著者
佐藤 明子 高橋 治 菊地 洋一 村上 祐
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.21-27, 2006-01-31
被引用文献数
8

原子の構造やイオンを初めて学習するのは何歳で,どのようなレベルの内容を学習しているか,海外の教科書の比較研究を行った。調査した教科書は英国,フランス,ドイツ,イタリア,スロバキア,インド,中国,台湾,インドネシア,アメリカの計10か国の中学のものである。その結果,内容のレベルは国によって様々であるが,原子の構造やイオンは13〜14歳で初めて学習する国が多いことがわかった。そして,多くの場合,イオンは基本粒子として,原子の構造の直後に学習されている。また,周期表もほとんどの国で13〜14歳で扱われ,原子の構造,イオンの学習に活かされていることもわかった。原子の構造,イオンは,中学段階の学習で大きな役割を果たし,この段階でそれらを学習することが適切であることがわかる。
著者
宮田 斉
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.61-72, 2005-03-01
被引用文献数
8

本研究の目的は,中学1年の「ガスバーナーの基礎操作」の授業(全2.4時限)を事例として,ガスバーナーの操作技能を協同で学ぶ際の生徒の教えあいを阻む要因を明らかにしその要因を克服する教授法としての"循環型の問答-批評学習"利用の有用性を検討することである。その結果,本事例の範囲内において,"生徒の「操作技能を獲得したい」と「緊急的な危険回避」といった思念に起因する強い語調の助言"と,「操作が難しいと認識している生徒が,自分の助言した通り操作できない事態を見て,操作者が自分の助言を受け入れていないと判断する」といった他人の情況を推し量れない事態"が,ガスバーナーの操作技能指導における生徒間の支持的な関係の構築を阻む要因として見い出された。そして,"循環型の問答-批評学習"利用は,誤操作に際して"ストップと言った後,「事前説明や操作等の良い点を述べた後,改善点を付け足す」"といった発話の表出を促し,生徒にこれらの要因によって脆弱化した支持的な関係を省みさせ,メタコミユニケーションを行う心のゆとりを与えて,質の高い教えあいを促すことが見い出された。
著者
宮田 斉 岡田 能直
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.117-124, 2007-07-31
被引用文献数
2

本研究の目的は,中学1年「ガスバーナーの基礎操作」の授業(全3.4時限)とその直後約1.5か月間に実施したガスバーナーを使用する3時限の授業を事例として,開発した「ガスバーナーモデルの製作・利用」を用いた指導法とこのモデルの製作・利用を行わない授業を設計し,操作技能指導終了直後とガスバーナーを使用する3時限の授業終了約2か月後に実施したパフォーマンステストと質問紙調査の結果から,「ガスバーナーモデルの製作・利用」の指導法が,生徒にガスバーナーの操作技能や操作方法に関する知識の獲得を促すかについて明らかにすることである。その結果,本事例の範囲内において,次の2点が見い出された。ガスバーナーモデルの製作・利用の指導法は,生徒にガスバーナーの操作に関する言語的表象と映像的表象を結びつけた象徴的表象の記憶と実際のずれの修正をすすめさせた結果,(1)生徒にガスバーナーの操作技能の獲得を促す。そして,この指導法は,多くの生徒にガスバーナーの操作技能を獲得させる。(2)この指導法は,生徒に他人へ伝達できる程度の客観性を持つような形で自分なりに文章表現できる程度の知識の獲得を促す。この点は男子に顕著な傾向がある。
著者
戸谷 義明 伊藤 弘晃 後藤 大希
出版者
日本理科教育学会
雑誌
日本理科教育学会東海支部大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
no.53, 2006-11-19

名古屋市瑞穂青年の家より出前化学実験を依頼された.実験場所が料理室であることから, お菓子を作成する化学実験を実践できる絶好の機会であると考え, 実験テーマを検討し, 実験法を開発した.実践を行った結果, お菓子作成実験は, 子どもたちに化学実験の基本を教えることができるだけでなく, 子どもたちの理科への興味・関心を喚起できることが分かった.
著者
鈴木 悠里 野田 敦敬
出版者
日本理科教育学会
雑誌
日本理科教育学会東海支部大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
no.53, 2006-11-19

現在、生活科・総合的学習の中で「竹」を扱った様々な授業が実践されてきている。竹林散策、竹を利用したものづくり、たけのこを食べるなど、活動内容は多種多様である。そこで、「竹」を扱った授業の分析を行い、「竹」の生活科・総合的学習における教材性・教材価値を明らかにする。そして、明らかになったことを「竹」の教材開発へと生かしていく。
著者
吉田 太一
出版者
日本理科教育学会
雑誌
日本理科教育学会東海支部大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
no.53, 2006-11-19

本研究では, 理科学習の各場面で児童が楽しさ見いだすことで, 学習意欲を引き出し, 主体的に学ぶ児童を育てることをねらいとしている。小単元の導入場面には, 【A】「教材のもつ自然事象に触れ, 知的好奇心が高まる楽しさ」を位置付けた。展開場面では, 【B】「問題解決の過程を通して, 知識や技能が身に付く楽しさ」を位置付けた。そして, 終末場面では, 【C】「自分で問題や方法, 素材などを決めて問題解決を行う楽しさ」を位置付けた。
著者
高垣 マユミ 田原 裕登志
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.46, no.2, pp.29-38, 2006-01-31
被引用文献数
5

本研究では,小学校4年理科「水の状態変化」の単元において,子どもたちが水の状態変化に関して強固に保持している既有概念の変容を保す授業及び学習ツールを考案した。授業過程で生成された発話と行為を,TDの質的分析(Transactive Discussion)の類型に基づいて微視発生的に分析・解釈した結果,以下の手だてが,「水の状態変化」の概念の変容に重要な役割を果たすことが示唆された。(1)水以外の物質(ブタン,アルコール等)でも状態変化は起こり得る演示実験を提示し,概念を拡張しながら,水の状態変化のメカニズムを理解していくプロセスにおいて,既有概念と実験結果との間に『認知的葛藤』が生じ,かつ解消されるやりとりが生成されたときに,既有概念の変容が促進される。その際,使用した「学習ツール(タブレットPC,ペイントソフト等)」は,実験結果を自分自身の言葉で表現することを促す「認知的道具立て」として,有用な役割を果たした。(2)水の状態変化を具体的にイメージさせる「動画モデル」を導入し,『思考の根拠が可視化』された文脈で議論が展開されていくプロセスにおいて,暗黙的に表象されていた「既有概念(=水は常に目に見える)」と,「科学的概念(=目に見えない状態の水蒸気が,温度差によってその状態が変化し,目に見える状態になったものが湯気)」が,具体的なイメージをもって対応づけられたときに,その結果として既有概念の変容が促進される。