- 著者
-
須藤 紀子
佐藤 加代子
- 出版者
- The Japanese Society of Nutrition and Dietetics
- 雑誌
- 栄養学雑誌 (ISSN:00215147)
- 巻号頁・発行日
- vol.63, no.5, pp.291-299, 2005-10-01 (Released:2010-02-09)
- 参考文献数
- 71
- 被引用文献数
-
2
1
市町村保健センターの栄養指導担当者においで, 妊娠中の飲酒が生まれてくる子どもに悪影響を及ぼすことは漠然と認識されているが, 具体的にどのような障害が生じるのかについてはあまり知られていない実態を受け, (1)これまでに前向きコホート研究において観察された, 妊娠中の飲酒が子どもに及ぼす影響にはどのようなものがあるかを整理し, 情報提供することを目的とした。また, 少量飲酒であれば容認する意見もあったことから, (2)飲酒量のレベルを純アルコール14g以下の少量飲酒に限定した場合でも, 障害が認められるかどうかを明らかにすることを目的とした。系統的レビューの結果, 妊娠中の母親の飲酒の影響は, 成長遅滞, 先天奇形, 脳の形成異常, 睡眠障害, 神経学的機能障害, 認知力低下, IQ・学習能力の低下, 言語発達遅滞, 注意欠陥, 問題行動と多岐にわたることが分かった。少量飲酒が子どもの身体発育に及ぼす影響については研究結果間で不一致がみられ, 一定の見解は得られなかった。今後はこれら一つひとつの障害について絞り込んだ文献検索を行い, メタアナリシスを用いて研究結果を統合することで, 科学的根拠に基づいた飲酒指導を行うためのエビデンスを蓄積していく必要があると考える。指導の現場においては, 妊娠中の少量飲酒が子どもに及ぼす影響について研究結果が不十分である現時点では, 少量飲酒を容認することは避けたほうがよいと考えられた。