- 著者
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上杉 忍
- 出版者
- 静岡大学
- 雑誌
- 一般研究(C)
- 巻号頁・発行日
- 1985
昭和60年度の経過:5月の日本西洋史学会第35回大会において1935年アラバマ州におけるわたつみストライキについて報告し, これを基礎として, 秋に約1ケ月の現地調査および, アラバマ大学サラ・ウィギンス教授, オーバン大学ウェイン・フリント教授, フロリダ大学ウィリアム・ロジャーズ教授らとの研究交流を行なった. この過程で, このストライキがけっして, 局部的な事件ではなく, 全国的な重要性を持っていること, それにも拘らず, その資料的制約のゆえに従来, 充分研究されてこなかったこと, アメリカでもこの運動に対する関心が高まり, 研究をはじめている若い研究者がいることが分ってきた.昭和61年度の経過:1935年のストライキの経過とその意義について論文を執筆し, 『西洋史学』に掲載した. ここでは, ニューディールの農業救済政策がこのストライキ運動といかなる関係にあったかについても見通しを与えた. その後, この運動を指導したアメリカ共産党の南部農業政策, 活動について検討を始め, アメリカで入手した農業・南部担当共産党幹部レム・ハリス・ペーパーを検討した.昭和62年度の経過:アメリカ共産党の政策とシェアクロッパーズ・ユニオンの成立に関する論文を執筆し, 『歴史評論』に掲載した.1930年代の南部農村の変貌過程に関する最近のアメリカにおける研究は活況を呈しており, 藤岡惇『アメリカ南部の変貌』(青木書店, 1985年)に対する書評『歴史学研究』564号執筆の過程で整理したが, 私は, 今後, 本補助金をうけて行なった実証研究を基礎に, アラバマ州ブラックベルトの社会史を一冊の研究にまとめあげる予定である.