著者
Edi SANTOSA 杉山 信男 中田 美紀 河鰭 実之 久保田 尚浩
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.49, no.3, pp.220-226, 2005-09-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
9

西ジャワ州クニンガン県におけるカキ栽培の経済性を明らかにするため, 農民へのインタビューを実施した.その結果, カキ栽培からの所得が農業所得の19~35%を占めていることが明らかになった.カキの樹齢は1年生から100年生で, 平均29年生であった.農民は除草と収穫のために年に1ないし2回, 果樹園に出かけるが, 施肥, 農薬散布, 灌水は行っていなかった.カキの樹間でチャ, コーヒー, ショウガ, 野菜などを間作する農民もいた.新梢は雨季が始まる9月から11月に萌芽し, 11月に開花した.収穫は4月下旬から6月下旬の間に行われていた.7月から8月の乾季には多くの樹が落葉した.1樹当りの収量は94から130kgであった.農民や仲買人は収穫した果実を生石灰入りの水に5日間漬けて脱渋処理を行っていた.農民はカキ栽培が土壌浸食を防止する効果があることを認識していた.これらの結果から, 急傾斜地のカキ栽培は環境を破壊せずに農民の所得を向上させる上で有効であることが明らかになった.
著者
佐藤 啓一 安富 徳光 野入 重春 上地 勝則
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.1-5, 1982-03-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
6

沖繩で試験栽培されている果樹マカダミアの成木を調査し, 沖繩における本種の開花盛期, 果実の肥大期, 収穫期を明らかにし, 沖繩で本種の経済栽培を図る上で検討すべき問題点としては, 防風林対策と生理落果の防止が重要であることがわかった.
著者
井之上 準 望月 俊宏
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.125-131, 1980

バングラデシュ, タイおよびベトナムの代表的な浮稲各2品種ずつを用い, 浸水処理によって節間伸長が促進された主稈の各節部からの冠根について調査を行った.浸水処理は各品種において, 節間伸長が起りはじめる苗令に達した時 (バングラデシュ: 8葉期, タイ: 11葉期, ベトナム: 12葉期) に開始し, 毎日0cm (無処理) , 2cmおよび4cmずつ約70日間 (7月上旬~9月中旬) 行った.実験は1978, 79年の2回行われたが, ほぼ同様の結果が得られた.なお, 供試した品種は実験終了時には未だ幼穂を分化していなかった.得られた結果の概要は次の通りであった.<BR>1.浸水処理は節間伸長および出葉速度を促進した.その結果, 浸水処理終了時における主稈葉数は4cm/日浸水処理区は無処理区に比較して2~6葉多かった.<BR>2.浸水処理によって節間伸長が促進された個体では水中にある節の上部の根帯から太い根 (上位根) が, 下部の根帯から細い根 (下位根) が発生した.根の太さは品種や節位によって異なったが, 上位根はほぼ0.88~1.15mm, 下位根は0.33~0.48mmであった.なお, 後生大導管数は上位根では3.0~5.5個, 下位根では1.0~2.5個であった.<BR>3.品種や節位の違いによってもやや異なったが, 概して, 下位根の発生はそれより2節上位の葉身が半分またはそれ以上抽出した頃に始まるのに対し, 上位根の発生は4節上位の葉身の抽出中に始まった.すなわち, 第15葉抽出中の植物体を例にとれば, 第15葉 (第15節からの葉) の伸長と第13節からの下位根および第11節からの上位根の発生はほぼ同調して起った.<BR>4.各節部から発生する根数については, 下位根は節位が上るほど多かったが, 上位根ではこのような傾向はみられず, 分げつが発生した節で多いようであった.<BR>5.下位根はほぼ水平 (茎に対して直角) に発根し伸長するのに対し, 上位根は斜め下方へ向って発根し伸長した.また, 下位根は発根直後から分岐根を発生するのに対し, 上位根では伸長初期には分岐根の発生はみられなかった.
著者
S. M. Lutfor RAHMAN Eiji NAWATA Tetsuo SAKURATANI
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
Japanese Journal of Tropical Agriculture (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.42, no.1, pp.29-38, 1998-03-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
10

バングラデシュの高温期にトマトを栽培するためには耐乾性品種の育成が強く望まれている.このための基礎資料を得ることを目的として, 日本, アメリカ, バングラデシュなどのトマト16品種の耐乾性を評価した.評価した特性は, 収量・開花数・着果数・着果率・果実重・根及び地上部乾物重・開花までの日数・断水期間である.育苗中の断水処理により, 全ての品種で大きく収量が低下したが, その程度は品種により異なった.収量を含むいくつかの特性を総合的に評価した結果, 小型の果実をつける4品種の中ではチビッコが, 中型果実品種5品種の中ではTM 0126が, 大型果実品種7品種の中ではSevernianinが最も優れていた.また, 小型・中型の果実をつける品種群は, 大型の果実をつける品種群より耐乾性に優れる傾向があった.種々の要因を考慮すると, これらの比較的耐乾性に優れる品種の中でTM 0126が最も優れていると考えられ, 今後の育種及び研究材料として有望であると思われる.
著者
イスラム カジ レザウル 井之上 準
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.1-5, 1988

バングラデシュ全土はLand levelによって5つに区分されるが, そのうち深水稲が栽培されているのは, Lowland (水深: 1.83m以上) , Medium Lowland (0.91-1.83m) およびMedium Highland (0.30-0.91m) の3地域である.本実験では, これら3地域から蒐集された335品種について節間伸長性を調査した.なお, 節間伸長性の大小は最低伸長節間の位置の高低によって判定した.得られた結果の概要は次ぎの通りである.<BR>1. 伸長最低節間の位置は第6節間から第16節間であったが, 最も多いのは第8節間の品種 (全体の約26%) , 次ぎは第9節間の品種 (約17%) で, 平均は10.1±2.7であった.なお, 東南アジアの浮稲にはほとんど見られないような, 第6節間が伸長する品種が約2%あった.<BR>2. 伸長最低節間の位置は当該品種が栽培されている地域の深水程度と密接な関係にあり, Lowlandの品種群で最も低く (8.1±1.8) , 次ぎはMedium Lowlandの品種群で (9.9±2.6) , Medium Highlandの品種群は最も高かった (11.6±2.3) .<BR>3. 浮稲では伸長最低節間の位置が低い品種ほど, 播種後節間伸長を開始するまでの期間は短い.従って, Land levelに関係なく伸長最低節間の位置が低い品種を栽培すれば, 播種から水位が上昇し始めるまでの日数が短いので, その期間に干害を受けることはほとんど無いはずであるが, 実際には干害は問題となっている.この原因は, 本調査で明らかにされたように, Land leve1が高い地域ほど伸長最低節間の位置が高い品種が栽培されているたあで, これは浮稲においては伸長最低節間の位置が低い品種ほど収量が低いという関係があるたあであろうと思われる.
著者
Muhammad Hasinur RAHMAN 河合 成直 Shah ALAM Sirajul HOQUE 田中 章浩 伊藤 實
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.43, no.3, pp.129-135, 1999-09-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
27

農耕車輌などの踏圧による締固めが黒ボク土の特性とコムギ (Triticum aestivum L.cv.Nanbu-Komugi) の生長に及ぼす影響について, 温室環境下で検討した.測定は, 土壌の仮比重, 水分保持力, 全孔隙率, および, 草丈, 分げつ数, 茎および根の乾物重量, 根の体積・最大重・密度・バイオマス, 蒸発散量, 要水量および栄養消費量について行った.本研究から以下の結果が得られた.土壌締固めにより, 黒ボク土の仮比重は統計的に有意に増加し, 水分保持力と全空隙率は減少した.コムギの茎と根の生育量および蒸発散量は, 土壌の締固めにより, 著しく低下することが認められた.その反面, 要水量は締固め土壌で増加していた.また, 根: 茎葉の割合は高締固め土壌において高い数値を示した.しかし, 根の密度およびバイオマスは, 逆に高締固め土壌において低い値となった.さらに, 養分吸収量は土壌の締固めにより, 有意に減少した.
著者
板倉 登 工藤 政明 仲宗根 盛徳
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.25, no.2, pp.47-51, 1981-06-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
3

サトウキビ種子の発芽適温を知るために, 定温器内発芽試験ならびに温室内発芽試験を実施した.試験の結果, サトウキビ種子の発芽適温は35℃であり, 同最低温度は25℃, 最高温度は40℃以上と推定された.また, 明発芽性の傾向が認められた.温室内発芽試験では, 実生育苗における温室管理の実用的な指針が明瞭となり, 最高40℃を限度としてできるだけ高温条件とするように管理することで, 揃いの良い健全実生苗の得られることが明らかとなった.また, 播種時の覆土は有害であった.
著者
関 節朗 干場 健 Jorge BORDON
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.33-37, 2001-03-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
11

パラグアイ南東部穀倉地帯における不耕起栽培ダイズ (Glycine max (L.) Merr.) の収量は近年減少傾向にある.この原因が不耕起栽培を継続した圃場での根の発育不良にあるか, どうかを明らかにするため, 年数, 耕起法, 前作物, 土壌の異なる11圃場についてダイズの根の形態, 分布を調査した.その結果, 不耕起畑では地表下5~10cmのところで, 主根が彎曲したり, 主根の伸長が止まり, 代わりに側根が水平に伸長したり, 主根の伸長・肥大が貧弱で側根がタコ足状に発達したりしているダイズが多数観察され, このようなダイズでは根系が地表近くに分布する傾向が認められた.一方, 耕起畑および開墾初年目の畑では主根伸長異常のダイズは少なかった.土壌調査結果によると主根の土壌下層への伸長不良は, 播種床下の土壌硬度が高いほど, また土壌表層と下層のリン酸濃度の差が大きいほど多くなる傾向にあった.このことから長年不耕起栽培を継続した畑では, 土壌に圧密層が形成され, また施肥リン酸が表層に集積するなどして, ダイズ根の土壌下層への伸長を妨げて根系分布の表層化を招き, 軽度の気象変動 (干ばつ) にも生育が左右され, 近年の収量低下の原因になっているのではないかと考えられた.
著者
諸見里 善一 澤岻 哲也 田場 聡 安谷屋 信一 本村 恵二
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.34-41, 2003-03-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
32

各葉齢のマンゴー葉から希釈平板法により微生物を分離し, 生育過程における葉面微生物相の変遷を調べた.また, マンゴーハウス内気中の微生物相も調査し, 葉圏と気中の微生物相の比較・検討を行った.その結果, 気中および各齢葉面の細菌相では, 色素生成細菌が多く, 特に黄色陰性球菌 (Y, N, C) と白色陰性球菌 (W, N, C) の優占が認められた.グラム陰性菌と陽性菌の割合に着目すると, 気中では両菌の割合がほぼ同じであったが, 生葉上では全体的にグラム陰性菌がまた落葉上では陽性菌が優占した.一方糸状菌相では, 気中から多種の糸状菌が分離され, 複雑な菌相を示したのに対し葉面では菌相が単純化した.気中と各齢葉面のすべてで認められた菌はCladospoyium属とPenicillium属の菌のみであった.これらの葉面から分離した細菌および糸状菌であるマンゴー炭疽病菌をPDA培地上で対峙させ拮抗性を検討した.その結果, 細菌には強い拮抗性を示すものは少なかった.それに対し, 糸状菌ではPenicillium属菌は高い拮抗性を示すものが多く, とくに, P.citrinumとP.expansumの2種は最も強い拮抗性を有した.これらの菌の培養ろ液も炭疽病菌に対した高い抗菌性を有することから, 拮抗機作は抗菌物質によるものと考えられる.
著者
山本 信一
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.193-201, 1965

筆者は, 1962年7月から1カ年, 単身軽装備で西アフリカのナイジェリア連邦東部州にあつて, 同国の稲作を指導した.その結果, 土壌改良と用水管理が最も重要であるとし, 上記英文の稲作改善勧告書を作成提出した。
著者
松田 正彦 縄田 栄治
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.46, no.4, pp.247-258, 2002-12-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
22

ベトナム北部の紅河デルタと山地部において, タロイモ数種の利用と栽培について調査した.その現状や変化を農業生態・社会・経済的な側面から考察し, また, 異なる生態地域間での比較をおこなった.さらに, 収集した30系統のタロイモについては, 形態・倍数性・リボゾームDNAにおける制限酵素断片長多型 (RFLP) の調査から遺伝的変異を明らかにした.本研究ではColocasia esculenta var. esculenta, C.esculenta var. aquatilis, C.gigantea, Xanthosoma sagittifolium, X.violaceum, Alocasia macrorhizaおよびA. odoraが観察された.デルタの調査地では C. esculenta var. aquatilis (2n=2x=28) が灌漑水路脇や池の周囲に頻繁に群生しており, その葉柄や匍匐枝は野菜やブタの飼料として利用されていた.このvar. aquatilisはデルタの農業生態系で機能していることがわかったが, 近年, 水路や池の舗装や飼料の多様化などにより、その重要度が低下していた.C. esculenta var. esculenta (2n=2x, 3x=28, 42) はデルタでは商品作物として栽培され, 一方, 山地部では自給用に焼畑で栽培されていた.リボゾームDNAのRFLP分析より, デルタ地域あるいは山地部の調査地内ではそれぞれ遺伝的に近縁なvar. esculentaの品種がみられた.しかし, 両地域に分布する近縁な品種はみられなかった.この分布の傾向は, アジアにおけるC. esculentaの複数の伝播経路がこの地域に影響した結果と考えられた.Xanthosoma spp. (2n=26) はすべての調査地に分布し, その利用や栽培に類似性がみとめられた.収集したXanthosoma系統も遺伝的に均一であった.Colocasia gigantea (2n=28) もそれほど頻繁ではないが野菜として広く複数の調査地に分布していた.Alocasia odoya (2n=28) は薬用として用いられ, A. macyoyyhizaは山地部でブタの飼料として頻繁に採集されていた.
著者
石井 龍一
出版者
Japanese Society for Tropical Agriculture
雑誌
熱帯農業 (ISSN:00215260)
巻号頁・発行日
vol.47, no.5, pp.332-338, 2003-12-01 (Released:2010-03-19)
参考文献数
7