著者
服部 進 小野 徹
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

この研究の目的は平成13年から15年の3年間で,トンネルや斜面の変位を検知し,あるいは橋梁部材のような大きな構造物の変形を計測できるディジタル写真測量システムを開発することであった.システムの実現のために下記の課題を研究し,ほぼ当初の目的を達成した.以下研究結果の概要である.1.計測精度の向上-ディジタルカメラの低い解像度でトータルステーションの観測精度を実現するため,ターゲット,撮影法,画像座標計測法の改良を進め,10mで400μm以内の誤差の3次元精度を得た.2.計測速度の向上-100点の計測点,30枚の画像で1時間以内の計測を達成するため,画像点の自動ラベル付け,コードをつけたターゲットの開発,高速の調整計算法などを開発した.3.網設計の研究-計測は観測の網を作って精度を向上させるため,最適な網の設計が重要であった.ZODと呼ぶ基準形の問題を解決するとともに,変位検知のためのFOD(観測形態の最適化),SOD(観測の重みの最適化)を研究した.4.実用性の向上-トンネル,橋梁部材,コンクリート歪試験,斜面模型などの計測を通して,実用性を向上させた.5.遠方監視法-遠方の岩盤変位を監視するためには,望遠カメラが必要である.このため正射投影変換法を考案し標定法やキャリブレーション法を研究した.
著者
堤 俊彦
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究の目的は,レアシンドロームであるプラダウイリー症候群(PWS)児の養育のプロセスにおける親や家族が経験する困難の理解と心理的援助のニーズを探ることであった。乳幼児から青年期のPWS児を持つ親を対象に,グループインタビューを行ない,子育ての過程で経験する困難や発達のプロセスを中心に聞き取りを行った。その結果,障害に起因するさまざまな問題への周囲の無理解により,親や家族は地域で孤立し,専門的な援助もないまま,同じ子を持つ親のサポートを頼りに,養育を行っている現実が明らかになった。より早期より専門家が関わり,親や家族に対する心理面の支援を含めた包括的支援システムの構築が急務な課題といえる。
著者
久保 卓哉
出版者
福山大学
雑誌
福山大学人間文化学部紀要
巻号頁・発行日
vol.5, pp.A37-A50, 2005-03-01

六朝の宮廷では七夕の宴が催され歌舞音曲とともに盛んに詩歌が作られた。宮廷での七夕詩を陳後主の場合を中心にして、西晋の皇太子と潘尼、陸機及び梁の武帝と任〓の七夕詩の特徴を明らかにする。
著者
石田 寛
出版者
福山大学
雑誌
福山大学経済学論集 (ISSN:02884542)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.38-66, 1990-11-25

私のレキシコンは「研究分野概要の表示」(第1部) と「辞書形式のレキシコン」(第2部) からなり、第二部は見出し語数約3千、第2次収録語 (第6次までを含んで) を合わせると約1.5万に及ぶ語彙を収録している。まずこれら収録語を第1部に示した類、部門、亜部門との関連から論ずる。新 (日本語) 訳語だけでなく新合成英語用語、新造英語をも提案している。そしてまた、私の仮説、新知見、主張を示す用語、分類 (狭義語NT)、用語階層 (TH) をも提案し、これらを中心に議論を展開している。見出し語を数えあげてまず驚くことは、クラスII (第2類) 人間領域ことに要因、クラスIII (第3類) 自然過程とくに有機領域に多いことである。私は長年、地理学にこだわらずに調査研究してきたつもりである。しかし、よくみるとそれらは人文地理学的方法とのかかわりの多い用語であることが分る。行動地理学の用語、自然的背景とくに地貌、有機領域の用語が多いことが知られ、私の研究はやはり地理学的あり、広義的には地域研究であったと改めてうなずかされる。農業地理、集落地理、文化地理の用語が多いのは、私の研究の反映として尤なことである。第2次収録語 (第2次、第3次以下全部を含む) 20以上を含み用語組織が整備されているものにだけをみる (第1図)と、第1位は農業 (15語)、第2位生活 (6語) となっており、十分納得できる。最も多段階に用語組織が整備充実している用語のなかに、牛 (cattle)、牝牛など放牧・山村関係のものが多い。私は日本の放牧山村の調査研究に取り組み、野草地放牧、耕牧輪換、刈跡放牧、作付強制、輪換放牧、薪炭林、村落共同体、蔓牛、系統牛、牧童、牛取引、牛小作などを鍵語として研究をすすめた。米、潅漑についても用語組織に注意を払った。そして19世紀から20世紀への移行時に、技術的・社会経済的変化・発展があり、小農民農業は資本主義的・個人主義的農業へと発展していったことを関連用語を示しながら論述している。もう一つ、新用語を提案収録し私の主張を全面に押し出したものに、農家区分がある。日本の官庁統計が採用している専業農家・兼業農家とその内訳に対して、次のごとく提案する。専業農家を大規模経済農家と低位雇用農家に二分し、兼業農家を農主兼業、農副兼業の外に、趣味農業家を入れて3つに分けることの必要性を強調する。これを見て分るように、用語の下位概念、狭義語 (NT) として何を採り入れるかは、レキシコン編纂者の見識が問われるところといえよう。魚・漁業用語 ; コミュニティ・村落用語 ; 近代化用語などの節 (本論文の) において、私が研究過程において重用した鍵語を提示し、批判を仰ぐことにしている。講義において、折にふれ、機会を捉えて、私は時局の論点と季節の課題を学生とともに考えることにしてる。それらについての用語的枠組、鍵語を示した。そしてまた、人生観・世界観について私が大切にしている用語を示し、私個人の処世・生活の関係の術語を示して結んでいる。このように、二ケ国語思考でレキシコン整備に自己実現の歓びを見出している次第である。さらなるご批正、ご協力を期待してやみません。
著者
兎本由香里 玉木健弘 日下部典子 玉木 健弘 日下部 典子
出版者
福山大学
雑誌
福山大学こころの健康相談室紀要 (ISSN:18815960)
巻号頁・発行日
no.4, pp.9-16, 2010

In this study, relationship between assertiveness and interpersonal stress of university students wasinveseigated, in order to explore the way to reduce their stress. Pareiciants were 56 university men and 53women. Interpersonal stress was measured by a questionnaire, and assertiveness was measured by bothquestionnaire and the projective test(P-F study). As a result of correlation analysis, negative correlation weresignificant (1) between "persuasive and negotiation" factor and "personal dislocation" factor ,and (2)"persuasive and negotiation" factor and "personal conflict" factor with men. It was suggested that skills ofpersuading and negotiating were effective to reduce stress of "personal conflict" and "personal wear-out". Next,the relationship between the personal stress and assertiveness measured by the P-F study was examined. Theresult that woman who strongly showed "ego defense" reaction felt much more personal stress than mansuggested that there would be a gender difference in interpersonal relationship strategy.
著者
板野 公一
出版者
福山大学
雑誌
福山大学附属内海生物資源研究所報告 (ISSN:09178147)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.1-11, 1996-12

ワムシの増殖を阻害するツリガネムシの駆除法について,ホルマリン,次亜塩素酸ソーダ,マラカイト・グリーンの3試薬および高塩分濃度海水を用い,それぞれの濃度を変化させて試験を行った。いずれの試験区においても短時間でワムシの増殖に影響を与えずツリガネムシを駆除することは困難であった。しかし,マラカイト・グリーンにおいては,低濃度および24時間の浸透で効果的な結果が得られた。最適試薬濃度は10〜20pp皿付近であった。
著者
塩見 浩人 中村 明弘 田村 豊
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

平成15年度〜平成16年度の2年間、「ハムスターの冬眠制御機構解明と低温負荷による生体侵襲に対する保護因子の同定」に関する研究を遂行し、以下の成果を得た。1.導入期の体温下降は、adenosineが前視床下部を中心とした内側視床下部のadenosine A1受容体を介し熱産生を抑制することにより惹起されることを明らかにした。Adenosine系による冬眠時の体温制御は体温下降開始27時間から30時間の間にopioid系に切り替わることも明らかにした。2.維持期(体温下降開始30時間以降)の低体温はμ1-opioid受容体を介する中枢opioid系により制御されていることを明らかにした。3.覚醒期の体温上昇はTRHが視索前野、背内側核を中心とした内側視床下部のTRH type-1受容体を介し、交感神経系を活性化することにより褐色脂肪組織における熱産生を亢進させて惹起されることを明らかにした。4.ラット初代培養大脳皮質ニューロンにおいて、低温処置によりアポトーシス様の神経細胞死が誘発されることを明らかにした。5.低温で処置すると冬眠動物のハムスターにおいても神経細胞死が発現した。6.アデノシンはA1、A2両受容体サブタイプを介して低温処置により誘発される神経細胞死に対して保護作用を発現することを明らかにした。7.モルヒネはμ、δ及びκ受容体を介して低温処置により誘発される神経細胞死に対して保護作用を発現することを明らかにした。8.ヒスタミンはH1受容体サブタイプを介して低温処置により誘発される神経細胞死に対して保護作用を発現することを明らかにした。9.セロトニンは低温処置により誘発される神経細胞死に対して保護作用を発現することを明らかにした。
著者
松本 正樹 松本 良樹 沖増 英治 雨村 明倫
出版者
福山大学
雑誌
福山大学附属内海生物資源研究所報告 (ISSN:09178147)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.1-10, 1991-10

マダイ,ヒラメ,アユ仔稚魚の餌料としてのワムシに光合成細菌の生菌,加熱死菌,圧力破壊菌をそれぞれ添加して飼育実験を行った結果,マダイでは光合成細菌の生菌,加熱死菌なちびに圧力破壊菌のすべてに成長促進,生残率向上の効果が認められた。アユについては加熱死菌添加の場合に成長促進,生残率向上の効果が認められたが,他の試験区は無添加区と変わらなかった。ヒラメでは飼育30日間において成長促進効果は認めちれなかったが,生菌,加熱死菌添加に生残率向上効果が認められた。

1 0 0 0 OA 宇品築港史 (5)

著者
高橋 衞
出版者
福山大学
雑誌
福山大学経済学論集 (ISSN:02884542)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-26, 2001-06
著者
澁谷 博孝 北村 千浪 大橋 一慶 石津 隆 スダルソノ リスワン パルトムアン シマンジュンタク
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

本学術調査は、インドネシアのバリ島及びロンボク島に生活するヒンズー教徒が伝承する、薬物治療に関する古文書「ウサダ・ロンタール」の実態調査を行い新しい天然薬物の発掘を指向するとともに、日本・インドネシア両国間の共同研究による学術交流における発展に寄与することを目的としている。バリ島及びロンボク島各地に散在している「ウサダ・ロンタール」の実態状況の把握のため、ヒンズー教徒の集落を訪ねるとともに、バリ島の北部のシンガラジャ市にある「ロンタール博物館」、及びロンボク島のマタラム市にある「西ヌサ・テンガラ州立博物館」のそれぞれの学芸員に協力を依頼し、「ウサダ・ロンタール」の保存状況を含めた実態を詳細に調査した。その結果、各地で重複する「ウサダ・ロンタール」の存在が明らかになるものの、これまで各研究機関が別個に情報収集を行ってきたために判らなかった「ウサダ・ロンタール」の全体像が明らかになり、所在を記した一覧表の作成を行うとともに、数種の復刻判を入手した。また、古代バリ語からインドネシア語への翻訳及び、インドネシア語から英語への翻訳を行い、数種のウサダ・ロンタールに関する翻訳資料を作成した。さらに、翻訳したウサダ・ロンタールに記述された薬用植物名と、現在バリ島に自生する植物との比較を、植物学及び民族学的な見地から同定するとともに、それらの用法について検討を行い、種々の知見を得た。
著者
福長 将仁 田淵 紀彦
出版者
福山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

動物ミトコンドリアゲノムは37 の遺伝子とひとつの制御領域から成っているものが多い。またこれらの遺伝子構成は比較的保存されていて大きな変化はない。しかしAcariformes に属するダニ類では遺伝子構成が再編されていることが我々の検索から明らかになったのでこの上目に属するダニ類を網羅的に検索、系統的関係を調べた。その結果この上目に分類されるダニ類においてミトコンドリアゲノムは独自の進化を遂げたことが推察された。
著者
五郎丸 毅
出版者
福山大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1992

重水素標識薬物のキャピラリーGCによる同位体分離法について検討した。分離条件を検討するためイソプロピルアンチピリン(IPA)の重水素標識体、1-phenyl-d_5、2-methyl-d_3、3-methyl-d_3、4-isopropyl-d_6、2-methyl-3-methyl-d_6、1-phenyl-3-methyl-d_8および3-methyl-4-isopropyl-d_9体を合成した。IPAと各重水素標識体のキャピラリーGCにおける分離は、標識重水素数及びカラムの絶対温度の逆数に比例して向上することが確認された。この現象はプロポホール(PF)、フェンタニル(FT)やアミノピリン(AM)等の薬物とその重水素標識体においても同様に認められ、一般に比較的低いカラム温度で測定が実施できる多重重水素標識体では、同位体分離法が適用できると予想される。また本分離法を同位体希釈分析に応用したところ、各薬物ともに標識体と非標識体との濃度比に比例するピーク面積比が得られ、直線性ならびに再現性に優れていることが認められ、高感度検出器を用いた場合にはpg-ngレベルでの定量性を示した。さらに各薬物投与後の血中濃度の測定を重水素標識体を内部標準として添加する方法で実施したところ、きわめて容易に再現性よく0.1ng/mlでの定量、あるいは抽出液を直接注入による定量が可能であることを認めた。さらにAMについては本方法によるクリアランスを指標とした肝機能の評価への応用を実施した。またFTについては手術時にFTの投与を受けた患者における血清濃度の測定を実施し、臨床条件におけるFTの動態を解析するのに必要な高感度測定が可能であることが認められた。