著者
近藤 満
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

金属錯体ユニットの水素結合による連結や一次元型配位高分子の集積を利用したチューブ状チャンネルを構築した。これらの金属錯体を用いて、メタノールの除去と接触に応答したチャンネル骨格の崩壊と再構築、メタノールの添加を契機としたより大きなゲスト分子の捕捉に成功した。一方、一次元型配位高分子を用いて、温度に応答してチャンネル構造を可逆的に変化させる相転移挙動を発現させることに成功した。
著者
大野 旭
出版者
静岡大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究は、中国・内モンゴル自治区に居住するモンゴル族遊牧民の定住化過程における文化変容の実態をフィールド・ワークを通して明らかにしようとするものである。本年度は主として同自治区西部のオルドス地域と首府呼和浩特市周辺で現地調査を実施し、その成果を公開した。1.定住化においこまれた最大の原因は放牧地の狭小化に求められよう。清朝の政策転換にともない、19世紀末から大量の漢人農民が内モンゴルに入植し、草原を占領して農耕地に改造した。それと同時にモンゴル族の方は家畜を失い、農民に変身していった。こうした歴史的な出来事を「19世紀末におけるモンゴルと漢族関係の一側面」、「19世紀モンゴル史における<回民反乱>」にまとめ、公開した。2.社会変動期において、モンゴル人はなにを考え、どのように行動してきたかを示す資料として、手写本(古文書)がある。手写本の内容は哲学、文学、天文学、医学など多分野に及んでいる。このような手写本を民間から収集し、著書Manuscripts from private collections in Ordus, Mongolia(2)-the Ghanjurjab collectionのかたちで発表した。今後は、現地調査で収集した資料と、世界各国の文書館に保存されているモンゴルの社会変容に関する档案資料とを併せて、モンゴル族の社会変容を歴史人類学の視点から一層綿密に解明していく予定である。
著者
布川 日佐史
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

生活保護における就労支援の一環として始まった福祉事務所と公共職業安定所の連携をもとに、公共職業安定所の就労支援においても、「就労のための福祉」が課題として位置づけられるようになった。本研究は、「就労のための福祉」の展開に着目し、生活保護の実施機関である福祉事務所(自治体)と、職業紹介の実施機関である公共職業安定所(国)との連携のあり方と役割分担、すなわち、就労可能な生活困窮者に対する最低生活保障と就労支援のあり方を検討した。
著者
福田 靖子 新井 映子 熊澤 茂則 内田 浩二
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

環境汚染中の有害物質であり,タバコの煙,自動車の排気ガスに含まれるアクロレイン(CH_2=CHCHO)等低分子不飽和アルデヒド類はフライ時に油の分解により生じる可能性が高い.大量調理における長時間におよぶフライ操作時には「油酔い」と言われている一過性のむかつき症状を経験するが,この要因物質としてアクロレイン等の反応性の高いアルデヒド類が推測される.内田らは生体内脂質過酸化過程で生じるアクロレイン等が生体タンパク質と結合し,細胞等に傷害をもたらすことを特異性の高いELISA法を用いて明らかにしている.フライ時の「油酔い」症状も生体傷害の一つと推測され,ELISA法によりアクロレイン生成量を検討した.H11年度は油加熱時に発生するアクロレインの捕集法を検討した.アクロレインは沸点が53℃で容易に気化すること,水に易溶(20g/100ml,20℃)であることから,油相のみならず気相中のアクロレインを捕集するため,加熱後の油を共栓ガラス器具およびシリコンチュウブを用いて,密閉系とし,水中に導き,BSA付加体とした.油の種類によるアクロレイン生成量の比較等を行ったところ油によりアクロレイン生成量に差があり,焙煎種子油が未焙煎種子油に比べてその生成を抑制していた.焙煎種子油のアクロレイン生成抑制要因を焙煎ゴマ油を用いて調べ,新たにセサミノールを同定し,このセサミノールが種子焙煎時にセサミノール配糖体から生成することが示唆された.生体内タンパク質のモデルとして脂質消化酵素(リパーゼ)を選び,アクロレイン添加によるリパーゼ活性阻害で調べ,顕著なリパーゼ活性の低下を認めた.酵素タンパク質がアクロレインにより修飾されたものと推定された.大量調理時の油の酸化防止剤(アクロレイン生成抑制剤)として,天然素材である竹炭が有用であることを竹の炭化温度との関係から明らかにした.
著者
磯山 恭子
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

本研究は,市民のための法教育のあり方を考える基礎的研究である。本研究は,市民の紛争解決の意識・能力の育成を目指した法教育の理論と実践を多面的に分析し,小・中学校の法教育のカリキュラムを構想するために必要な視点の提出を試みた。その際,アメリカの「法教育」(Law-Related Education)を先行モデルとして取り上げた。さらに,小・中学校における紛争解決の意識・能力の育成を目指した法教育の授業を開発し,考察を行った。
著者
色川 卓男
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究の課題は、全国政令指定都市及び人口20万人以上の主要市区における消費生活センター及び消費者行政及び消費者教育・啓発施策の実態と課題を示すことにあった。政令指定都市は2008年に、主要都市は2010年に、いずれもアンケート調査及びインタビュー調査、施設調査を行い、その結果に基づいて分析を行った。典型的な例をまとめると、正規職員は人口20万人に1名配置されており10万人増えるごとに1名職員が増加していた。住民1人あたりの消費者行政予算は政令指定都市では50円を超えているが、主要都市では40~50円にとどまっていた。次に施設では、相談スペースとして、いずれも相談室を設置しており、政令指定都市では、閲覧スペース、消費者団体利用スペースと研修室がある。最後に相談では、平日はいずれも7時間以上相談を受け付けており、実質相談員数は人口10万人あたり0.6~1人ほど配置されている。また、消費者教育・啓発施策では、いずれの場合も消費生活センターを中心とする消費者行政担当部局による消費者教育・啓発施策は啓発施策がその中心であり,とりわけ出前講座が大きな比重を占める。しかし都市ごとに,取り組み状況が異なり,かなり格差がみられる。また消費者教育施策においては,多くの都市がなかなか実施できていない。
著者
松田 純 山下 秀智 浜渦 辰二 上利 博規 田中 伸司 森下 直貴
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

・本研究は,21世紀を「生命ケア文化再構築の時代」ととらえ,個の自己決定と社会的な相互扶助の両者のバランスがとれた,わが国の文化風土にあったケア文化のあり方を探求してきた。西洋と東洋の死生観の相違がしばしば問題にされるが,それはいずれかが勝っているというのではなく,分析や合理性を重んじる西洋的思考と,総合や直観を重んじる東洋が互いに学びあう必要がある。一方で,文化の差を自覚しつつ,同時に,文化ナショナリズムに陥ることなく,いのちをめぐる諸問題の国際化にも対応していかなければならない。「アジア的」とか「日本的」といった類型化・固定化に陥ることなく,西洋のケア文化の歴史的深みと現代的展開の意味も十分に理解しなければならない。21世紀の生命ケア文化再構築は,グローバル化のなかで,比較文化論的視点に立った柔軟な発想で進めていく必要がある。以上のような研究成果を,国際シンポジウムを開催するなど,国際的に開かれた討議空間のなかで検証してきた。・臨床学的アプローチのなかでは,<施設から在宅へ>が後戻りできない流れであり,それを支えるコミュニティ・ケアとスピリチュアル・ケアが極めて重要となってきていることが明確になった。・21世紀ケア文化を担う新しい世代に対しては,「いのちの大切さ」を漠然と教えるのではなく,いのちが向かう先にある<いのちの美しさ>を芸術作品などを通して感得しこの世に在ることへの大きな信頼を取り戻し生きる力を高めるような生命ケア教育が必要である。例えば理科教育のなかでも,自然の奥深い構造を示すとともに,それらについての科学的知見と技術的応用が社会にもたらす影響についても具体例に即して考える教育プログラムと授業展開が必要であろう。以上のような成果を研究成果報告書,ホームページや著書,公開講座,授業展開などの形で発信してきた。
著者
岩見 真吾
出版者
静岡大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

私は、これまで応用数学者という立場で、医学研究者と連携して、日本ではほとんど行われてこなかった「感染症および難治疾患の数理研究」という数学的に高い意義を持ち、かつ社会貢献を重視した研究に従事してきました。例えば、感染実験と数理モデルを用いて、AIDS発症機構を解明し、ワクチン開発戦略の提案に関する研究を行っている。本年度は、京都大学ウイルス研究所の三浦智行准教授との共同研究を積極的に行った。特に、アカゲザルへのHIVの感染実験結果をもとに、AIDS発症機構や感染防御機構の全貌を明らかにするHIVの病原性評価理論を作った。この理論は、HIVの増殖率と感染力の組み合わせによる、HIV抑制とAIDS発症を予想するものである。これらの理論を足掛りに、HIV増殖を効率よく抑制するワクチン開発戦略を明らかにすることができると考えている。さらに、新型インフルエンザの流行予測と政策評価に関する研究も行った。数学解析と数値計算を駆使し、防御政策に伴うリスクを見つけ出してきた。リスクを知ることで、安全かつ効率よく流行を抑え込む政策を提案できるからである。実際に、オランダで流行した鳥インフルエンザの疫学データをもとに、家禽に対するワクチン政策の有効性を評価すると、ワクチン接種率の増加に伴い感染鳥数が増加する可能性があることがわかった。これは、ワクチン接種が流行を助長する恐れがあることを示している。本研究は、静岡・中日新聞に掲載され、世間から注目を集めた。
著者
今山 延洋 山下 晃功 橋本 孝之 糸山 景大 長谷川 雅康 永田 萬享 畑 俊明 竹野 英敏 尾崎 士郎 澤本 章 大橋 和正 余湖 静也 山口 晴久 土屋 英男 宮川 秀俊 安東 茂樹 安孫子 啓 田口 浩継 山本 勇 紅林 秀治 長澤 郁夫 吉田 誠
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

教師を目指す人に対して、技術科教員指導能力認定試験を創設し、3回実施した。日本で初めての試みである。試験は年1回実施され、教員養成で必要な修得基準に基づいて出題し、教員として身につけておくべきレベルの筆記・実技・模擬授業の能力を一次・二次試験によって判定した。3回の試験の実施の経験をもとに、今後の恒常的な実施の見通しを得るとともに、修得基準を見直した。
著者
安村 基 鈴木 滋彦 小林 研治
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

モンテカルロシミュレ-ションおよび信頼性解析により、日本建築学会「木質構造設計規準」による木材の繊維方向加力を受ける曲げ降伏型接合部の降伏モードの推定が妥当であることがわかった。繊維直角方向の応力を受ける接合部では、木材の破壊確率を想定した設計を行わないと危険サイドの設計となる可能性があること、モーメント抵抗接合部においても、確率的手法を取り入れた設計を行わないと、柱の折損など危険な破壊メカニズムを生じる恐れがあることが分かった。また、信頼性解析により CLT パネルの破壊メカニズムの推定が行えることを実験的に実証した。
著者
村上 陽子
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

食べ物のおいしさを感じる上で,視覚は大きな役割を果たしている。食における色の効果を大切にしてきた我が国には,和菓子という伝統的な菓子がある。和菓子には,季節や行事により種類・色・形・材料などが使い分けられるなど,他国の菓子には見られない特徴を持つ。一方,現代社会においては,食における色彩は軽視される傾向にある。また,和菓子の喫食頻度は減少傾向にあり,食文化の継承という面において懸念すべき状況にある。本研究室では,和菓子の中でも色の美しさが特徴であり,色の配色や形の変化により季節感や造形美を表現できる練りきりに着目し,研究を進めており,いくつかの知見を得ている。や造形美を表現できる練りきりに着目し,研究を進めており,いくつかの知見を得ている。
著者
瀧川 雄一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

植物病原細菌の主要な発病機構であるIII型分泌機構は多くの細菌で見つかっているが、それによらない植物病原細菌の探索と新たな発病機構の解明を試みた所、Pantoea ananatisが該当することを見いだし、系統により植物ホルモン合成遺伝子が主要な病原因子であることを解明し、それを利用した検出システムも構築した。また、イネ、ネギを侵す系統がタバコに過敏感反応様の反応を引き起こすことも明らかにし、機能解析のための変異株の作出に成功した。Rhizobacter dauciやPseudomonas fuscovaginaeにおいてもIII型非依存であることを示し、特異な発病機構の一端を解明した。
著者
竹内 勇剛
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2002

本研究は,知的人工物と人間との日常的な生活環境の中での自然なコミュニケーションの実現を目指し,知的人工物の知性と身体性に対する人間の認知的姿勢に基づいた適切なコミュニケーション環境モデルを提案することを目的とした.そこでまず,様々な状況におけるコンピュータやエージェントの一般的な利用場面を通して,それらの知性と身体性がどのような認知的姿勢のもとでそれらと人間との間の社会的なインタラクションに寄与しているかを検討した.この際,心理学的手法を用いた実験に対して統計的な分析を行なうことで,より定量的な視点での考察が可能になる.その結果,人間はアバターのように背後に実在する人間が操作しているような対象に対して,設計者が想定するように「アバター」として機能していることを基盤とした反応をせずに,インタラクションの実際の対象となっているアバターの像そのものに,人格性を帰属させた対人的反応を示すことが明らかになった.すなわち,人間はたとえ仮想的で実体を伴わない人工物であっても,その振る舞いが知的であると認知されると,そこに独立した人格性を帰属させ,背後にある様々な"仕組み"も対面している人工物自身の機能として認知してしまう反応をするのである.さらに,仮想的な身体を有した人物像との対話場面において,人間はその人物像のもつ身体的機能(視認・聴取・口述)を自然なものとして認知し,たとえば画面上に表示された人物像に対して,直接手にとったものを見せたり,話し掛けたり,人物像が発する音声が聞き取りづらいときに画面に近づいて耳を傾けるなどの間身体的反応が観察された.これらのことは,Reeves & Nass(1996)で主張されているMedia Equationパラダイムに基づく人工物とのインタラクションモデルを実証的なデータにも基づいて支持するものであり,ロボットなどの実体を伴った人工物とのインタラクションと仮想的な身体をもった知的人工物との特別な心理学的差異は存在しないことを示唆するものとして意義深い成果となった.
著者
長谷 隆
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

歩行者や避難者の大規模集団である群集の巨視的挙動を予測する微視的モデルの構築とシミュレーションプログラムの開発を目的としていた。群集集団の微視的モデル構築の基礎となる実験を行い、その実験結果に基づいてモデリングを行った。そのモデルの計算機シミュレーションプログラムを構築し、実際の群集集団の挙動を予測した。以下の四つの場合の群集挙動を明らかにした。(1)教室からの脱出緊急時における教室からの脱出実験に基づいたモデリングによって避難学生の避難時間、避難軌跡、避難時間の位置依存性を計算し、実験結果を再現することを示した。(2)歩道橋や地下道で発生する群集移動停滞現象通勤ラッシュやイベントでの混雑回避を目的として、単純化したチャンネル対向流の実験観察を行い、その実験結果をもとにモデリングを行い、実験結果をシミュレートする計算機プログラムを開発した。(3)火災・地震等による停電時における暗闇での避難群集挙動上記の状況をモデリングするために、アイマスクを着用した避難群集の実験観察を行い、その結果に基づいて暗闇下での避難過程のシミュレーションを行った。(4)立って歩けない状況下での四つん這い移動避難群集挙動狭い空間や地震等で立って歩けない状況下での避難群集の実験観察を行い、その実験結果に基づいたモデルを構築し、計算機シミュレーションを行った。これら四つの典型的な避難群集挙動を微視的モデルでシミュレーションできることを明らかにし、開発した計算プログラムが有効であることを示した。
著者
三田 悟 大野 始
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

シンビジウムを25-30℃の高温ストレス下で生育すると花芽が壊死する。これを避けるために、シンビジウム生産者は植物体を標高1,000メートル程度の高い山に避暑させる。これを山上げ栽培といい、生産者にとっては重労働である。高温ストレス下でCyNAC1遺伝子の発現レベルが顕著に高まった。CyNAC1遺伝子を過剰発現させたトマトとシロイヌナズナでは顕著な生育障害が見られたことから、CyNAC1遺伝子は高温ストレス下で、他の遺伝子群の発現を制御しつつ、シンビジウム花芽の壊死を促進する役割を担っていると考えられた。
著者
坂田 完三 碓氷 泰市 渡邊 修治
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1995

1)烏龍茶のアルコール系香気生成機構の分子レベルでの解明:我々が確立したアルコール系香気前駆体検出法を用いて,烏龍茶水仙種および毛蟹種の殺青葉から,アルコール系香気前駆体を単離,構造決定し、これらのほとんどが2糖配糖体(β-primeverosides)であることを明らかにした.ついで,予備検討として,入手が容易な緑茶用品種やぶきた種新鮮葉からアルコール系香気生成酵素を精製し、本酵素がβ-primeverosidesを特異的に認識して加水分解し,アルコール系香気とprimeveroseを生成する酵素β-primeverosidaseであることを明らかにした.さらに,p-nitrophenyl β-primeveroside(pNP-Pri)を合成することができたので,これを用いて中国から入手した烏龍茶水仙種および日本産やぶきた種の新鮮葉中の香気生成酵素の精製を行い,これらがSDS-PAGEにて61KDaに単一バンドを示すほとんど同一の酵素であることを明らかにした以上のようにして,茶葉におけるアルコール系香気生成機構を分子レベルで明らかにすることができた.2)茉莉花の香気生成機構の分子レベルでの解明:ジャスミン茶の製造に用いられている茉莉花から,linaloolと2-phenylethanol,benzyl alcoholの2糖配糖体を香気前駆体として単離同定した.また茉莉花の開花直後の花から調製したアセトンパウダーの可溶化,カラムクロマトグラフィー等による部分的精製の結果,香気生成酵素は,グリコシダーゼで,本酵素は少なくとも3種類存在し,これらの酵素は2糖配糖体をアグリコンとグリコシド結合のみを加水分解して香気成分へと変換することを明らかにした.3)pNP-Priの酵素合成:香気生成酵素研究に不可欠な基質であるpNP-Priの酵素合成を行った.市販のpNP-β-D-glucophyranoside(pNP-Glc)を受容体基質,xylobioseを供与体基質として市販の酵素をスクリーニングしたところ,Pectinase Gに糖転移活性を認められた.部分精製した酵素を用いてpNP-Priの酵素合成が行えることを見いだした.この基質を手に入れることで,上記の研究は飛躍的に進展した.
著者
桐山 伸也
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2010

本研究では、子どもの発話行動の観察から、円滑な対人関係の形成に関する音声コミュニケーションスキルの発達分析を行った。1~4歳の2, 400発話からなる感情意図ラベル付きの発話行動データベースを構築し、感情意図ラベルの時間変化パターンを手掛かりに特徴的な行動事例を抽出できるマルチモーダル発話行動分析システムを構築した。子どもの行動発達理解に役立つ映像事例を保育者向けの子育て支援知識映像コンテンツに仕立て、子育て支援Webサイトで公開した。
著者
神藤 正士 木下 治久 畑中 義式
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1998

表面波プラズマの励起機構に関係する現象が観測された。以下にその要点を列挙する。1.圧力が低下するとともに、軸方向密度分布は平坦になっていく。2.圧力が50mTorr以下になると、石英板から1-2cmの位置のイオン飽和電流の軸方向分布上に明確な凹みが観測された。圧力が低くなるとこの凹みは顕著になるが、100mTorr以上では目立たなくなる。プローブのバイアス電圧をプラズマ電位に対して負に深くして-80V以上にすると、この凹みは解消する。このことから、これはプラズマ密度の凹みではなく、電子が加熱されてエネルギーが増大したことから現れる現象であると考えられ、電子の加熱がこの付近で顕著に生じていることを示唆する。なお、凹みのある位置でのプラズマの密度は丁度遮断密度に近い10^<11>cm^<-3>程度であり、プラズマ共鳴の条件が満たされているものと思われる。3.石英板方向のみまたはその反対方向からのみプラズマ粒子を捕集できる構造をもったプローブを製作し、プローブ特性を測定した結果、石英板から離れる方向に流れる高エネルギーの電子流が見出された。4.石英板から数mm以内の位置に設置されたダイポールアンテナからの信号を周波数分析したところ、マイクロ波の周波数であるf_0=2.45GHzの他に、f_1=10MHzとf_2=f+f_1の2つのスペクトルが観測された。f_1はプラズマ密度とともに上昇すること、ならびに丁度イオンプラズマ振動数に一致することから、観測された現象は、電磁波、ラングミュア波およびイオン波からなるパラメトリック不安定性の特徴と一致していることが判った。