著者
橋本 泰典 宮田 章正 大友 教暁 前田 朝平 松木 明知
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.176-178, 2001-07-20 (Released:2010-06-08)
参考文献数
9

51歳の女性が自殺目的にクロルプロマジン, フェノバルビタールなど8種類の薬物を服用後発見され, 本院に搬送された。来院時, 直腸温24℃で意識レベルはJCSで300, 瞳孔散大, 対光反射も消失していた。心電図上, 心室性頻拍と心室細動を繰り返した。ただちに気管挿管後, アドレナリン投与, 15回の電気ショックで除細動を行い成功した。復温を開始し, 中枢温が30℃に回復した頃から呼名開眼, 対光反射を認めた。搬入12時間後には体温も37℃に回復し, 脳波も正常となり抜管した。神経学的に後遺症を残さず回復した理由として, クロルプロマジンなどの神経節遮断薬と睡眠薬を大量に服用していたため, 低体温麻酔と同様の状態になっていたことが関与したと考えられた。
著者
福島 豊 北川 裕利 野坂 修一
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.22-24, 2015-04-15 (Released:2015-05-21)
参考文献数
10
被引用文献数
1

赤血球製剤中にはカリウムが最大で60mEq/Lと大量に含まれているため,急速大量輸血時には高カリウム血症に注意が必要である。今回,カリウム吸着除去用血液フィルターの急速輸血時におけるカリウム除去能を検討した。カリウム吸着除去用血液フィルターに赤血球製剤4単位を加温ハイフロー輸液ポンプを用いて300mmHgの圧でフィルターに通し,フィルター前後のカリウム値を測定した。カリウム吸着除去用フィルター後の赤血球製剤のカリウム濃度は6.8±1.1mEq/Lに減少した。カリウム吸着除去用血液フィルターは加温ハイフロー輸液ポンプを用いた急速輸血においても有用である。
著者
島 克司 加藤 裕 苗代 弘
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.6-12, 1998-04-20 (Released:2010-06-08)
参考文献数
30

頭部外傷に伴う二次的損傷としての低酸素の海馬に及ぼす影響を明らかにするために, ラット閉鎖性頭部外傷 (脳振盪) モデルを用いて, 興奮性および抑制性アミノ酸の役割を中心に, われわれの研究結果と最近の知見を概説した。特に, 軽症頭部外傷でも低酸素が二次的に負荷されると, 海馬CA3領域に限局して選択的脆弱性が認められることを指摘した。この発生機序として, 海馬における興奮性アミノ酸グルタミン酸の高度かつ長時間の増加と抑制性アミノ酸GABAとの不均衡さらにはそれら受容体の不均衡も関与している可能性を示した。
著者
中村 倫太郎 二瓶 俊一 松本 泰幸 伊佐 泰樹 長田 圭司 原山 信也 相原 啓二 蒲地 正幸
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.39, no.1, pp.20-23, 2020-04-01 (Released:2020-04-13)
参考文献数
15

当初軽症と判断したが,症状が遷延し治療に難渋した脂溶性有機リン中毒症例を経験した。症例は30代女性。脂溶性有機リンを内服し救急搬送された。来院時コリンエステラーゼ(ChE)は低値だが,症状から軽症と判断された。対症療法のみで経過を診たが第3病日に流涎,呼吸困難感が出現し気管挿管施行。第4病日に症状改善し抜管するも,第6病日に症状が再燃し再挿管施行。第9病日再抜管。第12病日に頻呼吸・呼吸困難感が出現し再々挿管。この時点までChE値低値持続していたが,徐々にChE値が改善。第20病日抜管し,その後状態が安定した。本症例の経験から,脂溶性有機リン中毒症例では,ChE低値が持続する症例の人工呼吸器離脱は慎重に行うべきである。
著者
間藤 方雄
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.13-22, 1998-04-20 (Released:2010-06-08)
参考文献数
14

脳細血管には生理的条件下において, マクロファージ系の細胞 (間藤細胞: M細胞) が纏絡する。同細胞は血管周囲隙にあり, 水解酵素に富み蛍光性を有する顆粒を多数含み, 血管・脳室内に投与された蛋白, 脂質を効率よく摂取する細胞である。本稿では間藤細胞の一般的な性質に加え, 病態時, 特に脳に凍結傷害を与えた場合の間藤細胞の浮腫性変化, LPSによって刺激した際の変化とミクログリアとの関係, 再灌流実験における同細胞の退行性変化等について述べた。再灌流実験における皮質・海馬にみられる神経細胞変性と本細胞との関連については現在研究中である。
著者
松田 正
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.51-55, 1983-05-10 (Released:2010-06-08)
参考文献数
6
著者
神里 興太
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.135, 2021

<p>PDFファイルをご覧ください。</p>
著者
下田 元
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生: 日本蘇生学会雑誌 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.31, no.2, pp.63-65, 2012

中学校軟式野球大会の試合を観戦中に,キャッチャーの上体に野手からの送球が直撃後,一過性の意識消失を呈したと思われる状況に遭遇した。直後に診察した結果,応答があり呼吸は保たれ,橈骨動脈の触診では徐脈を認めた。AEDの設置を確認し安静を図りながら視診したところ,右側頸部にボール直撃の形跡として円形打撲痕を認めた。胸部などに外傷の痕跡がないことを再度確認した。以上の他覚的所見から,頸部に及んだ強い圧刺激に起因した頸動脈洞反射による循環動態の急変と判断した。<br> 本経験から,日常でのbystander による迅速な対処と,頸部への衝撃に対しては,頸動脈洞反射を念頭に置いた対応が必要であることを再認識した。
著者
石井 史子
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.37, no.3, pp.172, 2018-10-31 (Released:2018-12-28)

PDFファイルをご覧ください。
著者
西山 友貴
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生: 日本蘇生学会雑誌 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.19-20, 2018

<p>麻酔導入時や緊急気道確保時にはマスクで用手換気する必要があるが,患者が義歯を外した場合や,患者の顔の形状1)によっては,漏れが生じて換気困難となる場合がある。特に顔面の手術後の場合は換気困難となりやすい2)。さらに患者の体格によってマスクのサイズを使い分けなければならない。近年,麻酔用マスクはクッション部分に空気を注入して顔面に密着させる形状のものが主流となっている。これらはクッション部分の材質,形状などが異なり密着性に差がある3, 4, 5)。Nandalanら3)は歴史が長い再利用可能な黒いゴム製の空気注入クッション部分を有するマスク(従来のゴム製マスク)がクッション部分にポリ塩化ビニルなどを使用した使い捨てマスクより漏れが少なく換気しやすいと報告している。一方,使い捨てのマスク,再利用可能なマスク4種類の間でインターサージカル社製使い捨てマスクが最も漏れが少ないという報告もある4)。Ballら5)も従来のゴム製マスクよりインターサージカル社製使い捨てマスクで漏れが少ない結果を得ている。今回,クッション部分を空気注入するカフ状から空気を入れない一枚ものの形状にしたマスク(クアドラライト麻酔用マスクTM,インターサージカル社,英国,図1)を使用する機会を得た。これは以前用いていた黒いゴム製の硬いクッション部分を有するマスクに近い形状であるが,このクッション部分にI-gelTMの先端部分と同じ熱可塑性エラストマーを用いている。クアドラライト麻酔用マスクTMは他のマスク同様1(最小)から4(最大)まで4サイズあり,今回,サイズ3(幅約108mm,縦約81mm,高さ約70mm)のマスクを2017年3月1日から5月31日まで著者自身が行った全身麻酔症例全症例に連続使用した。すべて整形外科症例で,年齢平均71歳(範囲15歳-89歳),男21例,女45例の計66例,身長156cm(134cm-182cm),体重58歳(37.4kg-89kg),Body Mass Indexは24.1 kg・m-2(15.9kg・m-2-42.7kg・m-2),総義歯15例(全例術前に取り外し),部分入義歯24例(2例以外は術前に取り外し),義歯なし27例であった。マスクは市販品であり,介入研究は行っておらず,当院倫理委員会の承認を得ており,患者のデータ使用に関する承諾は麻酔の承諾時に得ている。今回の連続した66例すべて酸素6L/分で換気を行ったが,漏れ(マスクと顔の間からの漏れ,バックのふくらみの減少)によりマスク換気が困難であった症例は1例もなく,すべてサイズ3のマスクで顔面の形によく合い換気は容易だった。従来のクッションに空気注入するタイプのマスクでは多くが女性にサイズ3,男性にサイズ4を用い,さらに漏れが生じて換気困難になる症例を経験していた。今回用いたクアドラライト麻酔用マスクTMではサイズ3のみで漏れを生じず,女性,男性を含め幅広い患者に適応できると考えられた。このため,特に緊急時の気道確保で,患者によってマスクを選択する時間が省け,とりあえずサイズ3のマスクを用意しておけば幅広い症例に緊急対応可能となるので有用と考えられた。従来の黒いゴム製の硬いクッション部分を有するマスクはクッション部分が硬く顔面の形状に合わないことも多かった。クアドラライト麻酔用マスクTMは形状がそのマスクに似ていることから敬遠されがちであるが,クッション部分の材質が熱可塑性エラストマーであるために,顔面の形に合いやすい。今回の使用経験から,クアドラライト麻酔用マスクは麻酔導入時の換気,緊急時の気道確保時に,1サイズのマスクで幅広い症例に対応でき,漏れを生じることが少なく,有用である可能性が考えられた。</p>
著者
赤松 繁 小澤 修
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.1-7, 2003-04-15 (Released:2010-06-08)
参考文献数
33

American Heart Association (AHA) は, 2000年に心肺蘇生法に関するガイドラインを改訂した。新しいガイドラインは, Evidence Based Medicineに基づき科学的根拠を明確にし, 標準的処置を単純化して心肺蘇生法が普及するように改訂された。そのガイドラインのAdvanced Cardiac Life Support (ACLS) では心肺蘇生に用いる薬としてバソプレシンが登場した。バソプレシンの受容体はV1受容体とV2受容体の2種類の存在が知られ, バソプレシンの作用もまたV1作用とV2作用に大別される。血管平滑筋に直接作用し収縮を促すV1受容体を介した作用はV1作用であり, 抗利尿作用はV2作用である。心肺蘇生時に, バソプレシンはβアドレナリン作用をもたないため心筋酸素消費量を増加させることなく冠血流量と脳血流量を増加させる。また心停止が遷延した場合, アシドーシスによってアドレナリン受容体を介した作用が減弱するのに対し, バソプレシンではその影響を受けないためエピネフリンより有効であると考えられる。心肺蘇生時に主として用いられる薬はエピネフリンであるが, バソプレシンも有用な薬であり, 今後の展開次第では繁用されるようになる可能性がある。本稿では, バソプレシンによる血管平滑筋細胞での作用およびその細胞内情報伝達機構に関する著者らの基礎的知見を含め紹介する。