著者
中田 節也
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.46, pp.139-148, 1996-09-20
被引用文献数
4

珪長質マグマの噴火にはプリニー式噴火のように爆発的なものと溶岩ドーム噴火のように静穏なものとがある。この選択は上昇中のマグマから分離したガスの系外への透過効率で決まっている。溶岩ドーム噴火にプリニー式噴火が先行することが一般的であるが, 雲仙普賢岳の噴火では異なった。そこでは, 大道を上昇するマグマから脱ガスが効果的に起きたと考えられる。佐藤(1992)が指摘するように, 上昇マグマの水による急冷によって, ガスを効果的に逃がすバイパスが大道の壁にできていたのかもしれない。溶岩ドームは溶岩流に比べて低い溶岩噴出率で形成される。そこでは冷えてできた殻がドームの見掛けの降伏強度を上げている。普賢岳噴火で形成された溶岩ドームは, 噴出率の高い時には外成的と内成的成長を, 低い時には内成的成長をした。外成的成長では溶岩ローブが斜面を流れたが, 噴出率が低下した活動後期ほど, ローブの降伏強度が増加して急斜面を流下できた。一方, 内成的成長では, ドーム全体が水風船のような動きをした。すなわち, ドームの殻がキャタピラーのように回転しながら移動した。
著者
水垣 桂子
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.99, no.9, pp.721-737, 1993-09-15
被引用文献数
3 6
著者
笠間 太郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.74, no.3, pp.147-158, 1968-03-25
被引用文献数
3 9
著者
梶山 彦太郎 市原 実
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.7, pp.101-112, 1972-12-25
被引用文献数
18

Having carried out the study of the latest alluvial deposits (the Nanba Formation) in Osaka since the 1950s, the writers revealed that the developmental history of the Osaka Plain can be divided into nine stages. In this paper, numerous data on fossils, sedimentary facies, topography, prehistorical remains and historical facts are synthesized under the stratigraphical successions and the radio-carbon dates. Nine successive stages in the development of the Osaka Plain, with approximate radio-carbon dates, are as follows. 1. The stage of the paleo-Osaka Plain (ca. 20000 y.B.P., Wurm maximum, Pre-Jomon age): The geomorphological features of the Paleo-Osaka Plain are guessed by the relief map of the base of the latest alluvial deposits (Fig. 4). The river system of the Paleo-Osaka River was widely developed. 2. The stage of the Paleo-Kawachi Plain (ca. 9000 y.B.P., earliest Jomon age): The sea-level was over 20m lower than the present sea-level. Osaka Bay already existed, but the Kawachi area was not covered by sea-water as yet. 3. The stage of Kawachi Bay I (ca. 7000-6000 y.B.P., the first half of early Jomon age): The sea-level reached the same level as the present one. The Paleo-Kawachi Plain was widely covered by sea-water. A sand-bar was developed on the north of the Uemachi Upland (Fig. 6). 4. The stage of Kawachi Bay I (ca. 5000-4000 y.B.P., latest early Jomon-middle Jomon age): The sea-level was in the same level as one of Kawachi Bay I or in a slightly higher level than that. The delta of the Yodo River was well developed. The sand-bar was further developed to the north of the Uemachi Upland (Fig. 7). 5. The stage of Kawachi Lagoon (ca. 3000-2000 y.B.P., latest Jomon〜the first half of Yayoi age): Owing to the development of the sand-bar north of the Uemachi Upland, Kawachi Lagoon was formed. Standella capillacea (tropical to subtropical, brackish water species) at the inlet and Corbicula sandai (Lake Biwa, freshwater species) in the inner part are characteristic (Fig. 8). 6. The stage of Lake Kawachi I (ca. 1800-1600 y.B.P., late Yayoi〜early Kofun age): Through the subsequent development of the sand-bar on the north of the Uemachi Upland. Kawachi Lagoon changed into Lake Kawachi. The delta of the Yodo River finally reached the sand-bar (Fig. 9). 7. The stage of Kawachi Lake II (Nintoku〜Nara age): In the time of the Emperor Nintoku (ca. A.D. 400), Ookawa (the Oo River) was, excavated at the base of the aforesaid sand-bar. A part of Kawachi Lake near the excavated outlet was an important port called "Nagarafunase" till the later Nara age. 8. The stage of the Osaka Plain I (After Nara age): Each delta of rivers filled the sea-area behind the line of formation of the offshore-bar (Fig.9). The Plain began to be developed in west Osaka. 9. The stage of the Osaka Plain I (After Muromachi〜early Edo age): Each delta was rapidly developed beyond the aforesaid line. This stage is the present stage of the Osaka Plain.
著者
市川 浩一郎
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.18, pp.187-212, 1980-03-30
被引用文献数
17

延長1000kmに及ぶ中央構造線(MTL)には,形成史の各段階ごとに地域的な特性が認められる。それにもとづいて,MTLを西から東へI-IVの4区に区分し,さらに亜区に細分した(図1)。とくに亜区の接合域における古第三紀の分岐断層の発達に注目した(図3)。MTL形成史には巨視的にみて,次の5段階が認められる。1:白亜紀前期を中心とする時期のI-III域での左横ずれ,IVでの右横ずれの卓越した変位。2:古第三紀前半(約65〜50 Ma)のI-III域での第2波の左横ずれの卓越した変位。第1,2期ともに三波川帯の上昇を伴う。3:古第三紀後半(前期中新世の一部を含む)(50〜20 Ma)。この期間の一部におけるI-III域(の一部)での逆断層運動,IIICでの左横ずれ変位。4:中期中新世-鮮新世(約15〜2 Ma)。中新世火山性盆地付近などでの局地的変位。5:第四紀後半のII域での右横ずれの卓越した変位。第1,2期におけるI-III域での変位の横ずれ成分は控え目に見積って数10kmのオーダーとなり,第四紀変位の横ずれ成分の推定最大量よりは一桁大きい。ただし時間のオーダーがちがうことに注意したい。以上の運動史をプレートテクトニクスの観点から説明するひとつの試みを示した(図2)。これは松田(1976)の見解と似ているが,白亜紀については異なる。第1,2期においては南側の海洋プレートにおけるNNW性の古伊豆非震性海嶺のサブダクションに伴う陸側での変形効果を重視した。第3期(太平洋プレートの運動方向転換期以後にほぼ相当)では日本海盆の開口と古い伊豆・ボニン島弧の北上効果とがMTL域ではとくにIIIC-赤石構造線に表現されたとみた。
著者
鹿園 直建 武藤 逸紀
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.110, no.6, pp.363-371, 2004-06-15
被引用文献数
1 2

東濃砂岩型ウラン鉱床地域の中新世瑞浪層群の堆積岩は,湖成層である上岐累層(20〜18 Ma),海成層である明世累層(16〜15 Ma),生渋累層(5〜0.7Ma)凝灰岩質泥岩,シルト岩相よりなる.土岐累肩巾の黄鉄鉱の量は多く,自形-半自形を呈し,硫黄同位体組成は非常に高い(δ<34>^S=+10〜50‰).一方,明世累層中の黄鉄鉱は量が少なく,フランボイダル状を呈し,硫黄同位体組成は低い(-28〜-5‰).この東濃地域の硫黄同位体の特徴と大きな砂岩型ウラン鉱床を胚胎するアメリカ西部のモリソン湖成層との鉱物学的・地質学的類似性より,中期巾新世(18〜16 Ma)の瑞浪地域での堆積・続成・ウラン鉱化作用は,アルカリ条件下で生じたことを示している.土岐累層の白形-半白形黄鉄鉱の高δ<34>^S 値は,高δ<34>^S 値を持つ硫酸イオンの還元により生じたものであろう.海水が湖水に浸入し,溶液中の硫酸イオン濃度が減少し,この硫酸イオンがバクテリアにより還元され,高δ<34>^S 値の黄鉄鉱が生成したのであろう.日本海が拡大し,西南日本の時計回りの回転が起こった中期中新世に,湖水環境から海洋環境へ変化し低温から高温-乾燥気候へと変化した時に湖水環境がアルカリ条件になったと考えられる.
著者
小西 健二
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.60, no.700, pp.7-17, 1954-01-25
被引用文献数
6 5

The Shimozaisho alternation of limestones and clayslates is an unusual sedimentary mass located within the Hida gneiss terrain., The alternation is covered by later sediments and lavas; however, its relation to the Hida gneiss is indeterminable., Although the alternation of limestones and clayslates is both thermally and dynamically metamorphosed, some poorly preserved fossil corals and fusulines have been found in the Shimozaisho limestone, a member of the alternation., These fossils suggest Moscovian for the age of the limestone., The find of the Moscovian Fusulina Zone is a new discovery in the strata of the Hida Plateau., Because the Jurasso-Cretaceous Tetori group which overlies the Shimozaisho alternation is not metamorphosed, the alternation is thought to have been metamorphosed sometime between the late Paleozoic and early Mesozoic.,
著者
風早 康平 篠原 宏志
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.43, pp.53-62, 1994-04-28
被引用文献数
3

マグマの発泡は, マグマの物性に大きな影響をあたえる。特に0.1 wt%以上のCO_2を含むマグマは飽和圧力が2kbに達し, 10 km以浅では発泡している可能性がある。マグマから発泡分離した揮発性成分のCO_2/H_2O比は圧力依存性が非常に大きいため脱ガス圧力計として応用可能である。玄武岩質マグマでは1kb以上の高圧化でもCO_2の脱ガスにより無視しえないマグマの体積膨脹が生じること, H_2Oの脱ガスは100 bar以下の圧力下で重要なことがわかった。玄武岩質マグマは通常, 表層2-3 kmの地殻よりも密度が高いため, 浅所では浮力を持ちえない。したがって, 気泡の濃集等によりマグマのバルク密度が低下しないかぎり, 地表へ噴出することは難しい。伊豆大島の玄武岩質マグマの場合では, マグマ中のCO_2量が0.3 wt%以上含まれないと浮力を持てないことがわかった。マグマ溜り内でCO_2に富んだ気泡が上昇し, マグマ溜り上部に濃集すれば, マグマ溜りの一部はこの浮力を持つ条件が満たしうる。マグマ溜り内のCO_2が濃集したマグマだけが噴火し, 残りはマグマ溜り内に留まると推察される。噴火様式, 揮発性成分量および噴火時の噴出率等の関係を空気-水系などでこれまで得られている流動様式線図を用い考察した。空気-水系の流動様式線図を用い, ガス-メルト系に応用する際に, 粘性, 表面張力, 密度の違いを考慮した結果, 伊豆大島1986年噴火の様式変化を説明しうることを示した。
著者
江原 眞伍
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.38, no.459, pp.651-653, 1931-12-20
著者
奥平 敬元 原 郁夫 桜井 康博 早坂 康隆
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.42, pp.91-120, 1993-04-30
被引用文献数
20

岩国-柳井地域領家帯は主に低圧型変成岩(領家変成岩類)と花崗岩類(領家及び広島花崗岩類)から構成される。領家花崗岩類は古期花崗岩類と新期花崗岩類に大別され, 前者はシート状であり後者はストック状である。領家変成岩類は四つの鉱物帯(黒雲母帯, 菫青石帯, ザクロ石帯, 珪線石帯)に分けられ, これらと領家古期花崗岩類は三つのナップ(構造的上位から通津ナップ, 大畠ナップ, 柳井ナップ)を形成している。通津ナップど大畠ナップとの間には, 最高変成作用時の温度圧力条件において約3kb, 200℃のギャップがある。また, 柳井ナップは大畠ナップの構造的下位に位置しているが, 柳井ナップは大畠ナップよりも低温低圧の温度圧力条件を示す。このことは最高変成作用時の温度圧力構造が, 後の造構作用によって改変されたものであることを示している。菫青石帯には二つのミグマタイト帯(天ケ岳及び長野ミグマタイト)が存在するが, これらはより深部(約6kb)で形成され, 破砕帯に沿って貫入上昇し, 現在の位置に定置したものである。ミグマタイト中の含コランダムレスタイトの変成作用の解析結果から二つの変成時相(M0, M1)が識別され, M0変成作用は中圧型に対応することが明かとなった。M1変成作用はミグマタイトや領家古期花崗岩類の貫入直後に行なわれ, この変成作用はこれらの貫入岩の接触変成作用である可能性が高いパイルナップ構造の形成はM1変成作用後で, 領家新期及び広島花崗岩類の貫入前である。
著者
天野 和孝 鈴木 政憲 佐藤 時幸
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.4, pp.299-307, 2000-04-15
被引用文献数
8 15

鮮新世における日本海への暖流の流入した層準を明らかにすべく, 秋田県の天徳寺層産の軟体動物群を検討した.天徳寺層は岩相的に下部, 中部, 上部に細分される.本層の時代は本層中部から抽出された石灰質ナンノ化石より鮮新世中期のNN16帯下部から中部と判断される.天徳寺層から産出した軟体動物群中には鮮新世〜更新世前期に日本海側で生息した大桑・万願寺動物群の特徴種と中新世塩原型動物群の残存種2種が含まれる.また, 多くの寒流系種に加え, 天徳寺層の基底部および中部から15種もの暖流系種が新たに認められた.暖流系種の産出状況から, 天徳寺層基底部および中部堆積時には, 薄い暖流が冷水塊上を流れていたと思われる.