著者
白石 浩介
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.184-199, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
10

年金分析のためのマイクロシミュレーション・モデルの開発に関する研究である。公的年金制度を取り巻く状況は厳しく,改革案を数量面から検証していく計量モデルが求められている。ダイナミック・マイクロシミュレーション技法の年金分野への応用に関する基礎的研究を行い,わが国においてもマイクロシミュレーションを用いた年金分析が可能であることを示した。本研究では新タイプのモデルであるPENMODの開発を構想し,その作成に着手した。PENMODにおけるライフイベント分析においては,個票ごとに生死,婚姻,就業(年金の加入タイプ),賃金,引退,年金裁定に関するシミュレーションを行い,年金推計に必要となる加入記録と受給記録を作成する。これにより個人の就業履歴に応じたきめの細かい年金推計が実現し,基礎年金に対する国庫負担額の傾斜配分やスウェーデン方式として知られる所得比例年金など,これまで分析が困難とされてきた政策シナリオの検討が可能となる。
著者
高畑 純一郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.200-219, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
25

年金の議論が盛んになってきているが,特に関心がもたれているのは財政方式の問題である。公的年金の財源調達法には比例賃金税方式と消費税方式などがあり,それに依存して資源配分が変化する。本研究では,雇用・年金・債券市場に市場の不完備性を組み込んだ動学的一般均衡モデルで,年金保険料の徴収方法によって資源配分がどのようになるかを観察し,どの程度の年金水準が望ましいのか,どちらの財政方式で厚生が高くなるかについて,日本経済をカリブレートしたパラメーターを設定して,定常状態で評価した。その結果,いずれの方式でも最適な保険料率は0%であることが示された。また,一定の規模で年金を実施する場合,想定するパラメーターの下では,消費税方式の方が比例賃金税方式よりも望ましいことが示された。これは,消費税方式での資本蓄積を妨げない効果等が,比例賃金税方式での雇用リスクを和らげる効果等を上回っているためであると考えられる。
著者
塩津 ゆりか
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.220-235, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
13

出産選択と就業状態による世帯の多様化は,出生率や資本蓄積に大きく影響する。子どもはまた,賦課方式の社会保障制度をとおして,正の外部性をもつ。そこで,子どもの外部性を内部化する手段として,児童手当拡充政策が考えられる。 本稿の目的は,世帯の多様性を考慮したうえで,児童手当の加給分の財源について,年金課税と労働所得税を想定し,それぞれが経済全体にあたえる影響を出生率内生化モデルのシミュレーションによって,明らかにすることである。 本稿の主な結論は,次のとおりである。児童手当の政策目標が出生率の回復ならば,ある程度以上の増税を実施するほうが,短期間で政策効果が得られる。定額で所得制限のない児童手当は,年金課税を財源とした場合,どのタイプの世帯であっても貯蓄を増加させる。もし,小規模増税ならば,共稼ぎで子どもをもつ世帯にとっては,子どもの外部性が十分内部化されないので,効用水準が低下する結果となった。
著者
川崎 一泰
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.236-253, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
14

本研究では,地方再生の1つの手段として期待されるコンパクト・シティを財政的な側面からその効率性を評価し,地域の経済活動指標と合わせて検討することで,効率的都市像の検討を行った。本論文では,概念的な議論の多いコンパクト・シティのコンパクト性を統計的に捉える指標を探り,小地域データを使った実証分析及びシミュレーション分析を試みた。 分析の結果,自治体の社会経済環境に応じて異なるが,平均的に人口集中地区(DID)人口密度が5150人/km2程度の規模で,行政コストが最小になることがわかった。また,この規模では地域の経済活動は高まらず,コンパクト・シティが機能を連携・分担する都市圏を形成することが求められることを示唆する結果も得られた。
著者
宮下 量久 中澤 克佳
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.254-275, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
18

「平成の大合併」によって市町村合併が多くの地域で急速に行われてきた。さらなる地方分権の推進や交通網整備に基づく生活圏の拡大によって,既存の行政区域を越えて各地域で検討すべき課題が増えると思われる。そして,広域連合やさらなる合併など,複数自治体が相互に意思決定を行う機会も増加してくると予想される。しかし,これまで先行研究で市町村合併の歳出削減効果についての検証は数多くなされているものの,合併のような市町村間の合意形成過程に関する研究は,筆者らの知りうる限り存在しない。そこで,本稿では市町村間の合意形成過程(期間・コスト)に着目して,それに影響を与えうる要因を定量的に分析した。その結果,合併協議地域内の所得格差が大きいほど,合併不成立,もしくは合併協議の長期化をもたらすことや,協議地域の合併インセンティブは財政状況ではなく,特例市などに昇格し,権限や業務が都道府県などから移譲されることで存在することなどが明らかとなった。
著者
根岸 睦人
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.276-295, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
41

本稿では,戦前期の主要な地方税である家屋税に注目し,1940年税制改革において,地方団体間の評価方法の統一や税率の平準化が図られた背景と改革の意義を,財政調整制度の成立との関わりにおいて明らかにしている。同改革で家屋税は還付税となり,国税として,負担の公正や均衡は国により保証される一方,税収の帰属は地方団体とされた。この背景には,脆弱な財政的基盤の上に成り立つ地方税務行政の問題への対応,財政調整制度の精緻化の要請などがあった。また本格的な財政調整制度の導入に伴い,標準的行政運営を保証する税率として標準率が導入され,政府は各団体の税率を標準率に誘導するようになった。これにより地方団体の歳入を最終的に調整する,従来の地方税の役割が大きく変化した。
著者
西村 宣彦
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.296-314, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
28

2007年3月に財政再建団体に移行した夕張市は,本稿執筆時点で財政再建第2年度目にある。財政再建初年度は当初計画通りの赤字解消を達成したが,今後に目を向けると,夕張市の財政再建計画は,①現実性,②地域の将来ヴィジョンの欠如,③負担配分の公正性という3つの問題点を抱えている。3点目は(a)人口流出に係わる問題と,(b)不適正な赤字隠しへの道・国の関与の問題に区別される。目先の赤字解消に止まらず,地域と自治の再生を図っていくためには,これらの諸点と向き合う必要があり,そのためには夕張市に現在課されている「過剰な自己責任」を是正し,夕張市の責任で解消すべき赤字額の大幅な減額を含めて,計画の抜本変更を行うべきだと考える。こうした主張に対しては,モラル・ハザードの助長や他の地方自治体との不公平といった異論が出ることが予想されるが,夕張市の事例では必ずしもそうした指摘は当てはまらないことを指摘する。
著者
金目 哲郎
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.315-334, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
11

過去四半世紀にわたる地方財政計画の変遷について,主要な歳出項目別の時系列分析を行い,近年の計画の抑制的見直しについて評価を加える。この分析過程では,各項目の算定根拠として積み上げられた施策・事業の変化に着目する。分析の結果,1990年代前半までの地方財政計画の膨張は単独事業分,なかでも長期計画事業や新規事業の増額計上が顕著である。1990年代後半以降の抑制・減少は単独事業分の圧縮によるが,新規事業の整理縮小のみならず過疎対策事業といった毎年計上事業分の圧縮,給与関係経費といった経常経費の減額にまで及んでいる。単独事業分のなかでもナショナル・ミニマムに関わるものの財源保障の削減は懸念され,マクロの財源保障に幅を持たせておくことは地域的に顕在化する行政需要に応える意味でも重要である。
著者
小林 航 近藤 春生
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.218-232, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
11

本稿は,自治体首長の多選禁止問題について検討するために,都道府県知事の在職年数と財政運営の関係について分析する。既存研究では,基礎的財政赤字と知事の在職年数との間にU字型の関係が観察されていたが,本稿ではそのような関係は見られず,むしろ逆U字型か単調な右下がりとなることが示される。また,こうした結果が得られる理由についても検討する。
著者
砂原 庸介 藤井 康平
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.233-251, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
15

本稿では,地方政府における産業廃棄物税と森林税という2つの新税導入の意思決定要因について,都道府県レベルの地方政府における知事・地方議会という政治的アクターの選好と両者を選出する選挙制度を結びつけたうえで,その選好が新税の導入にどのような影響をもたらすかについて議論する。 本稿の分析からは,産業廃棄物税・森林税という2つの税が持つ性質が,首長または地方議会という選挙に直面する地方政治のアクターの選好と対応し,各地方政府における首長の再選可能性や地方議会自民党の優位性などの特徴が新税導入の意思決定に影響を与えていることが示される。このような新税導入の実証分析からは,地方分権改革によって地方政府の自律性が向上することで,同時に地方政府における政治的アクターにとっても,自らの利益につながる戦略的行動をとる余地が広がりつつあることが示唆される。
著者
林 正義 石田 三成
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.252-267, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本稿では交付税措置が地方単独事業に対する効果を平均処置効果として1990年代の各年に関して推計した。その結果,交付税措置は1996~97年を除き,90年代を通じて地方単独事業に有意な影響を与えていたことが示された。
著者
関口 智
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.268-286, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
24

本稿では,アメリカ民間医療・年金保険制度に関連する1990年代以降の租税政策について,被用者(個人)の所得階層に着目して検討している。アメリカでは,伝統的に政府部門の社会保障債務(医療・年金保険等)の規模が小さいが,これは民間部門が医療・年金債務のシフトを受容してきたからでもある。近年,民間部門内部では従来の確定給付型に確定拠出型を加えた雇用主から,被用者・個人への医療・年金債務のシフトが起こっている。政府はこれら一連のシフトを租税政策により促進し,社会保障財政の逼迫を回避する方向性を追求してきた。しかし,近年の租税政策は主として高所得層の租税負担の相対的軽減につながり,低所得層にその便益が及びにくくなっている。そのため,低所得層に還付可能な税額控除を付与することで改革への社会的な支持の調達を模索しているが,執行上の問題や財源上の問題等も交錯し,混沌とした状況にある。
著者
宮﨑 雅人
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.287-303, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
32

本稿においては,1964年度における基準財政収入額算定に用いられる基準税率の引上げの背景にどのような要因が働いていたのかを分析した。分析の結果,基準税率の引上げは,恒常的に財政力の弱い市町村が市町村民税所得割の課税に際して負担の重い但書方式と超過税率を採用せざるを得なかったために生じた負担の不均衡と,それを解消するための課税方式の本文方式への統一という制度変更が要因となった可能性があることが示された。そして,この課税方式の統一は1963年に行われた総選挙に際して自民党が掲げた減税公約に基づいて行われたことも示された。これら一連の過程は,政党を媒介にした選挙を通じた地域間格差の是正を求める世論が財政制度変更の構想を実現の方向へと導く1つの要因となりうることを示している。しかし一方で,地方税負担均衡化の過程は租税負担水準の自己決定権の喪失過程でもあり,基準税率の引上げはその過程における政策の1つとしても位置づけられうる。
著者
其田 茂樹 清水 雅貴
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.304-319, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
28

本稿では,森林環境税や水源環境税といった地方環境税に注目して,それらが活用している住民税超過課税の実施状況等を概観しつつ,その理論的なよりどころとなる「参加型税制」について検討を加える。課税自主権の行使として超過課税を活用し,この課税方式による地方環境税が各地に波及したという意義とともに,目的税的な運用の面で課題を残したままで制度が導入されていることの問題点を指摘する。
著者
髙橋 青天
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.320-339, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
22

Kolm(1970)で用いられた図(「コルムの三角形」)を使うことによって,Foley(1970)やNikaido(1976)で分析された公共財を含む資源配分問題の重要な課題である,①パレート効率性とコア,②リンダール均衡とコア,が平面図のみで図解される。このような分析手法を採ることの利点として,高等数学を一切使うことなく問題の核心を直感的に理解することができる点を挙げることができる。
著者
林 正義
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.119-140, 2009 (Released:2022-07-15)
参考文献数
23
被引用文献数
3

本稿では1999年から2004年までの都道府県別パネルを用いて公共資本が地域生産に与える効果を考察した。本稿では特に,先行研究では十分に配慮されていない,生産から資本への遅れたフィードバックを通じた推定上の問題,生産要素や生産水準の時間を超えた動学的効果,そして,公共資本を含む諸変数の適切なデータ範囲に留意して推定を行った。推定の対象となる生産関数は状態依存モデルとADLモデルに拡張され,Arellano and Bond(1991)による手法を用いた推定が行われた。ADLモデルでは個別の生産要素の効果が有意に推定できず,生産関数アプローチが否定される結果となったが,状態依存モデルからは,民間資本の効果は有意に推定されなかったものの,他の変数に関してはもっともらしい結果を得ることができた。特に状態依存モデルからは,比較的大きな公共資本の生産力効果が推定された。
著者
天羽 正継
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.206-225, 2007 (Released:2022-07-15)
参考文献数
28

本稿の課題は,戦時期に資金計画の一環として形成された地方債計画が,終戦後にどのような経緯を経て,戦後のわが国の地方債制度を支えるシステムとして再形成されることとなったのかを明らかにすることである。戦時期には国家資金計画による地方債計画の下,地方債の全額が政府資金によって引き受けられた。終戦後に戦時期の地方債計画は撤廃されたが,政府資金がインフレにより蓄積不足が続いたため,一部の地方債が民間資金によって引き受けられることとなった。ところが,地方債の消化が困難をきわめたため,大蔵省と日銀により計画的な消化を図る政策が展開されることとなった。こうした過程で大蔵省は,民間資金と政府資金による引受量を把握しつつ,新たな起債許可権限を用いてそれらに見合うように地方債発行額を調整することが可能となった。こうして,終戦後に撤廃された地方債計画は新たな装いをもって復活し,戦後に引き継がれることとなったのである。
著者
篠田 剛
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.248-269, 2007 (Released:2022-07-15)
参考文献数
28

州・地方政府が高い課税自主権を有し,多様な税制を構築してきた米国連邦制であるが,近年,州間・地方間の税制調和や租税協調がさけばれている。本稿では,インターネット課税問題をめぐって浮上してきた売上税・使用税に関する州間租税協調を分析する。その際,州・地方政府だけでなく,IT関連企業や伝統的な小売企業といった租税協調の推進主体とその相互の利害関係に着目する。こうした複数の利害対立関係を同時に考慮することによって,どのような条件のもとで租税協調は実現するのか,それを阻害する要因は何かを明らかにする。
著者
水上 啓吾
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.270-290, 2007 (Released:2022-07-15)
参考文献数
30

1990年代末以降のブラジルでは緊縮財政が避けられないものとなっていくが,本研究は,財政政策と金融政策の交錯点である国債管理政策の分析を通じて,そうした背景を明らかにしようとするものである。90年代初頭のブラジルでは,対ブラジル投資の再活性化のために開始された一連の経済の「自由化」政策およびドル・ペッグ制を活用したインフレ抑制政策と整合的な国債管理が行われるが,それは中長期的な利払い負担の抑制,適正なリスク水準の維持,国債市場での円滑な取引を目指すものであった。分析の結果,ブラジルの国債管理政策が,利払い負担の軽減から国際金融市場との連関を深めることで,外在的な通貨危機の影響をより深刻化させたということが明らかとなった。
著者
亀田 啓悟 李 紅梅
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.148-164, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
29
被引用文献数
1

数多くの先行研究が地域別,投資分野別に社会資本の生産性を推計しているが,これまで国直轄,国庫補助,地方単独事業別の生産性は分析されていない。その一方,地方財政分野では数多くの先行研究が中央・地方政府間の情報の非対称性や国庫補助金の存在が公共投資,特に国庫補助事業の効率性を損ねていると指摘している。そこで本稿ではこれら3事業別の社会資本データを構築し,その生産性を推計した。その結果,国直轄,国庫補助事業の生産性は確認できず,地方単独事業のみが有意な生産性を示した。また,頑健性を確認するために期間別推計,地域別推計,外部性に配慮した推計も行ったがこの結論は不変であった。以上より3事業間に生産性格差は存在し,地方単独事業のみが有意な生産性をもつといえる。なおこの結果は,先行研究の技術的,制度的,政治的な要因が社会資本の生産性を阻害するとの指摘を裏付けるものといえる。