- 著者
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渡邉 浩司
- 出版者
- 中央大学人文科学研究所
- 雑誌
- 人文研紀要 (ISSN:02873877)
- 巻号頁・発行日
- vol.102, pp.321-350, 2022-09-30
「武勲詩」は,『ローランの歌』を皮切りとして11世紀後半に生まれ,12世紀中頃に初期の作品群が成立し,13世紀に₃ つの詩群が形づくられた。そして,こうした潤色過程で「アーサー王物語」の特徴的な要素を取りこみ,ジャンルの革新を行った。「ギヨーム・ドランジュ詩群」に属する『ロキフェールの戦い』の「アヴァロン・エピソード」がその典型例であり,その中ではアーサー王の異父姉妹モルガーヌが中心的な役割を演じている。現世の勇者レヌアールを異界アヴァロンへと連れ去る妖精モルガーヌは,妖女であると同時に極端な母性愛を見せる両義的な存在である。