著者
城間 理夫
出版者
琉球大学農学部
雑誌
琉球大学農学部学術報告 (ISSN:03704246)
巻号頁・発行日
no.20, pp.169-190, 1973-12

この報告は沖縄におけるパインアップルの蒸発散量について熱収支法による1つの測定実験結果をまとめたものである。測定は琉球大学構内においてライシメーターに栽培してあるスムースカイエン種の株について1972年の夏に約1か月間にわたって行なった。各株は植付後15か月ないし16か月経過していて葉面積指数は4.1∿4.3であり結実期に入ったものであったが, これらの株に対するかん水は常にじゅうぶんに行なわれていた。全測定期間のうちで降雨や強風などがなくて測定条件の比較的によかった9日間の測定結果をまとめると次のとおりである。1.夏期, 結実期に入ったパインアップルの蒸発散量はくもりの日に約1.3mm/day, 晴天の日に約2.7mm/dayで, 全平均は2.1mm/dayであった。2.パインアップルの植被上における昼間の各熱収支項の平均の大きさは, 純放射100に対して潜熱伝達量40,顕熱伝達量56,地中伝熱量4のオーダーであった。3.パインアップルの植被上におけるアルベドは日出, 日入のころを除き平均0.15で他の作物に比べて小さい方であった。4.熱収支法によるとパインアップルの夜間における蒸発散量はほとんどゼロになる。
著者
宮内 伸子
出版者
日本独文学会
雑誌
日本独文学会研究叢書
巻号頁・発行日
no.85, pp.77-94, 2012-10

筆者は数年前から、日本語で書かれた文学作品を、そのドイツ語訳と対照させるという作業に取り組んでいる。日独両言語の発想や好まれる表現のちがいの確認を目的として始めたことであったが、この作業を通して、よく知っているつもりの日本語の作品が新しい姿で立ち現れ、それまで気づかないでいた新たな面白みを発見することもしばしばである。これまでに、よしもとばなな、川端康成、三島由紀夫の作品を取り上げてきたが、今回は太宰治の『人間失格』を、その独特の語り口に注目して扱ってみたいと思う。