著者
磯田 三津子
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.50, no.2, pp.13-23, 2021 (Released:2022-03-31)
参考文献数
15

本論の目的は, 「文化に関連した指導」の中で主張されている社会正義ついて明らかにし, そこで子どもたちが獲得すべき能力は何かを明らかにすることである。アメリカ合衆国には, 「文化に関連した指導」という考え方があり, マイノリティの子どもたちの教育の在り方を考える際に注目されている。こうした考え方に基づいて実践される教育の中で用いられる教材として, ヒップホップがある。本論では, 前述した研究目的を明らかにするために, 「文化に関連した指導」の理論及び, ヒップホップの実践の意義を考察する。考察の結果, 明らかになったことは, 先ず, ヒップホップによる社会正義の獲得を目指す音楽授業の目標が, 人種や民族, 階層といった問題について考え, 社会を改善するために行動できる能力を育成することである。次に, ヒップホップがマイノリティにとって身近な内容を表現しており, 社会を批判的に捉えるのに適した教材だということである。
著者
山本 耕平
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.25-36, 2019 (Released:2020-08-31)
参考文献数
35
被引用文献数
1

本研究は, 作曲家の林光 (1931~2012) が日本教職員組合主催の教育研究全国集会に講師として参加していた1960年代後半から1970年代を中心に取り上げ, 彼の音楽教育論を明らかにすることを目的とする。林は1950年代にうたごえ運動や労音などの社会運動と積極的に関わる中で, 「民衆芸術論」の実践をこれらの社会運動に見出していた。そして後に彼は1968年から教育研究全国集会に講師として参加し, 民衆芸術論を基に「歌うことを中心とした音楽教育」を構想した。歌曲の教材選択について林は教科書にこだわらず子どもたちが生き生きと歌えるものを選ぶべきだと考えていた。そして教師の伴奏については, 楽譜通りに弾くことよりもむしろ教師の持てる技術の中で子どもの歌声を引き出すことを重視していた。林の音楽教育論とは, 知識や技術を重視する傾向にあった当時の音楽教育に対し, 子どもが主体的に音楽を楽しむ中で人間的に成長していくことを目指すものであった。
著者
坂内 くらら 遠藤 伸太郎 大石 和男
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.13-24, 2022 (Released:2023-03-31)
参考文献数
52

音楽を専攻する大学生 (以下, 音大生とする) は抑うつ傾向が高いことが知られている。本研究は音大生を対象に, 演奏不安, 自尊感情, 友人および主科の指導教員との関係の良好度と抑うつ傾向との関連を検討することを目的とした。従属変数を抑うつ傾向とし, Step 1に統制変数として性別と年齢, Step 2に演奏不安, 自尊感情, 友人との関係の良好度, 主科の指導教員との関係の良好度, Step 3に自尊感情と演奏不安, 自尊感情と主科の指導教員との関係の良好度, 自尊感情と友人との関係の良好度, 主科の指導教員との関係の良好度と友人との関係の良好度, それぞれの交互作用項を投入した階層的重回帰分析を行った。その結果, 自尊感情と主科の指導教員との関係良好度と抑うつ傾向の間に有意な負の関連が認められた。このことから, 音大生の自尊感情が低い場合や, 主科の指導教員との関係が良くない場合は, 抑うつ傾向がより高まる可能性が示唆された。
著者
齊藤 忠彦 田島 達也 岩﨑 博道 岡本 隆太 高橋 幸三 財満 健史 大脇 雅直
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.25-35, 2021 (Released:2022-08-31)
参考文献数
4

2019年12月に報告された新型コロナウイルスの影響は学校教育においても深刻である。特に音楽科では歌唱などの表現活動において飛沫拡散の可能性があるため, その対策を講じることが急務とされているが, 科学的な知見に基づく研究が遅れている。そこで, 本研究では, 飛沫可視化による検証実験を通して, 定量的なデータを得ながら, 歌唱の活動における飛沫感染対策に関わる検討を行うこととした。飛沫可視化によるマスク等の飛沫防護具の比較では, 「不織布マスク」「ガーゼマスク」「合唱用マスク」「マウスシールド」「フェイスシールド」の5種類の飛沫防護具を取り上げ, それらの中で最も飛沫抑制効果が高いのは「不織布マスク」であることを確認した。その他に, 「ハミング」「歌詞唱」「朗読」の比較検討, 「日本語」「ドイツ語」の比較検討なども行った。なお, 飛沫防護具着用による音響的な変化を捉えるために, 音声分析による検証実験を行った。
著者
中川 郁太郎
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育学 (ISSN:02896907)
巻号頁・発行日
vol.48, no.1, pp.25-35, 2018 (Released:2019-08-31)
参考文献数
14

本研究報告は, 第二次世界大戦後40年に亘って続いたドイツ民主共和国 (旧東ドイツ) において, 伝統的な西洋音楽の専門教育がどのようになされたのかを, 特に声楽家の育成に着目し, 先行研究および資料の調査とインタビューとを通して, その一端を明らかにする試みである。第1章においては, 旧東ドイツ時代の音楽専門教育に関する先行研究をたどり, 第2章2. 1では, 資料から確認できるワイマール高等音楽学校の事例を参照し, 旧東ドイツの音楽専門教育の歴史を概観する。2. 2および2. 3では, 声楽教育に関する一次資料である, 元ライプツィヒ高等音楽学校教授ヘルマン・クリスティアン・ポルスターへのインタビューをもとに, 高等音楽学校の中で日常的におこなわれていた教育の在り方を検証する。第3章ではそれらを通して, 実効性ある音楽専門教育はいかにして可能か, という問題研究への端緒を拓くとともに, 今後の研究課題に言及する。
著者
水戸 博道
出版者
日本音楽教育学会
雑誌
音楽教育実践ジャーナル (ISSN:18809901)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.116-125, 2007 (Released:2018-04-11)
参考文献数
32