著者
北島 博 川島 祐介
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.94, no.5, pp.209-213, 2012-10 (Released:2013-10-08)

菌床シイタケ害虫ナガマドキノコバエ成虫の生存日数,産卵数,および産下卵の孵化率に対する,餌条件(重量比5%の砂糖水または蒸留水)および温度条件(15℃,20℃,または25℃)の影響を調べた。成虫の生存日数は,砂糖水を与えた区(7.0~31.4日)が,蒸留水を与えた区(3.0~6.9日)より長かった。産卵数も,砂糖水を与えた区(131.7~281.8卵)が,蒸留水を与えた区(63.7~152.2卵)より多かった。産卵は,いずれの処理でも羽化後1日目の成虫から行われた。累積相対産卵数が90%以上となったのは,砂糖水を与えた区では5~9日目であったが,蒸留水を与えた区では3~4日目であった。これらより,本種は糖分の摂取により生存日数が延び,産卵数が増えることがわかった。温度条件に着目すると,産卵数は20℃で最も多かった。各処理における産下卵の平均孵化率は29.2~65.4%であり,特に15℃では20℃および25℃に比べて有意に低かった。
著者
田中 八百八
出版者
日本森林学会
雑誌
林學會雑誌 (ISSN:21858187)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.21-37, 1927-07-10 (Released:2009-02-13)
著者
奥 敬一
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第125回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.40, 2014 (Released:2014-07-16)

薪の利用は、生態系サービス概念では通常「供給サービス」の中の「燃料供給」と位置づけられる。しかし、薪ストーブを媒介として薪を利用することは、一定のライフスタイルのもとでは精神的・レクリエーション的な「文化的サービス」の発揮にもつながり、健康、安全、豊かな生活、社会的な連帯の形成、教育といった人間社会の福利へと生態系サービスを拡張する可能性を含んでいる。 こうした視点から、京都、滋賀の都市近郊において、里山林からの薪を利用している薪ストーブユーザー4軒を対象として3~5年間にわたるモニター調査を行った。その運転記録と生活の質に関わる聞き取り調査から、薪ストーブによって拡張された文化的サービスの実態について報告する。調査結果からは、薪ストーブを「里山林から得られる供給サービス(燃料)を、複合的な生態系サービスに拡張する装置」ととらえることができ、そのことが生活の質の向上の実感に大きく関わっていることが示された。
著者
平田 令子 大塚 温子 伊藤 哲 髙木 正博
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.96, no.1, pp.1-5, 2014
被引用文献数
5

スギ挿し木コンテナ苗の植栽後2年間の地上部と地下部の成長を裸苗と比較した。植栽時のコンテナ苗の苗高と根量は裸苗よりも小さかった。2生育期間の伸長成長量は苗種間で差はなく, 結果として, コンテナ苗の苗高は裸苗よりも低いままであった。また, 植栽後の根量の増加もコンテナ苗の方が少なく, コンテナ苗の優位性は確認できなかった。T/R比 (地上部/根乾重比) は両苗種とも植栽後に低下したことから, 両苗種ともにプランティング・ショックによる水ストレスを受けたと考えられた。ただし, コンテナ苗のT/R比は裸苗より早く増加したことから, コンテナ苗の方が水ストレスからの回復が早いと推察された。本調査からは, コンテナ苗が水ストレスから早く回復する利点を持つと推察されたが, それは, 裸苗の苗高を上回るほどの伸長成長量にはつながらなかったことが示された。現時点では, 下刈り回数の省略に対して過度の期待を持ってコンテナ苗を導入することは危険であると考えられた。
著者
初 磊 石川 芳治 白木 克繁 若原 妙子 内山 佳美
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.5, pp.261-268, 2010 (Released:2010-12-14)
参考文献数
28
被引用文献数
8 14

神奈川県東丹沢堂平地区では, シカの採食により, 林床植生が衰退し, 土壌侵食が広い範囲にわたって進行している。土壌侵食の実態を把握するため, 堂平地区のブナ林の山腹斜面に長さ5 m, 幅2 mの土壌侵食調査プロットを17箇所設置した。これらの土壌侵食調査プロットについて, 2006∼ 2008年の3年間の4∼ 11月の期間, ほぼ毎月1回土壌侵食量を観測するとともに, 同時に撮影した写真を用いて林床合計被覆率 (林床植生被覆率+リター被覆率) を求めた。その結果, 雨量1 mm当たりの土壌侵食量 (E) と林床合計被覆率 (F) には指数関数E=65 exp (−0.0615×F) で表わされる高い負の相関があることが分かった。得られた関係式では林床合計被覆率が小さい範囲では林床合計被覆率が大きい範囲に比べて林床合計被覆率のわずかな変化が土壌侵食量に大きな影響を与えており, 既往の人工降雨実験に基づく研究により得られたリター被覆率と土壌侵食量がほぼ直線的に反比例する関係とは大きく異なる結果が得られた。
著者
大澤 正嗣
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第124回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.67, 2013 (Released:2013-08-20)

トウヒツヅリハマキ (Epinotia piceae) は小型の蛾で、幼虫は針葉樹の葉を食害する。富士山北麓で2001年に本害虫が大発生し、多くのシラビソが食害され枯死し、被害面積は104haに及んだ。本害虫による被害は大台ヶ原で記録があり、本害虫の大発生は8年周期で繰り返されるであろうことが報告されている。富士山麓でも再び大発生する可能性があり、本害虫発生数のモニタリングを行っている。成虫のモニタリングは羽化トラップを設置し、夏に地面から発生する成虫を捕獲しカウントした。幼虫はシラビソを伐倒し、枝を各伐倒木から採取し、そこに付いている頭数をカウントした。その結果、調査を開始した2003年から2004年は減少傾向、2005年~2009年は頭数が一定して少なかった。しかし、その後個体数は増加に転じ、特に2011年~2012年は増加が著しかった。今後大発生が懸念される。
著者
高原 光
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.55, pp.10-13, 2009
参考文献数
25
被引用文献数
2 1
著者
水谷 瑞希 中島 春樹 小谷 二郎 野上 達也 多田 雅充
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.95, no.1, pp.76-82, 2013-02-01 (Released:2013-03-30)
参考文献数
31
被引用文献数
3 8

富山県, 石川県および福井県における, 2005年から2011年までの7年間の豊凶モニタリング調査の結果を用いて, 北陸地域におけるブナ科樹木の豊凶とツキノワグマの人里への出没との関係について検討した。北陸3県ではいずれも, 高標高域に分布するブナとミズナラの県全体の結実状況に大きな年変動があり, とくに北陸地域でクマ大量出没が発生した2006年と2010年には, 極端な結実不良となっていた。低標高域に分布するコナラでは県全体の結実状況の年変動は小さく, 極端な結実不良の年はなかった。このことから北陸地域では, ブナとミズナラの結実不良が広域的に同調して発生したことに起因する山地の餌不足が, クマ大量出没の引き金になっていたと推察された。クマ大量出没に影響するこれら「鍵植物」の豊凶は, 県をまたがる広い地域で同調していた。このことから現在各地で実施されている豊凶モニタリング調査を, 相互に比較可能な方法で連携して実施すれば, 効果的な豊凶把握やクマ大量出没の予測精度の向上に役立つと考えられる。
著者
斎藤 真己
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.92, no.6, pp.316-323, 2010 (Released:2011-02-16)
参考文献数
60
被引用文献数
5 25

スギ花粉症に対する育種的な対策として, 着花量の少ない少花粉, 花粉中のCry j 1量が少ない低花粉アレルゲン性, 花粉を生産しない雄性不稔性に着目した。着花量の少ないスギ精英樹は全国で135クローン選抜された。この性質は複数箇所の検定林で再現性が確認され, 親子回帰による遺伝率も0.34と比較的高い値であった。花粉中のCry j 1量を全国の精英樹420クローンについて調査した結果, 0.38∼10.23 pg/個と大きな変異を示し, その狭義の遺伝率は, 1.0と高い値であった。このことから次世代での選抜効果が顕著に現れると期待された。無花粉になる雄性不稔性は一対の劣性遺伝子支配であることが明らかになり, その遺伝子をヘテロ型で保有した精英樹が4クローン発見された。優良な無花粉スギの作出に向けて, これら精英樹同士の交配家系が育成されている。スギ花粉症対策品種は, 現在, さし木等によるクローン増殖やミニチュア採種園による種子生産が図られており, これらを上手く活用することによって従来の木材生産性を損なうことなく, 花粉飛散量の軽減に繋がると考えられた。
著者
野島 義照
出版者
日本森林学会
雑誌
森林科学 (ISSN:09171908)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.8-12, 1996
参考文献数
13
被引用文献数
2
著者
関口 和美 星崎 和彦 小林 一三
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース 第115回 日本林学会大会
巻号頁・発行日
pp.C02, 2004 (Released:2004-03-17)

1.はじめに 渓畔域では、植物は様々な形で河川撹乱に依存した生活史をもっている。日本の山岳河川では、土砂の移動を伴う河川撹乱を抑えるために砂防堰堤が数多く設置されてきたが、近年、堰堤建設に伴う植生への影響が懸念されている。 本研究では、砂防堰堤の下部、上部およびそれより上流部の植生を比較することにより、砂防堰堤が渓畔植生構造に与える影響について調べた。砂防堰堤の建設によって、_丸1_立地環境が変化し、_丸2_群落が単純化したり、_丸3_樹林化すると予測し、調査結果に基づいてこれらの予測を検証した。2.調査地 岩手県奥羽山系焼石岳南麓の胆沢川支流の上ノ倉沢で調査を行った。砂防堰堤を含む流路沿い約200m範囲の氾濫原に調査区を設置した。3.方法(1)立地環境調査 2002年8月に流路に沿って立地を流路沿い、旧河道、残丘、岩場、森林部分の5つに区分した。光環境の調査として、9月の曇天時に流路に沿って全天写真を撮影し、開空度を求めた。(2)植生調査 植物種の分布と種多様性を検討する目的で、植生の切れ目や立地の違いをもとに植生パッチを認識し、8月から9月にかけて植生調査を行った(n = 40)。高さ3m未満の維管束植物を対象に、植生パッチごとにパッチの大きさと出現種を記録した。また、環境要因の分析のために植生パッチごとに開空度、比高、基質の粒径、リターの出現頻度を調べた。(3)樹木調査 樹林の発達の程度を検討するために、樹木調査区を設置し、9月から10月にかけて毎木調査を行った。樹高3m以上の樹木を対象に種名、胸高直径を記録した。樹木調査区は、堰堤下部、堰堤上部、上流の森林部分と岩場の4つに区分した。 また、樹木調査区の堰堤下部、堰堤上部、上流部(森林部分)の各々から8本ずつ(胸高直径の太い順)を選び、年輪コアサンプルを採取して樹齢を調べた。4.結果(1)立地環境の変化 堰堤周辺には旧河道、残丘、岩場は存在せず、上流部より微地形が単純化していると思われた。また堰堤周辺では開空度が30%を超え、上流部よりも明るかった。これには堰堤建設時の伐採が深く関連していると思われた。(2)群落の単純化 堰堤周辺では上流部に比べ植生パッチ面積が大きくなっていた。 調査した植生パッチでは57科112属146種の維管束植物が確認され、植生パッチ面積が大きくなるほど種数も増加する傾向があった。面積に対する種数の割合は堰堤周辺と上流部で大きな差はみられなかった。 種の豊かさや均等度を表す多様度指数としてGleason指数、Shannon's H'、Simpson指数、Pielou's J'を用いて植生パッチ内の種の多様性について検討した。どの指数も堰堤周辺と上流部で大きな差はみられなかったが、出現種の生活形ごとに同様の解析をしたところ、堰堤周辺では上流部よりも若干高木種が高く、藤本種が低い傾向があった。 DCAを用いて各パッチの種組成の違いを表す軸を抽出した結果、上流部のパッチは軸上に幅広く分布していた(パッチ間のβ多様性が高い)。一方堰堤周辺のパッチの傾度幅は狭く、類似した種組成をもつことが示された。これらのパッチは明るく、比高が低く、リターが少ない傾向があった。同様に、上流部のパッチの基質は様々な粒径分布を示したのに対し、堰堤周辺では土と石に二極化していた。(3)樹林化 毎木調査の結果、堰堤上部での立木密度はその他を大きく上回っていた。堰堤上部では胸高断面積合計も森林部分の60%に達し、樹林化の進行が裏付けられた。堰堤周辺の出現種は上流部と異なり、ヤマハンノキやヤナギ類が優占していた。これら堰堤周辺の樹木の多くは樹齢27年未満であり、堰堤完成後に進入してきたことが明らかになった。5.考察 堰堤周辺では、河川の勾配が緩やかになることで微地形が単純化し、明るくなっていた。堰堤周辺における植生パッチ内の基質の単純化やパッチの大型化、樹林化の進行は、土砂が堆積し立地が安定化したためであると考えられた。そして、それらの環境の変化が堰堤周辺の単調な種組成に反映していると思われた。
著者
加賀谷 悦子
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第129回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.183, 2018-05-28 (Released:2018-05-28)

クビアカツヤカミキリAromia bungiiは近年日本に侵入した外来生物であり、サクラ、モモ等のバラ科樹木を加害して問題となっている。特定外来生物に今年指定され、その防除は喫緊の課題である。樹皮下で生育する幼虫については、樹木の伐倒駆除や排糞孔への殺虫剤注入で防除が進められている。一般に、一次性穿孔性昆虫の死因は、樹木による防御が多い。つまり、幼虫の多くが孔道に浸潤する樹液や樹脂に溺れることで死亡する。本種の被害木にも樹液の樹皮上への流出が認められることが多く、樹木の抵抗により幼虫が死亡していることが推察される。そこで、本研究ではソメイヨシノの被害樹で、樹液の流出箇所の掘り取り調査を行い、その樹皮下の孔道の有無及び幼虫の生存を調査した。14箇所の樹液流出部位の樹皮を除去したところ、全ての箇所で樹皮下に孔道が認められ、本種の加害による防御であることが確認された。その中で、幼虫は8孔で生存していた。そのため、幼虫の駆除は盛んにフラスが排出されているところだけではなく、樹液が流出しているところでも実施することが必要であることが判明した。
著者
小林 正秀 伊藤 進一郎 野崎 愛
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース 第114回 日本林学会大会
巻号頁・発行日
pp.60, 2003 (Released:2003-03-31)

カシノナガキクイムシ(以下カシナガ)の穿入に伴うナラ類集団枯死被害について、カシナガの天敵に関する報告はほとんどない。筆者らは、カシナガが繁殖に失敗している坑道内で、ある種の線虫が増殖していることを発見した。そこで、この線虫がカシナガの密度抑制要因、つまり天敵である可能性を明らかにするための予備実験を行った。被害発生年度が異なる4林分で、健全木、穿入生存木、穿入枯死木から線虫を分離したところ、被害発生初期の林分からは線虫がほとんど分離できなかった。また、有意差はなかったが、健全木と穿入生存木からの線虫の分離数は少なく、穿入枯死木からの分離数が多かった。この線虫は、カシナガ生存成虫から分離できたが、死亡個体や他のキクイムシからは分離できなかった。また、カシナガ成虫を解剖したところ、線虫は鞘翅裏側に存在することが判った。線虫はカシナガ孔道内から分離した酵母でよく増殖した。線虫のカシナガ繁殖に及ぼす影響を調べるため、増殖させた線虫を穿入枯死木と健全木に接種した。その結果、枯死木からは再分離されたが健全木からは再分離されなかった。また、再分離数が多かった木ではカシナガの死亡率が高い傾向が見られた。以上のことから、この線虫はカシナガと共に移動し、カシナガが繁殖した坑道内で、カシナガの餌と考えられる酵母を搾取して間接的にカシナガの密度を低下させることが示唆された。
著者
恒川 佳世 梶村 恒 松永 孝治
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会大会発表データベース 第126回日本森林学会大会
巻号頁・発行日
pp.417, 2015 (Released:2015-07-23)

電気インパルス(人工的に発生させた静電気による衝撃)はマツノザイセンチュウ(以下、線虫)を駆除できるかもしれない。本研究では、技術開発の基礎データを得るために、水中での線虫殺虫試験と線虫接種した2年生クロマツ苗木における線虫殺虫試験を行った。まず、今回用いた電気印加機器で、苗木の樹幹に7.0±2.8A(平均±SE)の電流を流すことができた。そこで、同程度の電流をシャーレ中の線虫懸濁液(250頭/ml)に流した。この場合の線虫殺虫率は、1分印加で39.5%、5分印加で64.0%、10分印加で82.1%となった。苗木には5000頭の線虫を接種し、約1カ月後に1分印加と15分印加を行った。その結果、15分印加では、対照区に比べて線虫密度が有意に低くなり、樹幹内における殺虫効果が実証された。なお、15分の電気印加を行っても、樹幹部に通水阻害は確認されなかった。ただし、内樹皮が変色した様子が見られた。以上の結果から、水中と樹幹内共に7A前後の電気印加によって線虫を殺虫することが可能であり、高い殺虫効果を得るには10分以上の印加が必要であることがわかった。一方で、内樹皮の変色によって苗木にどのような影響が生じているのか更なる検討が必要である。