著者
山口 麻里 山本 彩乃 安富 陽平 長尾 洋 大野 貴司 森 英樹
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.245-249, 2018 (Released:2019-03-30)
参考文献数
17

症例は70歳代,男性。眼の違和感に対し市販の点眼薬を使用開始したところ,眼囲に瘙痒を伴う紅斑,腫脹が出現した。点眼薬の使用を中止の上,ステロイド軟膏の外用を行い,数日間で症状は軽快した。パッチテストでは,点眼薬で陽性。成分パッチテストではアミノカプロン酸で陽性だった。アミノカプロン酸はかつては止血剤として使用されていた抗プラスミン剤だが,現在医療用剤は販売終了している。しかし,止血,抗アレルギー,抗炎症作用と様々な作用を有するため,現在でも医薬品や医薬部外品の成分・添加物として汎用されている。日常生活品にも多岐にわたって使用されており,アミノカプロン酸に対しアレルギーを有する患者は注意が必要である。 (皮膚の科学,17 : 245-249, 2018)
著者
中村 元信 戸倉 新樹
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.11, no.Suppl.19, pp.31-35, 2012 (Released:2013-07-06)
参考文献数
7

ロキシスロマイシンは14員環マクロライドの1つであり,抗生物質としての作用以外にサイトカイン産生抑制,抗酸化,好中球機能抑制などさまざまな作用が知られている。組織にマスト細胞の浸潤が認められた好酸球性膿疱性毛包炎にロキシスロマイシンを投与したところ,効果が見られた1例を経験し,ロキシスロマイシンによるマウス骨髄由来マスト細胞の IL-13,CCL17/TARC,CCL22/MDC 産生調節について検討を行った。ロキシスロマイシンは IL-13,CCL17/TARC,CCL22/MDC いずれの産生も抑制した。今後,マスト細胞が関与した皮膚疾患にロキシスロマイシンの効果が期待される。(皮膚の科学,増19: 31-35, 2012)
著者
長岡 悠美 夏秋 優 山西 清文
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.462-464, 2010-10-30 (Released:2011-11-02)
参考文献数
7

64歳,女性。萎縮性膣炎のため産婦人科でホーリン®V膣用錠を挿入された。その直後から気分不良を生じ,約30分後に全身に熱感と痒みを伴う紅斑が出現すると共に呼吸困難と意識混濁を生じた。すぐに膣内を洗浄して,ステロイド剤の点滴療法を施行したところ,症状はすみやかに軽快した。原因検索のために施行したプリックテストでは,ホーリン®V膣用錠の成分(エストリオール,ステアリン酸マグネシウム,マクロゴール6000)のうちマクロゴール6000のみで陽性を示した。以上より,自験例をホーリン®V膣用錠に含まれるマクロゴール6000によるアナフィラキシーと診断した。
著者
榎本 美生 山本 純照 多田 英之 矢敷 敦 北村 華奈 葛城 麻実子 浅田 秀夫 宮川 幸子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.2, pp.192-197, 2006 (Released:2011-02-18)
参考文献数
16

54歳,女性。家族歴:両親がいとこ婚。現病歴:幼少時から体幹を中心に表面に軽度の膜様鱗屑を有する癜風様の紅褐色局面と脱色素斑が多数みられ,次第に増数がみられた。平成6年より左耳前部に小結節が生じ,切除の結果,有棘細胞癌と診断された。その後,顔面,体幹,四肢に結節が出現し,平成13年7月までの間に合計15回切除術を受けた。病理組織検査の結果,基底細胞癌,有棘細胞癌,ボーエン病,脂漏性角化症と診断され,疣贅状表皮発育異常症(EV)を基礎として生じたものと考えられた。平成16年6月頃より,以前の左前腕ボーエン病の手術痕の断端から赤褐色角化性局面が出現し,左頬部に常色の角化性局面と躯幹部に多数の黒色小結節を認めたため,平成16年8月再診した。切除にて各々ボーエン病,日光角化症,基底細胞癌であった。前腕および顔面の皮疹から抽出したDNA解析の結果,EVとの関連性が指摘されているHPV15型が同定された。
著者
河合 修三
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.6, pp.466-468, 2006

当院では,約3年前よりVHO式爪矯正法を開始した。その間に,450趾以上の爪の矯正を施術し良好な成績を得ており,その代表例を提示した。本治療法は,手術治療のような疼痛や日常生活へ支障をきたすことなく,急速に痛みを取り除くことができ,しかも,従来の保存的治療よりも確実で,頻繁な取替えを行わなくてもよい優れた方法である。炎症症状のない陥入爪・巻き爪では,ほぼ万能である。しかし,肉芽組織を伴うものに対しては,ガター法,冷凍療法などを併用することにより,対応可能であるが,困難な場合があった。
著者
新熊 悟 小林 信彦 前田 真紀 森戸 啓統 北村 華奈 浅田 秀夫 宮川 幸子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.169-174, 2007 (Released:2010-12-06)
参考文献数
20

57歳,女性。解離性障害による昏迷状態のため経口摂取が不可能となり,当院精神科に入院中,顔面にびまん性の紅斑・浮腫が出現した。その後,口囲に鱗屑が付着するようになり,びらん・膜様鱗屑を伴う紅斑が急速に全身に拡大した。Nikolsky 現象陽性。迅速凍結切片により表皮浅層での裂隙形成を確認し,staphylococcal scalded skin syndrome(SSSS)と診断した。起炎菌はMRSAであった。アルベカシンの点滴静注により皮疹は速やかに治癒した。成人SSSSの鑑別診断として最も重要な疾患は中毒性表皮壊死剥離症型薬疹であり,両疾患を病理組織学的に鑑別する迅速診断法に習熟する必要がある。
著者
大川 智子 山口 由衣 石田 修一 堀田 亜紗 藤田 浩之 相原 道子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.212-218, 2013 (Released:2013-10-05)
参考文献数
39

44歳,男性。両側精巣腫瘍,S状結腸癌の既往がある。上腹部に激痛が生じた翌日に,顔面,体幹部に発赤を伴う小丘疹と小水疱,および口腔内水疱が出現した。Tzanck 試験は陽性であった。激烈な腹痛を伴うことから,内臓播種性水痘・帯状疱疹ウイルス (VZV) 感染症を疑い,アシクロビル (acyclovir; ACV) 750mg/day 開始したが,症状の改善は乏しく,肝機能の悪化,DICを合併した。第4病日より ACV 1,500mg/day に増量,Intravenous immunoglobulin (IVIG) 5,000mg/day(5日間)を追加し,症状は次第に改善した。経過中,血中 VZV-DNA 量が髙値であり,内臓播種性 VZV 感染症と診断した。本疾患は急速に進行し,ときに致死的である。水痘に腹部症状を伴う場合,本疾患を疑い,早期に大量の ACV や IVIG による治療をおこなうことが重要と考えた。(皮膚の科学,12: 212-218, 2013)
著者
松村 泰宏 加藤 敦子 夏見 亜希
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.133-138, 2017 (Released:2017-06-17)
参考文献数
13

10歳代,女性。既往歴に花粉症。2013年,自家製サツマイモケーキ(低カロリー顆粒状甘味料,おから,さつまいも使用)とチョコレート,レモンジュース摂取後に全身の膨疹と顔面腫脹,呼吸苦が出現し救急搬送された。過去にぶどう味ゼリーで2回,梨ジュースで1回同様の症状が出現したことがあった。摂取食品のプリック・スクラッチテストで低カロリー顆粒状甘味料,ぶどう味ゼリー,梨ジュースに陽性を示した。3製品の共通含有成分はエリスリトールで,プリックテストで陽性。経口負荷試験ではエリスリトール 500mg 摂取後膨疹の出現を確認した。以上よりエリスリトールによる即時型アレルギーと診断した。ぶどう味ゼリーと梨ジュースには,誘発必要量を超える約 5g のエリスリトールが含まれており,アナフィラキシー症状を起こしたと推測した。また,果物,花粉の皮膚テスト,ぶどう,なしの摂取試験の結果より,ぶどう,なし,バナナの口腔アレルギー症候群の合併例と考えた。エリスリトールはノンカロリーのため甘味料として広く使用されている。天然に含まれているエリスリトールは,人工的に添加される量と比し微量であることがほとんどである。エリスリトールアレルギーはまれではあるが,自験例のように果物アレルギーとの診断にマスクされ見逃されている症例がある可能性もあり注意が必要である。(皮膚の科学,16: 133-138, 2017)
著者
清水平 ちひろ 江川 裕美 近藤 摂子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.527-533, 2009 (Released:2010-08-22)
参考文献数
18

2008年4月から同10月までの当院入院症例のうち,疥癬40例に対してイベルメクチン投与と安息香酸ベンジルオイラックス外用を行った。全例が65歳以上であった。イベルメクチン投与中および投与後に有害事象を認めた症例は臨床検査値異常が5例,基礎疾患によると考えられる死亡例が2例あった。このうち臨床検査値異常の5例はいずれも無治療で正常化した。軽度の肝障害を認めた2例に対してもイベルメクチンの内服治療を行ったが,投与後に臨床検査値の悪化は認めなかった。投与回数については疥癬のライフサイクルからは少なくとも2回の投与が望ましいと考えられた。しかし,2回で治癒した例は71%に過ぎず,12例で3回以上の投与を必要とした。疥癬の集団発生では,当院のような高齢者症例の多い場合でも積極的な内服加療が有効であり,比較的安全に使用できることが確認された。
著者
小嶌 綾子 辰巳 和奈 夏秋 優 大日 輝記 椛島 健治
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.17, no.6, pp.313-316, 2018 (Released:2019-08-13)
参考文献数
16

10歳代後半,男性。約 1 ヶ月間,中南米ベリーズ国のプレイセンシアへ渡航し,森林や海で蚊などによく刺された。帰国 4 日前より左側胸部に痒みを伴う皮疹を認め,その後も腫脹が持続した。 2 週間後の数日間,皮疹部に激痛があり,皮疹中央部に瘻孔が出現し,浸出液を認めた。皮疹の出現から約 5 週間後,浸出液の増加があり周囲を圧迫したところ瘻孔から虫が排出され,翌日当科を受診した。持参した虫体をヒトヒフバエと同定し,自験例を皮膚蠅症と診断した。幼虫は形態や大きさから 2 齢幼虫の可能性が高いものと推定した。ヒトヒフバエは中南米に限局して棲息する昆虫で,哺乳動物の皮膚に寄生して成長し一定期間を経て自然に排出され創は治癒するが,寄生している時期は痛みを伴うため一般的な治療法として,圧出,外科的な摘出,または現地でよく行われることとして呼吸のための孔を塞ぎ虫を誘い出す方法などがある。今後,海外旅行の機会の増加や渡航先の多様化はさらに加速すると考えられる。難治性の癤様結節をみた際には本症の可能性も念頭において,海外渡航歴についての問診を行うことも重要と考える。 (皮膚の科学,17 : 313-316, 2018)
著者
黄 昌弘 弓立 達夫
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.244-248, 2009 (Released:2010-08-22)
参考文献数
15

慢性的な精神興奮症状の抑制に効果の期待できる抑肝散加陳皮半夏のアトピー性皮膚炎(以下AD)に対する臨床的有用性を検討した。対象は外来AD患者のうち,易疲労感などを伴う虚弱体質の患者で神経のたかぶる患者25名であった。被験薬はクラシエ抑肝散加陳皮半夏エキス細粒であり,原則6週間内服させた。漢方医学的所見,かゆみ・イライラについてのVAS所見,Skindex16の所見のいずれの評価においても投与前後で統計学的に有意な改善効果が認められた。抑肝散加陳皮半夏は精神症状を抑制することにより痒みおよび皮膚特異的QOLを改善させる薬剤であると思われた。
著者
中川 有夏 田嶋 佐妃 浅井 純 竹中 秀也 加藤 則人 山田 稔
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.13, no.6, pp.415-420, 2014 (Released:2015-05-02)
参考文献数
36

47歳,女性。ウガンダに渡航して7日目に右前腕屈側にそう痒を伴う紅色丘疹が出現した。帰国後,紅色丘疹が増加したため渡航20日目に近医皮膚科を受診した。副腎皮質ステロイド含有軟膏の外用を開始したが,右肩と腰部の紅色結節が増大し疼痛を伴うようになったため,渡航24日目に当院を受診した。数日後紅色結節の中心に虫体を認め,局所麻酔下に4匹の虫体を摘出した。虫体はクロバエ科のヒトクイバエの3齢幼虫と同定した。摘出1ヶ月後,潰瘍は上皮化し,その後症状の再燃は認めていない。ヒトクイバエは衣服や布団などに付着した虫卵を介して寄生する。寄生を予防するためにはヒトクイバエの生息地域への渡航後は衣服にアイロンをかけることが重要であり,ハエ症を疑った際には,身近な人の渡航歴も聴取する必要があると考えた。(皮膚の科学,13: 415-420, 2014)
著者
山本 篤志 後藤 典子 神吉 晴久 堀川 達弥 錦織 千佳子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.8, no.5, pp.546-550, 2009

71歳,女性。左顔面の有棘細胞癌に対して全摘術を施行した。術後,抗生剤としてセフタジジム(モダシン®)およびクリンダマイシン(ダラシン®)を投与したところ,投与後4日目に背部に無症候性の紅斑が出現した。8日目には全身に拡大し,間擦部には小膿疱が集簇してみられた。同時に38℃台の熱発と著明な乏尿を認め,血液検査では白血球とCRP,BUN,クレアチニン値の上昇を認めた。抗生剤をメロペネム(メロペン®)に変更後3日で熱発と乏尿は改善し,約10日で皮疹は検査所見とともに改善した。DLSTはモダシン®とダラシン®とも陽性であり,パッチテストはダラシン®で陽性であったことから,モダシン®およびダラシン®による急性汎発性発疹性膿疱症(acute generalized exanthenmatous pusutulosis:AGEP)および急性腎障害と診断した。
著者
筧 祐未 金谷 悠司 宮下 和也 真柴 久実 光井 康博 小川 浩平 宮川 史 浅田 秀夫 竹内 三佳 宮田 梨世 萬木 聡 桑原 理充
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.18, no.5, pp.295-299, 2019 (Released:2020-05-20)
参考文献数
19

72歳,男性。約50年前に工場の爆発で熱傷を受傷した。その後左大転子部外側の熱傷瘢痕部に変化が生じてきたため当科を紹介され受診した。初診時,左大転子部外側に手掌大の淡紅色局面を認め,表面には鱗屑・痂皮が付着していた。また辺縁は全周性に黒色調を呈しており,病変周囲には拘縮と瘢痕を認めた。皮膚生検を施行したところ,表皮から連続して真皮浅層に腫瘍細胞が胞巣を形成していた。胞巣辺縁は柵状配列を示し胞巣周囲にムチンの沈着を認め,真皮内には瘢痕形成が著明であった。病理組織学的所見から基底細胞癌と診断し,5mmマージンで皮膚腫瘍切除術と左遊離広背筋皮弁術を施行した。全切除標本の病理組織学的所見からは,基底細胞癌と真皮から皮下に広範囲の瘢痕形成を認めた。熱傷瘢痕上に有棘細胞癌が生じることは良く知られているが,熱傷瘢痕癌の中では基底細胞癌は比較的まれである。 (皮膚の科学,18 : 295-299, 2019)
著者
須藤 信行
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.Suppl.20, pp.37-41, 2013 (Released:2014-12-21)
参考文献数
41

腸内フローラは様々な生理機能の発現に深く関与しているが,中枢神経機能や精神機能にどのような影響を及ぼしているかに関しては十分に検討されていない。近年,腸内フローラは宿主のストレス反応や行動特性に影響することが明らかにされつつある。著者らの人工菌叢マウスを用いた検討では,無菌(germfree:GF)マウスは通常のspecific pathogen free (SPF)環境下で飼育されたマウスと比較し,拘束ストレス負荷によるACTHおよびコルチコステロンの上昇反応が有意に亢進していた。また GFマウスは,通常の腸内フローラを有するEX-GFマウスと比較し,多動で不安レベルが高かった。以上の結果は,腸内フローラは成長後のストレス反応性のみならず行動面にも影響しうることを示している。(皮膚の科学,増20: 37-41, 2013)
著者
上埜 剣吾 荒金 兆典 浅井 睦代 川田 暁 手塚 正
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.3, no.5, pp.466-470, 2004

患者は38歳,女性。急性扁桃腺炎の診断により近医でクリンダマイシンの点滴と塩酸ミノサイクリンの内服を受けたところ,多型滲出性紅斑様の皮疹が出現したため当院紹介となった。発熱と軽度の肝機能異常を伴っていた。クリンダマイシン,ミノサイクリンの使用を中止し,ホスホマイシン内服に変更したうえで,プレドニゾロン30mg/日の内服を開始したところ皮疹は改善し,発熱,肝機能も正常化した。経過中HHV-6のIgM抗体価,IgG抗体価は軽度から中程度の亢進を認めた。貼付試験を行ったところクリンダマイシン(10%,1%,0.1%)の各濃度全てに陽性反応を示し,HHV-6に誘発されたクリンダマイシンによる薬剤過敏症であると診断した。
著者
中丸 聖 谷村 裕嗣 宮本 真里 四十万谷 貴子 長野 奈央子 寺井 沙也加 槇村 馨 久米 典子 清原 隆宏
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.139-143, 2019 (Released:2019-10-31)
参考文献数
6
被引用文献数
1

2014年 1 月から2018年 6 月までの 4 年半に関西医科大学総合医療センターにおいて経験した10例の早期梅毒患者についてまとめるとともに,梅毒の最近の動向について考察した。当該地区においても梅毒患者は増えており,男性 6 例,女性 4 例とやや男性優位であった。風俗店に通う青壮年男性が多かったことは,全国的傾向に合致していた。男性同性愛者および HIV 重複感染例は皆無であった。 硬性下疳 3 例,丘疹性梅毒 2 例,梅毒性乾癬 1 例,膿疱性梅毒および扁平コンジローム 1 例,ばら疹 3 例と極めて多彩な臨床像を呈していた。ほぼ全例に対してアモキシシリン内服治療を選択し,ほぼ全例で STS 抗体価の速やかな低下とともに臨床的治癒が得られた。なお,今回は晩期梅毒を除いた集計とした。梅毒の多彩な臨床症状と梅毒血清反応の複雑な動きを十分理解することは皮膚科医の大きな責務であり,病院内において今後ますます主導的役割を果たすことが求められる。 (皮膚の科学,18 : 139-143, 2019)
著者
宮田 明子 夏秋 優 小倉 千香 松本 晴子 山西 清文
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.407-410, 2004

46歳,男性。平成15年3月下旬に,ホタルイカの生食をした。同年4月上旬より前胸部左側にそう痒感を伴う移動性の紅斑が出現してきたため,当科を紹介され受診した。初診時,前胸部左側に不整形で不規則な線状の浮腫性紅斑が存在し,一部に浸潤と紫斑を認めた。移動性紅斑の先端と紫斑部を皮膚生検したところ,紅斑先端部では旋尾線虫幼虫の虫体を認め,紫斑部では軽度の血管炎を認めた。皮膚生検後,皮疹は著明に改善した。
著者
三宅 雅子 志賀 久里子 柳原 茂人 遠藤 英樹 大磯 直毅 川田 暁
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.105-109, 2018 (Released:2018-12-14)
参考文献数
13

80歳代,男性。以前より糖尿病があり,インスリン治療を行っていた。初診の2ヶ月前から左下腹部に皮下硬結が出現したため近医皮膚科を受診し,精査目的で当科に紹介された。当科初診時,左下腹部に 4~5cm 大の自覚症状のない皮下硬結を認めた。臨床経過,臨床所見,病理組織所見からインスリンボールであると診断した。インスリンボールはインスリン由来のアミロイドがインスリン注射部位に沈着することにより生じる皮下腫瘤である。インスリンボールは他部位と比べつまみやすく,注射時の痛みを感じにくいためインスリン使用患者は腫瘤部を好んでインスリン注射部位に選ぶ傾向にある。しかしながらインスリンボールは他部位と比べインスリンの吸収が阻害されるため,患者の血糖コントロールの悪化につながる。糖尿病患者を診察する際はインスリン注射部位を観察し,インスリンの注射手技を定期的に確認・指導することが望ましいと考える。(皮膚の科学,17: 105-109, 2018)
著者
中村 晃一郎
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学
巻号頁・発行日
vol.5, no.7, pp.B21-B23, 2006

アトピー性皮膚炎(AD)の病変部にはT細胞,好酸球,肥満細胞などの浸潤を認め,これらの細胞がサイトカインやケモカインを産生することによって皮膚炎の増悪,かゆみの増悪を惹起していると考えられる。筆者らは,ADの病態における白血球走化因子としてのケモカインの作用が明らかにした。またADの標準治療薬として使用される副腎皮質ステロイド軟膏やタクロリムス軟膏などの免疫調節薬が,ケモカイン産生に対して抑制作用を有することを明らかにした。ADの病態におけるケモカインの作用について最近の知見を紹介した。