著者
山下 博美
出版者
日本湿地学会
雑誌
湿地研究 (ISSN:21854238)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.3-17, 2016

地域で構築される干潟再生案に対する言説理解の一端を担う為,本稿は有明海諫早湾干拓潮受け堤防排水門「開門」案を例に,2011 年に諫早市内及び近郊で行われたインタビューとテキスト調査の結果を紹介する.排水門開門のベネフィットに関しては,海洋環境改善,農業環境改善,観光業への弾み,過去の誤った意思決定の改め,自然共生を学びなおす機会の取得,住民間の争いの終結が言及された.一方リスクとしては,水害による「生命と財産」の喪失,農業用水喪失,農地塩害,漁業被害,現在の生態系破壊,改善に繋がるか分からない行為により発生する他のリスク享受,税金の無駄遣い,一部の人のための資金使用が挙げられた.一見まとまりなく見える要素も,干潟再生の賛成・反対に関わらず,5 つの核となる要素に整理するできることが分かった.それらは,①「再生行為の意義」,②「喪失の経験と不安」,③「公正さの担保」,④「未来への展望」,そして⑤「対立を超える言説(和解の言説)」であった.
著者
中村 晋 広田 すみれ 高田 毅 山口 彰 中村 孝明
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
構造工学論文集 A (ISSN:18816614)
巻号頁・発行日
vol.62, pp.138-146, 2016

The objective of this paper is to establish the method to explain technology for creating the reliability between people and engineer. Therefore, the view with which the risk communication model about formation of the risk perception in social psychology or reliance and the idea about new engineering accounting were united was established. The homepage about the maintenance management of the road structure in Fukushima Prefecture was made into the example, the issues on technical explanation were summarized, the contents were corrected using the method, and the effect was investigated. It is found that a new technical explanation method is useful because intelligibility increased from correction before and by having used the method.
著者
斉藤 了文
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Sociology, Kansai University (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.61-118, 2016-03

'Safety' is a charming concept. First, we conduct some useful thought experiments concerning safety. Second, scientific method is considered as a measure for securing safety. And we test the limit of scientific method. Finally, we grasp the meaning of the experiments and the limitation. The points are artifacts and agent.安全というのは、割と奇妙な概念である。この感覚を明らかにするために、まず安全を個人の命や生活を守ることだと、大くくりしたうえで違和感を取り出していきたい。第1節で安全に関わる思考実験をしてみる。そこでは、座敷牢、万里の長城、斜め横断、抜け道、アポロ13、高速道路、太陽という例を取り上げる。これらの例を使って、違和感を具体的に取り出し、さらに考察するべきポイントを探っていく。第2節では、安全確保のための方策の基本として、科学の方法と工学の方法というやり方を取り上げる。リスク削減のための、監視とコントロールというのが基本的な方法である。ただ、面白いことにこのような方法を使っても、リスクが完全になくなると考える人はまずいない。第3節では、第1節で例示した安全のパラドックスが生じてきたその根拠を掘り下げて、哲学的な論点を取り出すことにする。まず、私が背景として持っているリスクの歴史についての理解を提示(3.1)し、行為者と被害者の非対称性について(3.2)考察し、法人は自然人のようには統合された人格ではありえないということに関わる問題を考えていく(3.3)。その上で、人工物というものが、安全についての理解に、さらには現代の社会に与えている意義を提示しようとした(3.4)。
著者
斉藤 了文
出版者
関西大学社会学部
雑誌
関西大学社会学部紀要 = Bulletin of the Faculty of Sociology, Kansai University (ISSN:02876817)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.61-118, 2016-03

安全というのは、割と奇妙な概念である。この感覚を明らかにするために、まず安全を個人の命や生活を守ることだと、大くくりしたうえで違和感を取り出していきたい。第1節で安全に関わる思考実験をしてみる。そこでは、座敷牢、万里の長城、斜め横断、抜け道、アポロ13、高速道路、太陽という例を取り上げる。これらの例を使って、違和感を具体的に取り出し、さらに考察するべきポイントを探っていく。第2節では、安全確保のための方策の基本として、科学の方法と工学の方法というやり方を取り上げる。リスク削減のための、監視とコントロールというのが基本的な方法である。ただ、面白いことにこのような方法を使っても、リスクが完全になくなると考える人はまずいない。第3節では、第1節で例示した安全のパラドックスが生じてきたその根拠を掘り下げて、哲学的な論点を取り出すことにする。まず、私が背景として持っているリスクの歴史についての理解を提示(3.1)し、行為者と被害者の非対称性について(3.2)考察し、法人は自然人のようには統合された人格ではありえないということに関わる問題を考えていく(3.3)。その上で、人工物というものが、安全についての理解に、さらには現代の社会に与えている意義を提示しようとした(3.4)。
出版者
中外堂
巻号頁・発行日
1872
著者
西川好次郎著
出版者
芸術教育社
巻号頁・発行日
1934
著者
赤林 朗 甲斐 一郎 久保木 富房 吾郷 晋浩 末松 弘行
出版者
一般社団法人日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.41, no.7, pp.517-527, 2001-10-01
被引用文献数
1

心身医療・心理療法領域におけるカルテ開示の意識に関連する要因を明らかにし, 今後の方向性を考察するため, 日本心身医学会の会員を対象に, 郵送による無記名・自記式質問紙調査を行った(回収率62%).回答者の多数は, カルテ開示の問題に関心・知識をもっており, カルテの一部あるいは全面開示に基本的に賛成を示した.一方, 心理療法におけるカルテ開示についての意識は二分した.重回帰分析の結果, 病名・病状の説明等に困った経験, 精神分析療法をしばしば用いることが, カルテ開示に消極的な意識に有意に関連していた.心理療法におけるカルテ開示の問題は, 各心理療法や個別疾患の特徴に沿った議論を行う必要性があると考えられた.