著者
中島 秀之 諏訪 基
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.33, pp.1273-1274, 1986-10-01

論理に基づく知識表現システムUranus[中島1985]の多重世界機構には,知識の階層構造や状態の変化などを記述する能力がある.ここでは,この機構を時間の経過にともなう状態変化の表現に用い,問題解決を行なうシステムについて述べる.他の論理型言語では,状態の変化の記述が不得意であるが,Uranusでは各状態をひとつの世界として記述し,各々の世界には前の状態との変化だけを記述しておくことにより状態の変化が容易に記述できる.また,これによりいわゆるフレーム問題が避けられる他,過去に遡った状態の再現も容易であるので,状態の変化を含む問題解決(プランニング)に向いている.バックドラックを用いたプランニングでは一つの解しか求めることはできず,いくつかの解の比較などはできない.それに対し,多重世界機構を用いると,いくつかの並行世界が記述できるため,それらの間の比較なども容易である.
著者
野田 五十樹 篠田 孝祐 太田 正幸 中島 秀之
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.242-252, 2008-01-15

利便性の高い公共交通手段としてデマンドバスは注目されているが,現状では小規模な運行にとどまっており,採算性や運行形態の自由度の問題をかかえている.本稿ではユビキタスコンピューティング環境を応用したデマンドバスの大規模運行の可能性を探るため,シミュレーションによりデマンドバスと従来の固定路線バスの利便性と採算性の関係を解析した.その結果,次のようなことが示された.(1) デマンド数とバスの運用台数を一定の比率に保つ場合,運行規模の拡大に従いデマンドバスの利便性は固定路線バスより早く改善し,十分な利用者がいる場合,同じ採算性でも固定路線バスよりデマンドバスの利便性を良くすることができる.(2) 利用者の分布が一極集中の場合はデマンドバスが,二極集中の場合は固定路線バスの方が利便性を改善しやすい.
著者
中島 秀之
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.74, no.8, pp.526-532, 2019-08-05 (Released:2020-01-31)
参考文献数
27

近年,AIが歴史上初めて実用に供されるようになった.その中心技術は深層学習(Deep Learning)である.しかしながら,学習とは過去のデータに依存する方式であり,万能ではない.ここではAIの他の部分に焦点を当て,複雑系をはじめとするAIの哲学的側面を論じ,今後のさらなる発展の方向性を示したい.知能は複雑系であり,またその扱う対象も複雑系である.複雑系では完全情報が得られず,アルゴリズム(計算結果の正しさを保証する機械的手続き)が構築できない.そのような系をうまく扱うことが知能の働きだと考えている.そして,人間はそのような処理に長けている.AIでもそのような手法が求められる.AI研究は,コンピュータによる記号処理でそのような人間の能力を実現しようとして始まったが,それは同時に知能とは何かということの追及でもあった.初期のAIでは記号の処理が知能の本質であると考え,外界の情報を記号化して内部に取り込み,それを使って推論しようとした.そこでは直ちに「フレーム問題」が発見された.これは対象物に関する知識を記述しようとすると膨大なものになり,その中から推論や判断に関係するものだけを適切に抜き出して処理することが不可能であるというものだ.人間には,関係する知識のみに焦点を絞ったり,不完全な知識の下でも推論したりして,(たまに間違うが)適切な解を見出す能力がある.AI研究者はこれを「常識推論」と呼び,フレーム問題の解決を試みたが,失敗した.全てを内部表現で処理しようとしたのが失敗の原因だ.複雑系の全てを表現できるわけがない.近年では得られる情報は部分的であるという前提に立つ「限定合理性」の考え方が中心となっている.一方,生態学,システム論,心理学など様々な分野で,環境との相互作用の定式化が試みられている(オートポイエシスや環世界など).情報の全てを個体内で処理するのではなく,環境をうまく使うのだ.その方向性の一つにブルックスがロボット用アーキテクチャとして提案した,内部表現に依存しない(しすぎない)「服属アーキテクチャ」(subsumption architecture)がある.これを更に環境まで含めたループとして拡張することによって環境との相互作用を利用する知能アーキテクチャとなる.知能を含む複雑系を対象とする研究の方法論にも同じ枠組みが適用できる.分割統治を中心とする分析的方法論と並置できるような,複雑系の構成的方法論を提案する.この方法論の核心は環境を経由する速いループを多数,並列に回すことである.このループの一つを展開するとそれは更に多数のループが並立する構造になって,フラクタル構造となっていることがある.実際,分析的方法論のループは構成的方法論の一部となっていると考えられる.この構成的方法論はAI研究に使えるだけではなく,IT(情報技術)一般に使える.速いループを回す手法はソフトウェア開発ではアジャイル開発技法と呼ばれ,採用されている.20世紀は物理学が飛躍的に発展した時代であった.21世紀は,20世紀に開発された様々な技術を用い,情報が社会の仕組みを変えようとしている.
著者
和泉 憲明 幸島明男 車谷浩一 中島秀之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ユビキタスコンピューティングシステム(UBI) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2003, no.115, pp.129-134, 2003-11-18
参考文献数
3
被引用文献数
2

本稿では,デジタル世界のエージェントにより,実世界のユーザを支援するためのシステムのアーキテクチャとユーザインタフェースを提案する.具体的には,エージェントのタスクを細粒度の機能体として環境に配置し,ユーザを介してWeb上の部分コンテンツを受け渡しすることにより,機能連携を実現する.そして,簡易な操作でWeb上の複数の部分コンテンツにかかるコピー&ペースト操作を行う仕組みとしてWebSLITを開発しを開発し,これをブラウザのプラグインとして実装した.これにより,次世代Webのコンセプトをユビキタス計算環境に具体化させことを目指す.In this paper, we propose the architecture and the user interface of a system for supporting the users in the real world by the agent in the digital world. In the concrete way, the agent's task is embedded in the environment as a functional object of fine-grained services. The user enables the service coordination by delivering the agent the partial contents on the Web. As an implementation, we have developed WebSLIT, which enables us to perform copy & paste action by simple operation, and that is embedded in the Web browser Mozilla as a plug-in module. Based on WebSLIT, we try to clarify the concept of the Web tomorrow in the Ubiquitous computing environment.
著者
中島 秀之 諏訪 正樹 藤井 晴行
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.1508-1514, 2008-04-15

デザインとは,対象とするシステムにおける認識レベルの異なる層の間に縦の因果を作り出す行為であると定義する.因果関係というのは認知的関係であり物理的実体ではない.また,そこには機械論的なメカニズムは存在しない.そのような前提でイノベーションを考えると,生成・評価・方向性の絞り込みという3 つの行為のループが必要ということが分かる.これらのうち,特に方向性の絞り込みがイノベーションの核心部分である.これらの定式化を行い,進化論的方法論のみが有効であることを主張する.
著者
中島 秀之
出版者
公益財団法人 日本学術協力財団
雑誌
学術の動向 (ISSN:13423363)
巻号頁・発行日
vol.20, no.9, pp.9_68-9_71, 2015-09-01 (Released:2016-01-08)
参考文献数
2
被引用文献数
1 1
著者
中島 秀之
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

知能と知は少し異なる.前者は能力であり,校舎はそのコンテンツである.知能にとって身体は必須要素であると考えている.これは知能の定義から必然的に導ける.ではそのコンテンツである知は元の知能の身体性と切り離せるのか?これも否定的であろう.その根拠を状況依存性の観点から述べる.
著者
中島 秀之 Hideyuki Nakashima
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 = Journal of Japanese Society for Artificial Intelligence (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.2, no.3, pp.367-374, 1987-09-01
被引用文献数
2 1

Uranus is a programming system designed for knowledge representation. The multiple world mechanism of Uranus makes it possible to represent conceptual space and time sequence. In this paper, we examine commonsense reasoning with this mechanism. By commonsense reasoning, we mean reasoning with rules which have exceptions. The results must fit our intuition. To do so requires ordering among rules. Non-monotonic logic is too weak for this purpose. We show that the multiple world mechanism of Uranus provides the natural ordering among rules, and thus it is suitable for commonsense reasoning.
著者
西村 拓一 伊藤 日出男 中村 嘉志 山本 吉伸 中島 秀之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.44, no.11, pp.2659-2669, 2003-11-15
被引用文献数
11

?<「いつでも,どこでも,誰でも」情報にアクセスできる遍在(ユビキタス)型情報処理社会では,莫大な情報から「いま,ここで,私が」欲しい情報を簡便なインタフェースで提供することが重要である.そこで,本論文では,適切な位置で適切な方向に端末を向けるだけでインタラクティブに音声情報を取得する無電源小型情報端末(Compact Battery-less Information Terminal: CoBIT)を用いた情報支援システムを提案する.環境側の装置からは音声情報とエネルギーを伝える光を照射し,CoBITでは太陽電池に直結したイヤホンで音を聞くことができる.また,CoBITの表面には反射シートを貼り付けることで,赤外光投光カメラを用いればCoBITの位置やおよその方向を容易に推定することができる.これにより,CoBITの位置・方向の履歴およびユーザからの合図を基に適切な情報を直感的かつ容易な操作でインタラクティブに提供できる.本論文では,実装したCoBITの特性を示し,その試験運用やプロトタイプシステムを紹介する.The target of ubiquitous computing environment is to support users to get necessary information and services in a situation-dependent form. In order to support users interactively, we propose a location-based information support system by using Compact Battery-less Information Terminal (CoBIT). A CoBIT can communicate with the environmental system and with the user by only the energy supply from the environmental system and the user. The environmental system has functions to detect the terminal position and direction in order to realize situated support. In this paper, we also show various types of CoBITs and the usage in museums or event shows.
著者
中島 秀之
出版者
社団法人人工知能学会
雑誌
人工知能学会誌 (ISSN:09128085)
巻号頁・発行日
vol.16, no.1, pp.82-85, 2001-01-01
被引用文献数
1
著者
野田 五十樹 太田 正幸 篠田 孝祐 熊田 陽一郎 中島 秀之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. ICS, [知能と複雑系] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.131, pp.31-36, 2003-01-29
被引用文献数
5

利便性の高い公共交通手段としてデマンドバスは注目されているが、現状では小規模な運営にとどまっており、採算性の問題を抱えている。本稿ではデマンドバスの大規模運営の可能性を探るため、シミュレーションによりデマンドバスと従来の固定路線バスの利便性と採算性の関係を解析した。その結果、次のようなことが示された。(1)デマンドバスはデマンドの増加に従い急速に利便性が悪化する。(2)デマンド数とバスの運用台数を一定に比率に保つ場合、規模の拡大に従いデマンドバスの利便性は固定路線バスより早く改善する。(3)十分な利用者がいる場合、同じ採算性でも固定路線バスよりデマンドバスの利便性をよくすることができる。