著者
中島 貴子
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.3, pp.90-101, 2005 (Released:2008-07-25)
参考文献数
64

乳児用粉ミルクに工業廃棄物由来のヒ素化合物が混入して大規模な被害が発生した森永ヒ素ミルク中毒事件は,今年2005年8月24日,公式発表から50年目を迎える.しかし,事件の全体像は今なお把握されていない.被害者に対する恒久救済機関の運営実態への疑問の声もある.被害者の現在を正視すると同時に,事件史の教訓を徹底的に整理する必要がある.病因物質が市場に流通してから恒久救済機関が発足するまでの約20年を振り返ると,食中毒事件における疫学と事故調査の独立性の必要が指摘できる.また,事後対応における行政と専門家の関係についての課題も指摘できる.本格的な歴史研究のためには本事件に関連する一次資料の収集・保存が必要である.
著者
中島 貴子
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
no.3, pp.90-101, 2005

乳児用粉ミルクに工業廃棄物由来のヒ素化合物が混入して大規模な被害が発生した森永ヒ素ミルク中毒事件は,今年2005年8月24日,公式発表から50年目を迎える.しかし,事件の全体像は今なお把握されていない.被害者に対する恒久救済機関の運営実態への疑問の声もある.被害者の現在を正視すると同時に,事件史の教訓を徹底的に整理する必要がある.病因物質が市場に流通してから恒久救済機関が発足するまでの約20年を振り返ると,食中毒事件における疫学と事故調査の独立性の必要が指摘できる.また,事後対応における行政と専門家の関係についての課題も指摘できる.本格的な歴史研究のためには本事件に関連する一次資料の収集・保存が必要である.
著者
中島 貴子
出版者
名古屋工業大学技術倫理研究会
雑誌
技術倫理研究 = Journal of engineering ethics (ISSN:13494805)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.51-77, 2007-11-30

戦後日本の食環境の変化を象徴する食中毒事件と不安訴訟において、各々の事例の重要な社会的意思決定の場面に存在する科学的知見の不確実性に注目すると、不確実性は「無関心」「未解決」「未知」「不知」の4類型に分類できる。4類型の不確実性は、どの事例にも存在するが「無関心」「未解決」型の不確実性が発生する背景を歴史的にみると、個人的な要因から制度的・社会的要因に比重が移っており、科学技術を扱う専門家には、より複雑な倫理的課題が与えられている。
著者
本堂 毅 平田 光司 関根 勉 米村 滋人 尾内 隆之 笠 潤平 辻内 琢也 吉澤 剛 渡辺 千原 小林 傳司 鈴木 舞 纐纈 一起 水野 紀子 中島 貴子 中原 太郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2013-04-01

科学技術の専門的知識には,程度の差はあれ,様々な不確実性が避けられない.また,社会の中で科学技術の知識を用いる際にどのような科学的知識が必要かは価値判断と不可欠であるため科学自体では定まらない.このような「科学的知識の不定性」を直視し,不定性の様々な性質を踏まえた上で,より的確な判断を私たちが主体的に下すための条件を考察し,科学的知識に伴う不定性の性質・類型を明らかにするとともに,その成果を書籍にまとめた(2017年度に出版予定).
著者
中島 貴子
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1999

行政機関における化学物質の人体毒性評価に関する日本と米国の決定的な差異をもたらしている最大の理由は、両国におけるレギュラトリ・サイエンスの在り方の相違によるものである、という前年度の研究成果を踏まえ、今年度は、「レギュラトリ・サイエンス」という概念の発展経緯について日米比較を行った。その結果、以下の結論および仮説を得た。(1)欧米でレギュラトリ・サイエンスという概念の普及にもっとも貢献したのは、科学論者であり、法学者であるシェーラ・ジュサノフ(ハーバード大学教授)である。彼女は1990年、リサーチ・サイエンスとの相対比較によってレギュラトリ・サイエンスを定義した。その視点はすぐれて社会学的。(2)一方、日本ではジャサノフとは全く独立に、内山充(元東北大学教授、薬剤師研修センター理事)が1970年という早い時期からからレギュラトリ・サイエンスの概念を打ち出していた。その内容は、レギュラトリ・サイエンスには従来の科学とは全く異なる目的・方法が必要とされる点を明示するもので、自然科学的かつ創造的。(3)しかしながら、レギュラトリ・サイエンスの規模、レベルにおいて、日本はアメリカよりもはるかに劣っているといわざるを得ない。その理由は、第一に、日本では内山の意図するレギュラトリ・サイエンスの真意や価値が、本来、レギュラトリ・サイエンチストを輩出すべき大学や、自らレギュラトリ・サイエンチストたるべき国立系研究機関で十分な理解を得られなかったこと。第二に、内山の影響力を医薬品行政にとどめ、他の関連行政には伝播させないような、省庁間の壁が厚かったことが考えられる。(4)したがって、今後、日本で健全なレギュラトリ・サイエンスを育むためには、レギュラトリ・サイエンスに関する内山の先駆的な主張に、大学、国立系研究機関ならびに関係省庁が真摯に耳を傾ける必要がある。
著者
中島 貴子 山崎 和久 齋藤 淳 森田 英利
出版者
東京歯科大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2016-04-01

歯周病は動脈硬化性疾患、代謝性疾患、自己免疫疾患などのリスクを高めるといわれている。また、それらの疾患は腸内細菌の乱れとも関連するという報告がある。これまでの動物実験で示した、嚥下した歯周病原細菌が腸内細菌を変化させるというデータに基づき、ヒトでの実証を試みた。本研究課題では歯周炎患者腸内細菌叢が健常者と有意に異なることを初めて明らかにし、歯周病と全身疾患を関連づける新たなメカニズムを示した。
著者
中島 貴子
出版者
科学技術社会論学会
雑誌
科学技術社会論研究 (ISSN:13475843)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.127-134, 2009-10-20 (Released:2021-08-01)
参考文献数
20

Responding to the drastic change of food environment in Japan after the W. W. II, two types of trials, namely, “industrial pollution trial” and “anxiety trial”, have been brought in court. The criminal trial regarding Morinaga (arsenic poisoning by powdery milk) and the civil trial regarding Kanemi (PCB and dioxin poisoning by cooking oil) are focused as the most typical case of industrial pollution trial, while Pesticide residue trial and GM (Genetically modified) rice trail are focused as the contemporary case of anxiety trial. This paper suggests three points to discuss about “Science at the Bar” by analyzing the scientific controversy that destined the direction of each trial respectively. Regardless of the type of trial, the trend of scientific controversy depends on the framework of controversy which is determined by the agenda setting and capabilities of evidence gathering. In line with this, two points such as science literacy of the legal profession and collaboration between lawyer and scientists can be elicited. On the other hand, there is fundamental difference as for the purpose of scientific controversy between two types of trail. In line with this, another point such as channel from court to policy can be elicited.
著者
中島 貴子
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.321-330, 2004-10-29 (Released:2007-12-21)
参考文献数
52
被引用文献数
2

2003年7月1日, 内閣府食品安全委員会が発足し, 食品安全のリスクコミュニケーションを推進する活動が活発に展開され始めた. 本稿では, 食品安全委員会のリスクコミュニケーション活動には, 消費者と行政や専門家の間に様々のディスコミュニケーションが存在していることを指摘する. また, リスクコミュニケーション活動の重点が行政の信頼回復よりも消費者への啓蒙活動に重点が置かれていることや, 消費者の行政不信が歴史的に蓄積されていることが, 潜在的ディスコミュニケーションの要因となっていることを指摘する. 積年のディスコミュニケーションを解消し, より健全な食品安全行政を創出するためには、戦後の食品安全行政史を食品安全委員会が主導して取りまとめる必要がある.
著者
中島 貴子
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.25-37, 2003 (Released:2009-08-19)
参考文献数
41
被引用文献数
2 2

1968年に発覚した「カネミ油症事件」は,現在も多様な被害が続いている歴史的な大型食中毒事件である.しかし,社会技術的な視点からの研究はほとんどなされてこなかった.本稿では,本件事故調査の問題点は限られた資料だけからも指摘しうることを示し,事故調査の限界が調査体制の制度的問題と関連していたことを示唆する.そして,食品分野の重大事故における事故調査体制の分析や一次資料の保存の必要性について述べる.