著者
深尾 正之 斉藤 愿治 小村 浩夫 神藤 正士
出版者
静岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1991

この研究は、通常の雪かきモデルの成立するピンチプラズマと異なり、高速電子成分を含む非平衡プラズマを生成することが目的である。その方法として、放電電圧印加後にガスを導入して点孤させる爆燃放電を採用した。通常のガスパフZピンチプラズマ型の構造を持つ放電電極を用い、電極間に並列に接続したインダクタンスに電流を流して、予め電極に電圧を印加した後に、ガスを導入することにより、爆燃モ-ドとした。これにより、通常のガスパフZピンチ放電との比較を行なうことができた。電源には、3.75μFの低インダクタンス高速キャパシタ-及びギャップスイッチを用い、20kVまで印加した。非平衡プラズマでは、数keVの電子を多数生成する必要があり、印加電圧を低く抑えた。X線発生量の時間依存計測は、表面障壁型ダイオ-ド(SBD)とアルミニウム・フィルタ-を組み合わせて行った。X線放出量が多く、SBD出力が飽和するのを避けるために、直径1mmのピンホ-ルで絞り、かつプラズマから80cmの距離をおいて測定した。これまで、X線収量の放電電圧依存性を測定してきた。従来型Zピンチプラズマでは、電圧の上昇とともに、X線量が急上昇するのに対し、爆燃放電では、X線発生量が充電電圧に余り依存しないという特徴のある依存性が明らかになったが、X線収量の絶対値は、同程度ないし、後者の方が少ないという結果しか得られていない。X線放出の空間分布は、ポラロイドフィルムを用いたピンホ-ルカメラで測定した。放電条件により、プラズマ及び電極から放出されることが判った。並行して、X線スペクトルの測定を目的とする、プロポ-ショナルガスカウンタを試作してきた。これまでに、^<55>Feからの5keV X線にたいしてFWHM15%程度の性能を得ているが、信頼度・再現性の改善がなお必要である。
著者
丹沢 哲郎
出版者
静岡大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2008

本年度は、約1週間にわたりBSCS本部を訪問し、BSCS設立後カリキュラムが出版されるまでの約5年間(1958-1963)の関連資料収集をまず行った。収集資料は300ページを超える量となり、スタッフ間の書簡、会議議事録、報告書、書籍等から収集を行った。そして、BSCSのディレクターであるJanet Carlsonや、カリキュラム開発センター・ディレクターのPamela Von Scotterらと意見交換を行った。彼らからは、この意見交換の中でも各種の参考文献を紹介してもらい、帰国後古書店等を通じて貴重な資料収集を行うことができた。続いて、これら収集資料の分析を行った結果、「BSCSのカリキュラム開発の方針決定に関しては、初代ディレクターであるArnold Grobmanが決定的な役割を果たしていたこと、またSteering Committeeがその重要な会合に位置づけられていたこと、さらに各種のマスコミ報道を巧みに利用しつつ科学的リテラシーの考え方も取り入れた方針を確定していったこと、しかし科学的リテラシー概念をかねてより強く主張していたPaul Hurdが、実はBSCS内ではそれほど大きな影響力を及ぼしていなかったこと」などが明らかとなった。
著者
奥谷 昌之 村上 健司
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2010

近年、製膜技術は様々な方式が開発・実用化されているが、その多くは高温加熱や真空を要する。最近は低融点材料基板上への製膜の需要が多く、本研究グループでは沿面放電技術に着目した。沿面放電は誘電体バリア放電に分類され、常温・大気圧下で高エネルギープラズマが平面上に発生することが特徴である。本研究では、この技術を酸化亜鉛の製膜へ応用するとともに、ダイレクトパターニングへの利用を試みた。
著者
本橋 令子
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

網羅的タンパク質解技術(プロテオミックス)を利用し、葉緑体からクロモプラストへの分化に関与するタンパク質を同定することを目的に実験を行った。まず、成熟段階の異なるマイクロトム果実(緑、黄、オレンジ、赤)よりプラスチドを単離し、各ステージのプラスチドタンパク質をLC-MS/MSを用いたショットガンプロテオーム解析により約440を同定した。2番目に、白、黒やオレンジ色の果実を持つ変異体や栽培系統を集めた。2次元電気泳動法により、それら果実のクロモプラストのプロテオームデータを野生型のマイクロトムの4つのステージのプロテオームデータと比較し、クロモプラスト分化や成熟、果実色に関与するタンパク質を同定中である。
著者
東郷 敬一郎 JIANG Y.P. JIANG Y. P.
出版者
静岡大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2008

平成21年度は,以下の2項目について研究を進めた.1.ナノ粒子分散複合材料の増分形損傷力学モデルの開発申請者らが開発している粒子分散複合材料の損傷理論を基に,粒子近傍のひずみ勾配効果による変形特性の粒子寸法効果と損傷過程の粒子寸法効果を考慮した力学モデルを開発した.また,新たなモデルとして,粒子-マトリックス界面層を考慮した微視力学モデルを開発し,界面層による粒子寸法効果を明らかにした.これらの開発したモデルを有限要素法に組込み,ナノ粒子分散複合材料中の切欠き・き裂など構造部材の解析を可能とした.2.ナノ粒子分散複合材料の作成粒子寸法の異なるシリカ粒子とエポキシからなる数種類の粒子分散複合材料を遠心遊星混練機,超音波分散器あるいは射出成形機を用いて作製した.強化材の樹脂マトリックス内への分散度について走査型電子顕微鏡について観察した結果、一様に分散している部分と凝集している部分が観察された。作製した複合材料について,強度特性を調べた結果、粒子体積率の影響は認められたが、粒子寸法の影響は顕著ではなかった。ナノ粒子分散複合材料の特性発現機構を明らかにするためには、さらに細かなナノオーダーの粒子を分散させた複合材料を作製し、検討することが必要である。
著者
今野 喜和人 田村 充正 南 富鎭 桑島 道夫 花方 寿行 山内 功一郎 トーマス エゲンベルク
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

異文化間に生じる「恋愛」「結婚」を扱った世界各国の近現代文学、および「恋愛」「結婚」を語る諸言語テクストの影響関係や翻訳において発生する文化衝突と誤解を多角的に分析し、現代におけるナショナリティ・文化・エスニックグループ、ジェンダー・世代・ミリュー等々の間の政治的・社会的支配/被支配の構造と歴史観を分析・検証することで、「異文化理解」にまつわる諸問題を明らかにした。
著者
諏訪部 真 白畑 知彦
出版者
静岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

本研究・調査で、1において大学入試センター「外国語」(英語)」試験にリスニング・テストの導入が種々の面から検討の上、望ましいことを述べ、2では実際の導入の際にある問題点を明らかにした。1.大学入試センター「外国語」(英語)」リスニング・テスト導入に関して。1.1大学入試センター「外国語」(英語)」試験の目的、特質など。(平成8年度(1996)の英語の受験者数は530,734人であり、センター試験受験者の92%が受験する科目である。因みに他の外国語ドイツ語、フランス語の平成8年度の受験者はそれぞれ197人212人である。1.2リスニング・テスト導入に対する諸団体の要望(文部省協力者会議も含む)。1.3.新高等学校学習指導要領外国語(英語)・(評価としての)生徒指導要録外国語(英語)、特に新教科オーラル・コミュニケーションA/B/C/とリスニング・テストとの関係の詳説。1.4「外国語」(英語)」試験に対する大学入試センターの対応1.5リスニング・テスト導入の背景にある諸問題。(1)全国の公立高校入試でのリスニング・テスト(ヒヤリング・テスト)の実施状況、テスト内容の調査。(2)新教科オーラル・コミュニケーションA、同Bに使用される文部省検定教科書の採用数。(3)教室でのオーラル・コミュニケーション活動に大きな影響を与えている外国人教師(ALT)とティーム・ティーチング。(4)現在国内で実施されている諸資格テストの調査(英語検定、TOEFL、TOEIC、国連英研)。(5)大学入試センター「外国語」(英語)」試験と国際バカロレア、アビトウア試験(ドイツ)、大学入学資格検定試験の各英語試験の内容比較。2.大学入試センター「外国語」(英語)」リスニング・テストを実際に行う際の問題点として。2.1大教室(階段教室)での音源1(普通テープコーダー)による大学院生・学部生(英語専攻)を対象に、TOEFLレベルのテストを実施、座席位置による成績の違い、受験者のアン-ケ-トの実施。2.2やや大きい教室で大学1年生を対象に音源1での日本人向けのリスニング・テストを実施し、座席位置、問題文の繰り返しによる成績の違いを調査。2.3大学入試センター「外国語」(英語)リスニング・テスト調査検討委員会」のモデル大学(静岡大他3大学)での実地調査の問題の作成・録音と、静岡大学(100名の大学生)でのテスト実施(大教室及び小教室、スピーカーによる一斉聴取及び各自のCDプレーヤーによる)と結果の討議。2.4リスニング・テスト(パイロット)問題の作成と望ましいリスニング・テストの提案。
著者
白畑 知彦
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1996

平成10年度は3年間の研究期間の最後の年度であった。最終的に、観察を継続的におこなうことのできた被験者は、チャンチャン(中国人児童)、ジョシュア(ニュージーランド人児童)、ベン(オーストラリア人児童)、シジネイ(ブラジル人児童)、そして、ルーカス(ブラジル人児童)の5名であった。ジョシュア(1年間)を除き、残りの4については2年間以上、1-2週間の間隔で継続的に発話データをとり続けることができた。その結果、莫大な量のデータを収集することができ、極めて貴重なものになると確信している。発話データは60分テープ300本に及ぶ。今年度の研究内容は以下の通りである。(1)夏休み期間を利用して観察データを文字化した。文字化とパソコンへの入力作業は学生に依頼して毎年夏休み期間中におこなっている。文字化作業は終了した。(2)格助詞を構造格(「ガ」と「ヲ」)と内在格(その他の格助詞)に分け、第2言語獲得者が両者を心理的実在として認識しているかどうか分析した。観察結果は第2言語学習者であっても、両者を区別していることが判明した。(3)「ノ」の過剰生成現象の調査。日本語の連体修飾構造において、「大きいノ犬」は非文法的である。この「ノ」の過剰生成は母語を獲得する過程で観察されるが、第2言語の場合でも同様の現象が生じることを明らかにし、それを説明づけた。(4)語順と項構造の省略を調査した。この分析に関しては、2名の英語母語話者のものしか現在までの所終了していない。すなわち、英語は主要部先行型言語であり、日本語は主要部後行型言語である。また、英語は語順の制約が厳格であるが、日本語は語順が比較的自由な言語である。さらに、基本的に英語は項を省略できないが、日本語は文脈が許す限り項を省略できる。このような特色を持つ英語を母語とする子どもが相対する日本語を第2言語としてどのように獲得していくのかを調査した。
著者
関谷 和之 安藤 和敏
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

相互評価であるAHP, ANP, DEAにおける理論と応用の両面からの展開とその融合研究を行った。一対比較行列に対する最小χ二乗法の開発, 固有ベクトル法による超行列分析の開発, 多重DEA解に対する対処などの理論的貢献とこれらの成果の多様な分野への適用による事例研究における応用面での貢献を得ることができた。これらの研究成果は、国内外の科学雑誌に掲載され, 国際会議等で口頭発表を実施した.これらの研究活動により, 国際交流の活性化し, 国内における意思決定法の研究の中心的役割を果たすことができた。
著者
高坂 哲也
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究は科学研究費補助金(基盤研究(C))により種々の知見を得た。以下にその主要な成果を記す。ブタ精子へのリラキシン蛋白の暴露処理により、精子の生存率は平均77%ど高い割合を示し、クロロテトラサイクリン(CTC)法による精子の受精能獲得および先体反応の割合は、いずれも平均40%ときわめて高い誘起率を示したことから、リラキシン蛋白は高生存率かつ高効率でブタ精子の受精能獲得及び先体反応を誘起させる確証を得た。このようなリラキシン暴露処理精子においてタンパクチロシンキナーゼ(PTK)活性はインキュベーション時間の経過とともに上昇し、4時間後には10U/10^8 cllsときわめて高い値を示した。さらに、ウェスタンブロット法による解析から、暴露処理精子では約30kDaの位置に特異的なリン酸化タンパク質のバンドを見出すことができた。次に、約30kDaの付近に存在するリン酸化タンパク質の2次元電気泳動・プロテオーム解析の結果から、精子の受精能に関与する興味深いタンパク質である可能性が示唆され、基質分子の塩基配列決定に資する知見を得た。さらに、このリン酸化標的分子のcDNAクローンを鋳型として、pMALC2プラスミドに導入して発現ベクターを構築し、MBP(マルトース結合蛋白)との融合蛋白として発現さたることができた。この組換え体を抗原としてウサギに免疫し30kDaの基質分子のみを特異的に認識する抗体を得ることができた。この抗体を用いて光学顕微鏡レベルで精子のタンパクチロシンリン酸化部位を調べたところ、精子先体と中片部に局在していた。
著者
畑 俊明 増田 好治 須見 尚文 松永 泰弘 紅林 秀治 江口 啓 碇 寛
出版者
静岡大学
雑誌
特定領域研究
巻号頁・発行日
2005

(1)児童生徒自身でつくる「手作りセラミックス磁石」の創造的思考力に及ぼす効果児童は、石ころが磁化装置の中で簡単に磁化される状況に接すると、今までの磁力は絶対的なものであるという概念が一瞬にして崩壊し、磁力が付加できるものであるという概念が構築されると、磁力についての新しいイメージができあがり、磁石に異常に関心をもつようになる。本年度は、この実践を科学の祭典静岡大会、富士サイエンスプロジェクト、日本未来館での研究成果展示会などのイベントに参加し積極的に活動した。しかし、あくまでも、授業実践が主体であるので、静岡市の長田東小学校5年生を対象に、方位磁針を作成する授業を実践し手づくり方位磁針の製作を通して、子供達の独創性を刺激した。この創造的思考力が付く過程を脳科学的解析により解明すべく、他の脳科学者との交流も深めた。(2)児童生徒自身でつくる「手作りセラミックス磁石」利用での創造的思考力に及ぼす効果セラミックス磁石を応用したものづくり学習法は種々考えられるが大きくは2領域に限定する。それは、電気領域でのものづくり学習と、機械領域でのものづくり学習である。電気領域を担当するのは増田好治、江口啓で、増田・江口は、セラミックス磁石を用いたモータとそれを利用した発電機を教材化し、機械領域を担当する須見、松永は、磁気ライントレース型ロボットの教材化に取り組んだ。手づくりペットボトルモータの実践は、富士サイエンスプロジェクト、科学教育学会、静岡大学共通教育で実践し、子供たちの創造性を高めることに成功した。また、磁気ライントレース型ロボットでは、児童生徒が自分自身で「手作りセラミックス磁石」を作製しこれをレールとして利用し、その磁力を感知する新しいアイデアでのロボコン製作を行う教材を開発した。これらについて、紅林は教材としての価値について総合評価を行い優れていると判定している。
著者
林部 敬吉 雨宮 正彦 中谷 広正
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究では、日本の伝統工芸技能の伝承方式を、楽器製造、鋳型成型、板金成型、印刷産業などの諸工業での世代間継承に生かすための方策について研究した。「わざ」の伝承には、習熟者と伝承者との間で暗黙知から暗黙知、暗黙知から形式知、形式知から形式知への交換と循環があり、暗黙知-暗黙知過程での継承者が作成した「継承ノート」、暗黙知から形式知過程で熟練者が作成した「伝承ノート」が継承と-伝承を効果的に媒介していた。本研究では、これらの「伝承ノート」と「継承ノート」を電子化した「伝承-継承WEBNOTE」を試作し、継承者と伝承者の間をつなぎ「わざ」の交流の場として知識を共有できる機能を持たせた。ここでは、技能を図解し、その要点を記すと共に、熟練者は継承者にコメントを、継承者は熟練者に質問することが可能である。このWEBNOTEでは、伝承-継承過程を記録・保存し、また誰でも他者が修練を積む過程を参照できる。
著者
小林 道生
出版者
静岡大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、わが国の保険契約法立法の審議過程における議論状況をふまえ、保険者・保険募集人の情報提供義務を保険契約法の枠組みのなかで規律していくべきか、あるいは、保険監督法における情報提供規制に委ねるべきかを主たる課題とし、前者の立法形式を採用するドイツ法との比較法研究も交えながら、保険契約者保護を図るうえでの望ましい立法や規制のあり方、関連する個々の論点について検討を行った。
著者
上杉 忍
出版者
静岡大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1985

昭和60年度の経過:5月の日本西洋史学会第35回大会において1935年アラバマ州におけるわたつみストライキについて報告し, これを基礎として, 秋に約1ケ月の現地調査および, アラバマ大学サラ・ウィギンス教授, オーバン大学ウェイン・フリント教授, フロリダ大学ウィリアム・ロジャーズ教授らとの研究交流を行なった. この過程で, このストライキがけっして, 局部的な事件ではなく, 全国的な重要性を持っていること, それにも拘らず, その資料的制約のゆえに従来, 充分研究されてこなかったこと, アメリカでもこの運動に対する関心が高まり, 研究をはじめている若い研究者がいることが分ってきた.昭和61年度の経過:1935年のストライキの経過とその意義について論文を執筆し, 『西洋史学』に掲載した. ここでは, ニューディールの農業救済政策がこのストライキ運動といかなる関係にあったかについても見通しを与えた. その後, この運動を指導したアメリカ共産党の南部農業政策, 活動について検討を始め, アメリカで入手した農業・南部担当共産党幹部レム・ハリス・ペーパーを検討した.昭和62年度の経過:アメリカ共産党の政策とシェアクロッパーズ・ユニオンの成立に関する論文を執筆し, 『歴史評論』に掲載した.1930年代の南部農村の変貌過程に関する最近のアメリカにおける研究は活況を呈しており, 藤岡惇『アメリカ南部の変貌』(青木書店, 1985年)に対する書評『歴史学研究』564号執筆の過程で整理したが, 私は, 今後, 本補助金をうけて行なった実証研究を基礎に, アラバマ州ブラックベルトの社会史を一冊の研究にまとめあげる予定である.
著者
淺間 正通 堀内 裕晃 山下 巖
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

本研究では、電子辞書に依存する英語学習者の読解ストラテジーに焦点を当て、未知語推測における手掛かり処理(ワードアタック)が旧来の印刷体辞書利用時における辞書引きプロセスに比すと、著しく短絡的方途によるものであろうことを仮説設定し、その証明を行うとともに、電子辞書に付随する種々の問題点の所在をあらためて明確にし、その結果に基づいての辞書引き矯正のためのプログラム開発を行った。
著者
平岡 義和
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、聞き取り調査とその分析を中心にして、水俣病が生起した時期において、人々が水俣病をどのようなものととらえていたのか、当時の生活の変容とともに考察する試みである。その中で、多くの人々が、危険なのは弱った魚であるといった日常知に基づく解釈のもと、魚介類を食べ続けたことが明らかになった。また、この時代は、水俣においても、都市的生活様式の普及が急速に進み、地縁、血縁が希薄化し、家族の独立性が高まったことが示唆された。
著者
花井 信 柏木 敦 谷 雅泰 三上 和夫
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1999

日野村は、三方を山に囲まれた、扇状地一帯に開けた。米を除けば、産業の主力は桑栽培であり、次いで木材・炭である。人口構成は、日露戦争後の時期でいうと、年齢に応じたピラミッド型を形成している。結婚世帯の増加による児童増であり、村の再生産にとって大きな意味を持つ。学校設置の地域については、日野村の産業の中心地である、間山区に置かれた。人口集密区でもあったのだろう。学校暦、たとえば休日については、地域の農繁期にあわせて学校も休日になる、村の神社の祭日にあわせて学校は休日になるなど、地域一体型といえる状況であった。学校行事としての運動会は、明治期には登場しない。山間僻地ともいえるところでは、運動会として行くところも近在にはなかったのだろうか。明治30年代になって、同窓会・夜学会・青年会が結成され、活動を開始する。それらに学校教師が参加し、学校をそれらの活動場所として提供する。学校と地域社会の連携が、この時期から始まると見ていい。子守などの仕事で学校に来られない子どもに対しては、特別学級が作られて、受け皿を用意した。貧しい農村にあっては、その状況に応じた学校態勢が必要だったのである。これを慈善的教育と考えるのではなく、地域に応じた学校づくりと積極的に評価すべきである。
著者
渡辺 修治 山野 由美子 原 正和
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

1.バラRosa damascena花弁に含まれるdamascenone香気前駆体の解明R. damascena Mill.花弁抽出物よりdamascenoneを与える前駆体2種、megastigma-6,7-dien-3,5,9-triol 9-0-β-D-glucopyranosideを単離同定した。また、それぞれの立体中心も別途不斉合成した化合物と直接比較することにより決定した。合成も含めこれらは論文発表済みである。2.茶飲料製造過程で生成するdamascenone香気前駆体の解明茶飲料製造時、滅菌過程で異臭となる化合物が生成する。これらの一部がdamascenoneであることからこの前駆体3種を単離し、それぞれの立体中心も決定した。また、それらの生成経路についても考察した(論文投稿準備中)3.C13-ノルイソプレノイド生成酵素(カロテノイド分解酵素)の解明バラ花弁、果実(スターフルーツ、クインスフルーツ)、茶葉、キンモクセイなどはdamascenoneだけでなくiononeなどのC13-ノルイソプレノイドを特徴的香気成分として生成し、発散する。これらの生合成起源と考えられるカロテノイドを基質としてカロテノイド分解酵素を探索した。その結果、上記の植物中に当該酵素の存在を明らかとし、かつ、酵素の生化学的性状、基質特異性の解明、生成物の同定に成功した。これらの研究成果のうちスターフルーツ、クインスフルーツについては論文に既発表である。
著者
BALDERMANN Susanne (2009) 渡辺 修治 (2007-2008) SUSANNE B.
出版者
静岡大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2007

ンモクセイにおけるβ-,α-ionone生合成・発散制御に関わるカロテノイド分解酵素・遺伝子:カロテノイド分解酵素遺伝子ofCCD1の発現レベルの明暗変動(明期に高く暗期に低い)リズムが、分解産物であるC13-ノルイソプレノイド系香気成分β-,α-iononeの明暗発散ズムと一致することを明らかにし、本酵素がβ-,α-caroteneを分解してβ-,α-iononeを生成することも明らかにすると共に香気特性の変化にも言及した(J.Expt.Botany,in press)。色調変化に伴って香気成分を生成・発散する中国バラにおけるカロテノイド,分解酵素,香気成分の変動:各開花段階にあるRosa chinensis Mutabilisの花の香気成分、カロテノイド、アントシアニン、およびカロテノイド分解酵素の消長を明らかにした。ノリの香気成分、色素とカロテノイド分解酵素:浜名湖周辺で採取した新鮮ノリからC13ノルイソプレノイド系香気成分生成に関与するカロテノイド分解酵素を生成し、その生化学的特徴、および、本酵素がβ-,α-caroteneを分解してβ-,α-iononeを生成する等の機能解析に成功した。ノリの実験室内培養系を確立し、本培養によって得られたノリのC13-ノルイソプレノイド系香気成分としてβ-,α-iononeを同定し、同時にβ-,α-caroteneを同定した。チャ花のカロテノイドおよびカロテノイド起源生理活性物質:チャ花の生殖器官よりカロテノイドおよびその分解生成物として植物ホルモンであるABAを同定すると共に、その消長を明らかにし、花弁の展開との関係を明らかにした。
著者
大川 清 大野 始
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

樋口ら(1993)は開花の主要因により光周期性、温周期性、栄養・生殖生長周期(VR)型の3タイプに分けて、花卉の類型化を行った。この類型は多様な花卉を発育相と開花誘導要因により類別化した画期的なものであるが、世界各国で実施された生育習性および花卉の開花調節の研究の大部分は生育相の視点から研究されておらず、莫大な論文が発表されている割には類別するための肝心なデータが不十分なものが多い。研究代表らが現在までに実施した花卉の生育習性と開花調節のデータから、該当するものはつけ加えた。しかし研究代表らが実施した花卉の中ではアネモネ(発芽と花芽分化・開花に質的要求無し。10℃、4〜5週間処理で切り花本数と品質が高まる)、ステファノティス(花芽分化は中温で促進、高温で抑制。花芽分化後は高温が開花を促進、分化後低温では長日が開花を抑制、短日は著しく抑制、花芽分化に日長は関係しない)、スクテラリア・バイカレンシス(花芽分化・開花に日長と温度に対する質的要求無し)、ヒメヒマワリ(花芽分化と開花に温度に対する要求無し、日長に対しては質的要求性のある長日植物)、カンパニュラ・ラクティフローラ(花芽分化・開花に低温の質的要求無し、日長にたいして質的要求性のある長日植物)などは樋口らの類型に入らないことが明らかになった。竹田(1999)は環境条件によって変化する発育相よりも、環境に対する反応の違いに着目して類型化したほうが応用場面において利便性が高いと考えて、主な栄養生長期間、開花時期、開花に対する温度と日長の影響によって区分している。いずれにしても、花卉の生育習性の類型化に際しては春化や休眠をはじめ用語の明解な定義が必要である。