著者
小池 徹 中島 紀子 奥村 英晴 奥村 秀信
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.14-21, 2011-03-20 (Released:2013-03-18)
参考文献数
20

化粧品において「触感」は重要な因子であり,その触感に大きな影響を与える皮膚の柔らかさに関する報告は多い。たとえば角層の柔軟性には,水分が大きな影響を与えていることが広く知られており,その詳細なメカニズムの解明も進んでいる1)。一方,「エモリエント」という言葉が業界に古くからあるように,油剤が皮膚へ柔軟性を与える効果も広く認められている。しかし油剤による柔軟効果に関して,具体的にどのような機構で働いているのかという点を追究した報告が少ない。そこで今回は液状油に注目し,皮膚への柔軟化機構を力学的ならびに官能的に検討した。その結果,塗布された液状油によって細胞間脂質層が柔らかくなり,これが角層に影響を与えていることが示唆された。また官能的に「感じる」柔らかさは必ずしも力学的な柔軟化傾向とは一致しておらず,ほかにも摩擦等の表面特性が関与していることが示唆された。よって,肌を柔らかくする,または感じさせる効果を化粧品で十分発揮するためには,両方の側面からアプローチすることが有効であると考えられた。
著者
中島 紀 川良 公明
出版者
国立天文台
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
1998

本研究のテーマは、褐色矮星、近赤外ディープサーベイの星状天体の解釈及びスペースイメージング赤外干渉計の感度の計算に大別される。若い褐色矮星の研究からは、褐色矮星が、星のように単独でも、伴星としても検出されることがわかった。スペースミッションは、多数の冷たい褐色矮星を検出する可能性を持つが、地上観測は、暖かい褐色矮星にしか感度をもたない。低温褐色矮星SDSS 1624+00の時間分解されたスペクトルの変動を調べることで、褐色矮星の気象の研究を行った。観測時間は、80分と短かったが僅かな変動がみられた。狭い領域のディープサーベイは、限界等級を深くしていったときどのような宇宙が見えてくるかを知る目的で、広域サーベイと相補的な役割を持つ。また、そこからスターカウントモデルを構築することで、サーベイ一般がどのような数の星や褐色矮星を見つける可能性を持つのかを予言することができる。我々が構築したスターカウントモデルは、UKIRT Wide Field Surveyの褐色矮星検出効率を予想し、Next Generation Space Telescopeがみる究極の銀河系の姿を描きだした。サーベイにより検出された天体を高い空間分解能でフォローアップするための究極の装置は、スペース干渉計である。また遠赤外線においてコンフュージョンをさけてディープサーベイを行い銀河カウントを行えるのも、スペース干渉計である。まず我々は、スペース干渉計の感度の公式を導いた。そしてその公式を現在計画されているTerrestrial Planet FinderやDarwinに応用した。そして、冷やさない干渉計が冷やした望遠鏡よりも感度が良いこと、冷やした干渉計は、宇宙論的に意味のある観測が可能でるあることを見出した。
著者
南 裕子 新道 幸恵 中西 睦子 山本 あい子 片田 範子 井伊 久美子 高橋 章子 中島 紀恵子 中山 洋子
出版者
兵庫県立看護大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2000

本研究の目的は、災害発生後の医療・看護ケア提供に必要な情報を蓄積し、かつ稼動可能な看護支援提供システムを構築することである。そのために研究活動は、1.資料・文献班2.災害拠点病院の現状調査、3.教育班、4.ネットワーク活動班、5.全体活動、で進め、以下の新たな知見を得た。1)災害関係資料・文献の収集・分析の結果、1995年発生した阪神・淡路大震災を境に質的・量的な変化が見られた。1995年以後は、被災者の体験や災害時の医療・看護の実態報告、マニュアル・テキスト、調査報告・研究論文等被災者支援を中心とした出版が増加していた。しかし、看護の視点で報告、考察したものは未だ少なかった。2)災害の種類や発災からの時期別等で検索できる災害看護文献検索システムを構築し、ホームページ上で公開した。3)看護職の需要が高い文献を調査し、「こころのケア」「発災時」各パッケージを作成した。4)災害拠点病院の看護部に対し災害への備えとしての準備状況を調査した。結果、看護部独自のマニュアルを作成している施設は半数に満たず、各施設の看護部間での情報共有が必要と考えられた。5)災害看護教育プログラムの開発に向け、看護教育者・臨床家と情報交換しつつカリキュラムモデルを作成した。6)災害時の看護ニーズを把握するために、災害発生地域の初期調査、初動調査、中・長期フォローアップ調査を実施し、災害時の看護ニーズアセスメントツール(精錬版)を作成した。7)ネットワーク活動メンバー対象の研修会の開催、研究成果の発表と国内外の看護職との情報交換を目的に、情報交換研修会、アジア諸国を中心とした災害看護国際会議を企画主催した。これらの研究成果から、災害看護関係情報の基地整備の必要性、国内外の看護職が災害看護ネットワークを構築することの有用性、災害看護教育の早期実施、普及の重要性が示唆された。
著者
野本 ひさ 河野 保子 永松 有紀 平澤 明子 吉村 裕之 中島 紀子
出版者
愛媛大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2008

男性で在宅介護を行っている人の実態を調査した。男性介護者は女性に比べて強い意志決定の元に介護を担っていることが判明した。介護を経験する前の夫婦を対象にした夫婦間介護意識調査を実施した。配偶者の介護をしようと考える気持ちは夫婦の関係性、夫の家事参加、夫婦間トラブルの頻度に依拠していることが判明した。夫婦間介護意識は、実際に介護を行っている者も介護を行う以前も夫と妻で違いがあり、特に夫の介護意志決定には男性特有の意地・遠慮やそれまでの夫婦の関係を償おうという思いが反映していた。
著者
原田 淳 宇佐美 繁 野見山 敏雄 谷口 吉光 久野 秀二 中島 紀一 大木 茂 細川 允史 原田 淳
出版者
宇都宮大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2001

本研究では対象とした事例はいずれもWTO体制下にあっても確実な成長を実現してきた産直産地組織と総称される農家グループである。その特徴は、新政策がサブ戦略として打ち出した環境保全型農業を早い時期から経営の基本戦略に位置づけ、主として生協との産直という形で、卸売市場への無条件委託販売ではなく、産地組織自身の手で消費をつかみ、継続的な事業システムを構築してきたという点にあった。産直産地組織は環境と安全性重視の農業生産体制の確立と戦略的マーケティングによる農産物販売を機軸とした農家の連合組織であり、法人形態としては農事組合法人、有限会社、株式会社、系統農協、法人格のない任意組織などさまざまである。既存の農業組織のなかでは組織形態や活動内容は農協に類似している。本来ならば系統農協が果たすことを期待された諸機能を、現実には多くの農協が果たし得ていないなかで、意志のある生産者たちが自ら農協類似の組織を作り上げ、時代を生き抜く道を拓いてきたと理解できる。マーケティングを軸とした戦略的経営についてのこれまでの議論は個別経営に視点をあてたものが多かったが、本報告の事例は意志のある農家によるグループとしての組織的な経営展開である。環境・安全など新時代農業のポリシーが確立されているという点、先端的マーケティングを展開する活力ある集団的経営構造が構築されているという点、地域における幅広い農家の結集などの諸点に際だった特色があり、個別経営主義に傾斜しがちだった戦略的経営論と農業を面として集団として捉えようとする地域農業論・産地形成論との断絶を埋める方向としても注目すべき取り組みである。