著者
石濱 裕美子 福田 洋一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

本研究はチベット仏教の大成者ツォンカパ・ロサンタクペーペル(1357-1419)の最古層の伝記の研究を通じて、ゲルク派の歴史・教会史を明らかにすることを目的とした。現在入手可能なツォンカパの最も古い伝記には、『自伝』、直弟子のケドゥプジェ(1385-1438)の一般的な伝記『信仰入門』と神秘体験を綴ったンカ『秘密の伝記』、それに対する補遺として書かれたジャンペルギャムツォ(1356-1428)の『ツォンカパ伝補遺』他2篇がある。本研究課題では、これらの伝記の和訳研究を通じて、文献学、歴史学、仏教学の視点からツォンカパの思想形成や当時の教団の具体的な姿などを明らかにした。これらの伝記の成立順も確定することができた。まず最初に『自伝』が書かれて、ツォンカパの学習過程が修学期間、思想形成期間、講説期間という三つの期間に分けるパターンが確立した。ケドゥプジェの『信仰入門』が書かれ、次に同じく『秘密の伝記』が書かれ、それらを踏まえて『ツォンカパ伝補遺』が書かれた。その大部分はツォンカパ在世時に書かれたが、ツォンカパの死後『信仰入門』の最後にその様子が付け加えられたと推定される。また、ツォンカパの著作の全てのコロフォンを整理した。そこには、著作年次はほとんど見られないが、著作場所が記されていることが多く、また『信仰入門』にはツォンカパの場所の移動が細かく記されているので、それらを対照することで、多くの著作の著作年次または著作順序を明らかにすることができた。本研究課題の成果として、報告書において『自伝』、『秘密の伝記』、『補遺』の訳注と『信仰入門』の梗概を収録した。『信仰入門』全体の訳注は後日、その他の資料も含めて刊行予定である。
著者
箸本 健二
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、地方都市の中心市街地活性化が直面する諸問題のうち、(1)郊外型SCへの行政の対応、(2)ホームページを用いた情報発信、(3)タウンマネジメントをめぐるセクタ間の対立を検討した。(1)については、群馬県太田市と栃木県佐野市を対象とした分析を行い、消費の流失を阻止すると同時に、税収と雇用の確保するため、大規模モールの進出を自治体が事実上「誘致」している点を指摘した。(2)については、大阪市42商店街の34サイトを分析し、買回り品を中心とする商店街が広域情報発信や電子商取引機能を重視するのに対して、最寄り品を中心とする近隣型商店街は地域情報の発信機能を重視すること、自治体のIT対応補助金が導入時期を規定していることなどを明らかにした。(3)については、広島県呉市で実態調査を行い、専任のTMを常駐させることが、新規創業者の定着に大きな効果を持つこと、既得権者である旧来の商業者との調整を図る機関が必要であること等を指摘した。
著者
朴 正洙
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、近年日系企業の課題となっている反日感情の重要性と実態について、敵対心と消費者エスノセントリズム研究を踏まえたうえ仮説モデルを構築し、日本の主要輸出相手国(アメリカ・中国・韓国・台湾)の消費者を対象に大規模な国際比較調査を実施した。その主要な研究成果として、反日感情に関連した諸概念の再構築が行われるとともに、日本の主要輸出相手国の消費者観点から反日感情の実態確認、そして反日感情モデルの信頼性と妥当性をアメリカ・中国・韓国・台湾の消費者を対象に検証したことによって、反日感情のメカニズムが明らかにされた。
著者
園田 茂人 菱田 雅晴
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2004

最終年度にあたる2007年度は、従来の研究成果を取りまとめ、対外的な発信を行うことに最大のエネルギーを払った。たとえば、中国社会学会第17回全国大会で"Two Types of Urban New Middle Classes in Confucian Asia?"と題する発表をし、アジア内部における中間層の2類型論を展開するとともに、今回のプロジェクトで得られた2時点データを利用して、東北大学の不平等研究拠点が主催したシンポジウムで"Social Inequality and Injustice in Developing China:Some Empirical Observations"と題する発表を行った。また、11月2日には、中国の4都市で調査を担当した海外共同研究者4名を招聘し(上海大学の仇立平氏が都合で来日できなかったため、代わりに胡申生氏を招聘した)、早稲田大学現代中国研究所と共催で国際シンポジウム「中国の階層変動と都市ガバナンス」を開催、日本の中国研究者も含めて討論を行った。これらの作業を通じて、最終的に確認できた現代中国の階層変動に関する知見は以下の通り。(1)前回調査からも、学歴別にみた月収は格差が拡大している。また、収入格差に対して不公平だとする評価が高まっており、これが全体の社会的不公平感を強めている。(2)しかし、学歴が社会的不平等を生み出しているという認識は強くなく、教育機会をめぐる不平等以上に、教育達成のもつ公平性・健全性が強く意識されている。(3)富裕層は、1990年代の外資系企業・私営企業といった周辺セクターから2000年代の国家機関・国有事業体へとシフトしており、発展の「体制内化」が急激に進んでいる。そのため、学歴(文化資本)、権力(政治資本)、収入(経済資本)の独占状態が生まれつつあり、従来の社会主義体制を否定する力学が生まれている。
著者
野坂 和夫
出版者
早稲田大学
雑誌
産業経営 (ISSN:02864428)
巻号頁・発行日
vol.36, pp.71-81, 2004-12-15

会計の2005年問題の中で,日本企業にとって最も大きな問題となるのは,業績報告であろう。現在,IASBから提案されている業績報告の基本様式には,日本基準に存在する当期純利益の項目が存在しないからである。したがって,IFRSと日本基準との間には,業績報告における利益概念に大きな相違が存在する。このような会計環境に鑑みて,本稿では,業績報告における利益概念を考察する。具体的に,業績報告における利益概念が備えるべき機能を,投資家に対して投資意思決定に有用な情報を提供するという「意思決定有用性」,投資家に対して利益配当に関する情報を提供するという「配当可能性」,および,経営者が企業内容開示責任を負い投資家が投資意思決定について自己責任を負うという,証券市場での責任分担原則を維持する「業績報告と企業評価の区分明確化」の三機能に区分して,業績報告における利益概念を考察する。
著者
小原 啓義 森崎 正人 片岡 朋子 片岡 裕
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1995

本研究は第1に、ネットワーク・ワイドなMulti-Window Systemsに対応し、それらを国際化する機能モジュール群、すなわち、全文字コードの混在入出力、文字コード非依存の全文字コード混在テキスト処理、ISO 2022/6429を越える通信、Outline Fonts処理、実用に耐える速度と処理能力を持った実用システムとして開発すること目的とする。第2に、これらのモジュール群にMulti-Window SystemsやOSに依存しない高い移植性を持たせ、各種window Systemsに移植し、リアルタイム機能に対応する本格的な国際化マルチ・メディアの基礎ツールとしての実証と、実用システムとしての検証を目的とした。実際の研究としては、まず、全世界の文字の構造と情報交換用文字コードの調査と分類を行った。その結果、文字コードから、処理対象としての文字、文字から表示の二段階の変換を行うことによって、文字コードポイント数、文字、図形数が一致しない、現実の文字列の処理が可能となった。これをもとに、全世界の文字の混在が可能な、入力、出力、基本文書編集(挿入、削除、検索等)及び通信の各モジュール並びにOSへの移植用ライブラリーを作成することを目標として研究と開発を進めた。その結果、POSIXオペレーティング・システムとX Window Systemのスーパーセットとして動作するモジュール群を開発した。既開発の要素技術を基に、既に作成したフォントを用いての、国際化X Window System・ライブラリを開発した。文字コードの規格が存在しない歴史的文字を含む文字対応への検証のため、蒙古系文字群のコード化とフォントの作成を行なった。さらに、結合音節文字の一文字決定のルールを明確にした。その結果、高速な動作が実証され、地域化・国際化・多言語化の明確な定義とその統一モデルが得られた。さらに、蒙古系文字群への対応によって、歴史的文字を含め、適応範囲の広さと実用性を実証した。
著者
前田 清司 樽味 孝 田中 喜代次 山縣 邦弘 小崎 恵生
出版者
早稲田大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2019-06-28

継続的な高強度の持久性運動トレーニングは、身体(臓器)に様々な構造的・機能的な適応を引き起こす(スポーツ心臓など)。しかし、日頃から高強度の持久性運動トレーニングを実施している持久性アスリートの腎臓について詳しく調べた研究はこれまでに存在せず、高強度持久性運動トレーニングが腎臓にとって“善”か“悪”かは不明である。そこで本研究では、高強度持久性運動トレーニングに伴う腎臓の生理的適応を核磁気共鳴画像法(MRI: magnetic resonance imaging)を用いて探索することを目的とし、「スポーツ腎臓」という新しい概念を提唱することを目指す。
著者
田中 一成
出版者
早稲田大学
雑誌
戦略的な研究開発の推進 創発的研究支援事業
巻号頁・発行日
2021

ニューラルネットワークは世界的に利用が進んでいる機械学習のベースとなる構造で、関数近似手法としても注目されています。本研究では反応拡散モデルと呼ばれる微分方程式を主な対象として、その効率的な精度保証法の開発にニューラルネットワークをベースとした手法で挑みます。これを通じてLearn and Verifyという新スタンダードを創出し、精度保証付きニューラルネットワーク数値計算としての普及を目指します。
著者
菊山 榮 岩田 武男 豊田 ふみよ 石居 進
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2000

我々は主としてアカハライモリ(Cynops pyrrohogaster)の生殖行動に関与するホルモンおよびフェロモンの同定、およびはたらきに的をしぼって研究を行った。その結果以下のような結果を得た。生殖期に雄イモリは生殖可能な雌イモリの前で尾をさかんに振りフェロモン(ソデフリン)を放出し、精子塊を放出してそれを雌の総排泄口よりとり込ませて体内受精をさせる。尾をさかんに振る行動はプロラクチン(PRL)とアンドロゲンでひきおこされることがわかった。この場合PRLは中枢、おそらくpreoptic recess organおよび/またはnucleus infundiblaris dorsalisに作用することが脳室内投与およびプロラクチン受容体の免疫組織学的研究より明らかになった。一方アルギニンヴァソトシン(AVT)は上記求愛行動の発現をたかめることが明らかにされた。この場合AVTはVlaレセプターを介することが薬理学的実験からわかった。一方イモリの求愛フェロモン(ソデフリン)には前駆体タンパクが存在することがソデフリンをコードするcDNAのクローニングによりわかった。更にこのタンパクのmRNAレベルはPRLとアンドロゲンによりたかめられることもわかった。一方雌のソデフリンに対する反応に関する研究では、ソデフリンは主として雌の鋤鼻上皮で受容されること、ソデフリンに対する雌の鋤鼻上皮の反応性はPRLとエストロゲンにより支えられていること、雄鋤鼻上皮も上記ホルモンによって反応性がたかまるが雌のそれにくらべてはるかに低いことが明らかにされた。アカハライモリと同族異種のシリケンイモリ(C.ensicauda)雄もソデフリンに相当する10箇のアミノ酸残基よりなるペプチドフェロモン(シリフリン)を有することがわかった。しかし両フェロモンはそれぞれ同種の雌にしか有効でなく、種特異性があり、おそらくこれが生殖隔離に寄与していることが示唆された。今後フェロモン受容体の特定をめざす。
著者
青柳 健隆 Aoyagi Kenryu
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
2015

早大学位記番号:新6837
著者
小林 良枝 Kobayashi Yoshie
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
2014

早大学位記番号:新6757
著者
田原 加奈子 Tabaru Kanako
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
2023

早大学位記番号:新9324
著者
甲斐 温子 Kai Atsuko
出版者
早稲田大学
巻号頁・発行日
2023

早大学位記番号:新9230
著者
広瀬 統一
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2023-04-01

本研究は、スポーツ活動中に好発するハムストリング肉離れの再発予防のために開発された傾斜台を用いて行う「インクライン・ノルディックハムストリングエクササイズ(NHE)」の予防効果に関する学術的基盤の構築を目的とする。そのため、ハムストリング、特に大腿二頭筋の肉離れ既往者を対象にして、本プログラム実施中の①両側・片脚実施時の筋活動の健側差、②エクササイズ介入後のスプリント中の筋の振る舞いと動作変化、③肉離れの再発予防効果の3つの課題を検討する。
著者
木村 智哉
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2012-08-31

調査対象となるアニメーション専門誌のうち、徳間書店の『アニメージュ』誌については、個人蔵資料である81年分までを、編集スタッフからの示唆もあり、新たに入手した『BEST OF アニメージュ 20TH』(1998年)の記事総覧をもとに精読した。東映動画の韓国企業への発注開始に関する記事をはじめ、多くのスタジオ史にまつわり資料を確認することができた。以降の号については、演劇博物館図書室所蔵資料を用いる予定であったが、同館所蔵分が利用者の少なさのため別置作業に入ってしまったことで、今年度は閲覧することができなかった。また、同じく個人蔵資料である、すばる書房およびブロンズ社の『月刊アニメーション』誌については、精読に加えて一部記事の一覧化に着手した。角川書店の『Newtype』誌については演劇博物館所蔵分を閲覧した。ほか、近代映画社『ジ・アニメ』、秋田書店『マイアニメ』、みのり書房『月刊OUT』、ラポート『アニメック』、ファントーシュ編集室の『ファントーシュ』の5誌について、古書市場を通して入手。研究補助者の協力を得て、精読と該当記事の一覧化を行った。『ジ・アニメ』誌は、1980年の創刊4号以降、85年11月号までチェックを行っている。ただし欠号が多いため、今後それを補う必要がある。『マイアニメ』誌は81年の創刊から84年までの数号に留まったが、各種スタッフインタビュー欄の存在を確認できている。『月刊OUT』誌は78年の創刊から84年分までのほぼすべての号の一覧化を行った。『アニメック』誌は、79年の創刊7号以降、87年の休刊まで、ほぼ全ての号の一覧化を果たした。また、『ファントーシュ』誌はすべての号を一覧化した。また、神戸映画資料館や京都国際マンガミュージアムで所蔵資料調査と関係者聞き取りを行ったほか、一部の成果に関して執筆した論文の英訳を行い、現在審査中である。