著者
長谷 正人
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

山田太一のさまざまな作品を映像作品として見直し、さらに山田太一氏本人や関係者へのインタビューも行って、70年代から80年代にかけての日本のテレビドラマがどのようにしてポストモダン的なイメージ社会を準備し、そしていかにそれを「後衛」の視点から批判したかを明らかにした。
著者
高屋 亜希
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本年度は本研究課題を行う最終年度にあたり、研究成果報告書『21世紀中国大衆消費社会における文学現象の研究』を刊行した。また21世紀以降の同時代中国における文化・社会現象について、広範な見取り図となる基礎研究資料『Chinese Culture Review(中国文化総覧)』vol.4を翻訳・出版した。現在、 vol.5の翻訳作業を進めており、今後もこの分野の研究情報プラットフォーム構築に努める予定である。本研究課題では、急激な大衆消費社会化が進行する21世紀中国で、文学というジャンルがどう意味づけを変え、他のジャンルや海外文化とどう関連しているかを調査し、研究を行ってきた。本年度は市場化が本格化した1990年代以降、市場を利用しながら若者サブカルチャーをリードしてきた、1970年代生まれの世代が果した文化的役割について考察した。その具体的研究の成果として、「慕容雪村『成都よ、今夜は俺を忘れてくれ』試論」および「「七〇后」とボヘミアン幻想の終焉」の論文2本を発表した。それ以前には社会主義体制を支える一員として、その社会的役割が国によって決められ固定されていた状況が、市場化とともに個人の意志で、転職など社会的役割を変えることが1990年代半ばから可能になった。こうした社会変化を背景に、当時、20歳代だった1970年代生まれの若者がビート文学や海外サブカルチャーなどを参照しながら、例えばバックパック旅行など、自由な移動に強い志向を持つ若者カルチャーを形成してきた経緯、およびそれらがインターネットの普及と結びつくことによって、1990年代末から21世紀初頭にかけて、アングラから一気に社会の表層に躍りでてきた、文化現象の一端が明らかになった。
著者
砂岡 和子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

東アジアにおける複言語コミュニケーションの実態調査とその実践例を、日本語・中国語による遠隔ビデオ討論場面から収集し、データベースを構築した。データベース基づいて定量・定性分析を行い、複言語コミュニケーションのメカニズムを分析した。有効性が検証できた実践例を教育用サイトに組み込み、複言語使用の外国語教育に役立てた。複言語コミュニケーションの未来を展望するシンポジウムをJACET と共催し、東アジアにおける複言語交流の普及を呼びかけた。
著者
大泊 厳
出版者
早稲田大学
雑誌
一般研究(B)
巻号頁・発行日
1986

半導体/絶縁膜界面評価手段として、結晶模型を作り評価することを提唱した。この結晶模型は原子を表す球と結合を表す棒によって構成されたものである。さらにこのモデルからの座標をコンピュータに入力し、Keatingエネルギーを用いてエネルギー緩和を行う。界面を評価するには、界面部分の模型を作成し、界面を構成する原子のKeatingポテンシャルの大きさから評価を行う。まず(100)(110)(111)などの低指数面を界面とした場合の評価の結果、(111),(110),(100)の順にエネルギーが低くまた安定であることが明らかとなった。また(100)面を界面とする場合何通りかの界面の形状を変化させて評価したところ(111)面で囲まれたピラミッド状の界面が安定であり、XPSでの結果も説明することができることから、この界面形状に近い形をしていることがわかった。次に分子軌道法の一種であるDV-Xa法を用いて界面の評価を行った。それによれば界面を構成する原子の各軌道のエネルギーが求まり、界面の酸化反応を電子論的立場から考察することができる。この結果、酸化反応は界面からではなく結晶内部から起こることがわかった。最後に横方向固相成長法によるSOI構造では絶縁膜上に半導体結晶を形勢するため、酸化による界面とは違った性質の界面となる。成長先端ではc-Si,a-Si,a-SiO_2の三相境界となるが、ここでの各原子のひずみポテンシャルから、微小双晶の発生が説明できる。また界面に微小双晶が発生することも(111)面が安定であることから説明できる。さらに、絶縁膜としてSiNを用いたい為である。これは結晶模型からの評価と一致する結論である。以上のように結晶模型による解析と実際観測される結果が一致することから、モデルによる解析の妥当性が示された。
著者
鶴田 利郎
出版者
早稲田大学
雑誌
研究活動スタート支援
巻号頁・発行日
2014-08-29

本研究は、高校生に見られやすいインターネット依存の依存的な意識や行動などの特徴を改善するための効果的な教育方法を提案することを目的としたものである。そのために、高校生のインターネット依存を改善することを目的とした単元を開発し、首都圏内の高校において授業実践を実施し、実践を通した生徒の依存傾向の変化に関する調査等の分析を行うことによって効果的な教育方法を検討した。その結果、「R-PDCAサイクルの活動を継続的に行うこと」、「インターネット環境への適応を促す教育活動を継続的に行うこと」、「生徒同士がネット利用のあり方について本音で話し合う機会を設けること」などが効果的な方法として考えられた。
著者
上田 学
出版者
早稲田大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究は、日本映画の特性を理解するために、データベース等のデジタルヒューマニティーズの研究方法を取り入れながら、日本の都市における、無声映画期の映画館の興行形態を明らかにしようとした基礎研究である。本研究を通じて、映画草創期における東京と京都の映画の興行形態に差異が生じていたことや、それが歌舞伎や新派劇等の演劇との関係性の違いに因っていたことが明らかになった。これらの研究成果を、単行本の刊行や国際学会の口頭発表等によって、学術的に発信した。
著者
阿藤 誠 津谷 典子 福田 亘孝 西岡 八郎 岩間 暁子 田渕 六郎 星 敦士 菅 桂太 中川 雅貴
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、国連欧州経済委員会により組織された「世代とジェンダー・プロジェクト(GGP)」に参加し、各国共通のパネル調査(GGS)を実施し、各国共通枠組みに従って社会経済・家族政策等に関する時系列データを収集することによって、日本の少子化の背景要因を比較分析し、少子化是正のためには、仕事と子育ての両立支援、長時間労働慣行の是正、若者の非正規労働化の是正、子育ての経済支援が有効であるとの結論をえた。
著者
瀬川 至朗 中村 理 山田 耕 桶田 敦 千葉 涼 于 海春
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

東日本大震災に伴う福島第一原発事故の初期段階について「事故の実態」「日本政府記者会見(東京電力を含む)」「全国紙の報道」という三者の関係性を分析した。「炉心溶融」に絞り、量的かつ質的に分析したところ、全体として、炉心溶融の実態を政府記者会見が過小に評価し、その記者会見を踏襲した形で報道される傾向がみられた。また、隣国である中国の新聞は当時、記事の情報源として日本のメディア報道を採用していた。本研究では日本政府記者会見をテキスト化しFUKUSHIMA STUDYのサイトで公開した。この会見テキストを用い、記者会見における記者の積極性や記者会見と新聞報道の連動性について、より詳細な分析を実施した。
著者
瀬戸 直彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

フランス中世(オック語)の抒情詩における写本テクスト学(複数の写本により伝えられるヴァリアントを本文校訂のさいにいかに扱うべきか,そしてそれが解釈にどう関わるのか)と,そのさいの電子データベースの応用について,マルカブリュのテクストを中心に考察を加えた。成果として2012 年6 月の第10 回オック語オック文学研究国際学会において,マルカブリュの2 作品のテクスト校訂と解釈につき発表をおこない,フォルケ・ド・マルセイユの校訂につき,従来の校訂における問題点と「イタリア学派」に属するスキラチョーティ氏による校訂の新しい方法論を確認して,2013 年3 月に同志社大学における「ロマニスト研究会」の発表でまとめてみた。
著者
菊池 馨実 福島 豪 中川 純 上山 泰 菅 冨美枝 小西 啓文 尾形 健 川島 聡 今川 奈緒 永野 仁美 新田 秀樹 長谷川 珠子 長谷川 聡
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

研究者各自による研究論文の発表に加えて、4度にわたる公開シンポジウムの開催、3度に及ぶ学術雑誌での特集論文の掲載、さらに刊行が確定している論文集と教科書の出版などを通じて、日本における障害者法学の構築に向けた基盤をつくることができた。
著者
浅倉 むつ子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

研究成果の概要:雇用分野における複合差別禁止法理が有する差別の是正・救済可能性を明らかにするために、近年のイギリス、EU、日本の雇用差別をめぐる立法動向と判例法理について研究した。これら一連の研究から、イギリスの2010年平等法が各種の差別是正について効果をあげていること、日本にも存在するマイノリティ女性の複合的差別状況の解決を図る方法としては包括的差別禁止立法の構想が重要であることが明らかになった。
著者
上杉 繁 玉地 雅浩
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

片麻痺患者における動作の不自由さの理解を手助けする教育ツールを目指し,健常者において非侵襲かつ安全に片麻痺患者の擬似体験をするための方法とその活用に関する研究に取り組んだ.特に片麻痺歩行に焦点を当て,多くの患者が体験している,下肢を動かそうとしても動かない,勝手に動いてしまうなどの,感じている・イメージしている下肢の動きと,実際の物理的な下肢の動きとの間に齟齬が生じてしまう体験に着目した.そして,このようなずれを体験させるため,運動錯覚と反射運動を生じさせ,さらには変動する負荷を付与するという方法を考案し,体験ツールを開発した.さらに,歩行動作への影響について調査を行い,装置体験会を実施した.
著者
橋本 周司 松島 俊明
出版者
早稲田大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1994

過去2年間の研究により、右手による指揮棒の動きおよびデータグローブにより入力される右手の動きによって、音楽演奏を制御するシステムはほぼ完成している。また、発生する音響の音色をジェスチャーのよって実時間で制御する基礎実験を終了している。本年度の主な成果は以下のとおりである。1.これまでに開発した音響制御システムを改良し、基本周波数、振幅、倍音の振幅、スペクトル分布などを任意に実時間で指定できる音響発生システムを作成し、ジェスチャーによりこれを制御するシステムを感性させた。2.FM音源のパラメーターを遺伝的アルゴリズムで最適化する対話型の音色生成システムを作製し、喜び、悲しみ、怒り、嫌悪などを表す音色の音源パラメータの主成分分析を行い、2次元感性空間での関係を調べた。3.画像処理でのジェスチャー解析を行うと共に、新たに加速度センサーを用いた手振りの自動解析を試み、指揮の動作および音楽演奏における感情表現の自動認識についての知見を得た。4.ニューラルネットを用いて、ジェスチャーと音響の対応付けを行い、接続係数によってジェスチャーと音響の感性的な意味での変換関係の定式化を試みた。5.作製したシステムの演奏家および作曲家による評価については、現在予備的な実験を終了し、本格的な実験を計画中である。
著者
森 元孝
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、現象としての「東京都知事石原慎太郎」を経験的データにより再構成することにある。このために、(1)知事についてのイメージ変数(非政治的領域)、(2)同(政治的領域)、(3)オリンピック招致について形成されるイメージ、(4)都市東京についてのイメージ、(5)日本の政治状況(国政および地方選挙をめぐるイメージ)を諸変数に質問紙を設計。平成21年から23年度まで計6回インターネットによるパネル調査実施。時点比較可能なデータを収集した。これをもとに、現象としての「東京都知事石原慎太郎」という研究書をまとめている。
著者
金井 景子
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究は、朗読を用いて中等教育国語科の授業を活性させるためのプログラムとそれを実践し得る教員を養成するためのプログラムの作成を目的とするものである。開発したプログラムは以下の通りである。(1)中等教育国語科の授業を活性させるためのプログラム(1)近現代の詩歌教育に関するプログラムの開発・実践(2)古典教育に関するプログラムの開発・実践(3)国語科発信の総合学習向けプログラムの開発(2)教員養成のためのプログラム(1)教職関連科目における朗読指導の学習プログラムの開発・実践(2)教職関連科目における「落語」を使用した学習プログラムの開発上記のプログラムはすべて、早稲田大学の教職関連科目「中等教育国語科インターンシップ」および「授業技術演習C」において実施されている。
著者
野村 雅昭 Patricia Welch
出版者
早稲田大学
雑誌
早稲田大学日本語研究教育センター紀要 (ISSN:0915440X)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.59-88, 1996-03-31

フレーム理論とは, 人工知能, 心理学, 言語学などの分野で近年研究が盛んになった概念である.人間の行動における認識の枠組みとでもいうべきもので, 「予想の力」などと言われることもある.言語学では, 談話分析に応用されることが多い.小稿では, この理論を用いて落語を談話としてとらえ, そのユーモアが生じる過程を分析することを目的とする.「長屋の花見」は, 大家が貧乏長屋の店子を連れて花見に出かけるというだけの単純なストーリーからなるが, きわめてクスグリ(笑いを起こさせるための手法)に富んだ落語である.その笑いの多くは, 大家と店子との対話から生まれる.それは, それぞれの持つフレームの対立によってもたらされる.すなわち, 金持ち/貧乏, 生/死, ごちそう/粗食, などの対立するフレームがそこから取り出される,その食い違いが笑いの誘因とデなっている.それらをまとめると, この落語は正常と異常の7レームの対立を軸としていることがわかる.そして, 特に<有り得る/有り得ない>という対立が全体を通して存在する.大家は<有り得る>世界の代表者であり, 店子はしばしば<有り得ない>世界に飛び出してしまう.そこに対立が生まれ, ユーモアが生じることになる.このような方法は, そのほかの落語の分析にも有効だと考えられる.
著者
田中 愛治 河野 勝 清水 和巳 山田 真裕 渡部 幹 西澤 由隆 栗山 浩一 久米 郁男 西澤 由隆 長谷川 真理子 船木 由喜彦 品田 裕 栗山 浩一 福元 健太郎 今井 亮佑 日野 愛郎 飯田 健
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2006

本研究では、全国の有権者から無作為抽出した対象者(サンプル)に対し、ノート・パソコンを用いた世論調査(CASI方式)を日本で初めて実施した。さらに、ノート・パソコンによるCASI調査に、認知心理学的視点を加えた政治経済学実験の要素を組み込み、実験を導入した世界初のCASI方式全国世論調査に成功した。これにより、政治変動をもたらす日本人の意志決定のメカニズムの解明を可能にし得る新たな研究を踏み出した。
著者
油布 佐和子 越智 康詞 紅林 伸幸 中澤 渉 川村 光 山田 真紀
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究は、今世紀に入って加速的に進行した新自由主義的な教育改革が教職に及ぼす影響を分析することを目的としている。15年間の時系列調査を分析した結果、教職観や役割認識などに変容が見られ、教師が「組織の一員としての教師」への志向性を強めていることが明らかになった。しかしながらこれを、新自由主義的な理念への賛同と解釈するのは妥当ではない。そうではなくて、外部に見えにくく理解されがたい<教師という仕事>を、新自由主義的教育改革が可視化する側面を持っていることによるものではないかと推測された。
著者
山本 浩司 浜崎 桂子 福岡 麻子 RUPRECHTER Walter 山口 庸子 馬場 浩平 羽根 礼華 古矢 晋一 クリスティーネ イヴァノヴィッチ
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

「翻訳」による「文化変容」論を批判的に検討するなかで、オリジナルとコピーという形での序列化を免れた「同時性」(Simultaneitat)という現象に着目した。学際的な文化研究の成果を踏まえた多角的な視点に立ちつつ、メディア間については、主に絵画・映像表現と言語芸術の相互作用の分析、言語文化間については、特に日独文化交流の通時的共時的分析を通じて、「翻訳」を理解する上で「同時性」概念が有効であることが明らかになった。