著者
山上 俊彦
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 = The journal of economic studies (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.49, pp.93-119, 2014-09

競争的労働市場においては, 賃金は限界生産力に等しくなり, 均等化する. しかし, 現実には産業間, 企業規模間において賃金格差は発生する. 賃金格差を人的資本理論に基づいた観察される個人属性の相違で説明を試みることには限界があり, 同一特性の労働者であっても格差は存在する. そのため, 観察されない個人属性, 効率賃金仮説等で残余部分を説明することが試みられてきたところである. 近年のデータ整備と統計解析手法の発展は, 観察されない個人属性や企業の賃金政策に起因する固定効果が賃金格差に重要な影響を与えていることを示した. 固定効果は労働市場における情報の不完全性といった摩擦に密接に関連していることから, 均衡サーチ・モデルを用いて賃金格差を説明することが試みられている. 代表的なモデルである BM モデルは労働者と企業のそれぞれの同質性と労働者の転職行動を前提として賃金掲示分布を決定するものであり, 応用範囲の極めて広いモデルである.
著者
福田 秀志 富樫 一巳
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

ニホンキバチ共生菌のスギ丸太における繁殖に適した含水率は100~150%の間で、含水率がこれよりも低いあるいは高い条件では共生菌の長期間の繁殖は困難と考えられた。巻き枯らし木において、ニホンキバチは樹種・処理時期に関わらずほとんど発生せず、共生菌を持たないオナガキバチがヒノキ11 月処理木から主に発生した。カシノナガキクイムシの生態から考案した総合防除対策を行った結果、新たな被害木の枯死を激減させることができたが、穿入生存木の枯死を助長させる結果となった。
著者
杉山 章子
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究の目的は、予防に力を入れて長寿と医療費縮減に成功した地域の健康づくり事業の実地調査を通して、住民の自主的な動きを生み出すコミュニティ・エンパワメントの方法を考察することにある。調査の中心は長野県八千穂村(合併により現在は佐久穂町)だが、沖縄県佐敷町(合併により現在は南城市)のデータを加えることによって八千穂村の検討内容の相対化を企図した。八千穂村と佐敷町、どちらの自治体においても、行政主導で開始された健康増進事業から住民主体の活動が生み出されており、その過程を検討することによって、住民の主体性を引き出した専門職の支援が明らかになった。両地域で展開されたコミュニティ・エンパワメントの過程には、行政機関等が社会的、政治的経済的資源を整備して個人や組織が活動しやすい環境をつくるコミュニティレベルのエンパワメントアプローチと、専門職が住民組織に対して地域の政策や資源配分に影響を及ぼす力量をもてるように支援する組織レベルのエンパワメントアプローチが含まれていた。(1)国の健康増進政策の流れの中で独自の事業展開を可能にした、「官」と「民」が重なりあう「公共」領域の創出(2)地域に根ざした健康づくりを実現した専門職の的確なアセスメント(3)専門職と住民の間の円滑なコミュニケーションに基づいて地域に張りめぐらされたネットワーク(4)病院や大学など外部資源の有効活用留意すべきは、両地域の実践から見出されたこれらのエンパワメントアプローチが、専門職が住民に対して指導者ではなく協働者として接することによって実効性を発揮している点である。そして、地域社会とそこに住む人々の「個別性」を捉え、一人ひとりの主体的な取り組みを生み出す健康づくりの実践が、狭義の保健・医療活動の域をこえた地域づくりとしての側面をもつことも見逃せない。
著者
小松 理佐子
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.124, pp.39-54, 2011-03-31

社会福祉基礎構造改革の集大成として 2000 年に制定された社会福祉法の第 1 条に, 法の目的として 「地域における社会福祉の推進を図る」 ことが掲げられて以降, 地域を基盤とした社会福祉システムの形成に向けた政策が推進されてきた. その一環として, 第 1 条の改正と並行して, これを実現するための社会福祉関係法の制定・改正も行われてきた. それにもかかわらず, 孤独死の発生など, 地域で生活する人々への支援が十分に行われていない実態が明らかになっている. 本稿は, 地域で生活する人々の生活を支えるための社会福祉供給のあり方を明らかにすることを目的にして, 社会福祉供給の基本枠組みであるニーズとその充足1)について考察する.はじめに, 従来の公的社会福祉サービスの提供を地域を基盤とした支援体制へと転換するための課題を検討する. 次に, 地域生活支援におけるニーズを明らかにする. それを踏まえて, ニーズに対応する支援手段の充足の方法を考察する.
著者
三宅 亜希子 小沼 聖治 佐藤 光市 杉本 浩章 小松尾 京子 田中 和彦
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.129, pp.107-123, 2013-09-30

本研究は, 相談援助実習の巡回指導における実習教育スーパービジョンの内容とその課題を明らかにすることを目的としている. 巡回指導における複数回の実習教育スーパービジョンにおいて, それぞれの回で取り上げるべき実習教育スーパービジョン項目があることを仮説とし, 各回の実習教育スーパービジョンの項目を明らかにするための調査を行った. 分析方法は, 新カリキュラム初年度に本学通信教育課程の教員が作成した 『巡回指導ガイドライン』 の分類枠組みを作業仮説とした逐語データの分析である.その結果, (1)それぞれの回の巡回指導を構成する実習教育スーパービジョン項目の位置づけ, (2)実習生の語りから実習教育スーパービジョンの手がかりを得ることの有用性, (3)実習教育スーパービジョンにおける 「実習記録」 活用の有用性が明らかになった.
著者
関口 和雄 後藤 順久 吉田 直美 生江 明 新谷 司 高橋 紘一 小椋 喜一郎 李 忻 土屋 昌
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

「介護・福祉の経営学」の構築を目指し、サービスを提供する事業者の経営とマネジメントについて4つの焦点に絞って研究を行った。1つに、制度・政策と地域への環境対応における不確実性と不安定が揺らぎもたらし、経営の基盤の確立と自立が求められている。2つに、質の高いサービスの提供については、介護職をはじめ人材の育成と職場づくりが鍵になっている。3つに、介護・福祉人材の確保では、何よりも高い離転職に対応し定着をはかるため、職場における精神的サポートや学習支援、仕事の達成感や承認、キャリアビジョンの展望が大きく影響していた。4つに、財務・会計面について、会計ルールの確立、行政・監事・外部監査の整備といった基本的な問題が山積していた。
著者
篠原 三郎
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.20, pp.13-22, 2000-02-29

This paper aims to explain how the political economics of environment has come into existence in modern capitalism, concerning the process of the accumulation of capital. Moreover, it discusses the social relation between the environmental problems and the fetishism of commodities.
著者
新谷 司
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学経済論集 (ISSN:09156011)
巻号頁・発行日
no.46, pp.91-125, 2013-03-31

本論文全体の研究目的はフーコー主義会計研究が生成される段階 (フーコー主義会計研究が特定の会計研究雑誌に最初に掲載される段階とその前後の段階) の状況を検討し, その生成されたフーコー主義会計研究及びその後に展開されたフーコー主義会計研究の到達点と課題を検討することにある. このフーコー主義会計研究はその理論的源泉の相違により第一世代と第二世代に区分することができる. 本論文の第一の目的は, フーコーの著作を理論的源泉とするフーコー主義会計研究の生成過程について明らかにすることである. 第二の目的は, 第一世代のフーコー主義会計研究に関する一定の評価 (到達点と課題) を明らかにすることである. 第三の目的は, 第二世代のフーコー主義会計研究に関する一定の評価 (到達点と課題) を明らかにすることである. 第四の目的はフーコー及びフーコー主義者の著作と第一世代及び第二世代のフーコー主義会計研究を検討した諸論文において示された評価自体に関わる補足説明とその再検討を行うことである. 本論文の分析形式は文献レビューである.
著者
柏原 正尚
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学健康科学論集 (ISSN:13434268)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.19-27, 2013-03-30

The purpose of this study is to search for the relation of care staff turnover rate and work environment in special nursing homes for the elderly. The candidate for analysis is the special elderly nursing home in Aichi Prefecture. This study analyzed the care worker rate and the years of service, qualified care worker rate, the location of institution, the management years as an index of workplace environment. As a result of analysis, the care staff turnover rate, and was seen the tendency of negative correlation to years of service and qualified care worker rate. It turned out that the location of institution and management years were connected with the care staff turnover rate. It was a center that many of existing researches explore the factor of an individual level to retirement of the care staff. This research was able to suggest that the factor of an organization level had influenced care staff turnover.
著者
朴 兪美 平野 隆之 穂坂 光彦
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.125, pp.67-82, 2011-09-30

この試論では, 福祉社会開発研究領域でのアクションリサーチにおいて, 研究者が実践現場に関わりつつその現場を研究対象とするときの方法論を考察する. 高浜市における 「計画空間」, 高知県での 「研究会事業」, 釧路市での 「普遍化事業」 の 3 事例の分析を通じて提起されるのは, 「メタ現場」 の構築である. 対象地域の社会変化をある抽象度をもって写像する 「場」 において, 実践者も研究者もそれぞれ自己を 「異化」 し自己相対化しつつ, その場に 「同化」 すなわち内在的・文脈的・共感的に理解しあえる 1 アクターとなる. 研究者は, このメタ現場に自己の研究枠組みや観察結果を投げかけ, それへの反応から枠組みを変更し, 観察を修正する. 実践者は日常的な生活の現実を振り返り, 俯瞰的に観察し, 現場に洞察を還元できる. 意識的に現場からの一定の距離をもって仮構されているという双方の理解の下に, 実践者と研究者との協働の場となる空間が, メタ現場である.
著者
高藤 真弓 野中 猛
出版者
日本福祉大学
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.126, pp.15-33, 2012-03-31

近年のケアマネジメント実践現場においては, 複雑多様化する対象者のニーズに応えるために, 介護支援専門員は多職種との連携や危機介入という高度なケアマネジメント技術が求められるようになっている. そこで本稿では, 日本福祉大学ケアマネジメント技術研究会の実践事例を通して, ネットワーク構築のプロセスを分析し, ネットワーキングの効果と具体的な方法を提示した.ネットワーキングには, ケアマネジメント実践力の向上と業務に対する動機付けという介護支援専門員の資質向上と, 社会資源開発の可能性につながる効果があり, 長期的には対象者への間接的な支援へと発展していると考えられる.
著者
野口 定久 埋橋 孝文 後藤 澄江 原田 正樹 武川 正吾 牧里 毎治 大橋 謙策 杉岡 直人 井岡 勉 上野谷 加代子 宮城 孝 和気 康太 金 成垣 沈 潔 金 貞任 韓 榮芝 包 敏 徐 明?
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

包摂型福祉社会の推進をリードする地域福祉専門職養成の方法論を共有化し、各国・地域(メゾ)レベルにおいて両側面の好循環システムを構築することであった。ソーシャルキャピタルの概念を用い、日本・韓国・台湾における地域福祉拠点型及びコミュニティ型の調査を実施した。基礎的作業として「日中韓台における社会保障・社会福祉の制度比較研究」一覧表の改定版を作成し、さらにこれまでの研究成果を6本の報告書にまとめた。
著者
川田 稔
出版者
日本福祉大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

昭和戦前期陸軍の中国政策の展開を、主要な軍人の国家構想・世界戦略構想のレベルから照射し、昭和陸軍のもとでの日中関係の基本構造とその展開を、国際情勢の推移との関係を視野に入れながら、明らかにした。また、そのことを通して、この時期以降、戦前日本の第二次世界大戦にいたる要因を、新たな視点から再検討した。