著者
伊藤 かおる 池田 俊也
出版者
国際医療福祉大学学会
雑誌
国際医療福祉大学学会誌 = Journal of the International University of Health and Welfare (ISSN:21863652)
巻号頁・発行日
vol.21, no.1, pp.101-109, 2016-03-31

日米欧の主要な診療ガイドラインにおける推奨降圧薬とその決定過程において,医療経済的視点がどの程度反映されているかを検討した.その結果,欧州高血圧学会/ 欧州心臓病学会(ESH/ESC)2013 はすべての降圧薬が対象にされており,患者の臨床的・社会的背景に応じて個別に薬物治療を行うよう記載されていた.日本高血圧学会(JSH)2014,米国合同委員会(JNC8),英国保健医療研究所/ 英国高血圧学会(NICE/BHS)2011 は4 種類が推奨されていた.推奨降圧薬の決定根拠として,JNC8,ESH/ESC2013 は医療経済学的視点による記述はほとんどなく,臨床的エビデンスを基に推奨降圧薬の決定をしていた.JSH2014 は医療経済評価を行った文献は紹介されていたが,推奨薬の決定根拠には反映されていなかった.NICE/BHS2011 では評価指標として費用効果分析を実施し,その結果から具体的で明確な薬物治療の方針を提示していた.高血圧治療の標準化と効率化を図るために,わが国においても医療経済評価の結果を反映した診療ガイドラインの必要性があると考えられた.
著者
張 淑倩 SHU-CHIEN CHANG 湘北短期大学非常勤講師 Shohoku College
巻号頁・発行日
no.28, pp.89-99, 2007-03-31

Chinese language has many words containing a color related Chinese character. These words not simply indicate colors but also imply other meanings deriving from these colors. In China, colors often have symbolic meanings. The present paper discusses these social, cultural, and ideologieal meanings of colors used in Chinese language.
著者
高澤 秀人 末永 陽一 宮下 岳士 平田 耕志郎 若林 海人 高橋 裕介 永田 靖典 山田 和彦 TAKASAWA Hideto SUENAGA Yoichi MIYASHITA Takashi HIRATA Koshiro WAKABAYASHI Kaito TAKAHASHI Yusuke NAGATA Yasunori YAMADA Kazuhiko
出版者
宇宙航空研究開発機構(JAXA)
雑誌
宇宙航空研究開発機構研究開発報告: 大気球研究報告 = JAXA Research and Development Report (ISSN:24332216)
巻号頁・発行日
vol.JAXA-RR-22-008, pp.37-50, 2023-02-17

深宇宙探査を対象とした新しいサンプルリターンミッションに向けて薄殻エアロシェル型カプセルが提案されている.本カプセルのコンセプトにおける一番の特徴は,軽量・大面積エアロシェルを用いることで空力加熱を避けることである.本カプセルはパラシュートレスでの帰還が想定されていることから全速度域で空力的に安定に飛行することが求められている.実機は,直径0.8m,総質量10kg, 機軸周りの慣性モーメント0.58kg m2, 機軸垂直周りの慣性モーメント0.32kg m2のカプセルを想定している.薄殻エアロシェル型カプセルの低速域における動的不安定性を評価するために,2022年7月1日にゴム気球を用いた自由飛行実験RERA(Rubber balloon Experiment for Reentry capsule with thin Aeroshell) を実施した.気球実験機として,直径0.8m,総質量1.56kg,機軸周りの慣性モーメント0.033kg m2, 機軸垂直周りの慣性モーメント0.020kg m2のカプセルを使用した.カプセルは高度25kmにおいてゴム気球から切り離され,自由飛行を開始し,海上着水した.実験中のオンボードセンサーによる計測データとカメラによる撮影画像は地上局へ送信された.自由飛行においてカプセルは姿勢振動していたもののピッチ方向に縦回転することはなかった.自由飛行時のカプセル周りの流れ場はマッハ数0.15以下,レイノルズ数10(exp 5) オーダーであった.このことから再突入時と同オーダーのレイノルズ数環境下で試験を実施できた.実験機は低速域においてピッチ・ヨー方向の振動運動が発散しないことが示唆された.
著者
山本 篤 宮崎 浩一
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.3, no.3, pp.117-131, 2010-10-25

本研究では,第 1 に,20 世紀最後の 15 年間における米国株式市場の上昇をマクロ経済リスクの観点から説明付けた Lettau らのモデルが,異なるマクロ経済リスクの下にある 1990 年代以降の日本株式市場においても説明力を有するかについて検証する.第 2 に,個別株式のベータリスク評価モデルを提案し,分析事例に基づいて個別株式のベータリスク量がマクロ経済リスクの観点から説明可能であるか検証する.検証結果から,彼らのモデルは,日本においてもマクロ経済リスクの観点から株式市場のダイナミックスを説明することが可能であり,また,個別株式のベータリスク量に関してもマクロ経済リスクの観点から説明されることが確認された.
著者
吹上 大樹 河邉 隆寛 西田 眞也
雑誌
研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM) (ISSN:21888701)
巻号頁・発行日
vol.2017-CVIM-206, no.8, pp.1-6, 2017-03-02

プロジェクションマッピングは実物体の見た目を編集する光投影技術として注目されており,これまで対象のテクスチャや色味,ダイナミックレンジ,質感などの編集に利用されてきた.こうしたプロジェクションマッピングの新たな応用例として,著者らは対象に動きの情報を付加する手法 (変幻灯) を提案した.変幻灯では,輝度信号の視覚運動パターンのみを投影するため,投影対象物が本来もつ見た目やテクスチャの質感には一切影響せずに,非常に現実感の高い動き印象を知覚させることが可能となる.本研究報告では,変幻灯の基本的な仕組みを解説すると共に,変幻灯の応用例として,インタラクティブに実物体に見かけの動きを付与し,編集することができるアプリケーションを紹介する.
著者
鯵坂 哲朗 若菜 勇
出版者
総合地球環境学研究所 研究プロジェクト4-2
雑誌
2004年度 生態史プロジェクト報告書
巻号頁・発行日
pp.338-344, 2005-07-30

2004年12月にラオスで調査したシオグサ(カイ)とアオミドロ類(タオ)について報告する。シオグサの加工品カイペーンの加工工程やそれ以外の利用(調理)法について新たな知見が得られた。また、シオグサの生育場所と採取風景およびカイペーンの加工工程をビデオ撮影できた。シオグサとアオミドロ類の生育場所の水質環境調査を行ったところ、それぞれの生育場所の特性が明らかにされた。シオグサは主に流水系で、pHもややアルカリ性で、溶存酸素濃度が高く、きれいで不純物の少ない清浄な水質環境に生育していること、またアオミドロ類は同様の清浄な水質環境にも、また静水系で、pHもやや酸性よりで、溶存酸素濃度が低く、濁りがあって不純物の多い水質環境にも生育できることがわかった。ラオスのシオグサは1種類で、種名はカモジシオグサ(Cladophora glomerata (Linnaeus) Kuetzing)であることが判明した。アオミドロ類については、Spirogyra spp.(アオミドロ属の数種)であることも判明し、くわしい利用(調理)法もわかった。
著者
千葉 郁太郎
出版者
京都文教大学地域協働研究教育センター
雑誌
京都文教大学地域協働研究教育センター 地域協働研究ジャーナル (ISSN:24369667)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.93-109, 2023-03-31

宇治では古来は『源氏物語』、直近では『響け!ユーフォニアム』などの作品を追体験する観光が行われてきたが、紫式部と異なり株式会社京都アニメーション(以下、京都アニメーション)は十分に研究されていない。「ものがたり観光」の原動力となるコンテンツの作り手の研究は「ものがたり観光」の本質に迫る上で重要である。日本におけるアニメ産業は 2 兆円規模を超えており、「クールジャパン」の名のもとに重要な輸出産業として国家戦略にも組み込まれている。アニメ産業の根幹を成すのは制作会社であるが、産業形成の歴史的変遷や取引形態の特殊性からおよそ 90%が首都圏、とりわけ東京 23 区西部に偏在している。その中で、80 年代に京都で起業し独自の経営路線により規模を拡大してきた京都アニメーションは特異な存在である。京都アニメーションは下請会社として出発したが、2000 年代より元請を開始し社会的な現象を起こすヒット作品を生み出し続けている。2010 年代に入ってからは独自に作品を企画・制作し、出版、商品販売に事業を拡大するなど地方を拠点とするアニメ制作会社としては異例の成長を遂げた。京都アニメーションの経営戦略は「京アニ・クオリティ」と呼ばれるブランド価値の創造、製作委員会への出資と企画の主導、著作権確保による収益源多様化の 3 つの要因が相互に作用しあうトライアングル構造となっている。京都アニメーションと同じく権利ビジネスを展開している株式会社スタジオジブリ、地方を拠点に「聖地巡礼」アニメを制作してきた株式会社ピーエーワークスなどの存在があるが、それぞれの比較検討は今後の課題としたい。