著者
原田 優也 Falguera Norris Z.
出版者
沖縄国際大学
雑誌
産業情報論集 (ISSN:18801927)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.79-95, 2008-03

本論文はフィリピンのカジノ経営、観光産業、および国家財政の関連性について調査分析したものである。フィリピンでは、カジノ経営は国家管理体制のもと営まれており、カジノ売上から得られる税収入を経済開発や社会開発の主要財源として配分している。観光産業とカジノ・ゲーミング経営との相互依存性について分析する。次に、カジノ関連産業の税収と国家収入との関連性について分析する。最後に、フィリピン政府が設立したフィリピン・アミューズメント・ゲーミング・コーポレーション(PAGCOR)の活動と展開過程について概観する。分析は各種白書や報告書のほかに、PAGCOR代表者などカジノ経営の「キーパーソン」へのインタビューから得られた情報を使用する。
著者
喜屋武 昌健
出版者
沖縄国際大学
雑誌
産業総合研究 (ISSN:13405497)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.67-79, 2008-03

沖縄本島の市町村レベルの分析において、第3次産業と所得水準との間ではやや強い正の相関が見られ、逆に第1次産業ではやや弱い負の相関が見られた。次に、第1次産業と失業率との間ではやや弱い負の相関が見られ、逆に第3次産業では非常に弱い正の相関が見られた。つまり、第1次産業の割合の大きい地域では所得水準は低いが失業率も低く(失業者が少なく)、第3次産業の割合の大きい地域では所得水準は高いが失業率も高い(失業者が多い)傾向があるという知見が得られた。
著者
片本 恵利
出版者
沖縄国際大学
雑誌
沖縄国際大学人間福祉研究 (ISSN:13483463)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.37-53, 2005-03-31

わが国の大学における心理査定に関する教育は、これまで実施法・解釈法その他の概説のあとひたすら実践するという方法がとられてきた。この方法は、臨床心理士養成へのニーズの高まりや倫理面で問題をはらんでいる可能性がある。また初学者は、解説書に基づいて所見を作成する段階でつまずくことが多い。これらの問題に対応するために考えられた、筆者が作成した架空の樹木画作品の対提示を用いたバウムテストの解釈仮説の立て方の実習について報告し、初学者が、検査結果に主体的に関わりこころを動かしてアセスメントができるような、体験と解説書とを橋渡しする試みを考察した。この実習の特徴として以下の5点が挙げられる。(1)体験的に心理検査の成り立ちについて学習できる。(2)心理検査の解釈仮説の立て方を体験的に学習できる。(3)心理検査実施の基礎全般について体験的に学習できる。(4)筆者が描いた架空の描画作品を用いることで、学習に柔軟に活用できる。(5)受講者のレディネス、志向、授業時間によって学習内容を工夫できる。
著者
市川 智生 福士 由紀 平体 由美 星野 高徳 前田 勇樹 戸部 健 井上 弘樹 趙 菁
出版者
沖縄国際大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2020-04-01

本研究は、従来の医療社会史の中心的課題であった感染症対策ではなく、近代化の過程において健康とされる状態がどのように認識されてきたのか、すなわち「健康観」の歴史的解明を目標としている。日本(アイヌおよび琉球・沖縄を含む)、中国(上海、天津)、植民地統治期および戦後の台湾と朝鮮・韓国がその対象である。歴史資料の収集・検証とこれまでに利用してきた感染症関係資料の再検証をもとに、左記の地域を専門とする研究者が共同で歴史研究を実施する。政治、文化、社会経済、自然環境などに影響された多様な「健康観」形成の歴史を明らかにし、現代社会への継承のあり方まで特定する。
著者
大下 祥枝
出版者
沖縄国際大学
雑誌
沖縄国際大学総合学術研究紀要 (ISSN:13426419)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.1-78, 2001-10-31

1942年3月に映画『ランジエ公爵夫人』が公開された直後,ジャン・ジロドゥーはそのシナリオ集といえる作品『バルザック原作"ランジエ公爵夫人"のフィルム』を発表した。翻案を手掛けたジロドゥーが原作をいかに理解して映像化に至ったかを解明するために,シナリオ集を基軸にしながら小説と映画の比較検討を試みた。映画は,大粋において原作の筋の流れを踏襲しているといえる。しかし,主要な二つの場面で両者の間に大きな相違点が見いたされる。一つ目は,純粋な恋愛感情を弄んだとして,モンリヴォー将軍がアントワネット・ド・ランジエ公爵夫人に復讐する場面である。映画のなかでは舞踏会で繰り広げられる。大勢の人が見守るなか,彼らの友人も巻き込んだ応酬合戦が続く。原作と同様にシナリオ集とその手稿では,モンリヴォーが彼の家で夫人を一方的に激しく非難する設定になっており,台詞の内容も映画とかなり異なっている。主役を演じた役者と監督の要望で,映画にのみ見られる状況に変更されたと考えられる。二つ目は,テレーズ修道女となって身を隠していた公爵夫人を将軍が救出する箇所である。映画では修道院の中庭で展開し,テレーズ修道女がモンリヴォーの腕に抱かれ,膠朧とした意識のなかで彼の愛情を確認している。原作とかけ離れたこれらの場面については,数多くの批評が寄せられている。ジロドゥーの翻案の特徴は,まず第一に洗練された台詞をあげることができる。役者の巧みな台詞回しと相挨って,単語のひとつひとつが観客の耳に心地よく響くのである。第二に登場人物の多様さを指摘できる。貴族から庶民に至るまで,様々な階級の人物が主人公だちと言葉を交わし,物語の内容に深みを与えている。第三は音を効果的に使用していることである。モンリヴォーがアントワネットを見つけ出す手掛かりとして選んだのが彼女の歌声であり,その他,場面の展開と密接な関係を持つ種々の音色が選ばれている。早くから映画に関心を寄せていたジロドゥーは,独自の手法を駆使しながら,処女作であるこの翻案によって,彼自身が理解したバルザックの世界を銀幕上で描き,文学作品と映画の橋渡しを見事に果たしたといえる。[付記]本論は,パリXII大学に提出した学位請求論文の第4部第2章"De Balzac a Giraudoux"に加筆・修正を施して仕上げたものである。
著者
李 イニッド
出版者
沖縄国際大学
雑誌
沖縄国際大学外国語研究 (ISSN:1343070X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.D1-111, 2008-03

Teachers' questions constitute a major part of classroom discourse and have attracted particular attention in second language acquisition. This paper presents a quantitative-qualitative study of the questioning behavior of two co-teachers in a Chinese as a second language (CSL, Mandarin) classroom through non-participant observation. The study shows that display questions were asked far more frequently than referential questions and an equal number of referential questions were addressed to the students and exchanged between the co-teachers. Although both teachers were capable of asking questions and formulating them in both the L1 and L2, their questioning frequency and language choice distinguished the different roles they constructed for themselves in the classroom. Four conclusions are drawn: (1) display and referential questions are equally important in engaging students in the learning process and facilitating teacher-student interaction; (2) the use of the L1 is conducive to language learning; (3) team-teaching allows more flexibility for teacher questioning; and (4) the exchange of referential questions and responses between the co-teachers helps the students experience how the L2 is contextualized in the real world.