著者
田中 久美子
出版者
社会・経済システム学会
雑誌
社会・経済システム (ISSN:09135472)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.73-80, 2022-03-31 (Released:2022-03-30)
参考文献数
10

2020年、新型コロナウィルス感染症(以下、新型コロナ)の拡大を受け、人々の日常が大きく変化した。他者との密集、密接、密閉の「3密」を避け、県境を跨いだ移動は自粛を求められた。このことは、大学生の就職活動にも大きな影響を与えた。例年大学生の就職活動が解禁される3月1日は、合同会社説明会が各地で大規模に開催されるが、2020年はその殆どが中止された。世の中が急激に変化する中で自身の進路を決める必要があった学生たちには、どのような影響があったのだろうか。特に移動が制限され、人との関わりが希薄化することが、学生たちの就職意識にどう影響しただろうか。  本研究では、地方大学に所属する学生たちが、就職活動初期の重要なプロセスで新型コロナの影響を受けたことで、彼らの就職意識にどのような影響があったのか、学生へのアンケート調査から明らかにした。その結果、会社規模や人間関係を重視する気持ちの強まりが確認された。
著者
島田 薫 柄澤 智史 田中 久美子 松村 洋輔 大島 拓 織田 成人
雑誌
第46回日本集中治療医学会学術集会
巻号頁・発行日
2019-02-04

【背景】集中治療室(ICU)における特発性腸腰筋血腫は抗凝固薬や抗血小板薬の投与、腎代替療法、高齢がリスク因子と考えられており、発生頻度は0.3%と稀ながら、致死率は30%との報告もある。当科でも診療機会が増えているが、典型的な臨床所見が明確でないことから、診断に苦慮することも多い。【目的】当院ICUで経験した症例から特発性腸腰筋血腫の臨床的特徴を明らかにする。【対象と方法】2016年4月1日から2018年9月15日の期間に当院ICUに入室した患者のうち、特発性腸腰筋血腫と診断された患者を診療録から後方視的に抽出した。【結果】対象期間中のICUの延べ入室患者数は4529例で、うち6例(男性4例)で特発性腸腰筋血腫を認めた。発症頻度は0.1%だった。平均年齢は66歳、いずれも片側発症で、右側5例、左側1例だった。発症前から全例でヘパリン、4例でステロイドが投与されており、4例で腎代替療法が施行されていた。自覚症状から診断に至った症例は4例で、呼吸困難、腰痛と腹部膨満、右側腹部痛、腹部緊満を認めた。他の2例は意識障害を伴う出血性ショック、原因不明の貧血進行から判明した。いずれの症例でも同時に貧血が進行していた。5例に出血性ショックを呈し、4例に血管内治療を施行し止血が得られた。1例は輸血で止血は得られたが腸管虚血を含めた臓器不全が進行し死亡した。血管内治療を施行した例では出血による死亡例はなかった。【結論】特発性腸腰筋血腫は稀な病態で、診断が遅れれば致死的になりうる。ICU患者は自覚症状に乏しい上に、確定診断に有用なCT検査の実施が容易でない場合が多い。一方で、早期に診断できれば止血術により救命できる可能性が高い。自験例では高率にリスク因子を認めた一方で貧血の進行以外に共通する臨床所見はなかったが、ショックを呈した症例は適切な止血術により救命し得た。リスク因子のある症例で貧血が進行した際には、腸腰筋血腫も念頭に置いた原因検索をすすめることが重要である。
著者
杉浦 圭子 村山 洋史 野中 久美子 長谷部 雅美 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.69, no.1, pp.37-47, 2022-01-15 (Released:2022-01-28)
参考文献数
27

目的 最長職は高齢期の健康状態や生活の質に関連すると報告されている。本研究では,主として就労支援の観点から,最長職の就労形態および業種と,現在の就労状況および就労理由との関連を明らかにすることを目的とした。方法 東京都大田区入新井地区に居住する65歳以上の者のうち,要介護度4以上,施設入所中の者等を除いた8,075人全数に対し,2015年8月に郵送による無記名自記式質問紙調査を実施した。調査票では基本属性,生活状況,現在の就労状況および最長職の就労形態と業種を尋ねた。また,現在就労している者については就労理由を尋ねた。分析は現在の就労状況(「常勤」「非常勤」「就労なし」)を従属変数とした多項ロジスティック回帰分析を,就労理由については個々の理由の該当有無を従属変数とした二項ロジスティック回帰分析を行った。結果 5,184件の調査票を回収し(回収率64.2%),5,050件を分析対象とした。最長職の就労形態は,正規の職員・従業員が最も多く42.7%で,業種は販売・サービス職が最も多かった(24.2%)。常勤,非常勤を含め現在の就労者は約3割だった。常勤・非常勤を含めた就労者のうち,その就労理由を尋ねると「生活のための収入を得るため」が最も多く約3割を占め,次いで「健康のため」「生きがいを得るため」「社会貢献・つながりを得るため」であった。現在就労している者の最長職の業種は,常勤では自営業主・自由業,会社・団体などの役員が多く,非常勤では専門職が多かった。就労していない者は正規の職員・従業員および無職(専業主婦含)が多かった。現在就労している理由を「生活のための収入を得るため」とした者は,最長職の就労形態については自営業主・自由業が,業種については労務系職種が多く,「健康のため」「生きがいを得るため」「社会貢献・人とのつながりを得るため」を理由としていた者は,最長職が正規の職員・従業員が,会社・団体などの役員,業種については事務系・技術系職種が多かった。結論 最長職の就労形態や業種によって現在の就労状況や就労理由が異なることが明らかとなった。高齢者の就労や社会参加が円滑に推進されるためには,高齢期の健康状態や生活の質に関連が深い最長職を含め,生活背景などの個別性を加味する必要性があると考える。
著者
田中 久美子
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.46, no.6, pp.691-696, 2005-06-15
参考文献数
18
被引用文献数
1

近年ではPDAや携帯電話などの小型携帯端末が普及し、これに伴って文書入力システムが議論されるようになった。 入力デバイスとしては、キーボードを用いるものからセンサや音声認識などを用いるものまでさまざまに提案されているが、少数キーによる入力は、キーボードの発展形として注目を集めている。 少数キー入力の問題の本質は、言語の総文字数よりも少ないキー数を用いていかに文書を入力するかという点にある。 この問題に対しては、日本は漢字の入力方法として世界で最も早くから取り組んできている。 現在では、predictive text entryとして世界的に研究されるようになり、日本で発展してきた技術上の思想が世界中の言語へ広がりつつある。 本稿ではこの世界の流れの中で、予測入力を中心に少数キー入力を捉える。 少数キー入力は、最先端の機器類を通して発展してきたが、同時に高齢者や身障者とのコミュニケーションを広く支援するユニバーサルな道具としての可能性も秘めている。 従来のコンピュータは、フルキーボードという特殊な環境を前提としており、そこではタッチタイプの技能に通じた達人だけを対象としてきた。 しかし、計算機が日常に浸透するにつれ、ユニバーサルな入力技術が求められるようになり、その1つの解決策の鍵を少数キー入力研究が握っている。以下ではまず入力システムの一般モデルを示し、次にさまざまに提案されている少数キー入力について述べる。
著者
清野 諭 北村 明彦 遠峰 結衣 田中 泉澄 西 真理子 野藤 悠 横山 友里 野中 久美子 倉岡 正高 天野 秀紀 藤原 佳典 新開 省二
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.6, pp.399-412, 2020-06-15 (Released:2020-07-02)
参考文献数
39

目的 本研究の目的は,大都市在住高齢者を対象としてフレイルの認知度とその関連要因を明らかにすることである。方法 東京都大田区で実施したフレイル予防のための地域介入研究のベースラインと2年後調査データを用いた。2016年7月に,郵送法によって65-84歳の男女15,500人の健康度や生活実態を調査した。2018年 7 月に同一集団のフレイル認知度を調査し,この有効回答者10,228人をフレイル認知度の解析対象とした。さらに,これに2016年の調査データを結合できた9,069人を対象として,フレイル認知度の関連要因を検討した。フレイルについて「意味を知っている」または「聞いたことはあるが意味は知らない」と回答した者の割合を認知度とした。これを目的変数とし,年齢,婚姻状況,家族構成,教育歴,等価所得,BMI,既往歴の数,食品摂取多様性得点,腰痛,膝痛,飲酒,喫煙,抑うつ,運動習慣,社会活動,社会的孤立,フレイルの有無を説明変数とした決定木分析とマルチレベルポアソン回帰分析を適用した。結果 フレイルの認知度は20.1%(男性15.5%,女性24.3%)と推定された。決定木分析による認知度の最も高い集団は,社会活動と運動の習慣があり,かつ食品摂取多様性得点が 4 点以上の女性であった(認知度36.3%)。フレイル認知の独立した有意な関連要因は,年齢(1 歳ごと:多変量調整済み prevalence ratio[PR]=1.03,[95%信頼区間=1.02-1.04]),性(女性:1.35[1.21-1.51]),教育歴(高等学校:1.27[1.11-1.45],短大・専門学校以上:1.47[1.28-1.70]),等価所得(250万円以上/年:1.12[1.01-1.25]),運動習慣(あり:1.26[1.11-1.43]),食品摂取多様性得点(6 点以上:1.37[1.21-1.55]),社会活動(あり:1.33[1.20-1.49]),社会的孤立(あり:0.75[0.67-0.85]),フレイル(あり:0.72[0.62-0.84])であった。結論 フレイルの認知度は低水準であった。高年齢で社会経済状態や社会活動・運動・食習慣が良好な女性ではフレイルという用語が比較的よく認知されていた。一方,フレイル対策が必要な者ではフレイル認知度が低いという実態が明示された。ハイリスク者のフレイル予防・改善を促す具体策の検討が急務である。
著者
田中 久美子
出版者
千葉大学文学部
雑誌
千葉大学人文研究 (ISSN:03862097)
巻号頁・発行日
no.38, pp.157-179, 2009

千葉大学人文研究 第38号
著者
柴崎 博行 八木 ひろみ 中 久美子
出版者
香川県産業技術センター
巻号頁・発行日
no.8, pp.86-88, 2008 (Released:2011-02-04)

高齢者の乾燥肌(ドライスキン)に対するオリーブオイル塗布の効果について検証した。皮膚の水分量、保湿性が低下した高齢者に対して、オリーブオイルの継続的な塗布は皮膚水分量の増大及び水分蒸散を抑制(バリア性向上)することが示唆された。
著者
村山 洋史 小宮山 恵美 平原 佐斗司 野中 久美子 飯島 勝矢 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.66, no.6, pp.317-326, 2019-06-15 (Released:2019-06-21)
参考文献数
26

目的 ソーシャルキャピタルは多職種連携を促進する重要な要因であることが示されている。本研究では,在宅医療の推進を目的に作成された「在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会」(以下,研修会)の参加者を対象に,在宅医療・介護従事者に対するソーシャルキャピタルの醸成効果を検討した。方法 東京都北区で2014年7月~2015年1月に実施された研修会参加者への自記式質問紙調査のデータを用いた。質問紙調査は研修会の前後で実施した。研修会の参加者は,区内で在宅医療・介護に従事している,あるいは関心を持っている専門職であった。開業医・病院医師には延べ5.0日,開業医・病院医師以外には延べ4.5日のプログラムが提供された。在宅医療の動機付け項目として,在宅医療に対するイメージ形成と効力感を測定した。ソーシャルキャピタルに関しては,同職種への信頼感と互酬性の規範(結束型×認知的ソーシャルキャピタル),他職種への信頼感と互酬性の規範(橋渡し型×認知的ソーシャルキャピタル)を測定した。加えて,開業医以外の職種に対しては,開業医との関係に特化し,開業医への信頼感と互酬性の規範(橋渡し型×認知的ソーシャルキャピタル)と開業医との連携活動状況(業務協力と交流の2因子を含む;橋渡し型×構造的ソーシャルキャピタル)を把握した。解析には一般化推定方程式を用い,効果量を求めた。活動内容 研修会参加者54人中,研修会前後の両方の回答が得られた52人(うち2人が開業医)を対象とした。まず,在宅医療の動機付け項目では,効力感は変化がなかったものの,在宅医療に対するイメージ形成の得点は研修会前後で向上していた。ソーシャルキャピタルでは,同職種への信頼感と互酬性の規範の両者とも研修会前後で得点が向上していた。一方,他職種への信頼感と互酬性の規範は,両項目とも得点の向上は見られなかった。開業医以外の職種のみに限定した開業医との関係では,信頼感と互酬性の規範,および連携活動状況の業務協力において得点の向上が見られた。さらに,研修会参加者内での信頼感と互酬性の規範も向上していた。結論 研修会に参加することで,在宅医療・介護従事者に対するソーシャルキャピタルが醸成されていた。在宅医療・介護領域におけるソーシャルキャピタルの醸成に向け,本研修会のような機会の提供は一つの方策と考えられた。
著者
田中 久美子 石田 英敬
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータと教育(CE)
巻号頁・発行日
vol.2004, no.13(2003-CE-073), pp.75-81, 2004-02-06

語学学習をweb上で支援するツール天神を紹介する。教員が用意したさまざまな問題に対し学生が解答を入力て学習を行なう一方で、教員は学生の学習の進捗状況や達成度を管理・評価する。語彙、文法、作文のほか、リスニングなどマルチメディアにも対応している。また、自動採点機能を備えており、教員の負荷を減らすと共に、解答入力後ただちに自動採点の結果が学生に提示され、学生による自学自習を促進する点に本システムの特徴がある。本稿では、システムの全容を紹介し、1学期間の初等フランス語の授業における運用例を紹介する。
著者
加藤 郁子 佐藤 忠 田中 久美子 横山 郁美 大川 貴子
出版者
福島県立医科大学看護学部
雑誌
福島県立医科大学看護学部紀要 = Bulletin of Fukushima Medical University School of Nursing (ISSN:13446975)
巻号頁・発行日
no.21, pp.1-12, 2019-03

【研究目的】精神科病院の看護師が,がんを併発した精神疾患患者に関わる際に感じる困難の実態を明らかにすること.【研究方法】A県の精神科病院に勤務し,がんを併発した精神疾患患者に関わった経験がある看護師・准看護師を対象に,自記式質問紙による実態調査を行った.調査項目は対象者の基本属性,看護ケアの困難感(6要因25項目),がんを併発した精神疾患患者と関わるために必要な教育のニーズ(3要因12項目)である.【結果】分析対象は138名.看護ケアの困難感では,〈患者のセルフケア〉,〈家族による支援〉について70%以上の看護師が難しいと感じていた.がん看護の基本的な知識と精神疾患患者への応用についての教育ニーズでは,80%以上の看護師が必要性を感じていた.【結論】精神看護とがん看護に携わる看護師が情報交換を行い,相談できる体制を作ることが看護ケアの困難感軽減につながると考える.
著者
松原 仁 田中 久美子 Frank Ian 田所 諭
出版者
The Japanese Society for Artificial Intelligence
雑誌
人工知能学会論文誌 = Transactions of the Japanese Society for Artificial Intelligence : AI (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.177-180, 2002-11-01
被引用文献数
4 2

We address the problem of information flow in disaster relief scenarios by presenting an architecture for generating natural language dialogue between large numbers of agents. This architecture is the first step towards real-time support systems for relief workers and their controllers. Our work demonstrates how natural generation techniques from the MIKE commentary system for RoboCup soccer can be carried over to that of RoboCup Rescue. Thanks to this background, the initial product of our research is a system that explains a RoboCup Rescue simulation not to the agents in the domain themselves but to a watching audience. This "commentary" is produced by recreating the actual dialogues most likely be occurring in the domain: walkie-talkie-conversations.
著者
田中 久美子
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.15-21, 2015

The relationship between test anxiety and restrained eating, as assessed by estimates of the calorie content of food was investigated. Female undergraduate students (<i>N</i>=169) participated in the study. They were shown two "healthy" (fruits) and four "unhealthy" foods (chocolate, potato chips, etc.), and were asked to estimate the calorie content of each food item. Participants also completed questionnaires assessing their test anxiety, as well as the Revised Restrained Scale. Results indicated that restrained eaters were more likely than unrestrained eaters to underestimate the calorie content of healthy food, regardless of their anxiety status. This finding suggested that restrained eaters, who are concerned with managing their weight, believe that healthy foods do not affect potential weight gain, which supported the health halo effect. Moreover, restrained eaters with low anxiety overestimated calories in sweets, which are unhealthy food, whereas restrained eaters with high anxiety underestimated their calories. These biases suggest that lower calorie estimation of unhealthy foods allowed restrained eaters to feel fewer cognitive conflicts associated with eating as an emotion regulation strategy.
著者
田中 久美子
出版者
一般社団法人 日本健康心理学会
雑誌
健康心理学研究 (ISSN:09173323)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.15-21, 2015 (Released:2015-07-31)
参考文献数
28

The relationship between test anxiety and restrained eating, as assessed by estimates of the calorie content of food was investigated. Female undergraduate students (N=169) participated in the study. They were shown two “healthy” (fruits) and four “unhealthy” foods (chocolate, potato chips, etc.), and were asked to estimate the calorie content of each food item. Participants also completed questionnaires assessing their test anxiety, as well as the Revised Restrained Scale. Results indicated that restrained eaters were more likely than unrestrained eaters to underestimate the calorie content of healthy food, regardless of their anxiety status. This finding suggested that restrained eaters, who are concerned with managing their weight, believe that healthy foods do not affect potential weight gain, which supported the health halo effect. Moreover, restrained eaters with low anxiety overestimated calories in sweets, which are unhealthy food, whereas restrained eaters with high anxiety underestimated their calories. These biases suggest that lower calorie estimation of unhealthy foods allowed restrained eaters to feel fewer cognitive conflicts associated with eating as an emotion regulation strategy.
著者
小池 高史 長谷部 雅美 野中 久美子 鈴木 宏幸 深谷 太郎 小林 江里香 小川 将 村山 幸子 藤原 佳典
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.62, no.7, pp.357-365, 2015 (Released:2015-08-27)
参考文献数
25

目的 自治体による身元不明の認知症高齢者の増加を抑制する事業の利用を広めていくために,大田区で展開される高齢者見守りキーホルダーの利用の特徴を明らかにする。また,普及を担当する地域包括支援センターの方針や戦略と利用の特徴との関連を明らかにすることを目的とした。方法 2013年 7 月,東京都大田区 A 地区において,住民基本台帳上65歳以上の高齢者のうち,自力回答が難しいと思われる人を除いた7,608人を対象に質問紙を郵送し,5,166人(回収率67.9%)から回収した。このうち,分析に用いた変数に欠損のなかった4,475人を分析対象とした。見守りキーホルダーの利用の有無を従属変数とする二項ロジスティック回帰分析を行った。独立変数には,性別,年齢(前期高齢者/後期高齢者),同居者の有無,社会的孤立状況(孤立/非孤立),IADL(自立/非自立),もの忘れ愁訴の有無を投入した。また,2014年 8 月に大田区内 6 か所の地域包括支援センターにて12人の職員を対象にインタビュー調査を実施した。結果 ロジスティック回帰分析の結果,女性は男性よりも1.64倍,後期高齢者は前期高齢者よりも4.39倍,独居者は同居者のいる人よりも2.14倍,非孤立者は孤立者よりも1.36倍,IADL 非自立の人は自立の人よりも1.50倍,もの忘れ愁訴のある人は無い人よりも1.37倍見守りキーホルダーを利用していた。地域包括支援センターへのインタビューの結果,見守りキーホルダーの主な普及の対象としては,独居高齢者,心配を持っている人,若くて元気な人などがあげられた。地域包括支援センターのなかでも,独居高齢者と若い層を普及の主な対象と考えているセンターがあったが,実際には独居高齢者は多く利用し,前期高齢者の利用は少なかった。登録している人が多いと考えられていたのは,不安感の高い人,若くて自立度が高い人などであった。実際の登録までの経路としては,人づてや,町会などで登録するケースがあげられた。結論 見守りキーホルダーは,女性,後期高齢者,独居者,非孤立者,IADL 非自立の人,もの忘れ愁訴のある人により利用されていた。地域包括支援センターの多くが例示した友人や地域団体を経由しての登録の仕方と,孤立している人の利用率の低さの関連が示唆された。若くて IADL の高い人や社会的に孤立した人の利用を広めていくことが今後の課題である。
著者
田中 久美子
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.58, pp.315-325, 2012-04-27

Hearing impaired clients tend not to participate in psychotherapy, and those who do often aren't fully understood their psychic world. Particularly in Japan, there are insufficient psychological supports and few clinical psychological studies have been performed for the hearing impaired. Generally people who have lost their hearing at some point in their life can communicate somewhat using vocal language, but hearing impaired from birth can't. Psychotherapy in latter group is thought to be impossible. It may initially seem that they can't communicate with clinicians, but mutual exchange may occur if clinicians are able to use sign language. People with hearing impairment have the right to receive sufficient communications, and clinicians should be aware of the necessity of sign language. Ideally, we can use sign language, but it may take long time to master. Therefore, we must at least recognize that it is important to involve interpreters with sign language, but they tend to be troubled with many points between clients and therapists.
著者
松中 久美子 甲田 菜穂子
出版者
関西福祉科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2011

一般成人3,000人、住宅管理業者128件、法的に職場受け入れ義務を負う施設・事業所1614件を対象に補助犬法の周知度などを尋ねた。すべての対象者において、法の内容はほとんど知られていなかった。一般成人においては、法についての知識または関連知識があるほど補助犬との共存意識が高かった。補助犬使用者に対して、住宅居住者としての受け入れは限られており、職場受け入れもほとんど進んでいないことが明らかとなった。