著者
花房 竜馬 荒木 健治
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.683-692, 2023-08-15 (Released:2023-08-16)
参考文献数
14

現在,スマートフォンやスマートスピーカーの普及によって人と対話エージェントとの対話は日常的に行われている.しかし,これらのデバイスに搭載されている対話エージェントは雑談システムとしての能力が不十分であり,人同士の対話と同等の面白さを感じることはできない.この問題を解決するためには,対話中の文脈情報を考慮した高度なユーモア処理を実現する必要がある.これまでの研究において,対話中の文脈情報を含むユーモアの面白さや文脈情報が面白さに与える影響については明らかにされていない.本論文では対話文脈を考慮した駄洒落の面白さを評価する標準データベースを構築するために,駄洒落を含む対話を収集し,12,000件の駄洒落が含まれる対話に対して対話の面白さを複数人で評価した.それに加えて,対話文脈による駄洒落の面白さの変化について分析を行った.
著者
福田 悟志 難波 英嗣 庄司 裕子
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.592-600, 2022-08-15 (Released:2022-08-15)
参考文献数
23
被引用文献数
1

新型コロナウイルスワクチンの開発会社や政府は,人々にワクチン接種への安心感を与えるために,ワクチンの効果や接種状況といった情報を日々発信している.しかし,ワクチンに対する関心やワクチンの接種状況は国や地域によって様々であるため,必ずしも人々に安心を感じてもらえないことがある.本稿では,Twitter上に投稿されたツイートを解析し,人々が新型コロナウイルスワクチンに対して持つ感情とその感情が表れる要因を分析した.日本,米国,英国,カナダ,オーストラリア,インドの6カ国を対象とし,プルチックの感情の輪で定義されている8種類の感情に基づいた機械学習による感情分類,および係り受け解析とバースト検知手法によるテキスト解析アプローチを適用した.感情分類の結果において,人々が持つ一般的な感情として,日本では恐れ,米国,英国,カナダ,オーストラリアでは怒りと嫌悪,インドでは喜びが表れていた.また,感情の時系列的変化において,バースト検出された係り受け関係に基づいて,特定の感情が盛り上がった期間におけるツイートを分析したところ,多くのユーザによりワクチン関連のニュースが投稿されたこと,1人のユーザにより同一内容のツイートが大量に投稿されたこと,ワクチンに関する同一の出来事でも個人の状況に応じて異なる感情が盛り上がる場合があるといったいくつかの特徴を発見した.
著者
松村 真宏 市橋 歩実
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.6, pp.733-743, 2010-12-15
被引用文献数
3

本論文では,誰もが地域に関する情報を書き込み,他者と共有することができる「らくがきマップ」を呼ぶ地図型コミュニケーションツールを提案した.らくがきマップに対する住民の反応およびらくがきマップを介したコミュケーションや意識変化に関する示唆を得るために3つの実証実験を行った.らくがきマップの形跡調査,参加者の行動観察やインタビュー,アンケート調査の結果,らくがきマップは小学生から高齢者まで世代を超えた幅広い年代に利用され,住民の地域情報の発信・共有のニーズが十分にあることを明らかにした.また,住民の書き込みによってらくがきマップが作られるという住民主導型の参加スタイルが,住民に自らのまち情報を振り返るきっかけを与えたり,地域への愛着を高めることを示した.
著者
小西 健太 村田 忠彦 名取 良太
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.203-210, 2010-04-15
参考文献数
16
被引用文献数
3

本論文では,投票率上昇と投票所数削減のための投票シミュレーションを提案する.まず,有権者の投票と棄権の2つの効用関数を設定する.次に,区域ごとに,それらの効用関数を組み合わせる投票係数を調整する.実際の投票率を用いた調整プロセスにより,各区域の実投票率と予測投票率の差を最小化する.さらに推定された投票係数を用いて,2目的遺伝アルゴリズム(NSGA-II)による投票率最大化と投票所数最小化を行う.これにより,投票所数を維持したまま,投票率が上昇する投票区割りの最適化や,投票率を維持した投票所数の最小化を行うことが可能となる.
著者
花房 竜馬 荒木 健治
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.860-871, 2021-11-15 (Released:2021-11-15)
参考文献数
13

近年,精神疾患患者の増加に伴い,精神治療におけるカウンセリングの需要が急増している.しかし,精神治療への抵抗感や費用の高さから治療を受けられず,疾患の悪化により自ら命を絶つケースも少なくない.現時点では,心理療法士と同等の精神治療を代行できる対話システムは存在しない.本論文では,心理療法における問題の認識を自動的に行うために,相談者の発話から悩み文,心情文を自動抽出する手法を考案した.その手法を基に,ルールベースによる抽出システム,類似性による抽出システム,分類器による抽出システムを開発した.各抽出システムにより性能評価実験を行った結果,分類器による抽出システムがF値0.73と最も良い性能を示し,提案手法の有効性が示された.
著者
三谷 慶太 星野 孝総
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.845-859, 2021-11-15 (Released:2021-11-15)
参考文献数
30

脳活動を測定するために脳に関するデータを取得可能なMagnetic Resonance Imaging (MRI,核磁気共鳴画像法)などの計測機器が活用されている.これらの計測機器を活用して,学習に関する様々な研究が行われている.しかし,長期間の測定は参加者への負担も大きく,また短期間で複数回の連続計測は,身体的影響が指摘されている.その場合,オフラインで学習度合いを測ることで,参加者への身体的負担や精神的負担の軽減につながると考えられる.本稿では,人間の学習過程をMRI計測する場合を考え,事前の長期間の学習で,どのように学習が進んでいくのかを観測するパフォーマンス実験について結果を示す.それらのデータをもとにして,学習度合い予測モデルを提案する.これらのモデルから,生体計測を行うための適切なタイミングを学習度合いから議論し,モデルを検証する.
著者
鳥塚 裕喜 萩原 将文
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.956-963, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
26
被引用文献数
1

本論文では,効果素材を付加した対話型漫画生成支援システムを提案する.提案システムでは,ストーリー性のある短いテキストとその話題に関連する画像を入力として,対話形式で漫画を生成する.一度漫画を生成した後に,ユーザーは満足のいかないコマを選択し,そのコマだけを再生成することができる対話型のシステムとなっている.また,選択したコマの中でも特に背景だけ,キャラクターだけ,吹き出しだけ,描き文字・漫符だけなどのように,より細かい単位での再生成も可能となっている.これにより,ユーザーの満足度が高い漫画を,素早く生成することができる.さらに,描き文字・漫符と効果線などの効果素材の利用も導入されている.このようにして,より漫画らしい表現が可能となり,文書に比べてより効果的な情報伝達手段となっている.評価実験により,対話型の再生成による効果,および描き文字・漫符,効果線の導入の有用性が確認されている.
著者
乙武 北斗 高丸 圭一 内田 ゆず 木村 泰知
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.700-705, 2023-08-15 (Released:2023-08-16)
参考文献数
10

議会会議録には議会におけるすべての発言が記録されている.議会会議録の発言内容に基づき,議会における議員の取り組みや政治的態度を明らかにする研究が進められている.従来の研究ではTF-IDFなどの単語ベースの方法が用いられており,複数単語のフレーズや文脈を考慮する表現力に欠けていた.本論文では,会議録中の各発言の発言者を推定するBERTベースの分類器とSHAPを用いて算出されるトークン単位の分類貢献度を利用し,発言文から文節単位で政治的関心を含む特徴的な表現を抽出する手法,およびその結果の分析について述べる.文節単位で係り受け関係も考慮することで,抽出された表現の文脈を提示できる.分析の結果,本手法はTF-IDFと比較して発言者の政治的関心が見受けられる特徴的な表現を多く抽出できることを確認した.また,TF-IDFでは抽出が困難な,発言者の独特の言葉遣いを抽出できることを確認した.
著者
鈴木 公啓 野村 竜也
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.706-711, 2023-08-15 (Released:2023-08-16)
参考文献数
23

本研究は,職種毎の対人コミュニケーション場面におけるジェンダーロボット選好について明らかにすることを目的としておこなった.また,ジェンダー選好において,性役割平等志向性が関連しているかについても検討をおこなった.成人男女1000名を対象に検討をおこなった.その結果,人間,アンドロイド型ロボット,そして機械型ロボットのいずれにおいても,そしてどの職種であっても,コミュニケーション相手として性別がどちらでもかまわないとする者が多いことが示された.ロボットを日常生活に導入する際には必ずしも性別を付与しないで良いことが示唆される.また,ロボットの側を特定のジェンダーに設定してもそれはステレオタイプの再生産とならない可能性が考えられた.
著者
目良 和也 青山 正人 大道 博文 黒澤 義明 竹澤 寿幸
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.944-955, 2020-12-15 (Released:2020-12-15)
参考文献数
17

CGアバターによる遠隔コミュニケーションにおいてユーザの気持ちを的確に伝えるには,言語情報だけでなく,口調,表情,動作などのノンバーバル情報も重要である.CGアバターに基本感情を付与する研究はこれまでも行われているが,皮肉や照れ隠しのような本心を隠そうとしている表情を表現するための手法は確立されていない.そこで本論文では,顔部位の変化の随意不随意性に注目し,本心感情を不随意な顔部位の変化,演技感情を随意に動かせる顔部位の変化によって表現することで,外面と内面の感情を選択的に表現する手法を提案する.本論文ではツンデレ表情を想定し,本心感情を喜び,演技感情を平静あるいは怒りとした事例を用いて説明する.提案手法に基づいて作成した表情アニメーションについて印象評定を行った結果,不随意的な喜び顔部位である“頬の紅潮”が表出していることが「喜びを隠蔽しようとしている」という印象を強くしていた.一方,頬の紅潮の代わりに目や口など随意的な喜び顔部位を用いたところ,逆に「喜んでいるふりをしている」という印象を強くしていた.このことより,本心感情を不随意な顔部位の変化によって表出することで,内面の感情を選択的に表現できることが確認できた.
著者
新福 一貴 笹嶋 宗彦
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.2, pp.655-667, 2023-05-15 (Released:2023-05-15)
参考文献数
20

顧客満足度とは企業が提供するサービスや商品に対する顧客の満足度を表す指標であり,顧客満足度を向上させることは企業にとって最も重要な課題の1つである.しかし,最も投資対効果の高い顧客満足度向上方法を発見することは容易ではない.なぜなら,サービスや商品は,それ自体の品質や価格だけではなく,提供のされ方や提供される店の雰囲気,利用した時に得られる満足感など,多くの軸から評価されるものであり,どの評価軸における課題を解決することが顧客満足度向上につながるのかを見極めることは,一般に困難である.評価軸には,「この企業に対する満足度」のような企業に対する総合的な満足度を問う質問項目に対する回答である総合満足度と,総合満足度を判断する根拠となる,個々の質問項目への回答である個別項目満足度が含まれる.これらから課題の選択を支援するための可視化手法については従来から研究が行われており,総合満足度とそれに対する個別項目の重要度を相関関係より算出し,可視化するCS(Customer Satisfaction)ポートフォリオ分析やIPA(Importance-Performance Analysis)と呼ばれる方法がある.しかし,既存研究は,判断の際に重要である,競合企業との関係性についての可視化が不十分である.そこで本論文では,カフェ,ドラッグストア,保険販売業,など自社企業が所属する業種に含まれる,複数企業を対象に行った個別項目と総合満足度のアンケートを入力として,自社企業に対する顧客満足度が,業種の中でどのような位置にあるかを可視化するツールCSIMGを提案する.CSIMGは,従来研究が可視化してきた,自社サービスや商品の総合満足度と個別項目の関係だけではなく,各個別項目の評価値が,同業種の他社と合わせてどの程度ばらついているか,言い換えれば,改善の余地があるか否かを可視化することで,経営者が,どの項目に優先して投資すべきか判断することを支援する.4つの業界アンケートを対象に,CSIMGの出力と,人間の経営アドバイスの専門家である中小企業診断士の判断とを比較した結果,アンケート回答者である一般消費者が,サービスや商品を自分で複数社利用し比較できるような業種については,CSIMGが,人間の専門家と近い評価結果を出力できる可能性があることを示すことができた.
著者
Prasad Rajkishore Fumitoshi Matsuno
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
SCIS & ISIS
巻号頁・発行日
pp.1983-1988, 2006 (Released:2008-09-12)

This paper investigates role of humming sound in the healing process by Bhramari Pranayama (BP) which has been recommended, in many literatures on yoga, for removing stress and healing many mental abnormalities and has also been claimed to be recuperative for the same by many practitioners. Pranayama is a Sanskrit word which literally means a yogic act performed for controlling flow of vital energy in the body and mind. One of the main acts during doing BP is that subject imitates humming sound of bumble bee while exhaling. The analysis of the humming sound produced during pranayama shows a little variation in pitch confined within lower frequencies with concentration of energy in the lower frequency bands. Nasal formants are also present. The humming sound has also vibrato. It is hypothesized that such sound produces not only bone conducted audition but also vibration in cranium and changes in the brainwave patterns leading to relaxation and healings.
著者
奥 健太 服部 文夫
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.1, pp.524-539, 2013
被引用文献数
4

近年,推薦精度以外の評価尺度を重視した推薦システムに関する研究が注目されている.推薦精度以外の評価尺度の一つであるセレンディピティは,推薦システムがいかにユーザにとって意外かつ有用なアイテムを発見できるかを表す評価尺度である.本研究では,セレンディピティ指向情報推薦システムとしてフュージョンベース推薦システムを提案する.提案システムは,外発的および内発的偶然を発生させる機構をもち,ユーザがこれらの偶然の中から価値あるアイテムを察知できるような仕組みをもつ.我々は,セレンディピティ指向情報推薦においては,これらの機構をもつインタフェースを要件としたシステム設計が必要であると考える.提案システムは,ユーザが任意に選択した二つのアイテムを混ぜ合わせることで,セレンディピティなアイテムを発見するという,フュージョンベースアプローチの考え方に基づく.本研究の貢献は次のとおりである:セレンディピティ向上のためのフュージョンベースアプローチを適用した推薦システムを提案した.実際の楽天ブックスの書籍データセットを用いた被験者実験による推薦システムの有効性評価を行った.既存の推薦システムの一つである Amazon とのセレンディピティの観点から比較評価を行った.
著者
北島 理沙 小林 一郎
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.25, no.6, pp.914-923, 2013
被引用文献数
1

近年,情報技術の発展に伴って大量のテキストデータが蓄積されるようになり,必要な情報を取捨選別するために自動要約の技術の必要性がますます高まっている.自動要約技術においては,様々な手法が提案されている一方で,文の関係のグラフ表現における固有ベクトル中心性の概念に基づいて文の重要度を計算する,グラフベースの文書要約技術が提案されており,その有用性が知られている.特に,LexRankはリード手法や中心性に基づいた手法のようなベンチマーク手法として用いられる様々な手法よりも良い結果を示すことが知られている.この手法は文間の類似度を計算するのに表層情報に対するコサイン類似度を用いている.本研究では,潜在トピックに基づいた文の類似度グラフを用いる複数文書要約手法を提案し,DUC2004を用いた文書要約実験を通して,LexRankとの性能の比較および考察を行う.
著者
大礒 正嗣 松村 嘉之 保田 俊行 大倉 和博
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.18-28, 2011-02-15
被引用文献数
4

多数の演算器を持ち並列計算可能な Graphic Processing Units(GPU)は,近年,CPU をはるかに上回る演算性能を持つようになり,GPU を用いて数値計算を高速化する研究が多くなされている.進化計算の計算量に対しても GPU 計算が注目されており,遺伝的アルゴリズム(GA)の分野において,集団の並列化についていくつかの議論が緒についた.本稿では,GPU 向け開発計算環境である CUDA を利用して,集団の並列化だけでなく個体単位での並列化を行うことによりGAの高速化とオーバーヘッドの隠蔽を行う実装手法を提案する.進化計算のベンチマークである関数値最小化問題とアプリケーションである進化ロボティクス問題に対して提案実装手法を適用し,計算機実験を行った.結果として,提案実装手法は従来の CPU による計算に対して 7.6~23.0 倍の高速化を達成した.
著者
廣澤 一輝 長名 優子
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 : 日本知能情報ファジィ学会誌 : journal of Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.25-38, 2010-02-15

本論文では,ニューラルネットワークを用いた MaC モデルに基づく感情生成システムを提案する.提案システムは,感情を価値判断に用いる心のメカニズムと,選択的注意や反射・熟考のプロセスを処理する意識のメカニズムという2つのメカニズムを持つ心と意識の概念モデルであるMaC(Mind and Consiousness)モデルに基づいたモデルであり,MaC モデルの感情生成部分にカオスニューラルネットワークとボルツマンマシンを導入している.ボルツマンマシンは同じ入力に対して確率的に複数の出力を行うように学習させることができる.提案システムでは,この性質を利用することで,同じ外部入力に対しても時には違った感情が生成されるという人間らしさを実現する.一方,カオスニューラルネットワークは外部入力と履歴を考慮して学習したデータを動的に出力することができる.提案システムでは,この性質を利用して,過去の履歴を考慮した感情の生成を行い,人間らしさを実現する.計算機実験とロボットを用いた実験を行い,提案システムにおいて,外部入力のみに依存しない自然な感情生成が行えること,提案システムを実装したロボットにおいて手動で操作したロボットに近い自然な行動が実現できることを確認した.
著者
桂 大地 大内 昴 坂本 大介 小野 哲雄
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.798-810, 2021-11-15 (Released:2021-11-15)
参考文献数
57

スポーツ心理の分野で応援する観客の存在は競技者の精神状態にポジティブな影響があるとされている.スポーツにおいて,選手のモチベーションを高めることを目的にコーチやパートナーとしてのエージェントの効果を検証する研究が行われてきている一方で,エージェントからの応援の効果は検討されてきていない.本研究ではエージェントによる応援の影響を調査するために,予備実験による実験条件の検討後,競技者の動機づけに対するエージェントの応援の有効性の検討を目的に2つの調査を行った.予備実験では応援のタイミングやエージェントの応援に適したジェスチャの選定を行った.第1調査「動画による仮想エージェントの応援の印象調査」では,初心者とエキスパートそれぞれに「CGアニメーションと音声のエージェントによる応援」,「音声エージェントによる応援」,「応援なし」の3条件による競技者を応援するエージェントの印象をWebアンケートで比較した.続いて第2調査「競技中の参加者に対する仮想エージェントの応援の有効性検証」では初心者に対して「CGアニメーションと音声のエージェントによる応援」,「応援なし」の2条件でのエージェントから競技者への応援の印象を実験室実験で比較した.第1調査からは「CGアニメーションと音声のエージェントによる応援」が競技者のモチベーションを高める効果があることが明らかになった.第2調査からは「CGアニメーションと音声のエージェントによる応援」が競技者のモチベーション及び作業成績を高めることが確認された.
著者
南部 駿太 増田 寛之 布施 陽太郎 澤井 圭 本吉 達郎 高木 昇
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.720-730, 2023-08-15 (Released:2023-08-16)
参考文献数
20

自動運転技術の開発において,乗員が感じる不安を軽減させた車両制御が重要である.しかし,乗員が運転操作を行う必要がない完全自動運転状態では,乗員が不安や違和感を感じる走行状況が明らかになっていない.そこで,本研究ではVRシミュレータによって完全自動運転を再現し,乗員が不安や違和感を感じたときの介入操作のタイミングや操作量に着目して調査を行った.本稿では,危険回避イベントを対象として実験を行い,被験者は不安や違和感を感じたときに介入操作を行うことで意思表示をすることとした.得られたデータに対して,個人ごとの介入操作と手動運転時の操作に着目した分析を行った.実験を通して,被験者毎の操作特性と自動運転に対して感じる不安や違和感の特徴について議論を行う.
著者
根岸 龍 酒井 浩之 永並 健吾
出版者
Japan Society for Fuzzy Theory and Intelligent Informatics
雑誌
知能と情報 (ISSN:13477986)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.693-699, 2023-08-15 (Released:2023-08-16)
参考文献数
10

本研究では,日経平均市況概況記事を自動生成するための一環として,株価と決算短信から株式動向を表現する文を自動的に生成することを目的とする.本手法によって自動生成される株式動向を表現する文は,例えば「小売業,卸売業,建設業関連が上昇.機械,鉄鋼,電気機器関連が下落」のような文である.本手法では,株価と決算短信から株式市場の動向,株価の変動要因となる事業,製品,社会背景等を投資テーマとして抽出する.具体的には,株価データから大きく変動した企業群を抽出し,各企業の決算短信から抽出したキーワードを基に,企業群をクラスタリングして絞り込みを行う.次に,絞り込みを行った企業群の各キーワードから投資テーマを推定し,推定された投資テーマを基に株式動向を表現する文の自動生成を行う.また,生成した株式動向を表現する文を用いて,日経平均市況概況記事の生成を試みる.