著者
小川 貴代 Kordzo Kpesese Wogbe 中辻 浩喜 諸岡 敏生 秦 寛 近藤 誠司 大久保 正彦 朝日田 康司
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理研究会誌 (ISSN:09166505)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.75-84, 1996-02-15

積雪・寒冷地における乳用雌牛の放牧を取り入れた周年粗飼料主体育成を検討するため、北海道大学農学部附属農場と附属牧場においてホルスタイン種雌牛計92頭を供試して8年間にわたる一連の試験を実施した。供試牛を、4ヵ月齢から初回分娩時まで通年舎飼で濃厚飼料を2kg/d給与した対照群(C群)および放牧時は濃厚飼料無給与で舎飼時の濃厚飼料給与量を1kg/d以下とした粗飼料主体群に配置した。粗飼料主体群はさらに春夏(4〜9月)生まれのGM群と秋冬(10〜3月)生まれのGE群に分類した。育成期間を4〜10ヵ月齢の前期、11〜16ヵ月齢の中期および17ヵ月齢〜初回分娩時までの後期に区分し、育成ステージ別の成長と繁殖成績を調査した一初回分娩以降は全群同一の飼養管理を行ない、乳生産成績を調査した。結果は以下の通りである。1)分娩時の体重および牛体各部位の測定値に3群間で有意な差はなかったか、全育成期を通じた日増体量はGM群とGE群でそれぞれ0.61、0.62kgであり、C群の0.72kgに比べ有意(P<0.05)に低かった。2)粗飼料主体群の日増体量は舎飼時に低く放牧期に高いパターンを示し、育成前期と後期はGM群か有意(P<0.05)に低く、育成中期はGE群が有意(P<0.05)に低くかった。3)舎飼時の日増体量は濃厚飼料給与量か少ないほど低く、その傾向は育成前期で顕著であった。4)放牧を育成前期に取り入れた場合の日増体量は、育成中期および後期の放牧した場合に比べ低い傾向にあった。5)放牧時の日増体量と放牧前の舎飼時における日増体量との間に有意(P<0.01)な負の相関が認められた。6)粗飼料主体群は初回種付け月齢がC群より1ヵ月以上遅延し、GM群は授精回数か多く受胎率が低い傾向にあった。7)初産乳期における乳生産量に3群間で有意な差は認められなかった。8)積雪・寒冷地における乳用雌牛の放牧を取り入れた周年粗飼料主体育成において、秋冬生まれの牛は4ヵ月齢から粗飼料のみでの育成か可能であるか、春夏生まれの牛では育成前期の舎飼時に濃厚飼料の補給か必要であることか示唆された。日本家畜管理研究会誌、31(3) : 75-84.1996.1995年8月28日受付1995年11月2日受理
著者
岡本 全弘 曾根 章夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
家畜の管理 (ISSN:03888207)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.47-53, 1989-11-06

冬季間の気温、気動、降雨、降雪および直射日光などの気象環境が子牛からの放熱に及ぼす相対的な影響を知るための一つの手段として、子牛の熱的模型を屋外に設置して検討した。熱的模型は筒型のステンレススチール容器の表面に子牛の鞣し毛皮を張り、内部には39℃に温度調節したエチレングリコール液を満たしたもので、両側面の毛皮の下に熱流素子を添付して放熱量を測定した。その結果、直射日光は熱的模型からの放熱量を著し低下させた。風速が熱的模型の熱伝導率に及ぼす影響を検討したところ、1次回帰式が適合した。また、熱模型からの放熱量を気温と風速から推定する重回帰式を導いた。この式の決定係数は0.756であった。降雨や降雪は熱伝導率を上昇させたが、降雨は降雪より影響が大きかった。粉雪は毛先に付くだけで、毛の根元や皮膚面を濡らすことなく、熱伝導率にはほとんど影響しなかった。家畜の管理、25(2) : 47-53.1989.1989年6月19日受理
著者
劉 翔 高山 耕二 山下 研人 中西 良孝 萬田 正治 稲永 淳二 松元 里志 中釜 明紀
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.13-22, 1998-07-15 (Released:2017-10-03)
参考文献数
14

水生シダ類植物アゾラと合鴨の有機的な結合が水田における除草と駆虫に関する効果および合鴨の行動に及ぼす影響を検討した。標準施肥区(以下、慣行区)、対照区、合鴨区、アゾラ区およびアゾラ-合鴨区の5区を設け、1996と1997年に試験を行った。水稲移植後の翌日に、1996年には70g/m^2、1997年には25g/m^2のアゾラをそれぞれの水田に接種し、約6〜7週間増殖させた。その後、合鴨によってアゾラを土中または水面下に攪拌し踏込ませた。水稲移植1週間後、1週齢のマガモ系合鴨を6羽/3aずつ水田に放し、稲の出穂期までの約2ヵ月間放飼した。1996年8月および9月においては、アゾラ-合鴨区と合鴨区の雑草発生量は対照区よりも有意に少なかった。1997年8月においては、アゾラ-合鴨区の雑草発生量は慣行区を除いた他の区に比べ、有意に少なかった。マット状になったアゾラによりヒエ類や他の水田雑草が抑制され、合鴨によりカヤツリグサなど柔らかい草が採食され、アゾラ-合鴨区の雑草発生量が少ないのはこの両者の相乗効果によるものと推察された。セジロウンカの発生は、対照区とアゾラ区に比べ、合鴨区とアゾラー合鴨区で有意に少ないことが認められた。トビイロウンカの発生は、合鴨区に比べ、アゾラ区とアゾラ-合鴨区では有意に多いことが認められた。ツマグロヨコバイについては、合鴨による顕著な防除効果か見られなかった。また、アゾラを鋤き込む時期によって、稲作後期の害虫の発生量が異なるものと思われた。合鴨の採食行動は夜間でも頻繁に行われているのに対して、アゾラー合鴨区では、昼間に集中していることが認められた。また、アゾラー合鴨区の採食行動と移動行動は、合鴨区に比べ、顕著に少なく、休息行動は、逆に顕著に多かった。日本家畜管理学会誌、34(1) : 13-22,19981998年3月26日受付1998年5月13日受理
著者
三好 智子 袖山 修史 加藤 元海
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.52, no.2, pp.98-105, 2016

<p>本研究では、高知県内と大阪府にある5ヶ所の動物園と水族館において、飼育動物の体重と給餌内容から、1日あたりの摂餌量とエネルギー量の推定を行なった。対象生物は、体の大きさではトビからジンベエザメまでを網羅し、分類群では哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、頭足類の全35種191個体を対象とした。摂取する餌の重量やエネルギー量と体重の関係について、分類群ごとに特徴がみられるかを検証した。体重に対する餌重量の比の平均値は哺乳類で7.5%、鳥類で12.9%であったのに対して、爬虫両生類、魚類および頭足類は1%未満であった。単位体重あたりの摂取エネルギー量の平均値は哺乳類と鳥類は約100kcal/kgと高く、その他の分類群では15kcal/kg未満の低い値となった。単位体重あたりの餌摂取量に関しては恒温動物と変温動物との間に違いがみられたものの、1日あたりの摂取エネルギー量は体重の増大に比例して増加していたことから、飼育動物の摂取エネルギー量は分類群ごとに体重から推定できる可能性が示唆された。</p>
著者
Chowdappa Rekha 長谷川 信美 後藤 正和 小薗 正治 藤代 剛 高橋 俊浩 高木 正博 野上 寛五郎 園田 立信
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.149-156, 2005
参考文献数
21
被引用文献数
2

幼齢ヒノキ造林地(YF区, 2003年6-9月)および野草地(NG区, 2003年10・11月)に放牧された黒毛和種雌牛の行動とルーメン内性状の特性を明らかにするために、24時間行動観察とGPSによる移動距離測定を各月1回, ルーメン液採取を各区2回行った。採食行動時間は平均537.7±109.8分/日で、Miscanthus sinensis採食割合と正(r=0.436, p<0.05)、Pleioblastus simonii採食割合と負(r=-0.676, p<0.001)の有意な相関を示した.M. sinensis採食割合は、P. simoniiおよびその他の植物採食割合と負(p<0.001)、横臥姿勢割合と正(p<0.05)の相関を示した。放牧期間中の移動距離は5001-6879mであった。ルーメン液中総VFA濃度に大きな変動はみられなかったが、個々の脂肪酸割合には牧区と時期によって変動に違いがみられた。NH_<3^->N濃度はYF区がNG区よりも高かった.総プロトゾア数/mlはYFで放牧初期2.0×10^6から放牧後期3.0×10^5に減少し、NGでは変化は示さず1.0×10^6で、両区ともEntodinium割合が最も高くかった。総バクテリア数/mlは1.4×10^7-8.2×10^8で、cocci (+)とcocco (-)の割合が高かった。この研究において、牛は幼齢造林地と野草地放牧に、行動を変化させ多様な植物を選択することで適応する能力があることが示された。
著者
遠藤 なつ美 田中 知己
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.163-170, 2016

<p>本研究では、加速度センサーによって測定した行動量の増加を指標とした発情発見補助装置の有用性を検討するため、国内で最近開発された発情発見補助装置(ハツハツ)を用いて以下の試験を実施した。実験1において、ホルスタイン種搾乳牛10頭の頚部に加速度センサーのタグを装着し、発情周期における行動量の変化を解析した結果、発情日においては1時間当たりの行動量が、黄体期の平均行動量に比べて9.2 ± 3.3(5.2〜11.0)倍に増加するピークが認められた。さらに、日内の行動量がピークとなる時刻は、その殆どが日中の作業時間帯に生じており、発情周期における観察日間(黄体期、発情日前日、発情日、排卵日)での有意な差は認められなかった。実験2において、搾乳牛14頭の合計27発情周期について発情行動の観察と排卵の確認を行い、ハツハツによる発情検知率との比較を行った。その結果、目視観察による発情検知率は14/27周期(51.6%)であったのに対し、ハツハツによる発情検知率は23/27周期(85.2%)と目視観察よりも有意に高かった(<i>P</i> < 0.05)。ハツハツにより黄体期に発情が誤検知された周期は8/27周期(29.6%)だった。以上の結果から、加速度センサーによる発情検知システムは、飼養頭数の少ない小規模な牛群においても目視観察による発情発見の補助手段として十分活用できることが示された。</p>
著者
福澤 めぐみ 阿部 紗裕理
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.50, no.4, pp.153-161, 2014-12-25 (Released:2017-02-06)

伴侶動物に対する香りの導入が注目されているが、イヌにおけるアロマエッセンシャルオイル吸入曝露における使用量は検討されていない。そこで、アロマエッセンシャルオイル使用量の違いがイヌの姿勢や行動に及ぼす影響を検討した。アロマエッセンシャルオイル吸入未経験の健康なイヌ8頭を対象に、アロマエッセンシャルオイル未使用「コントロール」、ヒトにおけるアロマエッセンシャルオイル推奨使用量(0.1ml)の「1/3量(33μl)」、および「1/2量(50μl)」をそれぞれ1日1処理、同一処理に対し連続で3日暴露した。芳香吸入前10分、吸入中30分、吸入終了後10分、計50分間の姿勢(4項目)と行動(10項目)を連続観察した。芳香吸入前後において、「コントロール」では、各姿勢に有意な差が認められなかったが、「1/3量」では横臥位が減少・立位が増加した。「1/2量」では横臥位が減少・伏臥位が増加した。また、芳香吸入中と吸入終了後の各行動発現時間は処理で異なり、「1/2量」ではパンティングが「コントロール」よりも有意に少なかった。これらのことから、イヌの姿勢や行動はアロマエッセンシャルオイル量に影響を受け、「1/2量」によりリラックス効果が高まっていると推察された。
著者
高橋 誠 三〓 健司 上田 宏一郎 中辻 浩喜 宿野部 猛 近藤 誠司
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌 (ISSN:13421131)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.155-160, 2005-02-01 (Released:2017-10-03)
参考文献数
12
被引用文献数
3

北海道北部草地酪農地域の酪農家約100戸を対象に、共済組合獣医診療記録および乳検記録をもとに、各戸の飼養形態についてアンケート調査を行い、放牧の有無と乳牛の疾病発生状況について検討した。各農家の経産牛治療記録および牛乳生産記録はオホーツク農業科学研究センターで解析した。アンケート調査は各経営の飼養頭数、草地面積、放牧の有無・方式について行った。アンケートに回答した46戸の平均で、乳量は8,127.2kg/305日、経産牛頭数は71.7頭、放牧地面積は8.6ha、年間の治療回数は1.2回/頭で、年間の1頭あたり治療回数は個体乳量が高いほど、また草地面積が少ないほど高かった。46戸のうち、昼夜放牧農家7戸、時間制限放牧農家16戸、通年舎飼い農家9戸を選び、飼養形態ごとに解析した。各飼養形態間で平均乳量に差はなかった。1年1頭あたりの治療回数で、泌乳器系では昼夜放牧農家が多く、運動器系では昼夜放牧農家および通年舎飼い農家が少なかったが、有意な差ではなかった。妊娠分娩関係および生殖器系をあわせて繁殖関係とすると、治療回数/頭/年は昼夜放牧農家で0.22回と、時間制限放牧農家の0.41および通年舎飼い農家の0.40回より有意に少なかった(P<0.05)。
著者
福澤 めぐみ 植竹 勝治 田中 智夫
出版者
日本家畜管理学会
雑誌
日本家畜管理学会誌・応用動物行動学会誌 (ISSN:18802133)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.176-184, 2008
参考文献数
14

イヌの訓練は、提示されたコマンドに対するイヌの行動が関連づけられていなければならないが、訓練に用いるイヌのコマンド認知に関する研究は少ない。本研究では、ヒトの言葉に対するイヌの反応について行動学的観点から探求することを目的とし、聴覚刺激として提示するため通常のコマンド提示に伴う視覚刺激などの非言語シグナルを排除した言語シグナルのみのコマンド「フセ」、「マテ」、「コイ」の提示に対する反応について、訓練開始1ヶ月前後の主にジャーマン・シェパード・ドッグを対象として調査した。各コマンドに施した刺激提示条件間においては、機械からコマンドを提示する条件に対するイヌの反応スコアは、訓練士がコマンドを直接提示する「Normal-TT」や実験者がコマンドを直接提示する「Normal-EE」条件に比べて低い傾向にあった。これは、訓練初期段階のイヌがビトからコマンドを直接提示されることに強く依存していることを示唆している。また、イヌは録音したコマンドを機械提示する刺激提示条件において、それらに対して正しい反応を示した。しかし、訓練初期段階のイヌのコマンドに対する反応は、ヒトが一方的にコマンドを提示するような機械提示の訓練よりも、直接コマンドを提示する方法を用いたほうが正しく導き出せると考えられる。