- 著者
-
太田 諭之
- 出版者
- 静岡大学
- 雑誌
- 奨励研究
- 巻号頁・発行日
- 2009
DTM(DeskTop Music)は,MIDI(Musical Instrument Digital Interface)によってコンピュータに音程(音高),音の長さ,音の大きさをユーザが指定して入力することにより音が発音され,曲を演奏する仕組みである。このDTMで楽曲を演奏させヴァイオリンの演奏者と合奏する事によりヴァイオリンの演奏者は定まった音程とリズムを習得することがより容易になるのではないかと考え,DTMを用いた演奏支援を提案した.ある楽曲をMIDIで演奏させた音と本物のヴァイオリンの音のFFT解析を行い,音の違いを調べた.実際の楽器G(ソ;開放弦)を弾いた波形は,スペクトログラム上の解析によりMIDI音源のヴァイオリン音に比べて倍音がより多く出ていて,音色が豊かである事が分かった.ヴァイオリンの個人レッスンを受けて1年の筆者(2010年04月現在)は,過去に一度も演奏していない楽曲をDTMで演奏させ,一通り聴いてパソコンの演奏と合わせた時とDTMを全く用いない練習において楽曲の演奏の習熟度に違いが見られるか実験を行った.録音機と再生機(ヘッドフォン)は,音楽業界でモニタとして使用される事が多い機器を使用し,音質に考慮した.それにより,実際の楽器とMIDIで発せられた楽器音を,厳密に比較し練習の際に注意すべき点と活用できる点を調べた.MIDIを用いた時と用いないときのヴァイオリン奏者の演奏を,短い曲で一フレーズを弾き,音程をFFTで分析する.又,テンポをMIDIの演奏とずれていないか,FFT解析を利用してチェックした.実験結果は,MIDIの伴奏及び主旋律の演奏支援に並行して,練習の回数を重ねていくと音程とテンポの改善が見られた.模範演奏を1回演奏前に聴くとテンポの間違いが少なくなった.音程の高低を録音で聴き直すと改めてよく分かり次回の練習の課題とした.更に,演奏時にピアノの伴奏が有ると,音をイメージしやすくて楽器を弾きやすく音程とテンポの乱れが,伴奏なしの練習よりも改善された.一方で,シーケンスソフト(パソコンで楽譜を表示させるソフト)を用いるときは,通常の楽譜に記載されている強弱記号や発想記号などが表示されないので練習する際,注意が必要である.今回の実験に対する,プロヴァイオリニストニストのご意見を頂戴した.「初心者の演奏者には使用できる方法ではないか」とのことです.今後,筆者はこのDTMを用いた演奏家支援でアマチュア・オーケストラでの楽曲演奏に応用できるか引き続き,検証を行っていく予定である.