著者
白數 哲久 荻野 雅
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.25-34, 2002-03-29
被引用文献数
1

筆者は小学校理科の問題解決的な学習において,どの程度の主体性を児童に期待できるかを検討するために,2つの新しい尺度を考案した。1つは問題解決的な学習において,児童にどの程度の主体性があったかを示すS密度である。このS密度は次の式で求める。S密度=ある単元での主体的な学習の度合いを数値化した全ポイント合計÷その単元の授業時数もう1つは児童の学習内容に対する印象の良し悪しを示すI指数である。このI指数は次の式で求める。I指数=ある単元での児童の学習内容に対する印象を数値化した印象度得点合計÷児童数 本研究では,相関表(SI相関表)を用いて両者の相関関係を調べ,次のような結論を得た。(1)S密度が低いと,I指数も低い。特にC領域「地球と宇宙」でこの傾向が強い。(2)S密度が普通または高いと,I指数も普通または高くなる傾向が見られる。(3)S密度が非常に高くてもI指数は普通程度にとどまる。この現象が見られたのはB領域「物質とエネルギー」でのみである。今回考案したS密度あるいはそれを求めるプロセスは,教師が授業計画の反省あるいは修正に用いるのに有効である。
著者
熊野 善介 岡田 拓也
出版者
日本理科教育学会
雑誌
日本理科教育学会東海支部大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
no.53, 2006-11-19

子ども達に科学に対する興味、関心を持ってもらおうと地域科学教室や科学の祭典などが多く開かれている。しかしこれらの活動は単発的であり、興味関心を持続させる継続的な学習の場が十分に確保されているとはいえない。その問題点を克服しようとするのが「どきどき科学探究教室」である。今回で三回目となるこの教室は、終日かけて科学者と触れ合い、夏休みの研究の相談、支援をすることが特徴である。この教室の報告を行い、これからの学校外科学教育のあり方を考える。
著者
大黒 孝文 稲垣 成哲
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.1-12, 2006-11-30
参考文献数
18
被引用文献数
6

近年,理科教育において,生徒の学びの場に生じる対話が注目されており,そこで生起する相互作用や概念の変容を協同学習の中で実現しようとする研究がなされている。しかし学習効果としての生徒たちの実験技能の習熟や理解度に関する研究は,ほとんどなされていない。そこで本研究では,ジョンソンら(1998)の提唱する協同学習の基本的構成要素を取り入れた実験授業を計画し,その学習効果を検討することにした。実験授業は,中学校2年生を対象にして,化学分野と気象分野の2つの単元において,協同学習の基本的構成要素を導入した実験群とそれを導大していない対照群を設定して実施した。その結果,実験群においては,対照群に比べて,次のような学習効果を確認することができた。(1)実験操作上の誤操作や器具の破損が減った。(2)学習内容の単元直後の理解度は対照群と変わらなかったが,1ヵ月後の定着が高まった。(3)実験に取り組む姿勢として,対話やアドバイスが重要であると認めるなどの変容が見られた。以上の結果から,ジョンソンら(1998)の提唱する協同学習の基本的構成要素を取り入れた授業の有効性が示唆された。