著者
国武 陽子 寺田 佐恵子 馬場 友希 宮下 直
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.4, pp.217-220, 2010 (Released:2010-10-05)
参考文献数
8

アオキ (Aucuba japonica) の花粉媒介様式と主要な花粉媒介者を, 網掛けによる訪花者の排除実験と訪花昆虫の観察から推定した。花序当たりの結果率は, 花序に網 (1 mmまたは3 mmメッシュ) を掛けて昆虫の接触を制限すると, 無処理区に比べて著しく低下したが, 網を掛けて人工授粉を施すと無処理区との差はみられなかった。また, 1 mmと3 mmメッシュの網では, 網掛けの効果に有意な差はみられなかった。以上の結果より, アオキの種子生産は主に虫媒依存であることが示唆された。次に訪花昆虫の同定と体サイズの測定より, 花粉媒介者は, ジョウカイボンおよびゾウムシなどのコウチュウ目や, クロバネキノコバエなどの長角亜目であることが推測された。花粉媒介はこれらの昆虫の機会的な訪花に依存していると考えられる。
著者
犬井 正
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.18, pp.15-20, 1996-10-01 (Released:2017-07-31)
被引用文献数
2
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.104, no.3, pp.e1, 2022-06-01 (Released:2022-07-20)

短報「生分解性不織布ポットを用いたスギ・ヒノキ苗の植栽後2年間の成長」 著者:北原文章,酒井敦,米田令仁 巻号:102巻4号263-269ページ,2020年 上記短報について,著者及び著者の所属機関から日本森林学会誌編集委員会に対し,撤回の申し出があった。 編集委員会でその内容を検討した結果,著者らによる申し出を受理し,日本森林学会誌編集委員会は当該論文を撤回する。 詳細はPDFを参照のこと。
著者
小川 秀樹 櫻井 哲史 手代木 徳弘 吉田 博久
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.103, no.3, pp.192-199, 2021-06-01 (Released:2021-08-12)
参考文献数
23
被引用文献数
4

コシアブラは人気の高い山菜の一つであるが,山菜類の中でも137Cs濃度が高いことが知られている。しかしながら,葉,幹,主根,側根といった樹体部位別ごとの137Cs分布を捉えた研究はこれまでほとんど報告されてこなかった。本研究は,部位別の137Cs分布や重量比に着目し,統計解析により,コシアブラの葉の高濃度化の要因について検討することを目的とした。2016年と2017年の春期と秋期に,福島県内に自生する小さい個体(樹高が2 m以下)のコシアブラを採取した。各部位への137Cs分布割合を,各部位の137Cs濃度と重量から算出した。春期には樹体全体に含まれる137Cs蓄積量の約50%が葉に分布した。また,いずれの採取時期においても幹より地下部に多くの137Csが分布していた。さらに,線形回帰モデルの結果,側根と幹および主根の内皮の137Cs濃度には高い正の相関が認められた。これらの結果から,137Csは内皮を通じて主根や幹へと移動した可能性が示唆された。コシアブラの葉が高濃度化する要因については,既往研究で指摘されてきた浅根性という特徴に加えて,地下部に蓄えられた137Csの内皮を通じた転流による可能性が考えられる。
著者
上田 明良 水野 孝彦 梶村 恒
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.91, no.6, pp.469-478, 2009 (Released:2010-03-12)
参考文献数
81
被引用文献数
1 2

キクイムシ類 (キクイムシ亜科とナガキクイムシ亜科) の生態的多様性を, 食性, 配偶システム, 坑道型, 社会性の多様性から論じた。食性は, 植物のさまざまな部分に穿孔して基質そのものを食べるバークビートルと, 木質部へ穿孔して坑道に共生微生物を栽培しこれを食べるアンブロシアビートルに分けられる。配偶システムは, メス創設の一夫一妻, 同系交配の一夫多妻, ハーレム型一夫多妻, オス創設の一夫一妻に分けられる。また, 特異的な繁殖として, 半倍数性の産雄単為生殖と精子が必要あるいは不要の産雌単為生殖もみられた。坑道型は, 配偶システムと食性の両方の影響をうけて多様化していた。また, 社会性の発達についても論じ, ナガキクイムシ亜科のAustroplatypus incomperusのメス成虫が不妊カーストとなる真社会性の観察および, カシノナガキクイムシ (Platypus quercivorus) 幼虫の利他行動の観察例を紹介した。最後に, 直接的観察によるキクイムシの坑道内での生態解明とそのために必要な人工飼育法開発の重要性について論じた。
著者
市原 優 升屋 勇人 窪野 高徳
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.2, pp.100-105, 2010 (Released:2010-06-17)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1 1

日本の冷温帯の代表種であるコナラとミズナラの堅果壊死の病原菌を明らかにするために, コナラとミズナラの壊死堅果に偽菌核を形成して発生するCiboria batschianaの病原性と発生生態を調査した。C. batschianaの菌叢をコナラとミズナラの堅果に接種した結果, 両種ともに堅果は壊死し偽菌核を形成し, 接種菌が再分離されたことから, C. batschianaにはコナラとミズナラの堅果を壊死させる病原性があることが確認された。岩手県のコナラ林では, 子嚢盤が発生した9月下旬に堅果が落下し, 10月には楕円形の一部壊死が認められ, 融雪後の4月には感染堅果のほとんどが偽菌核を形成していた。本菌は秋季にコナラ堅果に感染して病斑を形成し, その後融雪時期までに堅果全体を壊死させ偽菌核を形成すると考えられた。
著者
遠藤 幸子 成瀬 真理生 近藤 博史 田村 淳
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.102, no.3, pp.147-156, 2020-06-01 (Released:2020-09-16)
参考文献数
60

人工林は日本の森林の約40%を占めており,木材供給だけでなく生物にとっての適した生息場所として機能することが期待されている。しかしながら,人工林内の生物の多様性およびその生態について十分に理解されているとはいえない。本研究ではスギ・ヒノキ人工林で観察される鳥類種を明らかにし,その生態的特徴について考察した。調査は2014年から2018年の鳥類の繁殖期にあたる5月から6月にかけて神奈川県西部の3山域57地点において実施した。観察調査から8目26科45種がスギ・ヒノキ林を利用していることが明らかとなった。確認された種数およびその種組成は,スギ林とヒノキ林との間で有意な違いはみられなかった。確認された鳥類のうち留鳥10種と夏鳥2種を含む2目9科12種は,全ての山域で年を経ても繰り返し確認されており,これらはスギ・ヒノキ人工林を利用する確率の高い種であると示唆された。これら12種のうち11種は昆虫食であった。さらに,10種は樹上と樹洞に営巣する傾向があった。このように,人工林を利用する確率の高い種では,食性と営巣場所の選択において高い共通性がみられた。
著者
大場 孝裕 大橋 正孝 山田 晋也 大竹 正剛
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.126, 2015

鳥獣保護法が、鳥獣保護管理法に改正された。増え続けるニホンジカ(以下、シカ)に対しては、個体数削減のための管理、そのための捕獲事業の実施強化と、それを担う事業者制度の導入が明確化された。しかし、従前の銃やわなを用いた捕獲が困難な場所や状況も存在し、無理な捕獲強化は、人身事故の増加や、錯誤捕獲など他の動物への悪影響も懸念される。シカを減らすためには、従来の方法に加え、新たに安全で効率的な捕獲技術の開発が必要と考えた。<br> 反芻動物は、硝酸イオンを摂取すると、第一胃にいる微生物が、これを亜硝酸イオンに還元する。亜硝酸イオンは、血中で酸素運搬を担っているヘモグロビンと反応し、酸素運搬能力のないメトヘモグロビンに変える。進行すると酸素欠乏症に陥り、死に至ることもある。人間など単胃動物の酸性の胃では、亜硝酸イオンは増加しない。<br> シカ飼育個体の胃に硝酸イオンを注入し、致死量を明らかにした後、作成した硝酸塩添加飼料を採食したシカ野生個体の捕獲(致死)に成功した。この硝酸塩経口投与によるシカ捕獲について、インターネット上で行われた意識調査では、実用化すべきとの意見が過半数を占めた。
著者
木下 晃彦 山中 高史 小長谷 啓介 仲野 翔太 野口 享太郎 古澤 仁美
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第129回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.684, 2018-05-28 (Released:2018-05-28)

トリュフ子実体の発生過程には土壌条件など非生物要因だけでなく、菌類やバクテリアなどの生物要因も関与すると考えられる。本研究では、日本の白トリュフとして知られるホンセイヨウショウロ(Tuber japonicum)の子実体発生要因の解明に向け、子実体発生地の微生物相(菌類、バクテリア)を明らかにすることを目的とした。2017年に三重、大阪、岡山の子実体発生地において、子実体直下の土壌コア(直径5cm、深さ5cm)を5地点採取した。また近接する非発生地からも土壌を採取した。土壌は冷蔵して持ち帰り、有機物や礫を除いた後、全ゲノムDNAを抽出した。菌類はITS2領域、バクテリアはV3-V4領域を対象に、メタゲノムシーケンシングを行った。得られた塩基配列はクリーニング後、情報解析を行った。その結果、バクテリア相は全調査地でRhizobiales, Acidobacteriales等が優占し、発生・非発生地間でおよそ75%の分類群が共通した。一方、菌類相は調査地間および発生・非発生地間で異なり、非発生地ではトリュフ菌のみならず他の外生菌根菌も少なかった。発表では各調査地の環境要因の結果を踏まえ、ホンセイヨウショウロ生育適地について考察する。
著者
柳田 邦玲雄 松本 武 岩岡 正博
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース
巻号頁・発行日
vol.127, 2016

我が国には山間部,平地を問わず, 各地に山の神のための祭事,行事,儀礼,習慣など(以下,祭行事)が多様に存在する。人びとの信仰する山の神と生業とに関する研究では,林業と山の神との考察には至っていない。そこで,林業者の集団である森林組合において山の神はどのように信仰されているか,山の神のための祭行事の内容や山の神の特徴を通して明らかにすることを目的として,近畿地方にある89の森林組合を対象に電話調査を行った。その結果,88組合からデータを得て(回答率98%),所在地にマッピングし地域性の有無を明らかにした。88組合中32組合で祭行事が行なわれており,そのうち26組合には山に入らないという習慣があり,25組合には行事があった。また,祭行事を年に2回行う組合が5組合あった。祭行事の実施月は,5月にだけ行う1組合を除くと,11月,12月,1月の冬期であった。そのうち2組合では冬期と4月の年に2回行い,3組合では冬期に2回行っていた。祭行事の実施日は,奈良県,和歌山県の組合では7日,滋賀県,京都府,兵庫県の組合では9日であり,南部と北部に分けられた。山の神に「山の神」以外の名前はなかったが,21組合では女性格の神であった。