった。
著者
緑川 信之
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
図書館学会年報 (ISSN:00409650)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.117-128, 1997-09

ファセット概念には, 多次元構造におけるファセット慨念と階層構造におけるファセット慨念の2つが使われている。どちらも区分原理に対応するものであるという点では共通している。しかし, 多次元構造におけるファセット概念は, ひとつの主題を多面的にとらえるために用いられる。そのため, 区分原理なら何でもよいのではなく, 広い区分原理あるいは基本的な区分原理である方が, この多面的にとらえるという役割に適している。それに対して, 階層構造における区分原理は, ひとつの主題を多面的にとらえるという役割はなく, 一群のまとまりをもった項目という意味しかない。そのため, 階層構造におけるファセット慨念は区分原理と区別がつかない。あえてファセット概念を階層構造に導入する意義はないように思われる。
著者
孫 誌衒 歳森 敦 植松 貞夫
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.49-61, 2005-06-15

公共図書館におけるインターネットサービスに対する利用者の選好意識構造を把握するために, コンジョイント分析法を用いて「サイトの制限」, 「職員の援助」, 「時間の制限」, 「待ち時間」, 「プライバシー」, 「活字資料との併用」, 「申込みの有無」の7つの要素について茨城県立図書館の来館者470人を対象に調査を行なった。その結果, インターネットへの習熟度や来館目的によって, 「職員の援助」や「サイトの制限」などの評価に差が生じること, また, 利用者は「プライバシー」を重視する傾向が強いことなどが分かった。このような違いを踏まえて, それぞれの図書館でインターネットサービスの位置づけを明確にすることや重点を置くべき提供環境などについて考察した。
著者
吉田 右子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.48, no.3, pp.121-137, 2002-09-30

第二次世界大戦ではあらゆるメディアが戦力として使われ,公共図書館もまた戦時情報の伝達機関として重要な役割を果たした。本稿ではアメリカ図書館協会(ALA)と戦時情報局(OWI)による戦時情報サービスを分析することによって,アメリカのメディア政策における公共図書館の位置づけを解明した。両者の協同関係に基づく情報提供サービスを検討した結果,第二次世界大戦期に公共図書館は,市民に対し必要な情報を適切に媒介する戦時情報センターとしてメディア戦略の一端に位置づけられていたことが明らかになった。また公共図書館の戦時情報サービスは印刷資料に限らず,映像資料を含む多種のメディアを通じて行われていたことを,ALAとOWIの連携活動を検討するなかから示した。そしてデモクラシー社会を支える見識ある市民にとって,円滑な情報流通が極めて重要であるとの認識が両者の情報提供サービスの理念的基盤にあったことを結論とした。
著者
安藤 友張
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.253-269, 2008-12-25

本研究では,指定管理者制度を導入した全回の各公立図書館の現状をあきらかにすることを研究目的とした。調査対象は,図書館経営に指定管理者制度を導入したすべての地方公共団体(67団体)および公立図書館(107館)の両者とした。質問紙法による郵送調査を2007年に実施し,同年10月に128件の有効回答数を得た。その結果,結論として以下の点があきらかになった。(1)指定管理者制度導入の効果に関して,「経費削減」「利用者サービスの向上」は,地方公共団体と指定管理者の両者の認識がほぼ一致していた。(2)制度導入によって生じた問題点である「図書館経営の安定性の欠如」「図書館職員の労働条件の悪化」においては,両者の認識の間に差異がみられた。
著者
三浦 太郎
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.141-154, 2000

モンタナ裁判に勝訴し終身在職権を認められたキーニーであったが, 判決の翌年にはモンタナの地を離れ首都ワシントンでの職につく。そして終戦後, 戦時体制下にFEAなどで情報の収集・分析を行っていた績を買われて, 彼は民事に関する使節団の一員となり来日した。教育使節団訪日を準備していたCIEで日本の図書館政策を担当する任を得たキーニーは, ら構想した統合的な図書館システムの現を図る。しかし, その中央集権的な構想はCIEの全体的な政策に合致せず, また日本側関係から広く賛同を得ることも適わなかった。そこで, 全国の図書館の代表と会議を重ね, 図書館員の理解を得ようとしていた矢先, 折から右側化を強めていた米政府の方針に基づき, 図書館政策の是非とは無関係な, 共産主義との関わりが理由で, キーニーは帰国を余儀なくされた。
著者
若松 昭子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.143-158, 2001-04-30

ピアス・バトラーがニューペリー図書館の印刷史コレクション構築の中で最も力を注いだのはインクナブラの収集である。本稿では, 当該コレクションを通してバトラーが提示しようとした観点を明らかにするために, ニューペリー図書館のインクナプラ目録およびインクナブラ展示会目録の分析を通してコレクションの内容を検討した。コレクションにはインクナプラに用いられた活字体の変遷や, 書物が写本から標題紙等の機能を備えた近代的な形態へと発展する様子が示されていた。即ち, バトラーは当時発展期にあった分析書誌学の研究成果を採用することにより, 印刷術の歴史地理的な伝播過程, および書物の形成過程という二つの歴史を具現化しようとしていたことが見て取れた。さらに, インクナブラの時代を学問の発展期として位置づけようとしていたこともうかがえた。
著者
若松 昭子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
図書館学会年報 (ISSN:00409650)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-16, 1998-03-30

バトラーの図書館学の基礎を築いたといわれるニューベリー図書館時代に焦点を当て, ウイング財団の印刷史コレクションの形成過程を考察した。その結果, 彼が, 人文学的かつ学術的な印刷史コレクションの形成をめざし, 積極的な収集活動によって質の高いインクナブラを収集したことが明らかになった。彼が収集対象をインクナブラに絞った理由は, それらが歴史的, 学術的, 芸術的に優れているという判断によるものである。また成功の誘因として, 彼の学識, 充実発展期における同図書館の支援体制, 第一次大戦後のインクナブラ収集の好機という特殊な時代状況があったことも分かった。バトラーの収集方針と収集過程には, 印刷史の出発期を文化史の重要な時期と位置づけていた彼の書物観がうかがえる。
著者
深谷 順子
出版者
日本図書館情報学会
雑誌
日本図書館情報学会誌 (ISSN:13448668)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.1-16, 2002-03-30

視覚障害者サービスでは,関係機関と連携し,全国レベルのサービスを提供する中心機関の役割が重要である。しかし,日本では,全国レベルのサービス機関の力が弱く,効率的な業務分担が行われていない。本稿は,視覚障害者サービスにおいて世界的に評価の高いスウェーデンの全国レベルのサービス機関(TPB)の役割や関係機関との業務分担の特徴について考察した。その結果,次のことが明らかになった。1)それぞれの図書館や機関の役割が明確で,重複のない分担体制が確立されている。2)それぞれの施策が十分利用されて効果を発揮するように,配慮され体系化されている。3)効率的な分担体制の中心は,全国レベルの充実したサービスであり,これによって他の機関の任務が明確になり,負担が軽減されている。4)上記の1つの要因は,TPBと公共図書館がともに教育省の下にあることによって,視覚障害者サービスが一元化されていることである。