著者
斎藤 秀俊 越智 元郎 市川 高夫 生垣 正 円山 啓司
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.41-47, 2002-08-10 (Released:2010-06-08)
参考文献数
12

水難事故の犠牲者の7割強が着衣状態である。着衣状態にあると身体の自由が利かないため, 落水直後に呼吸を継続するために顔を水面に出すことが難しい。一方で, わずかな努力で「背浮き」を行なうことができれば呼吸が可能となり生存時間が伸びる。着衣状態にある人が水に落ちると空気は通常衣服に残留する。したがってリラックスすれば着衣状態の人はすぐ水面に浮かびあがる。本研究ではこれをChain of Survivalの輪を構成する新しい技術と考え, 「着衣泳」として指導要領の策定を行った。次いでこの指導要領を普及させる目的で教材を作製し, 全国の学校, 教育委員会, 消防本部などに広報・配布した。今同提唱した着衣泳を含む溺水防止のための技術・知識は, 水難事故の犠牲者を減少させるために有用と考えられる。
著者
西山 友貴
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.12, 2017-04-01 (Released:2017-04-08)
参考文献数
16

4年間の集中治療記録から,成人の脳挫傷,脳出血に対する手術後初回痙攣発作時にミダゾラムを投与した症例を抽出し,ミダゾラムの痙攣抑制効果を調査した。28例の痙攣発作時にミダゾラム静注を行い痙攣が消失した。4例でフェノバルビタール筋注が,8例でチアミラール静注が,7例でジアゼパム静注が各々無効,ミダゾラムで痙攣が消失した。3例でミダゾラム静注が無効,チアミラールで痙攣が消失した。ミダゾラム単独投与では昇圧薬を必要とする循環抑制は生じなかった。以上からミダゾラム静注は脳挫傷,脳出血手術後の痙攣抑制に有用と考えられた。
著者
内野 博之 諸田 沙織 Chen Li 高橋 俊明 工藤 佳久 池田 幸穂 石井 脩夫 芝崎 太
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.1-11, 2006-03-20 (Released:2010-06-08)
参考文献数
25

脳は非常に繊細な臓器であり, 短時間の虚血によって容易に障害を受ける。麻酔科医は, 通常業務の中で脳障害を引き起こす病態に遭遇することが少なく無い。脳をさまざまな侵襲から守るためには, 脳の生理的な特徴と脳障害を引き起こす病態の把握が重要となる。脳が虚血となるときの脳血流, 動脈血酸素分圧, 脳潅流圧はどのくらいなのか。脳を障害する病態と脳障害の基礎的なメカニズムおよび二次的に派生する障害の重要性とは何かについて概略を述べた。
著者
本望 修
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.182a, 2015-10-10 (Released:2015-12-26)

PDFファイルをご覧ください。
著者
北口 勝康
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.112-116, 1999-07-20 (Released:2010-06-08)
参考文献数
27

血管拡張薬と脳血流について検討した。トリメタファンは脳血流量への影響は小さいが散瞳を起こし, 術後の神経学的評価を困難にする。ニトログリセリン (TNG) は頭蓋内圧亢進状態では灌流圧の低下により脳血流量が減少する可能性が高い。ニトロプルシド (SNP) は脳血流量は不変であるとされ, 効果も強力であるがシアン中毒の危険があり, 大量投与を避けるため他剤との併用が望ましい。プロスタグランジンElは頭蓋内圧に対する影響も少なく脳血流量は保たれる。脳虚血による細胞死に対して, 血管拡張作用に加えてTNGやSNPが放出するNOの血小板凝集抑制や, PGE1の赤血球変形能改善, 膜安定化作用などが有用となる可能性がある。
著者
森近 雅之 御村 光子 井上 光 並木 昭義
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.35-37, 2002-08-10 (Released:2010-06-08)
参考文献数
7

硫黄入浴剤服用による中毒症例を経験した。57歳女性。入浴剤六一〇パップを約200mL服用し, 約1時間後に救急搬送された。来院時, 意識レベルはJCS-II-30・せん妄状態で著明なチアノーゼ, 過換気と代謝性アシドーシスを認めた。胃洗浄施行後, 精神科病棟に入院させた。その後呼吸不全, ショックとなり, ICUに収容した。人工呼吸下に再度胃洗浄行い, 活性炭投与, 強制利尿等を施行した。硫化水素 (HS) 中毒に対する特異療法としてニトログリセン持続静脈内を投与開始したが, 来院17時間後に死亡した。六一〇ハップは広く市販されているが, 服用時の毒性については知られていない。今後市民への啓発等の対応を要すると考えられる。
著者
金子 真弓 桐田 泰江 望月 利昭 佐藤 重仁
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生: 日本蘇生学会雑誌 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.7-14, 2009

学生advanced cardiac life support (ACLS) ワークショップ (WS)は医学生が自主開催する救急救命処置講習会である。東海地区では現在までに15回開催し,総受講者数は315名である。我々は浜松医科大学にて第14回東海地区WSを開催した。また,約1ヶ月後にメーリングリスト (ML)を介してアンケート調査を行った。<br> アンケート実施対象MLの参加者は東海WS ML 306名,関西WS ML 525名,第8回金沢WS外部連絡ML 95名,および鳥取WSスタッフML 241名だった。各地のMLに重複加入している医学生が多いため,アンケート実施対象者の総人数は正確には把握できなかった。17大学から28名の回答者があった。インストラクター参加した動機としては,繰り返し教えることによる知識と技能定着のためが最も多く,主要な問題点として,費用と時間の問題があげられた。WSに参加する動機付けを強化するために,先輩医師,大学教官による内容の監修や統一したWSコンセンサスを作成することで,間違ったことを教えているのではないかという不安や事前準備の負担を軽減することが望まれる。
著者
重臣 宗伯 佐藤 ワカナ 柴田 繁啓 越村 裕美 円山 啓司 吉岡 尚文
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.145-148, 2001-07-20
参考文献数
6
被引用文献数
1

高齢者の入浴中の心肺停止の原因を発生状況と地域性から明らかにするために, 発生率によって秋田・青森群と非秋田・青森群の2群に分けて比較検討した。秋田・青森群の発生率は3.51で, 11月に発生のピークがあるのに対し, 非秋田・青森群では2.24で12月に発生のピークがあった。全発生数に占める高齢者の割合, 性別, 発生場所, 水没の有無, 浴槽の形状, 家族との同居の有無, 入浴前飲酒の有無, 既往歴には明らかな差を認めなかった。高齢者の入浴中の心肺停止は外気温が10℃を下回る時期から発生数が増加し, その発生には脱衣場・浴室内の温度の低さが関係していると考えられた。寒冷な時期での脱衣場・浴室内の暖房の必要性を啓発する必要がある。

1 0 0 0 OA 一般演題

出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.55-114, 1986-03-01 (Released:2010-06-08)
著者
山本 光昭
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生
巻号頁・発行日
vol.16, no.2, pp.110-112, 1997

新たな災害医療体制の方向性の要点は, 「初動の遅れの解消」, 「地域単位の対応の強化」, 「住民主体の活動の支援」, 「日常からの訓練・備え」であり, その観点から, 災害拠点病院の整備, 広域災害・救急医療情報システムの整備, 災害医療に係る保健所機能の強化, 搬送機関との連携などが必要である。災害時における初期救急医療体制の充実強化には, 住民をはじめ, 医療関係者, 救急関係者の支援, 協力を得ることが重要であり, 積極的に推進されることが期待される。
著者
仙頭 佳起 鈴木 利保 祖父江 和哉
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生: 日本蘇生学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.59-62, 2014

Postanesthesia care unit (PACU)を運営することにより,一般病棟での術後患者に発症しうる重篤な有害事象が減少しうるか否かを調査した。対象施設は名古屋市立大学病院とその教育連携施設2施設で診療録を後方視的に検討した。手術室退室あるいはPACU退室後12時間以内に院内救急コールが起動された症例は各施設で1-2例であった。手術件数あたりの術後院内救急コール症例数の割合は,PACUを運営する施設で0.006%,運営しない施設で0.02-0.03%と前者で低い傾向があった。PACUの運営により術後患者の一般病棟での重篤な有害事象をPACUが減少させる可能性があるが,さらなる大規模研究が必要である。
著者
林 美鈴 神里 興太 照屋 孝二 渕上 竜也 垣花 学
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生: 日本蘇生学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.8-11, 2018

<p>目的:内科敗血症性ショックに対しエンドトキシン吸着療法(PMX-DHP)を施行した症例を検討した。方法:過去5年間で当院ICUにおいてPMX-DHPを施行した内科患者を後方視的に検討した。結果:PMX-DHP導入の28日後死亡率は54%だった。CAI(catecholamine index)の改善は有意ではなかったが,CAIが改善した患者は28日死亡率が低かった。低心機能患者および,新規抗生剤開始からPMX-DHP導入まで1日以上経過した患者の死亡率が高かった。結論:内科敗血症性ショック患者にPMX-DHPを行っても死亡率は高いままだった。特にPMX-DHP導入が遅れた症例で死亡率が高かった。</p>
著者
Yuta Horikoshi Tetsu Kimura Toshiaki Nishikawa Takashi Horiguchi Koji Sato Masahiko Ohbuchi
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.14-21, 2015-04-14 (Released:2015-05-21)
参考文献数
31

Background:Both dexmedetomidine and hypothermia are known to reduce brain injury following ischemia. We examined whether a combination of dexmedetomidine and hypothermia reduce brain injury after asphyxial cardiac arrest in rats to a greater extent than either treatment. Methods:Male SD rats were assigned to one of four groups(n = 7 each);control (C, saline and temporal muscle temperature 37.5℃), dexmedetomidine (D, dexmedetomidine 10μg/kg and 37.5℃), hypothermia (H, saline and 35.0℃), and dexmedetomidine - hypothermia (DH, dexmedetomidine 10μg/kg and 35.0℃). Dexmedetomidine or saline was administered intraperitoneally 30 min before insult. Predetermined temperature was maintained from 30 min before asphyxia until 60 min after resuscitation. Cerebral ischemia was induced with asphyxia of 5 min, resulting in cardiac arrest of about 2 min. Rats were resuscitated by chest compression and intravenous epinephrine. Neurological score was assessed at 24, 48, and 72 hours after insult, and brain was fixed and stained with hematoxylin and eosin. Results:Neurological scores were greater in groups H and DH than groups C and D at 24 hours after insult (P < 0.05), whereas they were similar at 48 and 72 hours. Percentages of intact neurons in hippocampal CA1 were greater in groups D, H, and DH than group C (P < 0.05). Conclusions:Dexmedetomidine and hypothermia improved histologic outcome compared with the control group after asphyxial cardiac arrest, whereas the combination of dexmedetomidine and hypothermia provided comparable neuroprotection with either of two therapies alone.
著者
早津 恵子 冨田 美佐緒 傳田 定平 遠藤 裕 下地 恒毅
出版者
日本蘇生学会
雑誌
蘇生 (ISSN:02884348)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.50-53, 1998-04-20 (Released:2010-06-08)
参考文献数
15

5例の意識障害患者に対するESCS (epidural spinal cord stimulation, ESCS) の経験をレトロスペクティブに調査し, 同療法の有用性を検討した。5例中3例で臨床症状の改善をみたが, 結果は全例が植物症として意識障害を残した。植物症の分類では1段階の改善にとどまり, 植物症から脱却した症例はなかった。ESCS後の検査所見では改善がみられた症例が3例あった。これらの結果が自然回復によるものかESCSによるものかは, 厳密には評価できなかった。客観的な効果判定のためにも, 定期的な生理検査を行う必要性を感じた。