著者
村岡 哲郎 鴨居 道明 則武 晃二
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.3, pp.227-232, 1997-11-25
参考文献数
8

水田における表層剥離の発生機構を明らかにするために, 外見的な土壌剥離膜の変化と剥離膜内における藻類の構成割合の変化との関係を経時的に調べた。さらに剥離膜形成の初期段階における珪藻類(Bacillariophyceae)の役割を調べた。水稲栽培圃場において, 剥離膜は次のような段階を経て形成された。まず, 代かきによって地表面に浮上した微細な土壌粒子が, 珪藻類の運動によって速やかに凝集し, 淡い褐色を帯びた薄膜が形成された。その後, 珪藻類が急速に増殖し優占化することにより, 土壌粒子の凝集が更に進むとともに, 藻類の光合成作用によって生じた酸素が膜上で気泡となって浮力が生じ, 膜の浮上が始まった。次に, この浮上膜内でユレモ類(Osillatoria sp.)等の糸状の藍藻類(Cyanophyceae)の増殖が始まり, やがて, これらが優占化した。その結果, 剥離膜の表面は緑色の繊維状を呈し, これら糸状の藍藻類が凝集した土壌粒子を緊縛することにより, 剥離膜の強度はさらに増加することが判明した。
著者
猪谷 富雄 平井 健一郎 藤井 義晴 神田 博史 玉置 雅彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.258-266, 1998-10-30 (Released:2009-12-17)
参考文献数
13
被引用文献数
3 7

サンドイッチ法は寒天培地中に包埋した供試植物の乾燥葉から浸出する物質のアレロパシー活性を, 寒天培地上に播種した検定植物の種子根等の伸長抑制程度から判定する方法である。この方法によって, 広島県立大学キャンパスおよび広島大学医学部薬用植物園内で採取した雑草・薬用植物計152種のレタスに対するアレロパシー活性を検定した。その結果, カタバミ, ヒメスイバ, イシミカワ, ヤブラン, メギ, ショウジョウバカマがレタス根長の伸長程度 (対照区比) 10~20%と強いアレロパシー活性を示した。上記のような強いアレロパシー活性の認められたもの23種を供試植物とし, 検定植物としてレタスの他にアカクローバー, キュウリおよびイネの4種を用い, サンドイッチ法によって供試植物のアレロパシー活性を検討した。得られたデータの主成分分析の結果, 50%の寄与率を持つ第1主成分は4種の検定植物が共通して示すアレロパシーに対する感受性を表し, かつ検定植物中レタスで最も高い第1主成分の因子負荷量が得られた。これより, サンドイッチ法の検定植物として従来用いられているレタスが適当であることが示唆された。また, 26%の寄与率をもつ第2主成分は, 検定植物のレタス・アカクローバーとキュウリ・イネとで同一物質に対して異なる感受性の方向を示すと考えられた。このことから検定植物間で選択性をもつアレロパシー物質の存在が推定された。
著者
井貝 敬太郎 西 静雄
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.212-214, 1980-10-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
5
被引用文献数
1 1
著者
堀江 秀樹 根本 正之
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.340-345, 1990-12-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
19
被引用文献数
1

アレチギシギシ, ナガバギシギシ, ギシギシ, エゾノギシギシの4種におけるリンおよびアルミニウムの生育への影響を比較した。1) リンを4水準で施肥し, 栽培試験を行った結果, 4種はすべて無リン条件での生育は極めて不良であるが, リンを与えるとその生育量は著しく増加した。土壌中の可給態リン濃度が低い場合の全乾物重はギシギシ, エゾノギシギシ, アレチギシギシ, ナガバギシギシの順であった (Figs. 1, 4)。2) ナガバギシギシではT/R比は最小であったが (Fig. 2), 側根の占める割合が小さく, 根長は最も短かった (Fig. 4)。ナガバギシギシでの低リン耐性が低い要因は根長が短いことによると考えられる。3) アルミニウムを20ppm添加して4種を水耕栽培した結果, エゾノギシギシの全乾物重は他の3種より有意に大きかった (Table 1)。4) 日本の人工草地ではリン欠乏やアルミニウムの害が問題になるが, このような土壌条件下では低リン耐性および高アルミニウム耐性にまさるエゾノギシギシがナガバギシギシよりも生育しやすいと考えられる。
著者
鈴木 光喜 須藤 孝久
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.20, no.3, pp.105-109, 1975-11-25
被引用文献数
6

発生予測の基礎資料を得るため,代かき時期を想定して4月20日から8月2日まで8回にわたって12科19種の雑草種子を播種し,温度と発生との関係を検討した。(1)各播種期を通して,出葉始めまでの日数は,畑地埋蔵種子および畑地埋蔵後湛水地中埋蔵種子が最も短く,戸外風乾貯蔵種子が最も長かった。したがって,温度と発生との関係の検討は,畑地埋蔵種子を対象にして行なった。(2).出芽始期はミズハコベなどの3草種が最も早く,平均気温で8℃,平均水温で13℃であった。一方,コナギ,アセトウガラシは最も遅く,同じく,それぞれ15〜16℃,19℃であり,他の草種は両者の中間に位した。(3)播種から出葉始めまでの積算気温,積算水温は,低温期の播種では高い値を示したが,ある時期以後では各雑草ともほぼ一定の値に達した。各草種の積算温度値の高低は出葉始期の早晩と逆の比例関係を示した。(4)播種から出葉始めまでの日数(y)と,その間の平均気温(x_1)および平均水温(x_2)との間に,y=ax^bの曲線回帰式が,各草種で得られた。(5)単子葉類7草種の生育初期における出葉速度は規則性をもち,草種ごとにほぼ一定の出葉間隔のあることが分かった。
著者
橘 雅明 伊藤 一幸 渡邊 寛明 中山 壮一 山口 裕文
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.4, pp.175-184, 2008-12-24
被引用文献数
2

東北地域の転作コムギ畑で問題となっているハルザキヤマガラシ(Barbarea vulgaris R.Br.),カミツレモドキ(Anthemis cotula L.)および侵入が危惧されるイヌカミツレ(Matricaria inodora L.)の防除法を策定するために,出芽を中心にこれらの生活史を調査し,除草剤と中耕による管理について検討した。カミツレモドキは,青森県の秋播きコムギ畑では,主に秋季に出芽する越冬個体が雑草害の原因となっていた。カミツレモドキは春季と秋季の年2回種子より出芽していた。コムギ畑に発生したハルザキヤマガラシ,カミツレモドキおよびイヌカミツレの帰化雑草3草種に対しては,播種直後のリニュロン水和剤土壌処理,秋季の出芽終期にあたる11月上旬のアイオキシニル乳剤処理,5月上旬の条間中耕またはアイオキシニル乳剤処理に高い除草効果がみられた。上記の3つの除草管理時期のうち,いずれか2つの時期に適切な除草管理を実施すれば各草種の収穫期乾物重は無除草区の4%以下となり,帰化雑草3草種のいずれでも防除できる。カミツレモドキとイヌカミツレについてはチフェンスルフロンメチル水和剤による茎葉処理でも高い除草効果がみられた。
著者
高村 斉治 松中 昭一
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.14, pp.46-51, 1972-09-30

除草剤U-18は,ヒル反応,呼吸,およびジベレリン誘起α-アミラーゼ生成に影響せず,クロロシスによってタイヌビエを枯死させる。新葉分化の停止が殺草の要因である可能性もあるが,現在の段階では決定的ではない。 U-18がクロロシスを発生させる機構としては,タイヌビエのプロプラスチドの形成阻害への影響は小さく,クロロフィルの生合成をも含めてその後の葉緑体への生長を阻害するためと考えられる。U-18によるクロロフィル分解促進はみとめられなかった。水稲においては,毎目薬液を交換してU-18処理を続けても,葉令が進むにつれてクロロシスの程度が軽くなり,第4葉以後ではほとんどみとめられないので,この時期に何らかの質的内部変化が対応していると考えられる。
著者
梨木 守 須山 哲男 目黒 良平 加藤 忠司
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.118-125, 1991-09-02 (Released:2009-12-17)
参考文献数
42

放牧草地におけるエゾノギシギシ植物体内の含有成分からみた問題点を明らかにするたあに, 季節ごとのエゾノギシギシの乾物消化率と含有成分 (粗蛋白質, 繊維成分, 無機成分およびNO3-N) を同一草地から採取した牧草 (トールフェスク, シロクローバ) および草地雑草 (メヒシバ, イヌビエ, ウシハコベおよびイヌタデ) と比較した。1) エゾノギシギシの消化率は他の雑草, 牧草と比べて生育ステージに関係なく低かった。このことは高消化性物質の (OCC+Oa) の低含量と低消化性物質のADLの高含量により裏付けられていた。粗蛋白質含量は6月の開花・結実期を除いてトールフェスクや他の雑草より高く推移し, 平均で28%であった。2) エゾノギシギシの無機成分はとくにK, Mgが高含量で推移し, いずれの生育ステージにおいてもトールフェスクや他の雑草と比較して高い傾向を示した。Naを除く他の無機成分の含量も高いが, 一定の傾向は認められなかった。栄養成分比のCa/P比は高く, K/(Ca+Mg) 当量比は低く, さらに反栄養成分のNO3-N は高かった。3) しかし, エゾノギシギシは家畜の嗜好性が低く消化性も低いため, 高含量の粗蛋白質や無機成分は家畜に利用されず, 草地の単位面積当たりの飼料的栄養収量の低下を招く。また, 繁茂が続けば無機成分に対する牧草との競争が強まり, 肥料成分の無効化が懸念される。さらに, 一部のミネラル比の不良や NO3-Nの高含量については, 通常家畜の利用が低いために問題化は少ないと思われるが, 飼料成分的には好ましくない。より高い栄養価の牧草生産を目的とする草地管理の立場からは, エゾノギシギシの存在はその含有成分からみても障害となる。
著者
猪谷 富雄 平井 健一郎 藤井 義晴 神田 博史 玉置 雅彦
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.258-266, 1998-10-30
参考文献数
13
被引用文献数
7

サンドイッチ法は寒天培地中に包埋した供試植物の乾燥葉から浸出する物質のアレロパシー活性を, 寒天培地上に播種した検定植物の種子根等の伸長抑制程度から判定する方法である。この方法によって, 広島県立大学キャンパスおよび広島大学医学部薬用植物園内で採取した雑草・薬用植物計152種のレタスに対するアレロパシー活性を検定した。その結果, カタバミ, ヒメスイバ, イシミカワ, ヤブラン, メギ, ショウジョウパカマがレタス根長の伸長程度(対照区比)10〜20%と強いアレロパシー活性を示した。上記のような強いアレロパシー活性の認められたもの23種を供試植物とし, 検定植物としてレタスの他にアカクローバー, キュウリおよびイネの4種を用い, サンドイッチ法によって供試植物のアレロパシー活性を検討した。得られたデータの主成分分析の結果, 50%の寄与率を持つ第1主成分は4種の検定植物が共通して示すアレロパシーに対する感受性を表し, かつ検定植物中レタスで最も高い第1主成分の因子負荷量が得られた。これより, サンドイッチ法の検定植物として従来用いられているレタスが適当であることが示唆された。また, 26%の寄与率をもつ第2主成分は, 検定植物のレタス・アカクローバーとキュウリ・イネとで同一物質に対して異なる感受性の方向を示すと考えられた。このことから検定植物間で選択性をもつアレロパシー物質の存在が推定された。
著者
岡林 哲也
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.49-51, 1980-06-25
著者
根本 正之 大塚 広夫
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.184-192, 2004-09-30
被引用文献数
3 4

谷戸地形での雑草群落の構造的な特性とそれを維持してきた管理手法との関係を明らかにするため,同一谷戸内にある農道,畦畔および放棄水田内に発生した雑草の生態的特性と種間相互関係について比較検討した。132地点の方形区から得られた119種のサンプルをTWINSPANによって分類した結果,シバ,チガヤ,オギによって特徴づけられるスタンドがそれぞれ農道,畦畔,放棄水田に対応していることがわかった。地上部が頻繁に破壊される農道は陣地拡大型小型雑草のシバ,シロツメクサの他,木本類や大型雑草の芽生えもあり,不安定なスタンドであった。また年一回の刈取りが行われた畦畔には多くの種が含まれるものの,チガヤが超優占種となり,他種の現存量はヨモギとセイタカアワダチソウを除けば非常に小さかった。一方,放棄水田内ではオギが優占し,それとセリ,スギナやツル性雑草が空間をすみ分けて共存していた。雑草種の潜在的な草丈に基づく植生状態指数(IVC)は雑草群落の持続安定性の指標となるが,本調査地においてはその値は多様性指数と呼応していないことがわかった。
著者
山末 祐二 植木 邦和 千坂 英雄
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.32, no.3, pp.188-197, 1987-10-30
被引用文献数
4

タイヌビエ種子の休眠・発芽における生態的挙動に対する生理・生化学的機構(physiological ecology or ecophy siology)を解明しようとする研究の第一歩として、休眠および休眠覚醒種子の生理的特徴を呼吸およびその関連酵素の活性から検討した。供試種子は農研センター鴻巣試験地由来のタイヌビェから採集したもので、休眠種子は採種後-21℃に貯蔵してその休眠性を維持させ、またこの一部の種子を4℃土壌埋没処理によって休眠覚醒種子を得た(Figure 1)。測定項目は30℃、明条件の発芽床に置床したときのCO_2/0_2交換、エタノール生成、呼吸関連酵素(G6PDH、 6PGDH、 ADH、 ICDH、 cytochrome c oxidase、 polyphenol oxidase、 catalase、 peroxidase)活性の変動であった。休眠種子は置床全期間を通じてCO_2/O_2交換量、すべての酵素活性においてほとんど変動がたく、呼吸代謝的にも全く静止状態にあると考えられた。また、RQ値が1.0付近に維持され、cytochrome c oxidase活性も低いレベルで存在することから(Figures 3,4)、休眠種子は通常の電子伝達系で僅かだから好気呼吸していることが示唆された。しかし、測定された酵素の活性(Figures 4,6)、とくにADH活性は休眠覚醒種子の置床0 hrに比べ比較的大きく、休眠種子内では酵素活性そのものが制限要因でなく、何らかの機作で酵素反応が静止しているものと考えられた。しかし、休眠覚醒種子においては、置床直後からRQ値、ADH活性などが急激に増大し(Figures 3,4)、多量のエタノールが生成されるが(Figure 5)、その後鞘葉、根鞘の突出によって外被が破られ外部酸素が利用可能とたるとADH活性は低下し、代ってcytochrome c oxidase活性が増大し始め、RQ値も1.0に近づいた(Figures 3,4)。したがって、休眠覚醒種子は花被、果皮などを含む外被によって胚に対する酸素の供給が制限されており、置床後から鞘葉だとの突出までの幼芽の生長に必要なエネルギーはアルコール発酵系によって獲得されることが示唆され、この置床初期におけるADH活性の急激な増減は発芽の肉眼的観察以前におこる重要な生理的形質と考えられた。
著者
榎本 敬 中川 恭二郎
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.202-208, 1977-12-25 (Released:2009-12-17)
参考文献数
19
被引用文献数
1

実験圃場において, セイタカアワダチソウを種子より2年余りにわたって無競争下で生育させた。器官別現存量, 枯死量, 葉面積, 草丈, ロゼット数などを, 個体別に, 期間中20回にわたって測定し, 生産構造, 純生産量などを求めた。その結果, 以下のようなことがわかった。1) 種子より生長を始めた場合は, まず葉と根の生長に重点がおかれ, 次に茎, 花, 地下茎の生長が起こっていることが, 純生産の分配率からわかった。またT/R比, F/W比が大きくて, 1年生草本の値に近く, 茎の伸長速度は小さかった。2) 地下茎から生長を始めた場合は, まず茎への分配率が高くなり, 次いで葉と地下茎への分配率が高くなった。T/R比, F/W比は小さくなり, 年間純生産の地下茎への分配率が高まり, それらは, 完成した群落で得られている値に近づいている。春における茎の伸長速度は極めて大きかった。3) 同化産物は夏から秋にかけて地下茎に蓄えられるが, 冬の間にも茎からの転流が起こっていると考えられ, 春先に地上部へ転流することによって, 急速に地上部が完成された。4) ロゼットは10月に地表に現れ, 春まで数が増加したが, 春から初夏にかけて急激に減少した。この自然間引きは, 草丈の低いものに集中して起こった。5) 同一個体でも, 種子から生長を始めた場合と2年目以後の地下茎からの生長とでは適応戦略が異なっており, このことが本種の定着やその後の生長と繁殖に重要な意味を持っていると考えられる。