著者
佐藤 寛子 高岡 宏行 福田 昌子
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.201-210, 2004-09-15 (Released:2016-08-07)
参考文献数
12
被引用文献数
6 6

A new black-fly species, Simulium (Nevermannia) uemotoi sp. nov., is described based on female, male, pupal and mature larval specimens collected from Oita, Japan. This new species is assigned to the vernum species-group and is distin-guished from other known related species by a combination of the following characters: katepisternum with several hairs on each side and 1st and 2nd segments of maxillary palp ocherous in both sexes of adults; frons with two long and one short trichomes on each side, gill with four slender thread-like filaments and simple wall-pocket-shaped cocoon in the pupa; and small, M-shaped or rounded postgenal cleft and simple rectal organ in the larva. A new name S. (TV.) onoi is given for the species which was collected from Hokkaido and erroneously identified as Cnetha konoi by Ono.
著者
高岡 宏行
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.163-180, 1976-04-15 (Released:2016-09-05)
被引用文献数
12 10

過去6年間の南西諸島全域におけるブユ相調査の結果, これまで6亜属18種類が認められた。この第1報では, ツノマユブユ亜属に属するS. (E.) uchidai, S. (E.) subcostatum koshikiense, S. (E.) aureohirtum, S. (E.) satsumense, S. (E.) mieおよびS. (E.) morisonoiの6種について報告した。新種および新亜種として記載されたS. (E.) satsumense, ならびS. (E.) subcostatum koshikienseには共に下甑島より見出された。このうちS. (E.) satsumenseはaureumグループの種類として我国より初めて記録された。また, S. (E.) uchiclaiおよびS. (E.) mieの2種は本諸島初記録でおのおの屋久島以北, 沖繩以北域での分布が明らかにされた。
著者
桜井 宏紀
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.30, no.3, pp.263-269, 1979-09-15 (Released:2016-09-04)
被引用文献数
2 1

センチニクバエの卵胎生過程を昆虫不妊剤hempaの作用との関連で検討した。卵形成にともない卵母細胞は羽化4日後より発育を開始し, 10日で卵胞は成熟し, 12日後に産仔がみられた。組織観察の結果, 卵胎生の本種と卵生の種類のハエとの間で卵形成過程に違いは示されなかった。また子宮中の受精卵において分裂核の出現, 胚盤葉の分化, 口陥, 消化管形成, 幼虫組織の形成などの発生学的経過が観察された。hempaの処理により卵巣発育は顕著に抑制され, 0.5% hempaの継続処理により卵巣の成熟化が完全に阻止された。組織観察の結果, hempaは幼若な卵胞の細胞機能を攪乱し, 細胞崩壊をひき起こし, 究極的に卵胞の空胞化をもたらすことが示唆された。
著者
糸川 英樹 加納 六郎 金子 茂 中嶋 暉躬 安原 義 与那原 孫伝
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.67-71, 1981-03-15 (Released:2016-09-03)
被引用文献数
6 8

サソリモドキ類は世界で約70種が知られ, 日本には1属2種, タイワンサソリモドキTypopeltis crucifer Pocock, 1894とアマミサソリモドキT. stimpsonii (Wood, 1862)を産する。これらは肛門付近から酢酸臭の強い分泌液を噴射する。米国産大形種Mastigoproctus giganteusについてはEisner et al. (1961)の報告がある。われわれは沖繩石垣島産タイワンサソリモドキの噴射液を, ガスクロマトグラフィー, マススペクトラム法, 高速液体クロマトグラフィーを用いて調べ, その組成は, 酢酸81.7%, カプリル酸5.4%, 水12.9%で, 活性アミン, ペプチド様物質は痕跡程度であった。Eisnerの報告では酢酸84%, カプリル酸5%, 水11%で, このように地域, 属が異なるのに噴射液の組成がほぼ同様であることは興味深い。
著者
佐々木 脩 谷 重和
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.48, no.4, pp.303-309, 1997-12-15 (Released:2016-08-20)
参考文献数
11
被引用文献数
3 4

秋田県において急激に増加したヤマビルによる吸血被害を防止する目的でヤマビルの化学的・微生物学的防除を試みた。侵淫地である井川町での5%デイートを含有するマイクロカプセル化粉剤の6,7月の2回の散布によりヤマビルの発生はほぼ抑制された。昆虫毒性を有するBeauveria bassianaとFusarium solaniの殺ビル効果が室内および野外で確認された。
著者
Hiromu Kurahashi Chutharat Samerjai
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.69, no.2, pp.67-93, 2018-06-25 (Released:2018-08-09)
参考文献数
29
被引用文献数
5 9

The collection of Sarcophagidae made by the first author during the surveys on flies of medical and forensic importance in Thailand from 2012 to 2016 is dealt with. A total 31 genera and 86 species of the flesh flies are listed. One new genus Komisca gen. nov. is established for Sarcophaga (s. lat.) nanensis Chaiwang, Sukontason & Sukontason, 2009. One little known species, Burmanomyia aureomarginata (Shinonaga & Tumrasvin, 1979) n. com., is redescribed and illustrated. Revised identification keys to the species of Thai Sarcophagidae are provided to include the new genus and three newly recorded species discovered after the last work (Kurahashi & Chaiwong, 2013). General morphology, terminology and definition are provided for keys and redescription.
著者
辻 英明 水野 隆夫
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.101-111, 1972-10-15 (Released:2016-09-05)
被引用文献数
7 7

チャバネ, ワモン, クロ, ヤマトの4種のゴキブリが本邦中部の加温されない環境で生活した場合, どのステージで冬を迎えるかを推定するため, 夏および秋を想定した27±1℃1日16時間照明(27℃-L), 20±1℃1日8時間照明(20℃-S), 15±1℃1日8時間照明(15℃-S)の実験条件下で飼育を行なった。結果は次の通りである。1) 27℃-Lでの結果 : 幼虫の令数, 幼虫期間, 卵(鞘)期間はそれぞれチャバネで6令40∿46日, 20日, ワモンで9令105∿161日, 39日, クロで8令84∿112日, 41日であった。ヤマトでは9令あり, 91∿140日で羽化する個体以外に, 終令(9令)で150日以上発育を停止する幼虫が約半数あった。ヤマトの卵鞘は約27日でふ化した。いずれの種も卵鞘の産出は正常であった。2)20℃-Sでの幼虫発育 : チャバネは200∿250日で羽化し, 各令平均して延長した。ワモンでは161日で大部分が6令に達したが, 500∿600日でも羽化できない個体が多く, 終令の遅延が極端とみられた。クロでは2令の延長が特別に著しく80日に及んだ。その延長を含め400∿480日の間に大部分が羽化した。ヤマトでは2令の延長が一層極端で140日以上に及んだ。一方越冬中採集された若令幼虫(2令)は300∿500日で成虫となった。3)20℃-Sでの産卵 : 20℃-Sで羽化したチャバネとワモンは卵鞘を産出せず, クロはわずかの異常卵鞘を産下したにとどまった。一方ヤマトは正常に産卵した。27℃-Lで産卵中の成虫を20℃-Sに移すと, チャバネは正常卵を産まなかったが, ワモンとクロは若干の正常卵を産んだ。4)20℃-Sでの卵のふ化 : チャバネでは, 27℃-Lで卵鞘を形成して24時間以内の成虫を20℃-Sで飼育しても幼虫が生じなかった。27℃-Lまたは20℃-Sで産まれた他種の卵鞘では, ワモンで約100日, クロで約120日, ヤマトで約64日でふ化がみられた。5)15℃-Sでの結果 : どの種類の幼虫も15℃-Sで100日以内には次の令以上に発育することは困難とみられた。27℃-Lでの産卵中の成虫を15℃-Sに移すと, ヤマトはさらに若干の卵鞘を産下したが, 他の種ではいずれも産卵が阻止された。またどの種の卵鞘もこの条件下に保つとふ化せず死亡した。6)以上の結果からPeriplaneta 3種の当年のふ化幼虫は年内に成虫にならず, 特に秋にふ化したクロとヤマトの幼虫は2令で冬を迎えると思われる。またこのような若令で越冬した場合Periplaneta 3種は次の年にも成虫にならない可能性がある。特にヤマトは夏期でも終令で発育を停止し, もう一度越冬する可能性が大きい。この場合, 1世代2年を要する"two-year life cycle"がむしろ正常であることが暗示される。一方, 長い成虫期間, 産卵期間, 卵鞘期間, 幼虫期間から考えて, Periplaneta 3種がすべてのステージで冬を迎えることは十分あり得ることと思われる。チャバネでは卵鞘の形成とふ化が20℃-Sでも妨げられるので, 卵や幼令幼虫で冬を迎える可能性は少ない。各ステージが冬の平均気温下で生存できるかどうかについての実験結果は別途に報告したい。
著者
Hiroshi Jinguji Yuki Fujiwara Kazuhisa Ohtsu Moono Shin Motoko Morimoto
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.72, no.3, pp.199-204, 2021-09-25 (Released:2021-09-14)
参考文献数
49
被引用文献数
1

The increase in the number of imported cases of dengue fever in Japan is of particular concern as Aedes albopictus is a vector of dengue fever. Due to the potential for insecticide resistance and the impact of insecticides on non-target species, increased attention is being paid to alternative methods of pest control. Placing salt in used tires has been recommended by the Ministry of Health, Labor and Welfare in Japan as a means of controlling mosquitoes. However, the effectiveness of salt as a larvicide against Ae. albopictus are currently unclear. This study examined the acute toxicity of sodium chloride against first and fourth larval instars of Ae. albopictus. Acute toxicity tests were conducted according to World Health Organization guidelines. The susceptibility of Ae. albopictus larvae was tested against 0.25%, 0.5%, 0.75%, 1.00%, 1.25% and 1.5% NaCl solutions. Larval mortality was correlated with an increase in NaCl concentration and exposure duration. First instar Ae. albopictus larvae were more sensitive to NaCl than fourth instar, and 72-h LC90 values for first and fourth larval instars were 0.49% and 1.01% NaCl, respectively. Our results suggest that the application of 0.5% NaCl to a habitat for 3 days is effective for Ae. albopictus control.
著者
内海 與三郎 根岸 務 亀井 正治
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.177-181, 2014-12-25 (Released:2015-02-06)
参考文献数
10
被引用文献数
1 1

羽化後または孵化後まもないチャバネゴキブリ,ワモンゴキブリおよびクロゴキブリを3種類の餌(牛肉缶詰,生のキャベツとタマネギ[野菜]およびラット用固形飼料)で飼育した.チャバネゴキブリおよびワモンゴキブリ雌雄成虫の生存日数は,ラット用固形飼料あるいは牛肉缶詰で飼育したときに最も長かったのに対し,クロゴキブリ雌雄成虫では野菜で飼育したときに最も長かった.繁殖に最も適した餌は,チャバネゴキブリおよびワモンゴキブリ成虫ではラット用固形飼料であったのに対し,クロゴキブリでは野菜であった.幼虫の発育に最も適した餌は,3種ゴキブリともラット用固形飼料であった.これらの結果は,成虫の生存および繁殖に適する餌がゴキブリの種類によって違っていることを示す.
著者
宮城 一郎
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.332-333, 1981-12-15 (Released:2016-09-03)
被引用文献数
1 2

1979年2月21日, パプアニューギニアのマダン市近郊のゴゴールの森で蚊を採集中, 樹幹に営巣されたシリアゲアリの1種Cremastogaster sp.の近辺で乱舞し蟻の口より吸蜜中のカギカMalaya leei (Wharton)を発見した。本短報はこれらカギカの吸蜜行動を詳細に記録したものである。
著者
篠永 哲 岩佐 光啓
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.295-298, 1983-12-15 (Released:2016-09-02)
被引用文献数
1 2

アエバエ科, マキバイエバエ属のハエは, 加納・篠永(1977)によって日本から6種と1亜種が記録されている。著者らは, これら日本産の標本と南西諸島からニューギニアに至る各地の標本について再検討した結果, M. tarsalis tarsalis (Malloch)と同定されていた種は新種と認められた。M. tarsalis tarsalisは, Vockeroth (1972)によってM. laevis (Stein)のsynonymとされている。本新種は, laevisに類似しているが, 背側板剛毛のまわりに1本ないし2本の小剛毛を有すること, 雄の生殖器の内狭子の先端に切れ込みがあること, 雄の小楯板の側面の短剛毛列を欠くことなどによりlaevisと区別さりる。laevisは, 広く東南アジア, ニューギニアなどに分布し, 日本では南西諸島, 九州南部に生息している。新種に分布している。成虫は, 主に放牧地の新鮮な牛糞上にみられる。日本産マキバイエバエ属の検索表をつけ加えた。
著者
三條場 千寿 Yusuf ÖZBEL 麻田 正仁 長田 康孝 Sambuu GANTUYA 松本 芳嗣
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.71-77, 2011-03-15 (Released:2011-10-15)
参考文献数
15
被引用文献数
1

唯一の日本産サシチョウバエとして記載されたPhlebotomus squamirostris Newstead, 1923(やまとさしちょうばえ,1934, 山田信一郎; にっぽんさしちょうばえ,1954, 日本昆虫図鑑改訂版)は,現在の分類ではSergentomyia squamirostris (Newstead)となっている.1950年代以降,国内でのサシチョウバエ採集の報告はない.今回,秋田県,鳥取県で初めてサシチョウバエが採集されたので報告する.また,採集したサシチョウバエの詳細な観察を行い,日本で採集されたS. squamirostris では初めてhead, genital pump, paramera, aedeagus, surstyle, およびfemale antennaについて図示した.
著者
赤石 大輔 中村 浩二
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.195-199, 2014-12-25 (Released:2015-02-06)
参考文献数
10
被引用文献数
2 2

中部日本の環境の異なる3地点からキノコ子実体を採集し,実験室内で子実体内部に成育するハエ類を羽化させた.その結果,モモグロオオイエバエMuscina angustifrons (Loew)は,新たに19種のキノコを利用していることが判明した.本種は,キノコ子実体のみで羽化すること,また,カメの人工餌でも羽化することが確認された.本種の終齢幼虫は,与えられたミスジショウジョウバエDrosophila bizonata Kikkawa and Pengの幼虫を捕食した.以上の結果から,野外ではキノコ子実体以外に,おそらく植物組織,糞,動物遺体などを利用する雑食性であるともに,キノコ食双翅目群集内において,ギルド内捕食者でもあると推測された.
著者
池庄司 敏明
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.41-49, 1982-03-15 (Released:2016-09-03)
被引用文献数
5 10

metepaを処理したビーカーにスピーカーをセットし, 蚊の羽音を混合したり, 周波数, 強度を変調させ, 雄蚊に対する誘引性を, 卵のふ化率の低下で調べた。雌蚊の周波数なら単一の純音で充分に誘引した。音の強度の変調では, Ae. aegyptiに対して, 466Hz, 98dB SPLの音が, またCx. p. molestusに対しては, 370Hz, 124dBの音が最も卵のふ化率を低下させた。さらに466Hz, 124dBの純音は, 100mの遠距離まで到達し, Ae. aegyptiを不妊化させ得ると推論した。卵のふ化率は, 不妊剤の処理薬量に反比例し, Ae. aegyptiでは660μg/(cm)^2で0%, 20μg/(cm)^2で9.7%であった。以上, 自動不妊化法は雄蚊の大量誘殺より, はるかに優れた蚊の駆除法になることを示した。
著者
中山 康博 川本 文彦 須藤 千春 中嶋 暉躬 安原 義 藤岡 寿 熊田 信夫
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.315-326, 1985-12-15 (Released:2016-09-02)
被引用文献数
8 10

蚊刺咬による皮膚反応の機構を解明する試みのひとつとして, 蚊の唾液腺に含まれる成分について分析した。アカイエカCulex pipiens pallensの唾液腺の粗抽出物およびその低分子画分(mol. wt. <6,000)は, 蚊に無感作のモルモット皮内で血管透過性を亢進した。O-phthalaldehyde法によりhistamine染色を行うと, Cx.pipiens pallensおよびAedes togoiの唾液腺全体に強い陽性反応が観察された。αおよびβナフチルアセテートを基質としてエステラーゼ染色を行ったところ, Cx. pipiens pallensの唾液全体に強い陽性反応が認められ, 一方, Ae. togoiおよびAe. albopictusでは比較的弱い反応が観察されたのみであった。Cx. pipiens pallensの唾液腺抽出物を用いたin vitro実験では, TAME, BTEEおよびATEEの加水分解, 血液凝固阻止活性および溶血活性は検出されなかった。イオン交換高速液体クロマトグラフィー分析では, Cx. pipiens pallensの唾液腺抽出物中にhistamine, putrescine, spermine, およびspermidineが検出されたが, serotoninは検出されなかった。
著者
Shin-ya Ohba Yoshio Tsuda
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.45-50, 2016-03-25 (Released:2016-09-25)
参考文献数
29

The tsunami caused by the Great East Japan Earthquake on March 11, 2011 hit the Pacific coast and caused heavy destruction of natural and man-made environments in north-eastern Japan. This study focuses on mosquito larvae and their potential aquatic insect predators associated with ground pools and pools that appeared in the concrete foundations of destroyed houses (concrete pool) in inundated areas in Miyagi Prefecture, Japan. Field samplings were conducted on late July 2013. Culex inatomii, Cx. pipiens group, Cx. tritaeniorhynchus, and Cx. orientalis were collected from ground pools and concrete pools. The abundance of Cx. inatomii and Cx. pipiens groups in concrete pools was significantly greater than that in the ground pools. A large number of Hydroglyphus japonicus were collected as potential mosquito predators, followed by Micronecta spp., Enochrus japonicus, Rhantus sturalis, Aquarius paludm paludum and Hydrochara affinis, categorized as “flight dispersers,” which might immigrate rapidly from the non-inundated rice fields or wetlands. Stepwise generalized linear models suggested that larval abundance of Cx. inatomii in the pools studied was affected by the vegetation cover and habitat type (ground pool or concrete pool), but not by water depth, salinity, presence of predators, and bottom type (sand or concrete) of aquatic bodies. Concrete pools and covered with dense vegetation provide breeding habitat for Cx. inatomii along with their potential predators.
著者
佐々木 均 三上 暁子
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.63-71, 2007-06-15 (Released:2016-08-06)
参考文献数
10
被引用文献数
2 4

堆肥とその浸出液である「れき汁」から発生するハナアブ科の種を,北海道江別市と静内町で産卵羽化トラップ法によって調査した.また,発生が確認されたハナアブ類の卵,終齢幼虫,蛹の形態学的特徴を双眼実体顕微鏡と走査型電子顕微鏡を用いて観察した.その結果シマハナアブ(Eristalis (Eoseristalis) cerealis Fabricius)を優占種とし,ナミハナアブ(Eristalis (Eristalis) tenax (Linnaeus)),アシブトハナアブ(Helophilus (Helophilus) virgatus Coquillett),キタハナアブEristalis (Eoseristalis) Rossica Stackelberg),ホシメハナアブ(Eristalinus (Lathyrophthalmus) tarsalis (Macquart))が続く3属5種のハナアブ類がれき汁から発生することが確認された.形態学的特徴を見ると,卵殻表面のユニットの形態では分類するのは困難であるが,アシブトハナアブのみ中央の凹みがなく,他の4種と異なった. 3齢幼虫では,体表に生えている感覚棘毛や剛毛,棘,乳頭突起の形,太さ,長さおよび配列などが種を分ける重要な特徴として認められた.蛹では,前方気門や呼吸角の長さや形態に相違が見られ,前方気門の形で種を容易に判別できることが明らかとなった.
著者
林 利彦
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.113-120, 1986-06-15 (Released:2016-09-02)
被引用文献数
4 4

ハヤトビバエ科のハエ類は食糞性・食腐性で, 人類親和性のものが多く知られている。しかし日本において報告されている種は少ない。著者は日本産のハヤトビバエ類を調べ, 人間の生活している環境内で世代が繰り返されたり, 家畜の糞などと密接な関係をもった種を本論文において扱った。また倉橋・三原(1983・1984学会発表)は2種の海岸性ハヤトビバエの大量発生による不快害虫化を報告している。そのため海岸に生息する4種も本論文に含めた。以上の結果から, 37種と3種群を人類親和性および衛生上重要と認め, 検索表を付した。
著者
Mohamad REZA 山本 大介 松岡 裕之
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.67-71, 2013-06-15 (Released:2014-01-08)
参考文献数
17
被引用文献数
1 3

蚊幼虫の生物学的制御のため蚊幼虫捕食性の魚を導入する方法はこれまでも実施されてきた.我々は低濃度の銅を蚊幼虫に作用させると,魚に捕食され易いことを見いだしている.メダカ(Oryzias latipes)は日本国産であるがその近縁種は世界各国に棲息している.我々は,ハマダラカ幼虫の生存能力を低下させるものの,メダカの生存には影響のない銅濃度を検討した.銅濃度0.26 ppm に暴露すると,ハマダラカ幼虫は潜水能力が減少しメダカに容易に捕食されるが,メダカはこの濃度において健常に生存できることを確かめた.このことから我々は,蚊幼虫捕食性の魚を導入することに加え,蚊幼虫の棲息する限られた場所に低濃度の銅イオンを散布することが有用であると考えている.
著者
松瀬 イネス倶子 武田 カチア美知枝 上村 清 吉田 政弘
出版者
The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
雑誌
衛生動物 (ISSN:04247086)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.117-122, 1997-06-15 (Released:2016-08-20)
参考文献数
6
被引用文献数
7 8

セアカゴケグモは1995年9月に大阪府の高石市で発見され, 大阪湾沿岸地帯, 三重県四日市市などでも生息が確認された。また1996年3月上旬の現地調査ではセアカゴケグモの越冬が確認され, 春夏秋冬のいずれの調査において成成虫, 若虫, 卵嚢のいずれもが採集できた。採集したクモと卵嚢は研究室に持ち帰り, 25℃, 60% RH, 14時間照明で, 50ml容量のガラス瓶内で, ショウジョウバエを餌とし, 個別飼育を行った。その内, 卵嚢より脱出した若虫を用いて, セアカゴケグモが寒冷期に, 冬期と同様の低温条件下の飼育によって生存できるかどうかを検討した。その結果, 5℃においては最長47日間生存し, 10℃及び15℃ではそれぞれ175及び270日生存した。この間の発育零点は15℃前後であった。セアカゴケグモを含むゴケグモ類が日本に分布していなかった主因は気温によるものと推定されているが, 飼育実験の結果, セアカゴケグモは日本に定着し, さらにより広範囲に広がる可能性があることが示唆された。