- 著者
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篠永 哲
- 出版者
- The Japan Society of Medical Entomology and Zoology
- 雑誌
- 衛生動物 (ISSN:04247086)
- 巻号頁・発行日
- vol.16, no.4, pp.263-269, 1965-12-30 (Released:2016-09-05)
- 被引用文献数
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富士山において, 夏季のハエの垂直分布を調査した.調査は, 天候の最も安定している7月下旬を選び, 高度計を用いて海岸より標高500mごと, 3500mまでの間に8地点を選び, 各地点で馬肉を餌としたハエトリカゴを設置し, ハエを採集した.得られたハエは研究室で種類を同定し, 個体数を数えた結果, 4科, 19属, 35種, 2371個体であつた.その大多数はクロバエ科に属し, 約75%を占め, 調査地点では1500mが最も多く, それは, ホホグロオビキンバエの出現によるものである.2000m以上の高山地帯では, クロバエ科の3種, オオクロバエ, ミヤマクロバエ, ケブカクロバエが優位種で, 海岸(0m)では, 人家附近で発生するキンバエ族とニクバエ科のハエが多くみられた.これらのハエは, それぞれの種ごとに特有の分布域を有し, それは, 気温, 湿度などの気候条件と植物相, 発生源の有無など有機的, 無機的な環境条件に左右されると考えられる.しかし, 最大の条件は気温であるように思われる.採集されたハエの種および個体数などから見ると, 夏季のハエの垂直分布は, 次のごとく大体4つの分布帯が考えられる.1)0〜500m.2)500〜1500m.3)1500〜2500m.4)2500m以上.