著者
奥谷 昌之
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2005

本研究は、資源量が豊富で強い毒性を持たない元素から構成される半導体薄膜を用いた新規紫外線センサーの開発を目的とする。目標とするセンサーの感度は、太陽光中で日焼け及び皮膚ガンの原因となるWB(280-320nm)域に高い感度を有するものとする。本研究で開発する紫外線センサーの構造は、基本的にpin接合太陽電池と同様である。予備実験として、CuO/TiO_2/SnO_2によるセンサーを既存のSPD製膜装置で試作したところ、予想通り350nm付近に感度を示したが、S/N比が10^8(一般si系で10^<10>)で微弱であり、精度をさらに上げていく必要がある。まず、SPD法によるp層のCuO、Cu_2O、SnS、Sn_2OS、CuI、i層のTiO2及びn層のIn_3O_3、SnO_2の最適形成条件を特定する。得られる膜の多くは数百nmの粒子から構成されているためピンホールが多数存在し、これを緻密化する必要がある。本年度はこれまでの低温膜形成技術及び結晶化抑制剤の利用により粒成長の抑制を図った。特に透明導電膜(SnO_2)層は原料の選択により形成膜の表面形態が大きく異なり、適切な条件設定により膜のヘイズ率を制御することが可能となった。これにより、センサーの感度のS/N比は試験的に作成していた従来品に比べ10^2倍大きくすることができ、有効なセンサーの作製に成功した。本研究結果はセンサーに限らず、様々な光学材料に応用することができ、太陽電池や紫外・赤外フィルター等の幅広い応用が期待される。
著者
湯之上 隆 鈴木 淳 大塚 英二 大友 一雄 保谷 徹 岩井 淳 杉本 史子 横山 伊徳
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2008

静岡県を調査主体とする江川文庫史料西蔵調査事業と連携して調査研究を進めた。平成24年3月刊行の静岡県文化財調査報告書第63集『江川文庫古文書史料調査報告書』4冊により、約30, 000点の古文書を目録化した。本研究の前提となる第1次調査分の約20, 000点と合わせた約50, 000点にのぼる古文書調査はほぼ完了し、本研究の所期の目的は完遂した。江川文庫研究会を5回開催し、調査研究成果の公表と情報の共有を図った。国文学研究資料館の「伊豆韮山江川家文書データベース」により、調査成果を公開した。
著者
石井 仁 荒木 弘安 東郷 敬一郎
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2001

超音波断続負荷型疲労試験機を製作して様々な強度レベル材料についてのギガ(10^9)サイクル域までのS-N曲線を取得し,その結果を回転曲げ,引張-圧縮といった一般的な試験機で得られた疲労特性との差異を検討することで,この試験法が疲労強度の迅速決定に威力を発揮することを確認した.超音波を連続ではなく断続的に負荷させる理由は,超音波域といった高周波数で変形を繰返した際の内部摩擦による材料の発熱を防止するためであり,試験片の温度上昇を生じさせない負荷-休止時間の組み合わせであれば10^7回以上の高サイクル域の疲労特性には影響が無いことを確認し,負荷と停止時間をそれぞれ30ms,70msとすることで以下の様々な試験を実施した.焼入れ後に高温焼戻しを施したS35CおよびSNCM439につきギガサイクルまでのP-S-N線図を求めた.応力レベルを10種類とし,1応力あたり15本,計150本の試験片を用いて得られた結果は,日本材料学会あるいは金属材料技術研究所から出版されている10^7サイクルまでの疲労強度データ集の結果と極めて良い一致が得られた.また,耐久限が存在せず10^7サイクル以上でも疲労強度が低下する高強度材の一例として,マルエージング鋼についての10^9サイクルまでのS-N曲線を求めた.10^7サイクルまでは表面を破壊の起点としたが,それ以上の繰返し数では内部の介在物を起点とするものに移行する.材料製造工程の改善を通して介在物の寸法を微細化すると長寿命域の疲労強度改善が得られるなど,通常の試験機では数年が必要である実験結果が短時間に求まり,材料開発へ応用すると極めて有効な手法になることが確認された.また,軸受け鋼SUJ2や浸炭処理を施した肌焼き鋼SCr220,SNCM420についても,また,切欠き試験片でも適用可能であることを確認し,超音波断続負荷法が超高サイクル域の疲労強度迅決定法として極めて有用であることを明らかにした.
著者
佐藤 哲也 坂野 達郎 山口 浩 石川 博
出版者
静岡大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2007

本研究の目的は政策関心空間と呼ぶ変化の早い世論の計測手法の確立と、その活用による政治的な意思決定、特に選挙における有権者の意思決定を支援する優れたシステムの構築である。中でも、予測市場と呼ばれる世論計測手法の有効性を確認することに一つの主眼を置いてる。それに加え、本年度は年度途中から急遽総選挙が想定される事態となった事もあり、それを対象とした新しい投票行動支援支援システムの設計、構築を目指した。本年度の研究成果の概要としては、昨年から継続して実施している予測市場実験に加えて、政策文書の自動分類技術分類といった、世論計測に用いられる要素技術の開発を行った。総選挙に向けた意思決定支援システムの開発を行った。具体的作業としては、選挙に関する世論計測を目的としたshuugi. in実験の実施、継続性や参加コストといった既存の予測市場の問題を解決する新しい市場設計とその検証のためのこうなる実験の実施、マニフェスト文書の自動分類技術の開発および新たな分類方法の提案、マニフェスト検索システムを利用した新型投票支援システムの開発と実験環境構築を挙げることができる。上記の作業の結果として以下の成果を挙げる。選挙をテーマにした予測市場を実施することにより、世論を計測する手法としての有効性及び課題を明確にした。また、その課題を解決するための新しい予測市場システムの開発を行い、実証実験を行った。次に、マニフェスト文書のソフトウェアによる分類技術を開発し、期間や作業といった点での低コスト化を実現した。その上でマニフェスト検索システムを活用し、既存のベクトル空間モデルの問題を解消した問題を解消する新しい意思決定支援システムの開発を行った。
著者
上利 博規
出版者
静岡大学
雑誌
人文論集 (ISSN:02872013)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.A13-A28, 2004-07-31

Derrida, who tries to deconstruct representative thinking, wrote " Me moires d'aveugle.L'autoportrait et autres mines" (Memories of blind. The self-portrait and other ruins', 1990) for the first exhibition of Louvre titled 'PARTI PRIS' (prejudice). In this paper I discussed how Derrida says the relation between drawing and representation in the sense of expression, according to the four key words used in the title and the subtitle of this book, namely 'blind', 'memory', 'self-portrait', and 'ruin'. After that I made mention of 'the logic of parergon' in " The Truth in Painting (1978). 1 Blind means not only a drawn blind man (object) but also a drawing man (subject), and moreover action of drawing it self. 2 Memory means receiving of the absolute invisibility prior to remembering something which was seen. For this reason drawing is a restitution of debts as well as to draw something. The word 'expression' seems to suggest only direction one from the internal side to external, but the French word 'rendre' includes two directions and meanings, that is, expression and restitution. 3 We cannot recognize a picture as a self-portrait by seeing it in itself. For the sake of recognition of a self-portrait we need suppositions through writings like a title or a signature. And as generally known, the network of writings spreads limitlessly into the abyss. 4 The idea that to draw a self-portrait is to disappear into the abyss leads us to the ruin as the origin of drawing. Therefore to sketch doesn't mean represent something visually, but to ruin representation. 5 Derrida shows in "The Truth of Painting" that the relation between parts and the whole by putting parergon, which is subordinate to ergon, into the theme. If we look at eyeglasses in a self-portrait as the parergon of the natural eyes, we will see an abyss and will be blind.
著者
吉田 和人 杉山 康司 村越 真
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究では,卓球選手を対象に,スイングの回転半径の大小が異なる2つの打法(フォアハンドによるドライブ打法とフリック打法)における,打球直前の動作修正時のスイング様式を検討した.その結果,いずれの打法でも,イレギュラーバウンドにより打球までの時間が短くなった場合,遂行中のスイングの慣性モーメントを小さくするなどの動作修正がみられた.こうした素早い動作制御の検討では,動作の力学的特性に着目することが重要であると考えられた.
著者
吉田 和人 村越 真 杉山 康司
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究の目的は,ボールの視覚情報による卓球一流選手の瞬時の動作修正における反応のメカニズムについて,実験的に検討することであった.卓球選手2名を対象に、フォアハンドによるフリック打法とドライブ打法における,上肢の筋活動、手関節の動き,および動作に関する内観を測定した.試技は,配球者から送られる4m/s程度のスピードの無回転のボールに対する強打とした.配球には,公式ボール(レギュラーバウンド条件)と,イレギュラーバウンドが発生しやすいように表面を凹凸に加工したボール(イレギュラーバウンド条件)を用いた,加工ボールの存在については,被験者に事前に告知しなかった.結果および考察は以下の通り.(1)レギュラーバウンド条件において,被験者コートでのボールバウンドからインパクトまでの平均時間は,フォアハンドフリック打法の場合,被験者Aが205ms,被験者Bが208ms,フォアハンドドライブ打法の場合,被験者Aが243ms,被験者Bが303msであった.(2)イレギュラーバウンド条件における,被験者コートでのボールバウンドからインパクトまでの時間や,動作に関する内観から,手関節を中心とした小さな動きが主なフォアハンドフリック打法は,肩関節を中心とした大きな動きが主なフォアハンドドライブ打法と比べ,短時間での動作修正に適していると考えられた.このことから,動作修正に要する時間は,動作の力学的特性と関連していると推察された.(3)イレギュラーバウンド条件において打球直前の動作修正が知覚された場面では,上肢骨格筋に動作修正への関与が推察される放電パターンの観察される試技と,観察されない試技とがみられた.この筋放電パターンの観察されない試技については,瞬時の動作修正における筋の作用機序のさらなる検討が必要であると考えられた.
著者
大野 旭
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は1966年から1976年にかけておこなわれた中国文化大革命の歴史的推移を少数民族の一つ、モンゴル族の視点から現地調査を実施し、文化大革命という政治運動の「民族問題的な側面と性質」を明らかにしようとするものである。中国の少数民族自治地域である内モンゴル自治区の場合、文化大革命運動の深化にともない、少数民族の自治権が剥奪された。また、内モンゴル自治区の固有の領土も約半分が漢族の省に分割され、その上、厳しい軍事管制制度が導入された。1966年から1970年の間、34万人が逮捕され、2万7000人以上ものモンゴル人たちが虐殺され、12万人に障害が残った。当時、モンゴル族の人口はわずか140万人だったことから、全モンゴル族を巻きこんだこの政治的な災禍をモンゴル人たちはジェノサイドだと理解している。本研究は、この隠蔽されつづけているジェノサイドこそ、文化大革命時における少数民族問題の本質だと位置づけている。
著者
今井 敬子 岩田 礼
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1997

本研究は、将来的な中国語デイスコース論の構築のために、基礎的な作業と理論的な検討を進めることを目的にスタートした。デイスコース("談話"とも称される)という観点からの言語研究は、文レベルの文法研究(統語論)の形式主義、抽象主義による限界を見極めた上で近年盛んになった研究分野であり、言語主体のありかた(思考、主観)、言語環境(文脈)、言語使用の背景(文化・社会)などへも目を向けて言語を捉えようとする立場である。中国語でも近年、デイスコース研究への関心が増しているが、本格的な研究はこれからといった段階である。当該期間中に行われた本研究の実際とその成果は以下のようにまとめることができる。本研究ではデイスコースを、表現内容の上でまとまりをもつ複数の文の集合体と捉え、その使用実態と機能を観察した。実際の発話からデータ(音声データおよびそれを文字化したデータ)を収集し分析するという実証的な方法をとった。まず、デイスコースというまとまりを成立させる代表的な手段として、連接語について観察した結果、ごく限られた連接語(因果、逆接など)の目立った多用があり、さらに因果関係を表す連接語の調査を進め、作用域の広さ、多重的な因果関係、表現類型の選択使用と話題の展開のしかたとの関わりを分析、さらには、本来の意味(因果関係の表示)を失い、発話を単に繋いだり終結させたりする機能が見られた。このように実際のデータの中での連接語は、談話の継続、展開、終結などに密接に関与していることから、デイスコース標識として再認識されるべきであろう。本研究ではまた、シナリオのせりふにおける人称代名詞の使用実態を調査し、登場人物間のコミュニケーションのありかたと人称代名詞の選択使用の相互関係を明らかにした。また、声調という音声的特性について、そのピッチの変動を、個別言語、発話主体という両者の面から観察・分析した。なお、残された課題も多い。特に、デイスコースと「視点」の関係性、主題展開の方式につての研究が成果を出せぬまま現在に至ったことが残念である。今後は、これらのテーマについて研究を継続していく計画である。
著者
脇谷 尚樹 鈴木 久男 篠崎 和夫 篠崎 和夫
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2007

強誘電体(BaTiO_3)と強磁性体(CoFe_2O_4またはNiFe_2O_4)を複合化させたエピタキシャル成長薄膜を作製し、強誘電性と強磁性の相互作用について検討を行った。複合薄膜の強誘電特性に及ぼす外部磁場の印加効果を調べたところ、磁場印加によって強誘電性が変調されることを見いだした。SrRuO_3/(La,Sr)MnO_3/CeO_2/YSZ/Si基板上に作製したBaTiO_3-NiFe_2O_4エピタキシャル成長複合薄膜の断面TEM観察結果より、作製した薄膜はともにナノ粒子状のBaTiO_3 とNiFe_2O_4がエピタキシャル成長関係を保ちながら分相している、0-0型の複合構造をしていることが明らかになった。
著者
脇谷 尚樹 鈴木 久男 坂元 尚紀 篠崎 和夫 符 徳勝
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

成膜時に磁場印加が可能なPLD装置(ダイナミックオーロラPLD)を用いてNb-SrTiO3(001)単結晶上にエピタキシャル成長させたSr過剰組成のSrTiO3薄膜には基板の垂直方向に向かって自発的に超格子構造が生成する。この現象が生じるメカニズムとしてはスピノーダル分解であることが明らかになった。また、この薄膜では強誘電性が発現するが、その原因はスピノーダル分解によって生じた、組成の異なる層の界面におけるひずみのためであると考えられた。
著者
牛山 素行
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

豪雨災害においては外出中の遭難者が全体の6割,自ら危険に近づいたことによる犠牲者が1/4を占めるなど,情報を公開・伝達すれば被害軽減が図れるといった単純な構造ではない.どのような情報を理解してもらえば被害軽減行動に結びつくかの検証が必要であり,その一端として本研究では,地形(標高)を認識している者は防災行動が積極的であることを示唆した.
著者
池田 恵子
出版者
静岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本研究は、日本における災害被害の男女差の実態を解明し、防災サイクルをジェンダー分析の手法により検討し、防災サイクルのジェンダー課題に関する情報を整理して提示することである。本年度は、昨年度の調査結果に基づいて、女性のおかれた状況(ライフサイクル、家族構成、ケア従事状況、年齢など)と災害の段階(緊急救援、生話再建・住宅再建、地域復興)の両方を考慮した、災害におけるジェンダー課題に関する分析マトリックスを作成した。それぞれの災害フェーズにおいてとりわけ脆弱性の高い女性はどのような女性であるか、特に重視しなければいけないジェンダー課題は何かを明らかにした。移住女性(非日本語話者)やセクシャルマイノリティーに関しては、情報が少なく、今後の災害におけるジェンダー課題の検討において、見落としがちになる可能性があり、注意を要することが把握された。これらの情報を基に、災害サイクル全体の実際的・戦略的ジェンダー課題を抽出し、ジェンダー課題が改善されるための条件を抽出した。都市部(神戸市)と農村部(長岡市)におけるジェンダー課題(とりわけ戦略的ジェンダー課題)の違いを分析した。これらのジェンダー課題に対処するために、防災行政や防災の自主組織において、どのような対策が取られているかについて、先進事例(大分県、横浜市、富士市など)の取り組みについて、まずは行政や市民団体の法令や行政措置に関する出版物などを収集し、不明な点に関しては担当部署に電話・電子メールにて確認し、災害におけるジェンダー課題に対応するために必要でかつ実行可能性が高い方策について検討した。
著者
山下 淳
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2003

本研究では,方向変化が可能な複数台の視覚センサを持つロボットに対して,複数観測戦略を導入することで環境認識の確実性を向上させたロボットの行動設計手法を提案する.具体的には,(1)観測精度の向上と(2)視界の明瞭さ向上を目的とする.ここで,人間の目の可動範囲は限られているため,主にステレオ視のみで物体との位置関係を推定する.一方,ロボットの場合は可動範囲の制限がないため,(1-a)ステレオ観測(同じ物体を複数カメラで観測),(1-b)灯台式観測(別の物体をそれぞれのカメラで観測),(1-c)複合型観測((1-a)と(1-b)の組み合わせ)など同じ場所で環境認識を行う際においても,複数観測戦略を採ることができる.そこで,各方法の観測精度を向上させるとともに,状況に応じて観測戦略を切り替えることで,(1)を解決した.具体的には,環境中の目印となる物体の配置や個数などに応じて最適なロボットの移動経路・観測地点・観測戦略をそれぞれ計画する手法を構築した.ここでは,特にロボットのカメラの性能や移動性能に応じた行動設計方法を提案した.さらに,計画手法を改善することにより,行動設計に必要な計算時間を短縮した.また,悪天候時にはカメラの保護ガラス面に水滴や泥が付着するなど,常に明瞭な視界が得られるわけではない.そこで,(2-a)同じシーンを観測中の複数カメラの情報融合,(2-b)カメラ方向を変化させることにより得た単体カメラからの時系列情報融合,によってそれぞれ(2)を解決した.具体的には,視差のあるステレオ画像について,ノイズが付着していない部分の情報を組み合わせることで明瞭な画像を生成する方法を構築した.また,移動物体が存在する状況においても視野明瞭化を行う手法を提案した.
著者
江口 啓
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2008

本研究においては、パックテストの水の変色の度合いを数値に変換する比色計を開発した。提案の比色計は、試薬と試験水を注入した廃品のプラスチックカップに光をあて、その光の透過度を電圧値として取り出すものであり、色覚異常というハンディキャップを背負った生徒に対する環境教育補助ツールとして活用できる。また,廃プラスチックを再利用しているため、水質調査だけでなく再利用という面でも環境教育を行うことができる。提案教材については、試作評価と実践授業を行うことで、その有効性を明らかにした。
著者
泰中 啓一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

20世紀の末には、計算機科学の手法が生物学において重要な役割を果たすようになってきた。本研究代表者と九州大学の松田博嗣氏は、1980年代(同時期)に格子ロトカボルテラ法という方法をそれぞれ独自に開発し、生態学や生物進化に適用してきた。当時としてはセルオートマトンが空間パターン解析の主流であったので、乱数を大量に使ったこの新しい方法は珍しいものであった。大規模計算であるため、日本の2つの研究室以外では、ほとんど行なわれていなかった。しかし今世紀に入り、コンピュータの発達と伴にこの格子ロトカボルテラ法は世界中で使われるようになってきた。我々はこの手法を通じて、集団レベルでのリダンダンシーの重要性を見出した。数理的な手法を用いて生物進化および生態学の最適化問題や適応問題を研究してきた。そのため、主として格子上のシミュレーションによって進化と絶滅を研究してきた。研究代表者は、「格子ロトカボルテラ模型」という格子上の確率模型によって生物の個体群動態を研究してきた。それにより、多くの新しい知見を得た。とくに長期的応答の研究である:生態系の短期的応答は比較的簡単に予測できることはよく知られているが、長期的応答は予測が不可能となることが分った。Eco Mod.やEPLのレフェリーから"great importance","beautiful model"などと評価された。また新聞でもその内容が報道され、また成果は、新書や単行本として出版された。
著者
川田 善正
出版者
静岡大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2008

本研究では、アキシコンプリズムを用いた新しい表面プラズモンの励起法を提案するとともに、表面プラズモンを局在化させて、高いクウカン分解能をもつ表面プラズモン顕微鏡を実現し、局在プラズモンによる新しい結像理論を構築することを目的として研究を進めてきた。円錐形状のアキシコンプリズム側面で表面プラズモンを励起し、それらをプリズム先端まで伝搬させ、プリズム先端に大きな電場増強を実現することが目的である。特に提案手法の有効性を検証するために、フレネルの多層膜反射計算手法から最適なプリズム形状を設計し、実際に試作した。金属には金を仮定し、ガラス基板上にコートするクロムと金薄膜の最適膜厚、プリズムの頂角を設計した。試作したプリズムにレーザー光を入射し、プリズム側面で表面プラズモンが励起され、反射光が減少することを確認した。表面プラズモンはp偏光によってのみ励起されるので、入射光の偏光状態回転させることにより、反射高強度の減少する方向が変化することを確認した。また、蛍光薄膜を試料として用い、表面プラズモンにより、蛍光を励起することを試みた。本実験は、近赤外レーザー光を用いた2光子励起による蛍光発光である。さらに、全反射の際に生じるエパネッセント波を用いて、プリズム先端と試料との距離を制御するシステムを開発した。試料表面に局在化するエパネッセント波をプリズム先端で散乱させ、その強度を測定することにより、数ナノメートルの分解能で試料とプリズムの距離を制御した。
著者
大村 知子
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

本研究は、身体機能に障害のある者や高齢者、幼児が着脱しやすいバリアフリーの衣服設計に関する基礎的研究であり、研究目的は、バリアフリーの衣服デザインのための基礎資料を得ることであった。先ず、着用実験の方法に関する検討をした。着用実験用に6種類の留め具のブラウスを試作した。着用実験では、上肢に障害を想定したケースと視覚障害のケースを設定した。被験者は健常な学生29名と中途失明者1名であった。着脱動作の所要時間を分析した結果、障害の種類によって使いやすい留め具は異なった。着脱動作についての感覚評価においても所要時間と同様、袖口のカフスはもっとも難易度が高く、いずれの留め具でも、またどちらの障害においてもバリアが大きかった。他方、中国の高齢者の体型を捉える目的で、2000年11月に中国ハルピン市において100名を被験者として、62項目の身体計測をした。その結果、高齢者の体つきや身体寸法は、若い婦人とは、明らかに異なった。日本人高齢者の体型とも異なることが明らかになった。既製服におけるサイズ不適合な部位に関する実態調査の結果について解析中である。
著者
篠原 和大
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

日本列島中部地域の農耕の形成について、特に本格的灌漑水田農耕成立以前の実態を明らかにする目的で調査・研究を行った。特に、静岡市手越向山遺跡の調査では、弥生時代中期前半に遡る可能性の高い畠状遺構を検出した。このような成果を含めた分析から、本格的農耕導入以前に、小規模集団がある程度選択的に各種の農耕形態を受容したことが考えられるようになった。また、静岡清水平野の事例の分析などから具体的にどのように農耕が形成されたかをモデル化することができた。
著者
鈴木 淳史 国場 敦夫 中西 知樹 アンドレアス クリュンパー フランク ゲーマン
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

有限温度における一次元量子系の相関関数に関する定量的評価のため、量子転送行列の方法と完全WKB法を組み合わせる事により、近似によらない新しい定量的方法を確立することができた。この具体的な応用としてスピン1/2の量子磁性鎖に適用することにより相関関数および量子的もつれの磁場、温度依存性等に関する多様な振る舞いを発見した。