著者
竹之内 宏 徳丸 正孝 村中 徳明
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.38-53, 2011-02-15
被引用文献数
2

本論文では,多くの人の感性を用いた対話型進化計算(Interactive Evolutionary Computation:以下 IEC)として,2点嗜好法を適用した複数参加型トーナメント方式を用いた対話型遺伝的アルゴリズム(Interactive Genetic Algorithm:以下 IGA)を提案する.これまでに提案されている多くのIECシステムは,ユーザが1個人の場合を対象としている.このため,多くの人が納得する解を得ることができない.そこで本論文では,Web上から多くのユーザの感性を投票として獲得し,IGAの解評価に用いることを想定した多人数参加型のシステムを提案する.提案システムのように,多くの人が投票により解評価を行うIECインタフェースとして,これまでに複数参加型トーナメント方式が提案され,シミュレーションにおいて有効性が検証されている.しかし,実際のWebシステムなどで投票獲得を想定した場合,投票に参加するユーザ数を推定することは困難である.そのため,複数参加型トーナメント方式においては,解評価に必要な投票数を獲得できず,トーナメント対戦を進行させることができないといった問題が想定される.このような問題を解決するためには,獲得した投票の効率的な利用が求められる.そこで,統計的手法である2点嗜好法により,トーナメント対戦の勝敗結果を判定しトーナメントの効率化を図る.2点嗜好法の適用により,投票開始からより早い段階で解候補の優劣を判定できると考えられる.本論文では,シミュレーションにおいて,提案手法の有効性を検証した.シミュレーションにおいては,実際のユーザの代わりにビット列で作成された評価エージェントが解評価を行う.シミュレーション結果より,提案手法において,解評価に必要な投票数が約80%減少されることが確認された.さらに,従来の複数参加型トーナメント方式を比較手法とした性能比較を行った.その結果,提案手法は,トーナメントの効率化という観点より,有効であることが確認された.
著者
真部 雄介 齋藤 隆輝 嶋田 弦 菅原 研次
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.988-1001, 2012
被引用文献数
4

バイオメトリクス認証技術の中でも行動的特徴を用いた手法の開発は,様々な分野での応用が期待される重要な研究課題である.行動的特徴を用いる方法の中で最も代表的なものは歩行・歩容(gait)認証であるが,近年では,歩行動作を正面から観測して個人を特定することが可能となってきている.正面観測による歩行認証は,人間が個人を特定する方法との親和性や歩行対象者を観測する機器の設置条件などの点で応用上優れた利点を備えているとされており,このような利点を生かした技術の開発は,ロボットへの自然な個人認証機能の実装や実世界の状況や文脈に応じて妥当な処理結果を出力するような個人適応型のコンピュータシステムの開発にとっても重要な意義があると考えられる.そこで本論文では,正面方向から観測が可能な特徴量である歩行時の頭部動揺時系列に加え,顔画像および身体骨格から計量される寸法を用いた個人認証手法を提案する.頭部動揺時系列,顔面寸法,身体寸法のそれぞれの類似性を DP マッチングおよびユークリッド距離により独立に評価し,評価結果をAND/OR演算またはファジィ推論により融合することで個人認証精度の向上を実現する.利用するこれらの特徴量は,一定の個人性を含んではいるものの,それ単体では必ずしも個人を特定することができないと考えられる特徴であり,ソフトバイオメトリクスと呼ばれるものの一種と考えることができる.7人の被験者に対する個人認証実験の結果,提案する融合方法によって,本人棄却率0%の下で平均他人受理率0%を達成した.単一の特徴量のみを用いた個人認証の場合と比べ,利便性を維持したまま照合精度を改善できることを示す.
著者
大塚 真吾 宮崎 収兄
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.717-727, 2012

本論文では,働く女性を対象としたWebページ閲覧行動についての調査を行うために,都内の働く女性を対象としたフリーマガジンと連動するサイトのアクセスログの分析を行った.アクセスログ解析では一般的にアクセスをしたユーザの性別や年代を推定することは難しいが,本論文では働く女性が興味を持つコンテンツのみを提供しているサイトという特徴を活かすことで,特定のユーザ層に関する閲覧行動の抽出を試みた.解析結果から,ユーザの特徴的な行動パターンを発見することができた.
著者
稲邑 哲也 タン ジェフリートゥ チュアン 萩原 良信 杉浦 孔明 長井 隆行 岡田 浩之
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.698-709, 2014

ロボカップ@ホームはHuman-Robot Interaction (HRI) 研究の発展のために,今後重要な位置づけを持ったコンペティションである.HRIにおける研究開発では,膨大な量の対話実験による経験データベースが必要となる場合が多いが,実機のロボットでは実験実施のコストが高く,また,シミュレーションでは人間とロボットとの身体的インタラクションに制約が生じる.そこで,没入型のユーザインタフェースと,複数のクライアントが同時に同一の仮想世界にログイン可能な機能の双方をロボットシミュレータに搭載し,HRI研究を促進させることの可能なロボカップ@ホームシミュレーションの枠組みを提案する.また具体的なシステム実装に必要となる基盤技術の設計指針を示す.
著者
益子 行弘 萱場 奈津美 齋藤 美穂
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.186-197, 2011-04-15
参考文献数
32
被引用文献数
1

これまで「笑顔」は「喜び」の感情が表出した表情として扱われてきた.しかしながら「笑顔」には「喜び」といったポジティブな感情だけでなく,「苦笑い」などネガティブな感情を示す語も日常的に用いられる.本研究では,日常用いられ,意味の違う5種類の「笑い」語から表出された表情について,表情の変化量とポジティブ度から分類を行った.クラスター分析およびクラスター間に検定を行い,変化量が小さくややネガティブな笑顔,変化量が中程度でポジティブ度も中程度の笑顔,変化量が大きくポジティブ度も大きな笑顔の3つのクラスターを設定した.さらにこれらの特徴を検討するため,運動解析ソフトを用いて顔の各部位の変化量を測定した.その結果,ポジティブ度が高くなるにつれ,眉尻は上がり,目の縦幅は狭くなり,口の縦幅は広くなるが口角の変化は小さくなることがわかった.特に変化の小さな笑顔は,口の変化量に対して眉・目は変化量が小さいため,口元の変化を元に笑顔の度合いが判断される可能性があると考えられる.3種の笑顔の心理的な影響を検討するため,それら笑顔について,人物印象評定を行った.因子分析の結果,[好感度][活力性][支配性][女性らしさ]の4因子まで検討した.変化が大きくなるほど[活力性][支配性][女性らしさ]が高いと評定されるが,[好感度]については変化量が大きくなるほど低くなることが明らかとなった.
著者
張 建偉 河合 由起子 熊本 忠彦 白石 優旗 田中 克己
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.568-582, 2013
被引用文献数
1

ニュースサイトは日常生活における重要な情報源であり,閲覧者は発生事象の情報を受信する(受ける)のと同時に,書き方によって「楽しい」,「悲しい」,「怒り」等の多様な印象も受けている.特に,賛否両論となるニューストピックに関しては,複数のニュースサイトで報道傾向が異なるため,異なった印象を受ける.また,同じ話題であっても,時間が経つと報道傾向が変化する場合には異なる印象を受ける.そこで本研究では,記事の書き方を「印象」という評価指標で分析することで,ニュースサイトの報道傾向を視覚的に比較可能な分析手法を提案する.提案手法は,まずニュース記事の多様な印象を表現するのに適した複数の印象軸を設計し,ニュース記事に対する印象辞書を構築する.次に,この印象辞書を用いて各記事と各ニュースサイトの印象値を算出し,最後にサイトごとの報道傾向の違いおよび時間的推移を閲覧者へ比較提示する.本論文では,多様な印象に基づくニュースサイト報道傾向分析手法を提案し,国内 15 社,国外 10 社の計 25 社のニュースサイトに適用したシステムを用いて,その有効性を検証する.
著者
金城 敬太 海老名 剛
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.690-700, 2013
被引用文献数
1

書籍などの財の購買行動は,ランキングや全体の販売数といった外部の情報(外部性)に強く影響される.口コミなどの小さな準拠集団による外部性に関する研究は多く行われてきたが,上記のような大きな準拠集団による外部性が購買にどれくらい影響するのかについて,あまり研究が行われてこなかった.本研究では,上記の外部性を組み込んだ階層ベイズモデルを提案した.その上で,書籍に関してコンジョイント分析に用いられる調査を行い,調査データを用いてモデルのパラメータを推定した.加えて,推定結果を用いて販売数のシミュレーションを行った.結果,外部性がどのような分布になっているか,さらには外部性に関連する属性を明らかにした.特に,書籍市場で,性別では女性,また年齢としては高齢になるほど,外部性が高くなる傾向にあることを示した.加えて販売数のシミュレーションにより,最終的な需要量が外部性によって一定程度の影響を受ける可能性があることを示した.
著者
高間 康史 瀬尾 優太
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.316-326, 2009-06-15
参考文献数
21

本論文では,可視化表現共有型掲示板システムに基づく地域防犯活動支援システムを提案し,防犯活動に関するオンライン議論の支援機能について有効性を検証する.近年,子供を狙った犯罪が各地で発生しており,地域防犯活動の重要性が高まっている.数多くの地方自治体などにおいても,防犯活動に向けた様々な取り組みが行われるようになってきているが,児童への安全教育,防犯情報の共有などの個々の活動は独立に行われており,連携はあまり考慮されていない.本論文では,児童による地域安全マップの作成から,得られた安全マップを保護者などで共有し,これを元に防犯活動についてオンラインで行う議論までの一連の地域防犯活動を包括的に支援可能なシステムを構築する.児童が作成した地域安全マップを題材としてオンラインで行われる,防犯活動に関する議論を支援するために,可視化表現共有型掲示板システムのコンセプトを採用する.近年,コミュニケーションやグループでのデータ分析における可視化表現共有の有効性が指摘されており,可視化表現に対する気づきや解釈を共有し,議論することで対象データセットの広い探索・深い理解につながることが期待されている.タスク志向の議論を支援するために,可視化表現共有型掲示板システムでは可視化表現中の着目部分に注釈(グラフィカルアノテーション)を付与してメッセージ中で引用する機能,議論のコンテクストを把握するための関連メッセージ検索機能を備えている.本論文では,議論対象とするアノテーションを効率的に検索する機能も新たに提案し,タスク志向の議論をより効率的に支援する事を試みる.提案システムを小学校の授業で実際に利用してもらい,得られた地域安全マップを題材とした地域防犯活動に関する議論を,提案システムを用いて行った.議論参加者による評価の結果,提案システムは防犯活動に関する議論支援に有効であることを示す.また,議論支援機能のオンライン議論における使われ方について,スレッドを分析して考察した結果,スポット引用機能,スポット検索機能が具体的なスポットに言及しながらの議論を促進する役割を果たすことを示す.本論文で提案したシステムの支援機能は現状では限られたものであるが,今後,犯罪・事故情報なども共有可能とすることや,議論中の情報見落としを防ぐ機能の追加などにより,地域防犯活動支援システムとしてより実用的なものへ拡張していくことが期待できる.
著者
Fumitaka Kondo Yoshiki Yabushita Toshihiko Watanabe
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
SCIS & ISIS
巻号頁・発行日
pp.500-505, 2010 (Released:2012-03-28)
被引用文献数
1

Recently, Genetic Algorithm has been studied as an effective approach for large scale optimization problems. However, we have issues of early convergence and settings of many parameters in the GA approach. In order to deal with such issues, parameter free genetic algorithm(PfGA) and distributed genetic algorithm(DGA) were proposed. In this paper, we propose a distributed parameter free genetic algorithm(DPfGA) that keeps parameter free characteristic and improves efficiency of optimization. Besides the distributed construction of GA, we propose the method varying the number of offspring adaptively in accordance with the current performance of optimization. We show effectiveness of the algorithm through application of the algorithm to TSP(Travelling Salesman Problem).
著者
山西 良典 古田 周史 福本 淳一 西原 陽子
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.501-511, 2015
被引用文献数
1

インターネットの発展に伴って普及したWebレビューには,有用な情報が含まれている一方で不要な情報も含まれている.そのため,対象の評価視点および評価視点間の関係を捉えることは難しく,レビュー全文を閲覧することはユーザにとって大きな負担となる.本稿では,自由記述形式のレビューにおける評価視点とその評価視点間の関係が不明瞭という問題点を,レビュー構造の俯瞰によって解決可能であると考えた.提案手法では,評価視点の出現頻度とレビュー中の構文特徴を用いることで,レビュー構造の俯瞰に有用な呈示評価視点として,頻出の評価視点と頻出する評価視点に意味的に関連した評価視点を採択する.評価視点抽出実験の結果,評価対象の種別によらず,採択された呈示評価視点には高い適合率が確認された.そして,呈示評価視点採択時に用いた構文特徴を参照することで,獲得する評価視点間の関係の呈示を実現した.
著者
清水 優 高橋 友一
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.688-697, 2014

レスキューロボットは,2001年9月11日に発生したWorld Trade Center (WTC) のビル倒壊現場で使用され,また2011年3月11日に東日本大震災と津波によってダメージを受けた東京電力福島第一原子力発電所 (Fukushima Daiichi Nuclear Plant: FDNP) の建屋内調査等の活動を続けている.レスキューロボットはこれからの数十年に渡って,WTCやFDNPの現場のように不安定で動的に変化する環境でもより高い性能を発揮できるように改良され続ける.レスキューロボットの重要なミッションの1つは,被災現場の変化してしまった地形や要救助者の座標などの情報を収集し人間に分かりやすい地図を生成することである.この自動地図作成機能の改善は,レスキューロボットの改良点の中で特に活発に研究開発が行われる1つであり,その改善の度合いを評価することも重要である.<BR> 著者らは,今後開発される不整地における地図作成手法の性能を評価する手法が必要となると考え,本報で不整地をモデル化した評価フィールドを用いた動作理論のグレード付けを提案し,地図作成手法の1つであるSimultaneous Localization and Mapping (SLAM) を用いた評価例を示す.
著者
池水 孝幸 小野 智司 森重 綾太 中山 茂 飯村 伊智郎
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.804-817, 2010

アントコロニー最適化法(ACO)は,蟻の群による採餌行動を模擬したメタヒューリスティクスであり,巡回セールスマン問題,スケジューリング問題など多くの組合せ最適化問題でその有効性が確認されている.近年,0-1整数計画問題(0-1IP)にACOを適用するBinary Ant Colony Optimization(BACO)と呼ばれる方式が提案されている.BACOではACOと同様,探索領域の集中化,多様化を調整する方式を採り入れることで探索性能の改善が期待できるものの,これまでの研究では,集中化,多様化を積極的に調整するBACOが提案されていない.本研究では,女王蟻戦略AS<SUB>queen</SUB>をBACOに組み入れたBAS<SUB>queen</SUB>を提案する.BAS<SUB>queen</SUB>は,グループ化された働き蟻の集団により多様な探索を行い,女王蟻が働き蟻に指令を送ることで探索領域の多様化,集中化を調整するため品質の高い解の発見が期待できる.0-1ナップザック問題を対象として実験を行い,提案するBAS<SUB>queen</SUB>が,他のBACOアルゴリズム,焼き鈍し法,粒子群最適化法などよりも高い探索性能を示すことを確認した.
著者
北村 祐太郎 澤勢 一史 延原 肇
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.624-635, 2013

動画共有サイト YouTube の動画推薦手法における,推薦の偏り,視聴動画と推薦動画間の関連性が不明瞭,および推薦画面内の情報提示量の少なさ,を解決する手法を提案する.具体的には,YouTube の動画に付与されたタグの概念が持つ広狭に着目し,これらに対して形式概念分析を適用することで,さまざまな概念階層から動画を推薦することで,推薦の偏りを解消する.また,形式概念分析によって得られる束構造を利用することで動画の推薦理由を構成し,視聴動画と推薦動画間の関係性を明示する.さらに適切な動画情報量を持つ YouTube の動画推薦アプリケーションを構築し,ユーザの選択における負担を軽減する.提案システムの有用性を確認するため,20 代の男女 10 人のユーザに対して,YouTube と提案手法のシステムにおける平均動画選択数や適合率,推薦理由の有用性を調査する.さらにアンケート調査により,推薦動画を提示する際の適切な情報量について考察する.
著者
岡田 悟 荒川 達也
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.608-615, 2015
被引用文献数
1

電子テキストの小説読書において,質問応答形式で小説の内容を確認できる読書支援システムを提案する.本システムはユーザの小説読書支援のため,入力質問に対して小説本文より回答を検索し,評価値順に並べ替えて出力する基本動作およびネタバレ防止の機能や登場人物の情報を確認するための機能,ユーザの既読部のあらすじを提示する機能等の補助機能から構成される.本稿ではシステムの構成・実装および実行例を示す.10名のモニタによるシステムの評価実験により,提案手法が利用者に受け入れられるものであることが確認できた.
著者
谷口 忠大 高木 圭太 榊原 一紀 西川 郁子
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.6, pp.1078-1091, 2009-12-15
被引用文献数
2 9

近年,CO<SUB>2</SUB>排出量の抑制や,化石燃料の将来的な枯渇を背景に再生可能エネルギーの利用が注目されている.しかし,既存の中央集権的な電力ネットワークは系統末端での非定常発電を前提とする再生可能エネルギーとは必ずしも相性がよくないと言われる.このため,マイクログリッドを始め分散型の電力ネットワークが研究されている.本研究ではその一つである自律分散型の電力ネットワークであるECOネットを取り上げ,ECOネット内の発電消費の末端ノードであるミニマル・クラスター間での電力売買を通じた電力融通の自動化の為の機構について検討する.電力売買の自動化の為には,各ミニマル・クラスターにおける電力ロスの発電・消費における諸条件に基づき電力売買の方策を最適化する事が望まれる.本稿では,電力売買を行うエージェントの学習に強化学習を用いる事で電力ロスを低減し,収益を最大化させるような適応的取引エージェントの構築を目指す.ただし,そのような系ではマルチエージェント強化学習の系となるために,不完全知覚問題や同時学習問題が発生することが指摘されている.本稿ではそれらの問題に強いとされる方策勾配法,特にその一種である Natural Actor-Critic を用いて適応的取引エージェントを構築する.また,提案手法の有効性を示すために,6個のミニマル・クラスターにより構成されるローカルクラスターを対象にシミュレーション実験を行った.シミュレーション実験では,Natural Actor-Criticによりエージェントが適切な取引を学習する事が出来る事が示されたのと同時に,マルチエージェント強化学習環境下においても少なくとも一体固定的な取引を行うエージェントの居る条件下では良好な学習結果を生むことが示された.
著者
大久保 和訓 土方 嘉徳 西田 正吾
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.511-523, 2013

推薦システムは,嗜好データを機械学習することでユーザプロファイルを作成し,それに基づいて推薦を行う.従来の推薦システムの研究では,いかにユーザの嗜好に合ったアイテムを推薦することができるかという精度に注目したものが多い.しかし,近年,推薦システムの精度向上のみを目指すのではなく,推薦過程を含めたサービス全体の価値の向上を目指す研究が行われつつある.我々は,そのような研究の一環として推薦システムを利用したユーザの気づきに着目した.推薦システムが獲得するユーザプロファイルを可視化することで,ユーザは自身の嗜好について何らかの気づきが得られるのではないかと考えた.本研究では,ユーザプロファイルの可視化・提示と気づきの関係についての調査を行う.
著者
蓮井 洋志
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.247-255, 2009-04-15
被引用文献数
1

本研究では,作曲モデルを利用した対話型進化論的計算手法の作曲支援システムを作成している.作曲モデルは確率決定性有限状態オートマトンで,メロディーを学習し,その学習データをもとに作曲する.作曲モデルを個体とした対話型進化論的計算手法によって,ユーザの好みをモデルが学習し,ユーザの好みのメロディーを作曲する.ユーザが GUIで作曲モデルが作曲したメロディーを修正する.修正したメロディーの中からうまく選択して学習すると,好みに合うモデルとなる可能性があると考えた.実験の結果,作曲モデルは7曲メロディーを学習したときが,評価が一番高く,比較的修正したいと感じる曲数が多かった.そこで,7曲学習する作曲モデルを個体として,対話型作曲支援システムを実行したところ,世代が進む毎に作曲モデルの適応度が上がった.適応度は 12世代くらいで伸びが止まり,類似したメロディーだけになった.また,高い適応度の個体の子は類似したメロディーとなるために,高い適応度を持ちやすい.しかし,いろいろなメロディーを何度もを聞くうちに,ユーザの好みのメロディーが変わるために,適応度が一定しないことが分かった.世代を追うごとに作曲モデルだけでなく,ユーザの好みも明確化すると理解できる.
著者
亀井 且有 豊田 晃史 串田 淳一
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.944-953, 2012

擬似同期を用いた動画共有の代表的な例として,ニコニコ動画がある.そこでは,コメントが挿入されたビデオを見ている視聴者は一人でビデオを見ているにもかかわらず,ユーザーとそのシーンの感情をあたかも共有しているかのように感じる.本論文では,擬似同期を用いた動画共有において動画に重畳されるコメントに起因する視聴者の感情高揚について述べる.まず,ラッセルの円環モデルの4感情を生起させる動画を選出する.次に,それらをニコニコ動画に投稿し,それら動画に重畳された代表的なコメントを抽出する.さらに,それらコメントを先の動画に重畳した動画を作成し,被験者がコメントあり動画およびなし動画(オリジナル動画)をそれぞれ視聴しているときの感情の強さを測定する実験を行う.最後に,実験結果より各感情におけるコメントの有無と感情高揚との関係を明らかにするとともに感情心理学や神経科学の観点からその現象を考察する.
著者
山中 努 田中 祐也 土方 嘉徳 西田 正吾
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.691-706, 2010-12-15
被引用文献数
1 2

近年,GPS機能付きの携帯電話や,マイクロブログなどの手軽な情報発信サービスの普及により,時空間情報を伴うテキストデータ(メッセージ)が増加しつつある.本研究では,公園などの施設の管理者や自治体の防災センターの職員などが,上記テキスト情報を用いて管理区域の状況把握を行うことを支援するシステムを提案する.提案システムでは,メッセージを決まったカテゴリに分類する自動分類,類似するメッセージを集約するクラスタリング,メッセージが通常より密に発生していることを検出するバースト検出の3つの機能を備えている.万博記念公園で被験者120人に,現場の状況を携帯メールでサーバに通知してもらう実験を行い,時空間情報を伴うテキストデータを収集した.このデータを用いて,提案システムの評価を行った.
著者
加藤 聡 堀内 匡 伊藤 良生
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.452-460, 2009-08-15
被引用文献数
5

自己組織化マップ(SOM)を用いたクラスタリングは,k-means法などと比較して,任意形状のクラスタ抽出を比較的容易に行えることが特長の「距離ベース」の手法である.一方,個々のデータ同士の距離に注目するのではなく,データ集合の分布の状態に注目した「分布ベース」のクラスタ抽出法があり,具体的にはベイズ型情報量基準(BIC)をk-means法のアルゴリズムに適用するx-means法などを挙げることができる.この情報量規準を用いたクラスタ抽出のアプローチは,SOMを用いたクラスタリング手法にも比較的容易に適用可能であると考えられる.そこで本論文では,SOMによって初期のクラスタ候補群を生成し,これらを情報量規準に基づく判定手法によって徐々に併合するクラスタリング手法を提案する.提案手法に対して,人工的に作成したデータセットおよびUCI Machine Learning Repositoryのデータセットを用いた評価実験を行い,SOMのみを用いたクラスタリングと比較して,より本来のクラスタ分割に近いクラスタリング結果が安定的に得られること,情報量規準としてはBICよりも赤池情報量規準(AIC)が提案手法には適していること,クラスタ数の自動推定が可能であることなどの知見を得た.