著者
小阪 哲也 永尾 隆志
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.44, pp.139-154, 1995-11-30

五島列島最北端に位置する宇久島には, 新第三紀鮮新世に活動した玄武岩〜デイサイトまでの火山岩類が分布している。層序区分にもとづくと, 下位から玄武岩〜デイサイト(ステージ1)と玄武岩〜安山岩(ステージ2)の2回の火山活動があったことが明らかになった。これらの火山岩類はソレアイト的な特徴を持っている。両ステージの火山活動は, 主成分および微量成分変化図, Sr同位体比のデータから, ある程度の地殻物質との混成作用の影響を受けているものの, 火山岩類の組成変化に大きな役割を果たしたのは分別結晶作用であることがわかった。さらに, 火山層序に基づいた化学組成変化およびSr同位体比の検討から, ステージ1は一連のマグマの活動で形成され, ステージ2は異なる化学的な特徴を持つ3回のマグマの活動で形成されたことを示唆している。また, 宇久島火山岩類の親マグマは, 2Nb-Zr/4-Y区分図およびスパイダーグラムのパターンから判断すると, プレート内ソレアイトである。
著者
高橋 修
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.106, no.12, pp.836-852, 2000-12-15
被引用文献数
3

関東山地秩父帯南帯および四万十帯北帯に分布する中生代付加コンプレックスを, 前期ジュラ紀から後期白亜紀にかけて形成された15のユニットに区分した.それらの復元された海洋プレート層序から, 関東山地では, ジュラ紀全般(第I期)および後期白亜紀(第III期)の付加体が連続的に形成された時期と, 最後期ジュラ紀〜前期白亜紀の, 付加体形成の減衰の時期(第II期)が認められた.後者(第II期)は, 秩父帯付加コンプレックスと四万十帯付加コンプレックスの境界に一致している.また, 復元された海洋プレート層序は, 秩父帯および四万十帯付加体を形成した二つの異なったプレート(イザナギプレートおよびクラプレート)の沈み込みを示唆する.上述した付加の減衰は両プレートの沈み込みの変換期に起こった可能性がある.このように, 付加体の研究は, 中生代のアジア東縁のプレート運動史を考える上で, 重要な示唆を与えてくれる.
著者
吉本 充宏 古川 竜太 七山 太 西村 裕一 仁科 健二 内田 康人 宝田 晋治 高橋 良 木下 博久
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.109, no.10, pp.595-606, 2003-10-15
被引用文献数
5 18

鹿部冲の海底に分布する北海道駒ヶ岳火山1640年の岩屑なだれ堆積物を調査した音波探査の結果,海底岩屑なだれ堆積物の分布の末端部を確認することに成功したこれらは溶岩流などに認められる急勾配の末端崖は示さないものの,傾斜の変化を示す海域に分布する流れ山は岩屑なだれ堆積物分布末端部では存任せず,流走距離に反比例して規模・分布頻度が小さくなる傾向を示す海域における岩屑なだれ堆積物の分布は,主方向が北東方向と東方向の双頭状の分布を示し,給源からの最大水平流走距離は約20km,最大幅は約15km,分布面積は約126km^2であるH/L比は0.06であり,海底を流走した岩屑なだれは同規模の陸上岩屑なだれより流動性が高い傾向がある実際に海中に流入した体積は,探査から求めた海底地形データによって見積もった体積に,薄く広がった部分と流れ山の体積を加えた0.92〜120km^3と見積もられた
著者
白尾 元理
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.87, no.10, pp.641-655, 1981-10-15
被引用文献数
1
著者
佐藤 時幸 樋口 武志 石井 崇暁 湯口 志穂 天野 和孝 亀尾 浩司
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.109, no.5, pp.280-292, 2003-05-15
被引用文献数
7 10

秋田県北部に分布する天徳寺層,笹岡層の石灰質ナンノ化石層序調査結果は,峰浜地域の笹岡層最上部が更新世最初期に対比されるのを除けば,いずれの地域においても両層の年代は3.85-1.73Ma間の後期鮮新世に対比されることを示す.また,北極地域の急激な氷床拡大と関連する基準面Aは峰浜地域と柾山沢地域で天徳寺層・笹岡層境界に追跡されること,これら対比から,秋田地域の大部分が鮮新世末に陸化したことを明らかにした.この調査結果と,新潟,北陸地域の大桑・万願寺動物群産出層準との対比結果から,秋田県内の大桑・万願寺動物群産出層準が,更新世に対比される新潟・北陸地域とは明らかに異なることを指摘した.一方,日本海側地域石灰質ナンノ化石群集は北太平洋-北極海域で認めた群集と極めて類似し,暖海性種を伴う太平洋側地域と対立すること,その生物地理形態が大桑-万願寺動物群と共通することなどもあわせて明らかにした.
著者
氏家 良博 谷口 貴康 蝦名 正輝
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.112, no.10, pp.581-593, 2006-10-15
被引用文献数
2 2

青森県東津軽郡外ヶ浜町蟹田において津軽断層近傍に分布する中新統小泊層と鮮新-更新統蟹田層の地質調査を行い,堆積岩に含まれる有機物の熟成度をビトリナイトの反射率(Ro)と、花粉の明度に基づく統計的熱変質指標(stTAI)から測定した.次に,津軽断層で接する小泊層と蟹田層の有機熟成度の差,および小泊層と蟹田層中でのそれぞれの有機熟成速度から津軽断層の変位量を推定するためのモデルを考えた.地質調査と露頭観察結果から,津軽断層の断層面は鉛直で,その走向は周辺の地層の走向と一致し,地層の傾斜は30°とした.これらの値と,津軽断層の両側での統計的熱変質指標の値の差をモデルに外挿すると,津軽断層の変位量(落差;走向スリップ成分は無視)は901〜1389mの間と推定される.この値は,地質学的に推定された断層の層位学的隔離は最大1000m以上との見積り(三村,1979)、重力異常からの断層の落差は約1500mとの見積もり(松橋ほか,1989)とも,よく一致する.有機熟成度は,続成作用,不整合,接触変成作用の研究に役立つが,断層の研究にも有効な指標である.

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著者
関谷 清景
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.1, no.2, pp.80-84, 1893-11
著者
小林 哲夫
出版者
日本地質学会
雑誌
地質学論集 (ISSN:03858545)
巻号頁・発行日
no.24, pp.93-107, 1984-11-30
被引用文献数
6

Yufu-Tsurumi volcanoes are situated at the northeastern part of Kyushu island, Japan. Lavas and pyroclastic rocks ranging from the late Pliocene to the late Quaternary in age form the basemment of this area and are cut by many active faults bringing about the blocks tilted variously. Judging from the tephrochronology of the wide-spread tephra, it has been confirmed that both Yufu and Tsurumi volcanoes started their activities more than 35,000 years ago. Yufu-dake is a stratovolcano with several parasitic lava domes and lava flows. The latest eruption occurred ca. 2,000-1,500 years ago issued the Tsukahara pyrodastic flow, the Ikeshlro lava, the Yufu-dake summit lava, and the Yufu-dake ash. The Tsukahara pyroclastic flow deposit is oxidized under the high temperature condition and has secondary fumarolic pipes. The Tsukahara pyroclastic flow is judged to have been formed by the collapse of an ascending lava dome. Stratigraphic relation between the pyroclastic flow and the volcanic ash shows that the collapse of the lava dome happened repeatedly at least two times. The last ascending of lava formed the Ikeshiro lava dome accompanied with lava flow. Shortly after that, the Yufu dake summit lava was issued and formed a summit lava dome. All the activities mentioned above represent a single cycle of eruption ceased within a short period of time. Based on the documentary record, however, it is convinced that the fumarolic activity was continued until the time ca. 1,100 years ago. Tsurumi volcano is composed of highly dissected volcanic edifice and the younger parasitic volcanoes. Based on the tephrochronology of wide-spread tephra, the younger parasitic volcanoes other than the Tsurumi-dake summit lava are judged to have been formed during the period of time ranging from 22,000 to 6,300 years before present. Garan-dake, Uchi-yama, and Nanpeidai are all lava domes and Oninomi-yama alone is a scoria cone with basaltic lava flow. The Tsurumi-dake summit lava which filled up the summit crater and formed a summit lava dome flowed down southward and eastward. One of the lobes of lava flow dammed up the river resulting in the developemment of a volcanic fan formed from the tip of a lava flow. Judging from the distrbution pattern of historic sites on the fan and the descriptions in the ancient manuscripts, it is reasonably concluded that the lava was issued about 1,500-1,200 years ago. Most of the rocks in this area is hornblende andesite ordacite, but a complicated assemblage of phenocryst, namely the olivine-clinopyroxene-orthopyroxene-hornblende-biotite-quartz-plagioclase-Fe-Ti oxides is frequently found in the rocks of of these volcanoes.