著者
井本 恭子 宮川 幸子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.94-97, 2007 (Released:2010-12-06)
参考文献数
7

19歳,女性。幼少時に,アトピー性皮膚炎と診断され,平成8年5月22日より当科に通院していた。平成9年9月中旬より皮疹が悪化し,同年10月15日よりツムラ加味逍遥散エキス顆粒®とツムラ越婢加朮湯エキス顆粒®を投与した。11月20日より顔面,下腿に浮腫が出現し,血漿レニン活性,血中アルドステロン濃度の低下を認めたことから,両漢方製剤に含まれる甘草による偽アルドステロン症と診断した。両漢方製剤の中止と利尿薬,ステロイドの投与により,浮腫,皮疹は軽快し,検査値も正常範囲内に回復した。
著者
横関 博雄
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.14, no.Suppl.23, pp.S25-28, 2015 (Released:2016-06-16)
参考文献数
9

近年、スギ花粉症患者に呼吸器症状、消化器症状、咽頭症状、発熱なども見られることが良く知られスギ花粉症は全身性疾患の一つと考えられている。また、スギ花粉症の患者に合併してスギ花粉が皮膚に接触することが原因と思われるスギ花粉皮膚炎と呼ばれている皮膚症状が見られることがある。このスギ花粉皮膚炎は飛散するスギ花粉抗原の皮膚への接触による空気伝搬性接触皮膚炎(airborne contact dermatitis)の一つと考えられてきている。花粉皮膚炎はスギの飛散する2月から4月までだけではなく10月から12月までの秋にも発症する。秋に発症する花粉皮膚炎はスギ花粉による皮膚炎とブタクサ、ヨモギ花粉による秋花粉皮膚炎である。今回、スギ花粉皮膚炎の臨床的特徴、発症機序、治療法、予防法、他のアレルギー性接触皮膚炎などとの鑑別方法に関して述べたい。治療はマスク、眼鏡、マフラーなどでスギ花粉が皮膚に接触することを予防するとともに、スギ花粉症に準じて非鎮静性の第2世代の抗ヒスタミン薬の内服が必要である。また、スギ抗原が皮膚内に入るのを予防するために、角層のバリア機能を保つスキンケアも必要不可欠である。春先に生じる顔が赤くなる皮膚炎には化粧、洗剤、毛染めなどによるアレルギー性接触皮膚炎以外にスギ花粉皮膚炎があることを念頭に置いて診療する必要がある。(皮膚の科学,増23: 25-28, 2015)
著者
国本 佳代 古川 福実 山本 有紀
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.101-106, 2016 (Released:2016-07-15)
参考文献数
8

非固着性ガーゼは様々な種類のものがあるが,おもにその使用目的はガーゼ交換の際の出血や疼痛緩和,および組織損傷の軽減である。今回我々は非固着性創傷被覆・保護材(ウルゴチュール®,日東メディカル株式会社,大阪,日本)を糖尿病性潰瘍や下腿潰瘍,悪性腫瘍などに使用し,疼痛緩和,上皮化や浸出液の二次ドレッシング材への吸収などにつき良好な経過を得た。また,皮膚欠損創20例に対するメッシュスキングラフトなどの植皮術を行う際に植皮の母床および植皮片とガーゼとの固着を防ぐ目的で非固着性創傷被覆・保護材(ウルゴチュール®)を使用したところ,生着率は75%から100%であった。全例に植皮前後で創部培養検査を行い,細菌叢の検索を行ったがウルゴチュール使用後の創部において菌が検出された症例のほとんどが常在菌であり,非固着性創傷被覆・保護材(ウルゴチュール®)使用下において,感染リスクの上昇は示唆されなかった。(皮膚の科学,15: 101-106, 2016)
著者
船坂 陽子 松中 浩 榊 幸子 山村 達郎 山本 麻由 錦織 千佳子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.299-308, 2005

イオントフォレーシスによるビタミンC誘導体の日光性黒子や雀卵斑などの色素斑に対する効果を確認するために,2種類のイオントフォレーシス装置を用いた臨床試験を実施した。<BR>5%リン酸L-アスコルビルナトリウムを,院内用のイオントフォレーシス装置にて医師が週1回3ヵ月,家庭用のイオントフォレーシス装置にて被験者自身が1日1回4ヵ月,それぞれ片顔にイオントフォレーシスを施行し,もう一方は対照側として無塗布および単純塗布のhalf face法とした。<BR>皮膚所見ならびに画像解析の結果,イオントフォレーシス側において,それぞれ32例中31例,37例中37例に有効性を認め,対照側よりも高い改善効果を得た。<BR>また,分光測色計を用いた皮膚色の測定によって皮膚が明るくなることが,さらにレプリカを用いた皮膚表面の形態観察によって皮溝と皮丘から形成される頬部のきめが均一になることがわかった。<BR>以上のことから,イオントフォレーシスは,ビタミンC誘導体の色素斑に対する効果を高めるとともに,皮膚色やきめをも改善することが明らかとなった。
著者
東 祥子 永松 麻紀 池田 彩 宮崎 明子 小澤 健太郎 田所 丈嗣
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.83-87, 2013 (Released:2013-08-02)
参考文献数
10

49歳,女性。1999年に口腔内のびらんが出現し,四肢体幹にも拡大し,生検で尋常性天疱瘡と診断した。ステロイド内服では病勢を抑えることが困難であったため,ステロイドパルス,シクロホスファミドパルス,血漿交換,アザチオプリンなどで加療した。その後病勢は安定し,プレドニゾロンを漸減し,抗デスモグレイン1抗体,抗デスモグレイン3抗体ともに陰性化し経過は良好であった。2009年6月頃から顔面および下肢に小型のびらんを伴う紅斑が出現し,全身に拡大した。生検で有棘層最上部から顆粒層にかけて表皮内水疱と棘融解像を認め,抗デスモグレイン1抗体のみの上昇を認めた。尋常性天疱瘡から落葉状天疱瘡への移行例と考えた。(皮膚の科学,12: 83-87, 2013)
著者
香川 英樹
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.10, no.6, pp.522-525, 2011 (Released:2012-10-23)
参考文献数
13

足は不器用な手ではなく,人間らしさを代表する直立二足歩行を司る高等器官である。しかし,足は高機能であるが完成した訳ではない(進化の途上である)。従って今回は,不完成性を有する「足」の機能において,我々施術者が現場で実務する施療で「インソール」と足の機能との関連性を考察する。私達「ヒト」の足の裏(荷重面)は体表全体のわずか2%でしかない。その2%の足底をもって体重を支え,あらゆる平衡機能,運動への連動,そして「支える」等,複雑な働きを求められる「足の裏」に対して,それら様々な要求を補強し,改善しうるのが「インソール」である。(皮膚の科学,10: 522-525, 2011)
著者
船坂 陽子 松中 浩 榊 幸子 山村 達郎 山本 麻由 錦織 千佳子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.4, no.3, pp.299-308, 2005 (Released:2011-05-17)
参考文献数
19
被引用文献数
2

イオントフォレーシスによるビタミンC誘導体の日光性黒子や雀卵斑などの色素斑に対する効果を確認するために,2種類のイオントフォレーシス装置を用いた臨床試験を実施した。5%リン酸L-アスコルビルナトリウムを,院内用のイオントフォレーシス装置にて医師が週1回3ヵ月,家庭用のイオントフォレーシス装置にて被験者自身が1日1回4ヵ月,それぞれ片顔にイオントフォレーシスを施行し,もう一方は対照側として無塗布および単純塗布のhalf face法とした。皮膚所見ならびに画像解析の結果,イオントフォレーシス側において,それぞれ32例中31例,37例中37例に有効性を認め,対照側よりも高い改善効果を得た。また,分光測色計を用いた皮膚色の測定によって皮膚が明るくなることが,さらにレプリカを用いた皮膚表面の形態観察によって皮溝と皮丘から形成される頬部のきめが均一になることがわかった。以上のことから,イオントフォレーシスは,ビタミンC誘導体の色素斑に対する効果を高めるとともに,皮膚色やきめをも改善することが明らかとなった。
著者
野田 智子 稲垣 千絵 柴垣 亮 池田 佳弘 西藤 由美 岸本 三郎
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.148-151, 2008

32歳,女性。初診の1年8ヵ月前の第2子妊娠時,近医にて疱疹状膿痂疹と診断された。今回,第3子妊娠約8ヵ月頃より体幹,四肢に紅斑,膿疱が出現。疱疹状膿痂疹の再発と診断し,活性型ビタミンD3軟膏及びステロイド外用剤を行い,出産後皮疹は軽快した。発熱等全身症状はなかった。
著者
貞政 裕子 池上 望 康井 真帆 矢口 均 比留間 政太郎 鶴野 寿一 篠永 哲
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.249-252, 2008

69歳,女性。平成19年2月に中米のコスタリカ共和国へ旅行し,帰国後より左側腹部に小結節が出現し徐々に大きくなった。4月3日近医で粉瘤の診断のもと切開術を施行され,翌日同部からハエ幼虫が圧出された。幼虫はヒトヒフバエ(<I>Dermatobia hominis</I>)と同定された。中南米からの帰国者に粉瘤様の紅色結節をみた場合は本症も考慮する必要があると思われる。
著者
藤村 響男
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.7, no.Suppl.10, pp.A38-A44, 2008 (Released:2011-05-18)
参考文献数
10

ADは,免疫学的にはTh2ドミナントな疾患で,抗原に対するTh1/Th2応答の変動によって臨床経過が異なる。我々は以前,難治性AD患者が水痘や麻疹感染後にAD症状が数ヶ月にわたって改善する現象を解析し,この軽快現象は感染ウィルスを排除するために皮疹部において産生されたIL-12が,ダニ抗原応答性Th2細胞に作用しサイトカイン産生パターンがTh2タイプからTh1タイプにスイッチしたためと結論づけた(J Allergy Clin Immunol;100:274-282,1997)。これらを背景として今回,コンビ株式会社機能性食品事業部の協力を得てIL-12産生刺激能の強い乳酸菌株を選定し,動物実験と臨床試験によりアレルギー疾患に対する乳酸菌の効果を検討した。
著者
中内 恵美 鷲尾 健 三木 康子 正木 太朗 錦織 千佳子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.470-475, 2016

50歳代,男性。糖尿病性腎症による腎不全にて10年来血液透析を施行されていた。2015年春頃より左第2,3指,右第1,4趾に壊死の付着した潰瘍が出現し,悪化したため前医より当科に紹介受診となり,同年6月に精査加療目的に入院した。単純X線検査などからカルシフィラキシスを疑い,Ca・P 値の内科的調整を行った上で局所のデブリドマンを行ったところ指趾潰瘍が改善したため同年8月に退院し外来加療を継続した。しかし,同年冬頃から再度右第4趾の壊死の悪化,および第3趾潰瘍が新生したため2016年初頭に再入院となった。入院時,足趾の壊死に加えて両下腿伸側にそう痒性の角化を伴った粟粒大から大豆大までの紅色丘疹ないし小結節が多発していた。右第3趾からの生検による病理組織学的所見からカルシフィラキシスと診断した。また両下腿伸側の結節からは変性した弾性線維の経表皮的排出像があり,長年の糖尿病や透析に伴う acquired perforating dermatosis と考えた。カルシフィラキシスの治療に対してチオ硫酸ナトリウムの点滴静注を行ったところ,両下腿の角化性局面も平坦化して改善を認めた。チオ硫酸ナトリウムは組織に沈着している不溶物を可溶化し,さらに炎症を抑制することで acquired perforating dermatosis をも改善させたと考えた。(皮膚の科学,15: 470-475, 2016)
著者
加野 尚生 冨高 晶子 鈴木 加余子 赤松 浩彦 松永 佳世子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.1, no.3, pp.232-236, 2002

台風が通過した翌日に経験したマムシ咬傷の2例を報告した。症例1: 65歳, 男性。畑作業中, 右第3指をマムシに咬まれ受診した。減張切開し, マムシ抗毒素ウマ血清、ステロイド剤点滴静注を主体に治療し軽快した。症例2: 64歳, 男性。蜂の巣を採取中, 道端に腰をおろした瞬間, マムシに左第2指を咬まれ受診した。マムシ抗毒素ウマ血清皮内テストが強陽性であったため抗毒素は使用せず, ステロイド剤点滴静注を主体に治療し軽快した。
著者
松下 記代美 山崎 文恵 前田 晃 荒金 兆典 川田 暁 手塚 正
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.201-205, 2003

有棘細胞癌は一旦化学療法や放射線療法に抵抗性を獲得すると治療に難渋する場合が多く,効果的な治療法の開発が求められている。この観点から言うと,少なくとも対癌免疫能の再活性化は治療抵抗性の癌に罹患している患者に残された最後の可能性の一つである。そこで我々は浸潤性有棘細胞癌に対しインターロイキン2(IL-2)の腫瘍内投与を行い良好な結果を得たのでここに報告する。患者75歳,女性。右下肢の再発性の多発性有棘細胞癌に対し10日間IL-2の局所投与を行った。IL-2の投与により腫瘍のサイズは著明に縮小し,免疫染色を行ったところ腫瘍周囲にCD1a陽性細胞の浸潤,CD8陽性T細胞優位の細胞浸潤を認め,<I>in situ</I> TUNEL染色上腫瘍細胞のアポトーシスを認めた。以上の結果より治療抵抗性の皮膚SCCに対しIL-2腫瘍内局注は有効であることが示唆された。
著者
松下 記代美 山崎 文恵 前田 晃 荒金 兆典 川田 暁 手塚 正
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.201-205, 2003

有棘細胞癌は一旦化学療法や放射線療法に抵抗性を獲得すると治療に難渋する場合が多く,効果的な治療法の開発が求められている。この観点から言うと,少なくとも対癌免疫能の再活性化は治療抵抗性の癌に罹患している患者に残された最後の可能性の一つである。そこで我々は浸潤性有棘細胞癌に対しインターロイキン2(IL-2)の腫瘍内投与を行い良好な結果を得たのでここに報告する。患者75歳,女性。右下肢の再発性の多発性有棘細胞癌に対し10日間IL-2の局所投与を行った。IL-2の投与により腫瘍のサイズは著明に縮小し,免疫染色を行ったところ腫瘍周囲にCD1a陽性細胞の浸潤,CD8陽性T細胞優位の細胞浸潤を認め,<I>in situ</I> TUNEL染色上腫瘍細胞のアポトーシスを認めた。以上の結果より治療抵抗性の皮膚SCCに対しIL-2腫瘍内局注は有効であることが示唆された。
著者
土山 真司 鷲尾 健 高砂 恵美 正木 太郎 福永 淳 小川 聡 斉藤 雅也 矢野 嘉彦 錦織 千佳子
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.51-56, 2016 (Released:2016-06-02)
参考文献数
13

40歳代,女性。幼少時期よりアトピー性皮膚炎と診断され加療を受けてきたが,最近では治療を自己中断していた。2015年春頃より全身のそう痒が増悪したため近医より当科に紹介受診となり,精査加療目的に入院した。季節の変わり目に皮疹が悪化するとの訴えがあり,うつ熱症状もあったため発汗機能異常を疑い全身温熱発汗テストを施行したところ顔面や体幹部の発汗低下を認めた。齲歯も複数あり,外分泌腺機能低下を疑い精査を進めたところ,抗 SS-A,SS-B 抗体陽性であり小唾液腺の導管に多数の細胞浸潤を認めシェーグレン症候群との診断に至った。アトピー性皮膚炎に対して外用治療を開始したところ,皮膚所見や好酸球の減少とは逆に肝逸脱酵素の数値が上昇した。シェーグレン症候群合併例のため,他の自己免疫疾患の併発についても精査したところ原発性胆汁性肝硬変が判明した。アトピー性皮膚炎では一般的に発汗機能異常が認められるが,発汗低下が著明な場合はシェーグレン症候群の合併も考慮に入れる必要があると考えられた。またアトピー性皮膚炎治療中に原発性胆汁性肝硬変に関連した肝逸脱酵素の数値が上昇した原因につき,Th1/Th2/Th17 バランスを含めて考察した。(皮膚の科学,15: 51-56, 2016)
著者
東 禹彦
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.5, no.6, pp.456-460, 2006

陥入爪の治療として行ってはならない治療法は楔形切除法,フェノール法および爪甲側縁先端を切除する方法である。形状記憶合金板法,B/Sブレイス法,超弾性ワイヤー法は柔軟性のある巻き爪に対しては有用な治療法であるが,深爪で起きる陥入爪に対しては有用性が低い。VHO法は柔軟性のある巻き爪や爪甲側縁の長い軽症の陥入爪に対しては有用である。一方,アクリル人工爪療法は全ての症例,すなわち重症の巻き爪や陥入爪に対しても有用である。
著者
立林 めぐ美 大磯 直毅 川田 暁
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.14, no.6, pp.403-410, 2015

非ステロイド性抗炎症薬含有テープ剤などの貼付剤は皮膚と密着し,主剤の皮膚への浸透性を高めて効果を発揮するが,各種成分へのアレルギー感作が成立し,アレルギー性接触皮膚炎や光アレルギー性接触皮膚炎が生じうる。貼付により皮膚バリア機能が低下すると,アレルゲンの皮膚内への浸透性が高まり,感作がより生じやすくなる。しかしながら,貼付剤による皮膚バリア機能におよぼす影響はほとんど評価されていない。20歳以上の本研究に同意が得られた健常人ボランティア20例を対象にロキソプロフェンナトリウム水和物貼付剤とケトプロフェン2%貼付剤を7日間連続貼付し,貼付終了直後および貼付終了7日後における皮膚バリア機能に及ぼす影響を検討した。評価項目として経皮水分蒸散量(TEWL: transepidermal water loss)と角質水分量(capacitance)を測定した。角質水分量に貼付剤間の差は認められなかった。ケトプロフェン2%貼付剤群では,貼付終了直後と貼付終了7日後の経皮水分蒸散量が優位に高値を示した。テープ剤の各種成分の選択と構成比の最適化を図り,皮膚バリア機能が低下しない,もしくは低下しにくい貼付剤の開発と普及が望まれる。(皮膚の科学,14: 403-410, 2015)
著者
東 禹彦
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.6, no.6, pp.649-652, 2007 (Released:2010-12-06)
参考文献数
8

第1回目はトラネキサム酸5%含有クリームとトラネキサム酸0.5%含有クリームの肝斑に対する効果を二重盲検,群間比較試験で行なった。やや有用以上の有用率は両群とも70%以上であった。第2回目はトラネキサム酸5%含有クリームとその基剤を対照として,肝斑に対する効果を二重盲検,群間比較試験で行なった。やや有用以上の有効率はトラネキサム酸5%含有クリームが54%,対照のクリーム基剤が48%で両群間に差はなかった。しかし,重症度による層別解析を行ったところ重症例ではトラネキサム酸5%クリーム外用群(7例)の改善率が85.7%で,対照クリーム外用群(10例)の改善率は30.0%であった。U検定を行ったところ有意差を認めた。
著者
五木田 麻里 山田 陽三 葉 乃彰 藤田 博己 夏秋 優
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学
巻号頁・発行日
vol.16, no.3, pp.186-190, 2017

60歳代,女性。発症の20日前に淡路島北部にて墓掃除,発症の10日前に六甲山南側の山麓部にて木の剪定作業を行った。8月中旬より発熱,全身の皮疹が出現したため,当科を受診した。初診時,体幹,四肢を中心に淡い紅斑が多発し,手掌や足底にも紅斑を認めた。また,下腹部に2ヶ所の刺し口を認めた。検査所見では白血球増加,血小板低下,CRP 高値,肝障害,CK 上昇を認め,ペア血清による Rickettsia japonica 抗体価の有意な上昇を認めたことより日本紅斑熱と診断した。ミノサイクリンの投与により皮疹は軽快したが,経過中に後頸部痛と四肢運動感覚障害が出現し,精査の結果,無菌性髄膜炎,多発単神経炎と診断した。その後,アジスロマイシンとシプロフロキサシンの投与でこれらの神経症状は軽快した。日本紅斑熱に神経障害を合併した例は自験例以外に5例報告があり,全例無菌性髄膜炎を認めたが多発単神経炎の合併は自験例のみであった。(皮膚の科学,16: 186-190, 2017)
著者
塩原 彩加 尾藤 三佳 服部 佐代子 坂元 花景 小西 啓介
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.63-67, 2016 (Released:2016-06-02)
参考文献数
13

40歳代,女性。SLE のためプレドニゾロン 13mg を内服中であった。臀部の小水疱を主訴に当科を受診した。帯状疱疹の診断で入院し,アシクロビル 250mg×3回/day 点滴を開始した。自覚はないが残尿 750ml があり,尿検査では膿尿を認めた。セフジニルの内服および導尿を開始したが,入院12日目,38度台の発熱,血圧低下を生じ,尿路感染による敗血症性ショックと診断した。尿培養で緑膿菌を認めたため,セフタジジム投与を開始し,感染は落ち着いたが尿バルーンは留置したまま退院となった。腰仙髄領域の帯状疱疹では残尿の有無に注意し,経時的に残尿測定を行う必要がある。そして残尿量が多い場合には尿路感染への注意が必要である。(皮膚の科学,15: 63-67, 2016)