著者
衛藤 恵美 今岡 信介 森 淳一 若林 秀隆
出版者
一般社団法人 日本臨床栄養代謝学会
雑誌
学会誌JSPEN (ISSN:24344966)
巻号頁・発行日
vol.4, no.1, pp.10-16, 2022 (Released:2022-08-25)
参考文献数
43

要旨:【目的】回復期リハビリテーション(以下,リハと略)病棟に入院した80歳以上の脳卒中患者の転帰に口腔機能がどのように影響するか明らかにする.【対象と方法】80歳以上の脳卒中患者241例を退院先が在宅か施設かで群分けし,基本属性,医学的属性,入院時および退院時の機能的自立度,口腔機能を後ろ向きに検討した.また転帰先への影響因子とカットオフ値を検討した.【結果】在宅群は,入院時ROAG得点は,有意に低値であり,入院時FIM運動項目,認知項目,退院時FIM総得点,FIM運動項目,認知項目は,有意に高値であった.多重ロジスティック回帰分析の結果,入院時ROAG総得点(オッズ比1.19)とFIM運動項目(オッズ比0.96)が在宅退院に影響を及ぼす関連要因として抽出された.またカットオフ値は,入院時ROAG総得点(≦13点)とFIM運動項目(≧30.1点)であった.【結論】入院時の口腔機能から,在宅退院が困難と予測される高齢脳卒中患者の抽出と目標設定に寄与する可能性がある.
著者
徳田 和宏 竹林 崇 藤田 敏晃
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.1009-1013, 2019-08-15

Abstract:【目的】近年,急性期からの上肢麻痺に対する集中練習も有用とされつつある.今回,練習量確保のため病棟看護師と協働して行う病棟実施型のconstraint-induced movement therapy(CI療法)を開始したので,これらの結果について報告する.【方法】病棟実施型のCI療法を実施した脳卒中 8例について,介入前後におけるFugl-Meyer Assessment(FMA),Motor Activity Log(MAL)のamount of use(AOU)とquality of movement(QOM),Canadian Occupational Performance Measure(COPM)における満足度,遂行度を測定した.【結果】FMA,MALのAOUとQOM,COPMの満足度と遂行度のすべての項目において,有意な改善が認められていた.また,効果量についても全項目において大きな改善を認める結果であった.【結論】急性期からの病棟実施型のCI療法は,学習性不使用の防止や実生活での麻痺手を使用する行動変容に寄与できる可能性があり,中・長期予後によい影響を与える可能性が示唆された.
著者
伊藤 理絵
出版者
白梅学園大学
巻号頁・発行日
2016-03-15

2015年度
著者
中西 尋子 Hiroko Nakanishi
出版者
甲南大学
巻号頁・発行日
2018-03-31

元来日本はキリスト教が根づきにくい国である。そうした状況にありながら、韓国出自のキリスト教会が日本で宣教を展開し、日本在住の韓国人のみならず、日本人信者も一定程度獲得している事例が見られる。在日大韓基督教会(1908年創立)、統一教会(1954年創立)および「韓国系キリスト教会」(1990年代以降来日)である。本論文の課題は、これらがどのように日本宣教を行い、信者を獲得しているかを問うことにある。 従来の宗教社会学は、これら3教会を別個に性格づけてきた。在日大韓基督教会は「在日の宗教」、韓国系キリスト教会は「ニューカマーの宗教」、統一教会は「反社会的宗教」として。確かにそうなのだが、3者を同じ俎上に乗せることによって新たに見えてくるものがある。申請者の狙いはここにある。 本論文は、以上の問題設定に加えて調査概要、概念枠組みなどを提示する序章に続き、全3部12章および結章で構成されている。 第Ⅰ部「在日大韓基督教会―民族の教会として」では、第1章「民族の教会としての教会形成―在日大韓基督教会を事例として」で、教団機関紙『福音新聞』(1951年創刊)の内容分析を行い、在日大韓基督教会の民族主義的性格を明らかにする。植民地支配下の朝鮮半島から日本に来た人々が受けた差別に向き合う教会の姿勢が鮮明である。 第2章「一世にとっての教会、二世にとっての教会」では、在日一世にとっては教会が日本での厳しい暮らしに耐えるための民族共同体であったのに対して、二世にとってはエスニック・アイデンティティの獲得の場であることを、信者の生活史から明らかにする。 第3章「在日大韓基督教会と韓国系キリスト教の日本宣教のあり方を比較して」は、在日大韓基督教会と韓国系キリスト教会の間に日本人信者の獲得で差があることを、教会での使用言語や民族主義的色合いの有無から説明する。 第4章「韓国系キリスト教会の在日大韓基督教会への加入」では、在日同胞の教団として日本に定着した在日大韓基督教会だったが、現在は牧師の3分の2が韓国の教団から派遣されていること、および、1980年代以降、韓国系キリスト教会が在日大韓基督教会に加入するケースが増えてきたことから、両者がボーダーレスの関係になりつつある現状を報告する。 第Ⅱ部「韓国系キリスト教会群―普遍主義のもとに」は、日本の植民地支配という日韓関係の「負の歴史」を乗り越えて、日本人宣教を精力的に行う韓国系キリスト教会がテーマである。まず、第5章「日本における韓国系キリスト教会の概要」で、これまであまり知られていなかった韓国系キリスト教会の全体像を明らかにする。データソースに『クリスチャン情報ブック』(2010年版)を用いて、当該教会が大都市圏だけでなく38都道府県に分布し、推計300近くもあることをつきとめた。また、1990年前後から2000年代前半にかけての設立が全体の81%にのぼることがわかった。 続く第6章「韓国人宣教師にとっての日本宣教―『汝の敵』『隣り人』としての日本」は、韓国系キリスト教会が活発な日本宣教を行う要因の考察である。キリスト教人口が25%の韓国では牧師が供給過剰であり、それが海外宣教の構造的要因となっている。だが、それだけでは盛んな日本宣教を十分に説明することはできない。韓国では儒教道徳がエートスとして国民の間に深く浸透している。ここで「儒教道徳」とは、ものごとを道徳的な上下関係に位置づける思考様式のことを言うが、これを韓国系キリスト教会も共有していた。韓国人宣教師にとって日本は韓国を侵略した道徳的に劣った国である。しかし、そうした恩讐を越えて日本人に福音を伝える崇高な使命として日本宣教が意味づけられていることを、牧師の語りから明らかにする。 第7章「なぜ日本人が韓国系キリスト教会の信者になるのか」は、日本人が信者になる教化過程の考察である。教会には「7週の学び」、「小グループ(筍)」、「Quiet Time」、など、学びのプログラムが用意されている。新来者はこのプログラムに沿って信仰を強化していくが、この点で日本の教会に物足りなさを感じる人が韓国系キリスト教会にアプローチしている場合が少なくないことを、本章は明らかにする。 第Ⅲ部「統一教会―建前の普遍主義、本音の民族主義」、第8章「韓国社会と統一教会」では次の諸点が明らかになる。第1に、統一教会の性格が韓国と日本では大きく異なっている。韓国の統一教会は宗教団体を越えて巨大な事業体である。第2に、合同結婚式で韓国人と結婚し、韓国に暮らす日本人女性が現在、7千人いることが韓国と日本の統計データから明らかになる。第3に、統一教会による韓国人男性と日本人女性のカップリングが韓国で許容される背後には、韓国農村における男性の結婚難や、男性の非正規雇用率の異常な高さといった社会構造の歪みがある。 第9章「日韓両国における統一教会のあり方の差異―新聞報道の比較から見えること」では、『朝日新聞』と『朝鮮日報』の統一教会関連記事を分析し、両国における統一教会のあり方を比較する。日本では霊感商法が1980年代後半から社会問題化した。『朝日新聞』にはその提訴、判決などの記事が多数見られる一方、『朝鮮日報』にはそのような記事は一切なく、統一教会や教祖の動向、および傘下の関連企業などの記事が多く見られた。統一教会の活動内容が日本と韓国では大きく異なっている。 続く第10章と第11章のデータソースは、合同結婚式を経て韓国で暮らす日本人女性信者38人の語りである。まず第10章「在韓日本人信者の信仰生活」では、彼女たちが韓国で暮らすことの意味づけを明らかにする。教団が決めた韓国人男性と愛情のない結婚をし子供を産むのは、日本の植民地支配を贖罪し、国境と民族を超えた「地上天国」を建設するためだと、彼女たちは語るのだった。 次いで、第11章「統一教会への入信―『女性性』の回復」は、日本人女性信者たちが統一教会に入信し、結婚に至る背後経験の考察である。日本で彼女たちは、結婚と家庭に関して深刻な絶望体験を持ち、職業経験からも「女は損」という感情を抱いていた。女性であることに積極的な意味を見出せない状況で、統一教会に救済を求めていた。そして統一教会で結婚し、子どもを産み育てることに宗教的な意義を見出すことによって女性性を回復できたと、彼女たちは信じている。 第12章「『本郷人』に見る祝福家庭の理想と現実」は、統一教会が発行する在韓日本人信者向けの機関紙『本郷人』の内容分析である。分析の目的は、1つに申請者の調査対象者を相対化すること、2つに教団が在韓日本人信者に伝えようとしているメッセージの解読である。調査対象者たちは現地で比較的平穏無事に暮らしていた。しかし『本郷人』の記事からは夫や子どもの問題、病気、生活苦などで問題を抱える信者が少なくないことがわかる。また、『本郷人』には教団の行事と、そこで語られる教祖や幹部の言葉がつねに掲載されている。それは、日々の生活で精一杯な信者に対し、初心忘れることなく、統一教会の信者として使命を遂行せよというメッセージであった。機関誌『本郷人』は、統一教会の思考の枠組みを維持・強化させる機能を果たしていた。 結章「日韓関係を背景にした三者三様の宣教」では、第1章から第12章までの知見をまとめ、3教会の日本宣教が日韓関係の「負の歴史」を背景に展開されてきたことを確認する。在日大韓基督教会の場合は、戦前の植民地から日本に渡った同胞を対象に宣教を始めた。そして戦後は、同胞の人権問題に積極的に関与することによって民族主義的な性格を強めていった。韓国系キリスト教会の場合は、負の日韓関係を倫理的な上下関係に置き直して宣教を展開する。宣教師にとって日本は「傷ついた隣人」であり、彼らはその隣人を助ける「よきサマリヤ人」の使命感をもって行動している。そして統一教会によれば、日本は朝鮮半島を植民地支配した罪深い国である。日本は贖罪のために韓国にできる限りの人的・財的協力をする事は当然である。こうした信仰を内面化した日本人女性がすすんで韓国人と結婚し、韓国で家庭を営んでいる。 以上のように、韓国出自の3教会は近代日韓関係史をそれぞれの仕方で定義づけることによって日本宣教を可能にしたと言うことができるのである。

10 0 0 0 OA 東京震災録

著者
東京市 編
出版者
東京市
巻号頁・発行日
vol.前輯, 1926
著者
佐藤 卓己
出版者
国際日本文化研究センター
雑誌
Historical Consciousness, Historiography, and Modern Japanese Values
巻号頁・発行日
pp.65-73, 2006-11-30

Historical Consciousness, Historiography, and Modern Japanese Values, 2002年10月末-11月, カナダ, アルバータ州バンフ

10 0 0 0 OA 葉隠

著者
山本常朝 著
出版者
三教書院
巻号頁・発行日
vol.上, 1937

10 0 0 0 OA 源平盛衰記

著者
大町桂月 校
出版者
至誠堂
巻号頁・発行日
vol.5, 1912
著者
熊野 直樹
出版者
九州大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2010

本研究の主たる目的は、第二次世界大戦期の「満」独阿片貿易の実態解明であった。特に、どのような経緯を経て、「満洲国」とナチス・ドイツ間の主要な交易品が満洲大豆から阿片に代わったのか、その際、誰が主導したのか、を明らかにするのが本研究の目的であった。 「満」独通商協定によって、両国は主に満洲大豆とドイツ製機械をバーター取引していたが、満洲大豆の不足によって、「満洲国」側は貿易赤字に陥った。その結果、ドイツ側はその決裁の手段として、満洲大豆に代わって阿片を要求するに至った。1941 年 5 月の「満独通商協定延長に関する第二次協定」において正式に両国の間で、阿片取引がなされることになった。その責任者が、「満洲国」側は古海忠之であり、ドイツ側がドイツ経済使節団代表のヘルムート・ヴォールタートであった。戦時中、両者が両国間の阿片貿易の責任者であった

10 0 0 0 OA 回転寿司の感性

著者
椎塚 久雄
出版者
一般社団法人 電気設備学会
雑誌
電気設備学会誌 (ISSN:09100350)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.100-103, 2016 (Released:2016-02-10)
参考文献数
4
巻号頁・発行日
vol.[1], 1000
著者
中山 樹一郎 堀 嘉昭 占部 篤道
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.121-126, 1994-02-01 (Released:2011-07-21)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

高脂血症を伴う尋常性乾癬患者20例(3例は血清脂質レベルは正常範囲であったが何らかの血清アポタンパクの異常を認めたもの)に抗高脂血症剤のベザフィブラート(一般名bezafibrate, 商品名ベザトール®SR錠)の内服治療とステロイド外用療法の併用療法を施行しその乾癬皮疹および血清脂質の改善効果について検討し, 以下の結果を得た。1)乾癬の潮紅, 鱗屑, 浸潤·肥厚のいずれも統計学的に有意な改善がみられた。中等度改善以上の改善率は50%(20例中10例)であった。2)血清脂質値では, 治療後に総コレステロール, トリグリセライドが有意に低下し, またVLDL-コレステロールが有意に低下した。アポタンパクはA-IIが有意に上昇し, B, C-III, Eが有意に低下した。他に総脂質, エステルコレステロール, 遊離コレステロール, リン脂質が有意に低下した。血清脂質の中等度以上の改善率は60%であった。3)皮膚症状改善度と血清脂質改善度を総合的に考慮した全般改善度は中等度以上の改善率で50%であった。4)血清脂質の各パラメーターの変動と皮膚症状改善度との相関性では総コレステロールと皮膚症状の改善度に有意の相関が認められた。5)副作用は2例にみられ, その内訳は軽度の動悸と嘔気であった。薬剤との因果関係は断定できなかった。6)全般改善度および概括安全度を総合的に判断した有用度では, 有用以上が50%であった。以上の結果より高脂血症を伴う乾癬患者の外来での治療にはステロイド外用剤とベザフィブラートの内服療法の併用療法は試みるべき有用性の高い治療法と考えられた。