著者
川人 祥二
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、極短時間の光の変化を画素単位で捉える排出制御型電荷変調素子 DOM (Draining Only Modulator)を用いた高時間分解撮像デバイスとバイオイメージング、 超高分解能 3 次元計測への応用について研究を行った。DOM 素子を用いて試作した蛍光寿命イメージセンサにより 2.5ns と 10ns の蛍光寿命の差を明確に区別したイメージングが可能であることを示した。DOM 素子を用いた TOF3 次元計測に対しては、極短時間パルス光に対する素子応答を用いた高分解能距離計測方式を考案し、試作により 300μm の分解能(2ps の時間分解能)を得た。
著者
道下 幸志
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

変圧器のモデルと中実がいしのスパークオーバ電圧やV-t特性について検討した。配電線に発生する雷過電圧波形は、標準雷インパルス電圧波形と比較すると急峻・短波尾波形となることが多く、また、このような波形が発生する場合に、スパークオーバが発生しやすいことから、過電圧評価に当っては、変圧器内部の共振の影響を考慮した等価回路を用いる必要があると考えている。また、がいしの絶縁特性については、V-t特性を用いてシミュレーションを行うのが正確ではあるが、計算がかなり複雑になるため、絶縁レベルが10号相当の中実がいしの50%スパークオーバ電圧として200kVを用いることは概ね妥当であると考えている。避雷器や架空地線が接続された高圧配電線における雷害対策の主たる検討対象は、直撃雷であることが確認された。有限な大地導電率を考慮した場合には、従来のように大地を完全導体と仮定した場合と比較すると10倍以上スパークオーバ率は大きくなることが明らかになったが、それでも直撃雷によるスパークオーバ率と比較すると誘導雷によるスパークオーバ率は1/10以下となる。本研究の結果は従来の手法による予測結果よりもより現実に近いシミュレーションとなっていると考えられるが、依然として、実際に報告されている、事故率とは、1桁近い相違が認められる。今後は、更なる被害率予測精度向上を目指して、雷の吸引空間を含めた直撃雷の発生確率や、多相スパークオーバから実際の事故に至る過程の解明に取り組む予定である。多地点での電界の同時観測結果に基づいて、推定した夏季雷パラメータの50%値は、海外において電流観測によって得られた値と概ね一致した。国内の送電線における電流観測によってもこれらとほぼ同様な結果が得られていることから、電界観測により波尾部分を含めた雷電流波形が推定できる可能性があることが明らかになったと考えている。
著者
岡崎 真紀子
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(スタートアップ)
巻号頁・発行日
2008

平安時代から鎌倉時代にかけての時期にしるされた歌学書の叙述と、同じ時期にしるされた仏典の注釈類の叙述との間に、接点が見られることを具体的に検討した。その結果、当時の歌学に、法会の場で語られていた内容や、梵字の音声に関する学問である悉曇学における言語意識などが、深い影響を与えていることが明らかになった。
著者
碓氷 泰市
出版者
静岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

1.細胞膜表面ミメティックスの作製細胞膜表面糖鎖を模倣した糖鎖分子集合体(クラスター化)の構築のため、新規ジスルフィド双頭型配糖体の合成を行った。具体的には、スペーサー部構造の異なる種々の革アセチルラクトサミン(LacNAc)配糖体を4,4'-dithiodibutyd cacidの両末端カルボキシル基に対して導入することで、各種LacNAc含有ジスルフィド双頭型配糖体を得た。また、これら双頭型配糖体は種々の糖転移酵素により糖鎖伸長が可能であり、α2,6-およびα2,3-シアリルトランスフェラーゼを用いることで双頭型配糖体の糖鎖部をヒト型やトリ型インフルエンザウイルスが認識する細胞膜表面糖鎖に変換可能であることを実証した。2.局在表面プラズモン共鳴法の確立金基盤上にジスルフィド基を用いて双頭型配糖体を固定化することで、ラベル化が不要な糖鎖固定化バイオセンサーを構築する事を目的として、金ナノ粒子修飾局在表面プラズモン共鳴(LSPR)基盤上への糖鎖の固定化を行った。蛍光顕微鏡を用いた観察では、LacNAc構造を認識する蛍光標識レクチン(デイゴマメレクチン;ECA)との糖鎖構造特異的な結合が観察された。また、LSPRにLacNAc含有ジスルフィド:双頭型配糖体固定化金基盤を用いたところ、糖鎖固定化によりECA(非標識)との相互作用問における最大吸光強度や最大吸収波長に違いがみられた。興味深いことに、この糖鎖-レクチン間相互作用における最大吸光強度や最大吸収波長は固定化糖鎖であるLacNAc含有ジスルフィド双頭型配糖体のスペーサー構造(アルキル鎖長など)によっても変化する事が示された。また、酸性糖であるシアロ型糖鎖を固定化した場合は、中性糖のときとは異なる光学特性を示すことも明らかとなった。以上の結果より、金ナノ粒子修飾LSPR法を用いることで、ラベル化が不要な糖鎖固定化バイオセンサーを開発した。さらに、高感度の光学的バイオセンサーを設計する際に、本糖鎖プローブの糖鎖構造及びスペーサー構造の重要性が示された。
著者
高松 良幸
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、戦前の美術品の売立目録のうち100冊について、所収の作品の写真・テキストをデジタルデータとして記録し、その各種データを所蔵履歴、活用履歴などさまざまな角度から検索可能なデータベース化を試みた。また入札会の実況を伝える書籍、新聞雑誌記事等の関連資料の検討を行なうことで、戦前のコレクターの美術作品の保存、活用に対する姿勢、美術観や美術作品の移動に関する戦前の社会的意識等を検証した。
著者
林部 敬吉 辻 敬一郎 中谷 広正 阿部 圭一 東山 篤規
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

研究成果は次の通りである。1.バーチャル・リアリティ空間における視覚特性について人工的に出現させたバーチャル・リアリティ空問の視覚特性が自然空間とどの程度類似しているかを、双曲空間特性、ホロプター特性、大きさ恒常性、奥行距離特性についてそれぞれ測定した。その結果、両眼視差、パースペクティブ、テクスチャ、陰影を奥行手がかりとした条件では、視覚特性で比較する限り、自然空間は限定的にしか再現されず、また個人差も大きいことが明らかにされた。2.バーチャル・リアリティ技術を応用した対象の3次元可視化についてVR技術を用い3次元可視化したときの視覚特性を考慮した次の3通りのシステム、すなわち人間の脳の3次元可視化システム、室内デザイン支援システム、初等プログラミング教育支援システムを開発した。人間の脳の3次元可視化システムでは、人間の脳の全体と部分が立体的に知覚できるようにし、同時に、脳の構造と機能とが理解できるように工夫された。室内デザイン支援システムでは、VR空間内に置かれた様々な対象(イス、机、棚など)をデータグローブを使用して仮想的に移動し配置(デザイン)させることができ、もし対象とデータグローブとが接触すれば、接触判定を行い、同時に接触したことをユーザーに視覚的、聴覚的信号で知らせて使用者の利便性を高めた。初等プログラミング教育支援システムでは、小学生や中学生等に対してバーチャル・リアリティの技術を利用することでプログラムするとはどういうことかを理解させ、同時にプログラムの結果を、ミニカーやミニロボットをプログラムに従って動かして確認することができるようにした。
著者
鈴木 実佳
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

出版界が進取の気性に富み、印刷物の普及や知識・情報の伝達の迅速化と広範化の進展がみられた18世紀英国に注目し、書物を刊行した作家ばかりでなく、書簡や日記などの記録を残した人々について、「書く」あるいは「読む」ということが果たした役割を考察した。そこにみられるのは個人的感情・感性・感受性・観察・考察と、それを他者と共有しようとする方策であり、個別性や内密性の重視と、情報の伝達による他者との共同体的一体感希求が並行する。
著者
両角 達男
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本年度は、次の2つのことがらについて、考察を進めた。(1)範例を形づくるよりどころとしての「何を志向し、何に価値をおき、何を培うのか」を具体的に明らかにしていくこと。(2)「問いの連鎖」を促す対話や協働的な活動には何があり、その諸活動が「問いの連鎖」を促進するために具体的にどのような機能をもつのかを明らかにすること。(1)については、授業実践者としての授業の反省的分析、単元に着目した「核となることがら」(本質的なことがら)の抽出、代数領域に焦点をあてた「何を志向し、何を培うのか」の可能性の検討の3つの側面からの分析を行った。第一に、両角自身が筑波大学附属中学校にて行っていた10年間の授業実践記録より、範例的教授・学習の視点から浮かび上がる「範例」や「範例的なもの」の抽出と分析を行った。1組の三角定規を活用して15°の角をつくること、折り紙から1組の三角定規をつくること、地図との関連を意識した座標の学習、式を読むことを重視した文字式の学習などの事例である。第二に、小学校1年から高校1年までの必修過程に焦点をあてて、単元ごとに2〜3ずつ「核となることがら」(本質的なことがら)の抽出を行った。これは、範例から「範例的なもの」を抽出していくことを意識している。第三に、式を読むことを重視した文字式の学習活動に密接に関わりのあるシンボルセンスの育成に関して、フロイデンタール研究所のDrijversの学位論文(2003)やArcabiなど、最近の代数の研究動向を分析した。DrijversはCAS (Computer Algebra System)を活用した中等教育段階の代数学習の理論的枠組みを、4つの観点の融合により形成している。その一つとして「CAS-メンタルシェマ-範例」による連続的な学習過程の形成がある。学習者が範例と出逢い、範例的なものを意識化・顕在化、了解、内的同化していく過程に迫ろうとしている。CASの活用などを通して、代数領域でどのような教授・学習が可能になり、何を培うことができるのか。範例的教授・学習理論、学習カリキュラムの形成の視座から、継続的に考察を行っているところである。連続的な研究として、平成17年度からの研究テーマとする。(2)については、浜松市立村櫛小学校の教育実践に焦点をあて、単元レベルで考察を行った。子どもたちに問いが育まれるために、単元の前半ではどのような範例が形成され、範例を起点とした学習活動が変容していくか。村櫛小の先生方との継続的な研究協議、継続的な授業参観、単元の前半部と後半部に記述する「子どもたちのはてな」の変容の分析などを通して、(2)の考察を具体例に基づき実証的に行った。
著者
伊東 暁人 土居 英二 冨田 健司 渡部 和雄 尹 大榮 田口 敏行 影山 喜一 榎本 正博 佐藤 誠二 大橋 慶士
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

今回の研究を通じて明らかになったことは下記の諸点である。1.円高不況期をはじめ過去に研究対象とされてきた時期と今次のいわゆる「構造改革」期では、地方企業をとりまく国内外の諸条件、とりわけ中国をはじめとする東南アジア諸国との関係において大きな相違が認められ、従来の戦略では適応できない部分が大きい。2.全体として地方企業では消極的ながらも構造改革を肯定的に受け止めている傾向がみられる。一方で、国や地方自治体が推進している様々な産業振興政策については、業種によって違いが見られるが、費用対効果の点などで概ね否定的な評価が見られる。財政政策的支援よりも規制緩和、減税など自立的な競争環境の整備を求める意見が強い。3.経営課題としては、(1)販売単価の下落、(2)販売量の減少、(3)納期の短縮、(4)適切な人材、労働力の不足などが挙げられる。4.基本的な戦略としては、コスト優位よりも品質や特徴あるサービスなどで差別化することを指向している。しかし、戦略とIT利用の関係を見ると、業務効率化のレベルにとどまる傾向が見られる。電子商取引への戦略的対応、IT戦略を支える地方ソフトウェア業の高度化も課題として指摘される。5.地方であっても地域の特徴を活かした研究開発型産業集積やベンチャー企業創出の可能性が見られる。その際、一定の産業集積やクラスター形成を前提とした産学(官)協同型の研究開発戦略が効果的である。6.変化に対応した戦略的提携の重要性が以前にも増して認識されてきている。とりわけ、企業の水平的連携戦略、研究開発戦略における連携などが重要である。7.イタリア、韓国などの国々でも構造改革と地方企業の関係は共通した課題が見られ諸外国の事例を研究することは競争力のある地方の産業集積の形成の点から有効である。8.今後、NPOなど非営利の組織体と地方経済・企業との関係分析も重要になってきている。
著者
城岡 啓二
出版者
静岡大学
雑誌
人文論集 (ISSN:02872013)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.A169-A195, 1997
被引用文献数
1
著者
西田 友昭 河合 真吾
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

白色腐朽菌および白色腐朽菌の産生するリグニン分解酵素は、ブチルパラベン類(防腐剤)、ジクロフェナク(抗炎症剤)、メフェナム酸(抗炎症剤)およびトリクロサン(抗菌剤)の分解と毒性除去に有効であることを明らかにした。さらに、リグニン分解酵素は、現行の下水処理における除去効率が10%以下である難分解性のカルバマゼピン(抗てんかん剤)をも分解しうることを見いだした。
著者
堀内 裕晃 淺間 正通 桐山 伸也 杉山 岳弘 竹林 洋一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、英語のスピーチと会話の中から聴衆や聞き手を説得する際に用いられる表現・構文の語彙的・構文的特徴、韻律的特徴、身体言語的特徴、さらには、話し手、聞き手の属性、社会的身分・地位に伴う相対的上下関係、心的態度の特徴を抽出・蓄積し、知識データベース化を行った。これにより、話し手と聞き手の発話状況時における相対的身分・地位関係を基準とした表現の抽出が可能になり、身分・地位の異なる者同士あるいは対等な者同士が会話をする際にどのような状況でどのような心的態度である場合に、どのような表現を用いて相手を説得しているかを明示化することが可能になった。また、このマルチモーダル知識データベースを用いた英語説得術獲得のための学習支援システムの構築を行った。